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業務委託の契約管理とは、外部の個人や企業に仕事を任せるときの契約を、締結・発注・検収・支払・更新まで抜け漏れなく運用することです。委託先が増えるほど、契約書の保管場所や更新期限、法令への対応が担当者ごとにばらつき、更新漏れや偽装請負(実態は雇用に近いのに委託契約を装う状態)のリスクが静かに積み上がります。
やることは大きく分けて、管理すべき項目を押さえること、偽装請負にならない線引きを守ること、フリーランス新法や下請法などの法令に沿うこと、そして契約書の保管と更新を効率化することの4つです。順番に見ていきます。
業務委託契約の管理とは
業務委託契約の管理とは、契約の締結・発注・検収(納品物が契約どおりかを確認すること)・報酬の支払・更新までの一連の流れを、契約内容にそって運用することです。正社員の雇用管理との大きな違いは、委託先に指揮命令ができない点です。勤務時間ではなく、成果物や業務の内容で管理するのが基本です。
難しくなるのは、委託先が増えたときです。フリーランスや外部企業への発注が事業部ごとに広がると、契約書の様式も更新のタイミングもばらばらになります。締結時は問題がなくても、更新や法令改正のたびに、誰がどの契約を見ているのかが曖昧になっていきます。だからこそ、管理する対象と守るべきルールを先に書き出しておくことが出発点になります。
請負契約と準委任契約の違い
業務委託契約は、法律上の分類でいうと請負と準委任の2つに大きく分かれます。成果物を完成させる責任を負うのが請負、業務そのものを丁寧に進める責任(善管注意義務。専門家として通常求められる注意を払う義務)を負うのが準委任です。どちらに当たるかで、検収の基準や報酬が発生する条件が変わります。契約書の表題ではなく、実際の中身で判断される点に注意してください。
▼ 請負契約と準委任契約の違い
| 観点 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 責任の対象 | 成果物の完成 | 業務を遂行すること |
| 報酬の考え方 | 成果物の納品に対して支払う | 業務の遂行や稼働に対して支払う |
| 典型例 | システム開発、制作物の納品 | コンサルティング、運用保守 |
| 契約不適合への対応 | 修補や損害賠償の対象になりやすい | 善管注意義務の範囲で判断される |
雇用契約との違いは指揮命令権の有無
雇用契約との最大の違いは、委託先に対して指揮命令ができないことです。始業や終業の時刻を決めたり、作業の進め方を細かく指示したりできるのは雇用だけです。業務委託でこうした指示を続けると、契約書の形式にかかわらず実態は雇用とみなされ、偽装請負として問題になります。この線引きは「業務委託の契約管理で偽装請負を防ぐ線引き」で詳しく扱います。
業務委託の契約管理で押さえる項目の全体像
業務委託の契約管理は、契約締結から更新までのプロセスと、そこで確認すべき項目に分けて考えると整理しやすくなります。まず全体の流れをつかみ、次に項目のチェックリストで抜けを防ぐ、という順番です。

契約締結から支払・更新までの流れ
契約管理の起点は締結です。ここで業務の範囲や報酬、納期、秘密保持などを決めておかないと、後工程のすべてが曖昧になります。発注では案件ごとに条件を確定し、検収で納品物が契約どおりかを確かめ、その結果にもとづいて報酬を支払います。見落とされやすいのが最後の更新です。自動更新の有無と更新期限を管理できていないと、意図しない更新や、逆に必要な契約の失効が起きます。
取引全体の共通ルールを定めた基本契約を一度結んだあとも、案件ごとに発注書を出す意味があります。個別の業務内容や納期、金額を発注書で確定させておくと、認識のずれや、言った言わないのトラブルを避けられます。フリーランス新法や下請法で求められる取引条件の明示も、この発注のタイミングで行うのが自然な流れです。
管理すべき項目のチェックリスト
プロセスと並行して、契約ごとに次の項目をそろえておくと抜け漏れを防げます。委託先の数が増えるほど、この確認が担当者の記憶頼みになりがちです。
▼ 業務委託契約で管理すべき項目
| 管理項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 契約書の有無と保管場所 | 締結済みの契約書がどこにあるか、誰でもたどれるか |
| 契約期間と更新期限 | 満了日・自動更新の有無・更新可否の判断時期 |
| 報酬と支払期日 | 金額・支払条件と、支払期日がフリーランス新法・下請法(取適法)の上限(成果物を受け取った日から60日以内など)に収まっているか |
| 法令対応 | フリーランス新法や下請法の対象か、書面明示ができているか |
| 秘密保持と成果物の権利 | 機密情報の扱いと、成果物の権利がどちらに帰属するか |
業務委託の契約管理で偽装請負を防ぐ線引き
偽装請負は、契約は業務委託なのに、実態は指揮命令をともなう働かせ方になっている状態を指します。防ぐ鍵は、成果物の仕様や目標だけを伝え、時間や進め方は相手の裁量に委ねることです。
委託先が自社の従業員を使って業務を処理する場合、厚生労働省は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(以下、区分基準)で判断のものさしを示しています。求められるのは次の2つで、どちらか一方でも欠けると労働者派遣に当たると判断されます。
