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eLTAX(エルタックス)をご存知でしょうか。e-Tax(イータックス)と比べ聞きなれない方もいるかもしれませんが、どちらも電子申告システムのことです。ただ両者は申告できる税金の種類がちがい、e-Taxは国税、eLTAXは地方税を対象としています。
eLTAXは地方法人税や固定資産税を扱う経理部門だけでなく、給与計算の担当者も利用します。eLTAXを使えば従業員の住民税に関する手続や納付が一括ででき非常に便利だからです。
この記事では経理担当として税金納付だけでなく、給与計算担当として特別徴収に携わった経験のある筆者がeLTAXの基本について詳しく解説します。
その前に『電子申告制度』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
eLTAX(エルタックス)とは
eLTAX(エルタックス)とは地方税ポータルシステムのことです。地方税の各種手続につてインターネットを介して電子的に行うことができます。 地方税の申告・申請・納税などの手続は、紙の申告・申請ではそれぞれの地方団体宛に個別に提出しなければなりませんが、地方公共団体が共同で運営するシステムであるeLTAXでは一括処理が可能です。
地方税とは道府県税と市町村税を指します。聞きなれた言葉でいうと県税と市税と言った方がイメージしやすいかもしれません。ちなみに東京23区はまとめて都民税として手続を行います。
eLTAXの利用率は年々向上しており、平成28年度の実績では県税・市税ともに60%がeLTAXを利用した電子申告となっています。
データの調査日以降の平成30年の税制改正で共通電子納税システムが導入され、電子申告した地方税がeLTAXを介して各自治体に一括納付ができるようになりました。利便性が向上していますので、現在の電子申告の利用率は調査時点よりも上がっていると推察します。
eLTAX(エルタックス)のメリット
eLTAXの最大のメリットといえば多数の県や市町村の申告・申請・納税が一括処理できる点です。事業所の拠点が複数ある企業や全国展開している企業では、地方税を各県や市町村に個別に届出する作業は結構な負担です。
広範囲に事業展開していない企業であっても、従業員の住民税に関する手続は住民票のある市町村ごとに行います。従業員がすべて同じ市町村に在住していることは少ないと思いますし、東京23区は区ごとに届出が必要です。住民税に関する届出や納付、退職による変更もeLTAXを利用することができますので業務負担を軽減できるのではいでしょうか。
住民税の特別徴収の手続や納付はeLTAX(エルタックス)でできる?
住民税の特別徴収は従業員が納付すべき住民税を会社が従業員の給与から控除して納付する制度で企業の義務とされています。住民税に関する年間の一連の作業は1月31日までに前年の給与支払報告書を市町村に届け出ることから始まります。
届出は従業員を市町村ごとに振り分け、個人別に支払った賃金を記載する個人別明細表とかがみとなる総括表を作成します。市町村により様式はバラバラですが、会社の様式で提出しても問題ありませんし、明細表を光ディスクのデータとして提出することも可能です。データによる提出も市町村ごとに行わなければならないので、従業員が多い場合は膨大な作業となります。
eLTAXを利用すれば給与支払報告書を電子的に一括提出できます。一元管理されているので、個別の市町村を宛先に設定する必要もありません。eLTAXのシステムが送信されてきたデータを都道府県・市町村などの提出先に振り分けしてくれます。
毎年5月に市町村から送付されてくる住民税の特別徴収通知書(従業員の住民税を通知する書類)もeLTAXから取得できます。日々バラバラ送られてくる通知書を整理して給与計算に反映するよりも事務負担は減少します。また、eLTAXを通して電子的に届出していれば住民税の納付もeLTAXからできます。
eLTAX(エルタックス)で利用可能な手続
eLTAXの利用メリットについて地方法人税と従業員の住民税をあげて説明してきましたが、他にも多くの手続がeLTAXでできます。可能な手続は次のようなものがあります。
引用元:eLTAXで利用可能な手続き
eLTAX(エルタックス)の導入方法
eLTAXでは1つの利用者IDで複数の地方公共団体へ申告などの手続を行うことができます。利用者IDは利用届出(新規)の送信後の画面で発行されます。
1つのIDで複数の地方公共団体の処理をするときはeLTAXの「利用届(新規)」で本店所在地の都道府県など主たる届出先を選択して届出した後に、「利用届(変更)」で他の地方公共団体を提出先として登録して利用します。
利用者IDが取得できれば後は(1)~(6)の手順で進めます。
(1) パソコン環境の準備
