
ー 御社の事業内容について教えてください
当社は日本テレビホールディングス株式会社の100%子会社として、音楽・映像事業を柱とし、CDやBlu-ray・DVD等、パッケージの企画制作・販売や様々なコンテンツのマルチユース展開(配信や権利ビジネス)を行っています。
「Visual×Audio×Power」-映像と音楽が持つ「力」をあなたの「力」に。-を企業理念とし、『アンパンマン』や『HUNTER×HUNTER』といったアニメ作品から、ドラマ、映画、アーティストマネジメントまで多様なコンテンツを手掛けています。近年はパッケージ販売だけでなく、コンテンツ配信業務にも注力しています。

ー TOKIUMアシスタント導入前に経理部門で感じられていた課題について教えてください
経理の本質は、経営判断に資する財務諸表を迅速かつ正確に作成し、その数値を分析・説明することにあると考えていますが、日々の作業に追われ、コア業務に十分なリソースを割けていないことが課題でした。
特に月次決算においては、当社は第9営業日が締めとなっているのですが、締切ギリギリまで作業がかかることが常態化していました。決算早期化の最大のネックとなっていたのが、「売上確定の遅れ」でした。経理業務は損益計算書の上(売上)から固めていきますが、その売上が第7、第8営業日まで確定しないため、それ以下の費用や利益も固まらず、全体の遅れに繋がっていました。この遅れにより、残業や土曜出勤で何とか間に合わせている状況で、決算数値の分析や経営判断のための時間的余裕がまったくありませんでした。
ー 売上計上業務の具体的な課題は何だったのでしょうか?
その背景には、業界特有の「紙」の文化があります。売上計上の元となる「売上報告書」が紙で届くだけでなく、一度別の部署を経由してから経理に回ってくるプロセスになっていました。担当者の出社状況によっては経理に届くのが遅れることもありました。
さらに、報告書のフォーマットが取引先ごとに異なり、内容の確認に手間がかかる点も課題でした。たとえば、制作委員会から届く売上報告書には、全体の売上や利益が記載されていても、当社の出資比率を確認して、自社の分を算出する必要があります。そのために契約書を参照する必要がありました。契約書は古いポータルサイトにPDFで格納されているものの、検索性が低い状態でした。さらにこれらの作業には、作品や契約に関する知識が必要です。以前は派遣社員に依頼していましたが、担当者が変わるたびにゼロから教え直すという状況により、本来注力したいコア業務の時間を圧迫していました。
また、月末月初にはこうした作業が集中するのですが、月中は逆に手が空くことが多く、無駄が発生することも課題に感じていました。

ー 課題解決のためにTOKIUMアシスタントを選ばれた経緯を教えてください
派遣社員のみでの対応に限界を感じていたため、他の選択肢を探していました。たとえば特定の日に作業を行う派遣サービスも検討しましたが、月中は無駄にならないという点は解消できても、担当者が変われば教育し直す必要があることに変わりがありません。結局、業務を完全に切り離せないという点で根本的な解決には至らないと考えました。
求めていたのは、①業務の属人化からの脱却、②継続性の担保、③プロセスの標準化です。TOKIUMアシスタントであれば、当社の業務プロセスを理解したうえでマニュアルを作成・更新し、専門のチームが継続的に対応してくれるため、これらの要件を満たせると考えました。
多少コストがかかったとしても、「間違わないこと」と「担当者変更による業務引継ぎのリスク」をなくせるメリットはたいへん魅力に感じました。
ー 導入時の感想を教えてください
当初は、正社員ではないので「作品知識がないと難しいのでは」という懸念もありましたが、TOKIUMさんは丁寧な要件定義からはじめてくださり、テスト運用を経て、実際の運用に入ることができました。運用開始後も、イレギュラーな報告書への対応や運用ルールの見直しなど、メールでのやり取りを通じて柔軟にマニュアルを更新していただいています。困ったことにもすぐに対応いただけるので、非常に助かっています。
ー BPO導入にあたり、御社内で取り組んだことはありますか?
「これは外部には出せない」という固定観念を乗り越え、BPO化を実現したことが大きいです。不可能だと思われていた業務プロセスのアウトソーシング化が実現できたのは、TOKIUMさんの協力があってこそです。
また、こうした一見外部に任せるのは難しく見える業務も、TOKIUMアシスタントのように丁寧に要件定義することでアウトソースできたことは、改めて自社の業務プロセスを客観的に見つめ直し、標準化・マニュアル化の重要性を再認識する機会にもなりました。これまでは「口伝」や「背中を見て覚える」といった曖昧な方法で業務が引き継がれることもありましたが、特にAIが普及していく今後は「暗黙知」を「形式知」に変えていく必要性を感じています。

ー TOKIUMアシスタント導入の効果について教えてください
定量的な効果としては、月次決算における売上計上業務の完了が2日間早まりました。以前は第9営業日締切に対して第7~8営業日に完了していましたが、TOKIUMアシスタント導入後は、第6営業日(単月決算時)に完了できるようになりました。これにより、この業務に関する土曜出勤は基本的になくなりました。
月末から起算してマイナス4営業日目からTOKIUMさんに作業を開始してもらい、順次処理を進めてもらうことで、経理担当者は他の優先業務(経費精算や支払処理など)に集中できるようになりました。以前は他の業務が終わる第5営業日以降に売上計上業務に着手せざるを得ませんでしたが、前倒しで並行して進められるようになったことが日数短縮の大きな要因です。
ー 定性的な効果はいかがでしょうか?
決算早期化によって生まれた時間で、数値の分析や連結決算業務に早期に着手できるようになりました。以前は数字を締めるだけで精一杯でしたが、「なぜこの数字なのか」という分析や、取締役への報告準備に時間をかけられるようになり、決算の正確性・信頼性が向上したと感じています。また、連結決算業務の担当も、単体決算を待たずに早期に連結作業に取り掛かれるようになり、会社全体の決算プロセス改善に繋がっています。

ー 今後どのような経理部門を目指したいとお考えでしょうか。展望をお聞かせください。
「経理は経営管理の略である」という考えに基づき、単に数字を作るだけでなく、経営管理に貢献できる部門を目指したいです。そのためには、数字の正確性と迅速性は当然のこととして、その数値を分析し、経営層が次のアクションを起こせるように、分かりやすく説明する能力が重要になります。
今回、TOKIUMアシスタントの導入によって時間的な余裕が生まれたことで、ようやくこうした本来あるべき経理の姿に目を向けられるようになりました。今後は、新リース会計基準への対応や会計システムの入れ替えなど、環境変化への対応も求められます。これらの変化にも的確に対応しつつ、AIなども活用しながら、部員の「視座」を高め、各事業本部長の右腕となり活躍できる人材として育成していきたいと考えています。
決算業務で燃え尽きるのではなく、会社の成長を支えるための戦略的な業務に時間を使える、そんな経理部門を構築していきたいです。
ー 本日は貴重なお話をありがとうございました。
【取材日:2025年10月29日】