1つ目は、委託先が自らの労働者を自分で使うことです。業務の遂行方法や評価、始業・終業の時刻や休日などの労働時間、服務規律や配置を、委託先が自ら管理していることが必要です(労働時間などを単に把握するだけの行為は、ここでいう管理には含まれません)。
2つ目は、請け負った業務を自分の業務として独立して処理していることです。①業務の処理に必要な資金をすべて自らの責任で調達・支弁していること、②民法・商法その他の法律に定められた事業主としての責任をすべて負っていること、③自ら準備・調達した機械・設備・器材(業務上必要な簡易な工具を除く)や材料・資材によって処理するか、自ら行う企画または自ら持つ専門的な技術・経験にもとづいて処理していること(③はいずれかで足ります)、の3つをすべて満たす必要があります。いずれの場合も、単に肉体的な労働力を提供するだけのものではないことが必要です。発注者がこれらを肩代わりすると、契約の形式にかかわらず労働者派遣に当たると判断されるおそれがあります。
請負の形式による契約で自己の雇用する労働者を業務に従事させる事業主は、労働者を自ら直接利用していること(遂行方法・評価、労働時間、服務規律・配置の管理)と、請け負った業務を自己の業務として独立して処理していること(資金の調達・支弁、法律上の事業主責任、機械・資材または企画・専門的な技術若しくは経験による処理)のいずれかを欠く場合には、労働者派遣事業を行う事業主として扱われます。 出典:厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)(最終確認日:2026年8月7日)

やってはいけない指揮命令
避けたいのは、雇用と同じように相手を動かす指示です。始業・終業の時刻を決める、休日や休暇を管理する、自社の朝礼や勤怠ルールに従わせる、作業手順を逐一指示する、といった行為が代表例です。依頼してよいのは「何を、いつまでに、どの品質で」であって、「どの時間帯に、どんな手順で」進めるかは相手の裁量に残します。この一線を越えると、契約書がどれだけ整っていても実態で判断されます。依頼の内容が「何を、いつまでに、どの品質で」の範囲に収まっているかを、依頼メールやチャットの文面で定期的に見直しておくと安全です。
偽装請負と判断された場合のリスク
偽装請負とみなされると、実態としては労働者の供給を受けていることになるため、労働者派遣法や職業安定法に触れるおそれがあり、行政指導や是正の対象になります。実態が雇用と判断されれば、社会保険料や割増賃金をさかのぼって求められることもあります。さらに、労働者派遣法などの適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を結び、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けていたと認定されると、発注者がその労働者に労働契約を申し込んだものとみなされる制度(労働契約申込みみなし制度)もあります(違法行為への該当について善意無過失であったと認められる場合は適用されません)。取引先や社会からの信用にも関わるため、委託先とのやり取りの記録を残し、指示が成果物の範囲に収まっているかを定期的に見直すことが、最も確実な予防になります。
労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けた場合(いわゆる偽装請負等)は、その労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなされます。ただし、違法行為への該当について善意無過失であったと認められる場合は適用されません。 出典:厚生労働省 労働契約申込みみなし制度について(労働者派遣法第40条の6)(最終確認日:2026年8月7日)
業務委託の契約管理に関わる法令
業務委託の契約管理では、守るべき法令がいくつか重なります。偽装請負に関わる労働関係の法律に加えて、個人に委託する場合のフリーランス新法、資本金や従業員数の規模で適用される下請法(2026年1月に取適法へ改称)、そして経理に関わるインボイス制度と電子帳簿保存法です。さらに、個人へ報酬を支払う場面では源泉徴収も関わります。委託先や取引の内容によって、どれが効いてくるかが変わります。

フリーランス新法で発注側に求められること
従業員を使用しない個人(および代表者のほかに役員がなく従業員もいない法人)に業務を委託する場合は、フリーランス新法への対応が欠かせません。取引条件の明示は発注側すべてに義務づけられ、従業員を使用する発注事業者(法人の場合は、役員が2名以上いるか従業員を使用する事業者)にはこれに加えて、成果物を受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払うことが義務づけられています。他社から請けた業務をフリーランスへ再委託する場合は、①再委託である旨、②元委託者の名称、③元委託業務の対価の支払期日、の3点を発注時の明示に含めたときに限り、元委託者からの支払期日を起点に30日以内という特例を使えます。明示しなければ原則どおり、成果物を受け取った日から60日以内が支払期日になります。