インターネットに接続できるパソコン環境でブラウザはInternet Explorer・Edge・safariです。OSはMicrosoft Windows 7以上かMac OS10.12以上の日本語版が推奨されています。
(2) 署名用のプラグインをインストール
電子証明書を使用して署名するために必要なプラグインをパソコンにインストールします。eLTAXサイトにブラウザ別にインストーラがありますのでダブルクリックすれば自動でインストールできます。
(3) e-mailアドレスの準備
登録するe-mailアドレスには「手続完了通知」などが送られてきますので必ず受信できるものを設定しましょう。個人のアドレスですと担当者の変更の手間や、経理・人事の部門間で情報を共有することを考えると会社の代表アドレスや官庁への登録用アドレスを用意した方がよいかもしれません。
(4) 電子証明書の準備
電子証明書は定められた発行機関や認証局が発行する電子的な身分証明書のみが有効です。次のような発行機関があります。
・ 商業登記認証局
・ 申請者の住民票のある市区町村
・ NTTネオメイト
・ 帝国データバンク
・ 日本電子認証
・ 東北インフォメーションシステムズ
・ セコムトラストシステムズ など
電子証明書を発行する発行機関や認証局によっては、ICカードに電子証明書を格納する場合がありカードリーダライタが必要なことがあります。また、MacOSの場合は、「公的個人認証サービス」に基づく電子証明書のみ利用可能です。
(5) eLTAX対応ソフトウェアを取得
対応ソフトウェアはeLTAXが提供する専用のものから市販ソフトウェアまで利用が可能です。専用のソフトウェア「PCdesk」はサイトから取得できます。
Windows(Internet Explorer)でPCdesk(WEB版)を利用する場合はPCdesk(WEB版)のサイトをインターネットオプションの信頼済みサイトへ追加して利用します。
市販の税務・会計ソフトウェアを利用する場合は次のようなものがあります。自社のシステムと互換性のあるものを利用すると二度手間が省けよいのではないでしょうか。
・ TKC電子申告システム
・ JDL電子申告システム
・ ICS電子申告システムⅡ
・ ACELINK NX-Pro電子申告
・ PCA法人税
・ 電子申告顧客R4
・ 電子申告の達人 など
(6) eLTAXサイトへの接続確認
eLTAXポータルセンタへ接続確認する。利用者IDと暗証番号を入力し、「ログインする」ボタンをクリックしてログインできれば利用できます。
eLTAX(エルタックス)を利用した共通納税
共通納税とはネットワークの仕組みを利用しオフィスから地方税の納税手続を電子的に行う方法です。共通納税はすべての地方公共団体へ納税者がインターネット等を利用して一括して電子納税することができます。
共通納税では領収証書は発行されず画面上で納税済みの確認を行います。領収証書が必要な場合は、従来どおりに窓口に納付書を持参して納税を行わなければなりません。
共通納税では金融機関ごとに利用可能な収納方法が異なりますので確認しましょう。ちなみにクレジットカードでの納付はできません。
(1) ダイレクト納付
ダイレクト納付とは、利用者が事前に登録した金融機関口座から、支払い金額を引き落として納税する方法です。ここでは専用ソフト「PCdesk」を使用した場合を例に説明します。
【手順】
1. 口座情報仮登録
納税者は、PCdeskで口座情報を入力(仮登録)します。
2. 口座振替依頼書印刷
口座振替依頼書及び送付先のラベルを印刷し、金融機関に郵送します。
3. 審査結果取得
金融機関による審査後、PCdeskで、審査結果を確認できます。
引用:ダイレクト納付で納税する
(2) ペイジーで納付
Pay-easy(ペイジー)収納サービスを利用して税金を納付できます。ペイジーは収納企業と金融機関をネットワークで結び、ATM、電話、パソコンなどの各種チャネルを利用して支払ができ、即時に消し込み情報が収納企業に通知され納付が完了します。
ペイジーのサイトにも下のようにeLTAXでの納付について表示されています。
(3) インターネットバンキングで納税
金融機関が提供しているインターネットバンキング用のホームページから納税できます。料金払込や納税などのメニューからスタートします。データファイルを取り込む方法や収納番号を入力する方法などがあり、最終的に納付情報確認画面で情報を確認して手続します。
引用:PCdesk(DL版)ガイド|納付情報の確認 P307
まとめ
地方税の手続は届出先が多数になるため郵送であっても負担の大きな仕事です。納付についても年に2度の地方法人税はまだしも、市町村ごとに従業員の住民税を納付する特別徴収の負担は大きなものです。
eLTAXで利用できる市販のソフトウェアも多数ありますので、現状の業務負担が大きければ導入を検討する価値はあるのではないでしょうか。