フリーランス新法では、発注時に給付の内容・報酬額・支払期日などを書面か電子データで明示することが発注側すべてに、従業員を使用する発注事業者(法人の場合は、役員が2名以上いるか従業員を使用する事業者。=特定業務委託事業者)には、成果物を受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払うことが、それぞれ義務づけられています。 出典:公正取引委員会 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(最終確認日:2026年7月15日)
明示する事項は、発注のたびに口頭で済ませず、テンプレートにして残すのが安全です。おもな項目は次のとおりです。
▼ フリーランス新法で明示する主な事項
| 明示する事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 委託事業者・受託者の名称 | 発注側と受注側それぞれの商号・氏名、または両者を識別できる番号・記号 |
| 業務委託をした日 | 発注した日付 |
| 給付の内容 | 委託する業務や成果物の具体的な内容 |
| 給付を受領する期日 | 成果物を受け取る(役務の提供を受ける)期日。期間を定める場合はその期間 |
| 給付を受領する場所 | 成果物を受け取る(役務の提供を受ける)場所 |
| 検査を完了する期日 | 給付の内容を検査する場合に、その検査を終える期日 |
| 報酬の額と支払期日 | 支払う報酬の金額(算定が困難な場合は算定方法)と、支払期日 |
このほか、手形や電子記録債権、ファクタリング等で支払う場合は追加の明示事項があります。委託の時点で内容を定められないことに正当な理由がある事項は、その理由と決定予定期日を先に明示し、決まり次第あらためて明示します。
契約書のひな形づくりや、明示すべき事項の具体的な書き方は、フリーランス新法にしぼった解説で詳しく整理しています。
下請法との違いと適用範囲
フリーランス新法と混同されやすいのが下請法です。下請法は2026年1月に取適法(中小受託取引適正化法)へ改称され、適用対象も従来の資本金基準に加えて従業員数の基準が設けられ、資本金基準と従業員数基準のいずれかに当てはまれば対象になります。従業員数基準は発注側だけでは決まらず、発注側と受注側の組み合わせで判断します。製造委託・修理委託・特定運送委託・政令で定める情報成果物作成委託等は発注側300人超かつ受注側300人以下、それ以外の情報成果物作成委託・役務提供委託は発注側100人超かつ受注側100人以下が目安です。適用されるのは製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託に、同じ改正で加わった特定運送委託(販売・製造・修理などの目的物を取引の相手方へ届けるための運送を、他の事業者に委託する取引)を含めた5類型で、当てはまる取引には発注書面の交付や、支払遅延・不当な減額の禁止などが求められます。個人への委託でも、資本金や従業員数の条件を満たせば対象になり、フリーランス新法と両方が関わる場面もあります。自社の取引がどちらの(あるいは両方の)対象かは、委託先が個人か、そもそも5類型に当たるか、資本金・従業員数の条件を満たすかで切り分けます。
下請法(取適法)は、資本金や従業員数の規模に応じて適用対象が定められており、対象となる場合は発注書面の交付や支払遅延の禁止などが求められます。 出典:公正取引委員会 中小受託取引適正化法(取適法)の概要(最終確認日:2026年7月15日)
インボイス制度と電子帳簿保存法への対応
経理の面では、インボイス制度と電子帳簿保存法が関わります。委託先が発行する請求書が適格請求書(インボイス)かどうかで、仕入税額控除(支払った消費税を差し引ける仕組み)の扱いが変わります。委託先に免税事業者(消費税の納税義務が免除されている事業者)が多い場合は、経過措置により免税事業者からの仕入れも一定割合を控除できます(2026年9月30日までは80%、2026年10月1日からは70%、以後2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%と段階的に縮小し、2031年10月1日以降は原則として控除できません)。なお、1つの免税事業者等からの課税仕入れの合計額が、その年またはその事業年度で一定額(2024年10月1日から2026年9月30日までの間に開始する課税期間は税込10億円、2026年10月1日以後に開始する課税期間は税込1億円)を超える場合、その超えた部分にこの経過措置は使えません。また、契約書や請求書を電子データでやり取りする場合は、電子帳簿保存法の保存要件に沿って保存する必要があります。インボイス制度と電子帳簿保存法という2つの制度を通じて、契約の管理と経理の処理は密接につながっています。
適格請求書発行事業者が交付する適格請求書は、仕入税額控除の要件となります。免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置について、国税庁のQ&A問113【令和8年4月改訂】は、控除できる割合を4段階(80%・70%・50%・30%)で示しています。電子取引でやり取りした契約書や請求書は、電子帳簿保存法の要件にしたがって保存します。 出典:国税庁 インボイス制度/国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置/国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト(最終確認日:2026年8月7日)
個人への報酬で必要になる源泉徴収
個人(居住者)に報酬を支払う場合は、源泉徴収にも注意します。原稿料やデザイン料、講演料、弁護士・税理士などへの報酬は、支払うたびに所得税および復興特別所得税を源泉徴収する義務があります。税率は1回の支払につき100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。委託先が法人の場合は、これらの源泉徴収は原則として必要ありません。対象になるのは所得税法で定められた報酬・料金に限られるため、システム開発や一般的な事務代行の委託料は原則として対象外です。ただし、画面デザインやグラフィック制作など、成果物にデザインの要素が含まれる場合は、その部分が「デザインの報酬」として源泉徴収の対象になることがあります。契約や請求書で内訳を分けておくと判断しやすくなります。また、請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、税抜の報酬額のみを源泉徴収の対象として差し支えありません(区分がなければ税込金額が対象になります)。契約書や発注書に記載する報酬額が、源泉徴収前の金額か差し引いたあとの手取り額かを明示しておくと、支払段階での計算ミスや認識のずれを防げます。
居住者である個人に原稿料・デザイン料・講演料や、弁護士・税理士などへの一定の報酬を支払うときは、所得税および復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。税率は100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。 出典:国税庁 No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき/国税庁 No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金(対象となる報酬・料金の範囲は所得税法第204条第1項)(最終確認日:2026年8月7日)
業務委託契約書の主な記載項目
ここまでの法令を踏まえると、契約書に何を書くかが決まってきます。トラブルは、書いていなかった項目や、曖昧なまま進めた条件から起きます。まずは全体像を表で押さえ、つまずきやすい項目だけを本文で補足します。
▼ 業務委託契約書の主な記載項目
| 記載項目 | 書くときのポイント |
|---|---|
| 委託業務の内容と範囲 | 何をどこまで任せるか、成果物の定義を具体的に |
| 報酬と支払条件 | 金額・支払期日・支払方法。フリーランス新法や下請法の範囲内か |
| 納品と検収の基準 | 何をもって完了とするか、検収期間はいつまでか |
| 再委託の可否 | 第三者への再委託を認めるか、認める場合の条件 |
| 秘密保持 | 機密情報の範囲と、契約終了後の取り扱い |
| 知的財産権の帰属 | 成果物の権利がどちらに帰属するか |
| 契約解除と損害賠償 | どんな場合に解除できるか、責任の範囲 |
| 契約期間と更新 | 期間・自動更新の有無・更新の手続き |
報酬・支払条件・検収基準の決め方
もめやすいのは報酬と検収です。報酬は金額だけでなく、支払期日と支払条件まで書きます。検収では、何をもって完了とするかの基準が曖昧だと、支払のタイミングがずれてトラブルのもとになります。検収の基準と期間は先に決めておきます。ただしフリーランス新法では、成果物を受け取った日を起算点として60日以内に支払期日を設定する必要があり、検収に日数をかけても支払を後ろ倒しにはできません。準委任なら稼働に対して、請負なら成果物の納品に対して支払う、という違いも反映します。
再委託・秘密保持・知的財産権の取り決め
見落とされがちなのが、成果物の権利の帰属です。とくに制作物や開発物では、著作権が自動的に発注側に移るわけではありません。契約書で帰属を明記しておかないと、あとで利用範囲をめぐって食い違いが起きます。再委託を認めるかどうか、機密情報を契約終了後にどう扱うかも、あわせて定めておきます。
実務でもう一つ注意したいのが印紙税です。請負にあたる業務委託契約書は第2号文書に当たり、契約金額の記載があれば金額に応じた税額(1万円未満は非課税)、契約金額の記載がないものでも1通200円がかかります。「金額を書かなければ印紙は不要」ではない点に注意してください。
一方、営業者どうしで結ぶ基本契約書のうち、売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負に関する複数の取引を継続して行うために作成され、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法、再販売価格のいずれかを定めるものは、第7号文書に当たり1通あたり4,000円がかかります。除かれるのは、契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めのないものだけです。契約期間を書いていない基本契約書は除外されないため、対象になります。
第7号文書にはもう一つ入口があります。名称が代理店契約書でも業務委託契約書でも、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理もしくは媒介の業務、株式の発行もしくは名義書換えの事務を継続して委託するために作成され、委託する業務・事務の範囲または対価の支払方法を定める契約書は、第7号文書に当たります。こちらは当事者が営業者どうしである必要はありません。なお、請負の基本契約書のように第2号文書と第7号文書のどちらにも当たる場合、契約金額の記載があれば第2号文書、契約金額の記載がないものは第7号文書として扱われます。金額を書かない継続的な業務委託基本契約書は、200円ではなく4,000円になる点に注意してください。印紙税の判定は契約書の表題ではなく記載内容で決まります。保守や運用の契約でも一定の結果の実現を約する内容なら請負として第2号文書に、運送に関する内容なら第1号の4文書に当たるなど区分が変わるため、判断に迷うものは所轄の税務署に確認するのが確実です。
なお、契約内容を電磁的記録としてやり取りするなど、紙の文書を作成・交付しない形で締結した場合は、電磁的記録が印紙税法上の「文書」に含まれないため印紙税はかかりません。ただし、電子で送ったあとに紙の原本を別途交付すると、その紙は課税文書になります。電子契約に切り替えれば、印紙代と貼り忘れのリスクをまとめてなくせます。これは、契約書を電子で管理することの副次的なメリットでもあります。
請負に関する契約書は第2号文書として、継続的取引の基本となる契約書は第7号文書として、印紙税の課税文書に定められています。印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。ただし、電子メールで送信した後に現物を別途交付した場合は、課税文書の作成に該当します。 出典:国税庁 請負に関する契約書(第2号文書)/国税庁 継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)/国税庁 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(最終確認日:2026年8月7日)
業務委託の契約管理でよくある失敗と対策
契約管理でつまずく原因は、多くが仕組みの不在にあります。個々の担当者ががんばっても、委託先が増えるほど記憶と手作業では追いつきません。よくある失敗と、その対策を整理します。
▼ 業務委託の契約管理でよくある失敗と対策
| よくある失敗 | 起きる原因 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 契約書の所在が分からない | 保管がフォルダや紙でばらばら | 保管場所を一元化し、誰でもたどれるようにする |
| 更新期限を見落とす | 期限管理が個人のカレンダー頼み | 更新期限を自動で通知する仕組みを持つ |
| 担当者の異動で管理が止まる | 知識と履歴が属人化している | 台帳やシステムで履歴を共有する |
| 偽装請負のリスクに気づけない | 指示の実態を誰も点検していない | 依頼内容を定期的に見直す運用を決める |
| 書面明示ができていない | 法令対応が取引ごとにばらつく | 明示事項をテンプレート化して標準化する |
表を見ると、失敗の多くが同じ根に行き着きます。保管・更新・法令対応を人の注意力に任せている限り、担当者が変わった瞬間に管理は崩れます。 逆に言えば、この3つを仕組みに載せ替えるだけで、失敗の大半は起こりにくくなります。
業務委託の契約管理を効率化する方法
契約管理の効率化は、いきなりシステムを入れる前に、まず契約書を1か所に集めることから始まります。台帳での一元管理でも、更新漏れと所在不明はかなり減らせます。そのうえで、件数が増えて手作業が限界になったら、契約管理システムに載せ替えます。
まずは契約書台帳で一元管理する
最初の一歩は、すべての契約書を一覧できる台帳をつくることです。委託先名、契約期間、更新期限、報酬、保管場所を1行ずつ記録するだけでも、誰がどの契約を管理しているかが見えるようになります。ただし、表計算ソフトの台帳は入力と更新が手作業のため、契約が数百件を超えると、更新のたびに転記漏れや期限の見落としが起きやすくなります。
契約管理システムで属人化と保管リスクを解消する
件数が増えたら、契約管理システムで保管と更新を自動化します。契約書をスキャンして一元管理し、更新期限が近づいたら自動で通知し、閲覧できる人を制限する。これだけで、属人化と紙の保管リスクの多くが解消します。業務委託契約書も、他の契約とまとめて同じ場所で管理できます。
選ぶときは、自社の困りごとに直結する機能から見ると迷いません。紙の契約書が多いならスキャンや原本保管を代行してくれるか、更新漏れが課題なら期限を自動で通知してくれるか、部署をまたぐなら閲覧・編集の権限を細かく設定できるか。この3点が基本の見比べ方です。さらに、2027年4月から適用が始まる新しいリース会計基準のように、契約書の中身を経理が確認しなければならない要件も増えています。契約内容の読み取りまで支援できるかも、あわせて見ておきたいところです。なお、電子データでやり取りした契約書には電子帳簿保存法の保存要件がかかります。契約管理システムに保存する場合は、そのシステムが検索要件などを満たしているかも選定時に確認しておくと安心です。

業務委託契約の管理を効率化するならTOKIUM契約管理
業務委託の契約管理は、管理すべき項目を押さえ、偽装請負にならない線引きを守り、フリーランス新法や下請法などの法令に沿い、契約書の保管と更新を効率化する、という流れで固めていきます。とくに、更新漏れや保管の属人化は、人の注意力ではなく仕組みで防ぐのが確実です。
TOKIUM契約管理は、こうした契約書の管理をまとめて引き受けるクラウドサービスです。紙の契約書は郵送するだけで、原本を傷めないスキャンから保管までを代行してもらえます。原本は1件単位でいつでも取り出せます。AIが取引先名や契約期間、自動更新の有無を読み取って管理台帳を自動でつくり、更新が必要な契約は毎月メールで知らせます。フォルダごとに、ユーザー単位で閲覧や編集の権限を設定できるため、契約書を見られる範囲を必要な担当者に絞り込めます。
TOKIUMシリーズの累計導入企業は3,000社を超え、うち上場企業は300社以上です(2026年5月末時点)。初期費用に月額の基本利用料と契約書の件数に応じた従量課金を組み合わせた料金体系です。 出典:TOKIUM契約管理/TOKIUM 新リース対応(最終確認日:2026年8月7日)
新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)では、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から、借手は原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上することになります(2025年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度からの早期適用も可能。短期リースや少額リースには、適用指針で簡便的な取扱いが設けられています)。なお、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」「同基本要領」によることが認められています。この対応として、契約にリースが含まれる可能性をAIが判定し、根拠となる条文をハイライトする機能もあります。
業務委託契約書も、他の契約書とあわせて1か所で管理できます。契約書から読み取った取引先名や契約期間、自社で設定した任意の項目は、固定資産管理システムなどに直接インポートできる形式でCSV出力できるため、二重入力や転記のミスも減らせます。 出典:企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表(適用時期は第58項)/企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(最終確認日:2026年8月7日)
業務委託の契約管理に関するよくある質問
業務委託の契約管理とは何ですか
業務委託の契約管理とは、外部の個人や企業に仕事を任せるときの契約を、締結・発注・検収・報酬の支払・更新まで抜け漏れなく運用することです。雇用と違って指揮命令ができないため、成果物や業務内容で管理するのが基本になります。
業務委託で時間管理はできますか
指揮命令として勤務時間を管理することはできません。始業や終業の時刻を決めたり、休日や休暇を管理したりすると、実態が雇用とみなされ偽装請負と判断されるおそれがあります。管理するのは時間ではなく、成果物と納期です。
業務委託でやってはいけないことは何ですか
作業の進め方を逐一指示する、勤務時間や休日を管理する、自社の朝礼や勤怠ルールに従わせる、といった雇用と同じ指揮命令が該当します。依頼してよいのは、成果物の仕様や品質、納期までです。
業務委託契約書は何年保管すればよいですか
契約書は取引に関して作成・受領した書類にあたり、法人税法上は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です。青色申告書を提出した事業年度で欠損金(税務上の赤字)が生じた場合は10年間になります。加えて株式会社の場合は、会社法により、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存する必要があります。電子でやり取りした契約書は、電子帳簿保存法の要件に沿って保存します。
帳簿や契約書などの書類は、法人税法上、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です。株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、会計帳簿および事業に関する重要な資料を保存する必要があります。 出典:国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間/会社法 第432条第2項(e-Gov法令検索)(最終確認日:2026年8月7日)
フリーランスに業務委託する場合、発注側は何をすべきですか
従業員を使用しない個人に委託する場合は、フリーランス新法にもとづき、給付の内容や報酬額、支払期日などを書面か電子データで明示します。発注側が従業員を使用している場合(法人では役員が2名以上いる場合を含みます)は、報酬を成果物を受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払う必要があります。

