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会社員(給与所得者)のスーツ代や車は「経費にできる?」と迷ったら、まずは原則と例外(特定支出控除)を切り分けて確認するのが最短です。結論から言うと、会社員(給与所得者)が「スーツ代を個別に必要経費として落とす」のは原則できません。スーツ代は、給与から自動で差し引かれる給与所得控除(みなし経費)の範囲で負担する前提です。
ただし例外として、条件を満たすと特定支出控除(勤務必要経費のうち衣服費など)として控除できる可能性があります。ポイントは「会社の証明書が必要」「基準額(給与所得控除額の1/2)を超える分だけが控除対象」の2点です。
| 項目 | 会社員が“落とせる”か | 結論 | 条件・注意 |
|---|---|---|---|
| スーツ代(購入) | 原則 × | 給与所得控除(みなし経費)の範囲 | 例外:特定支出控除(衣服費)に該当し、会社の証明・領収書等を揃え、基準額を超えた分のみ |
| 車両本体(購入) | 原則 × | 「経費」ではなく資産(購入費そのものは控除対象になりにくい) | 自家用車は私用混在になりやすい。会社精算のルール(旅費規程等)で処理するのが通常 |
| 通勤の交通費 | 多くは会社支給 | 会社が支給(非課税枠あり)のケースが一般的 | 自己負担が残る場合は「通勤費」として特定支出に該当し得る(会社の証明が前提) |
| 出張の交通費・高速代・ガソリン代 | 基本は会社精算 | 会社の旅費として精算するのが筋 | 会社が負担しない“自己負担分”がある場合に限り、特定支出(旅費等)として検討余地 |
なお、経費で落とせるものの一覧については、以下の記事を参考にしてください。
サラリーマンのスーツや車が会社の必要経費になるのか?ならないのか?
まず前提として、会社員(給与所得者)は、事業者のように日常の支出を「必要経費」として個別計上できるわけではありません。スーツ代は原則として給与所得控除(みなし経費)の範囲で負担する扱いです。
また「車」についても、購入費そのものを会社員が個別に経費化するのは一般的ではありません。一方で、通勤・出張などの移動費は、会社の規程に沿って会社精算(旅費・交通費)するのが基本です。会社が負担しない自己負担が残る場合には、特定支出控除の対象になり得るかを整理して判断します。
必要経費になる場合
ここは混同しやすいポイントなので、まず整理します。「会社が負担する制服・作業服(会社の経費)」と、「本人が負担した支出を税金計算で差し引く控除(特定支出控除)」は別物です。例えば、会社が制服や作業服を支給したり、会社負担で購入・クリーニングする場合は、従業員側で「経費にする/確定申告する」という話ではなく、会社のルール(就業規則・福利厚生)に沿って会社側で処理されます。
一方、本人がスーツ代を自腹で負担した場合は、原則として「個別の必要経費」にできません。例外として、職務上必要な支出であることを会社が証明でき、かつ基準額を超えるなどの条件を満たすときに限り、特定支出控除(勤務必要経費のうち衣服費など)として控除できる可能性があります。
経費にならない場合
通常、サラリーマンのスーツは会社の必要経費として認められていないのが現実です。スーツは私用と業務用を客観的に区分しにくく、税務上は「家事関連費(私用混在)」と見なされやすい支出です。そのため、会社員が自腹で買ったスーツ代を個別の必要経費として扱うのは原則難しく、例外として特定支出控除の要件を満たす場合に限り検討します。
特定支出控除制度って何?始めからサラリーマンの必要経費が考慮されている?
サラリーマンの必要経費について、現在の精度はどのようになっているのかを調べてみましたのでご紹介していきます。関連する制度として特定支出控除制度がありますが、まずは予備知識として給与所得控除についてのお話から始めていきます。
サラリーマンの特権!給与所得控除とは?
仕事に関する勉強のための本購入、英語を使う仕事なら英会話教室のレッスン代、接待ゴルフ。会社から習い事やゴルフに行って下さいと言われれば会社経費にもなりますが、自発的に、仕事につなげるために使っているお金は基本自腹です。そういうサラリーマン特有の、間接的に経費になり得るもの、とでも表現した方がわかりやすいでしょうか。そういった費用に一定金額までなら課税されないという制度が給与所得控除です。
収入により控除額は変わりますが、サラリーマンであれば給与所得控除の金額くらいあれば必要経費として足りるでしょう、という金額です。この金額を給与から引いて、税金計算をしているので、控除額分の税金がかかっていない事になります。要は始めからサラリーマンの必要経費が給与から引かれているのです。
この控除額の範囲内でスーツや靴やカバンなど、会社経費にはならないけれど、サラリーマンとして必要になる物を買ってくださいね、という事なんです。これはサラリーマンの方が、お金を使っても使わなくても、税金計算としては控除額を差し引いてから計算するという、とても有り難い制度なんです。
という事は、冒頭の「サラリーマンのスーツは必要経費になるの?」という議題に対しての回答は、給与所得控除で必要経費相当があらかじめ考慮されているため、スーツ代を個別に経費計上する仕組みではありません。給与所得控除額は収入により変わるため、源泉徴収票の「支払金額」を基準に、国税庁No.1410の表で確認するのが確実です。
給与所得控除額は、源泉徴収票の「支払金額」(収入金額)を基準に、国税庁の「給与所得控除(No.1410)」の表で判定します。年末調整済みの源泉徴収票なら、あわせて「給与所得控除後の金額(調整控除後)」欄も確認でき、収入と控除後金額の関係が把握しやすくなります。
特定支出控除制度とは
サラリーマンのスーツは経費になる!という話題に関連する話として、特定支出控除制度の話が出てきます。ただし、特定支出控除は、「スーツ代が戻ってくる制度」ではありません。あくまで、一定の条件を満たした場合に所得から差し引ける控除で、結果として税額が減る仕組みです。適用のカギは、①会社が内容を証明してくれること、②特定支出の合計が基準額(給与所得控除額の1/2)を超えること、の2点です。まずは要件を以下の表で確認してください。
表:特定支出控除の要件
| チェック項目 | ポイント | よくある落とし穴 |
|---|---|---|
| 対象になる支出か | 通勤費/旅費等/転居費/研修費/資格取得費/帰宅旅費/勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など) | 私用混在(家事関連費)に見えると否認されやすい |
| 基準額を超えるか | 特定支出の合計が「給与所得控除額の1/2」を超えた分だけ控除対象 | “支出額全部”が控除されると誤解しやすい |
| 上限(勤務必要経費) | 勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など)は合算で上限がある | 衣服費だけで大きく超えるケースは多くない |
| 会社の証明 | 「特定支出に関する証明書」等、会社の証明が前提 | 会社が証明しないと申告できない |
| 申告手続き | 確定申告で、明細書+証明書+領収書等を添付・提示 | 領収書の不備・紛失で詰まる |
特定支出控除は「支出額が戻る」のではなく、所得から差し引ける額が増えることで税負担が軽くなる仕組みです。まずは、控除対象額と“減る税額の目安”を以下のシミュレーションで確認しましょう。
表:割に合うのか?をシミュレーション
| ステップ | 何を出すか | 計算式(考え方) | ポイント |
|---|---|---|---|
| ① 特定支出の合計 | 特定支出の年間合計 | 通勤費/旅費等/転居費/研修費/資格取得費/帰宅旅費/勤務必要経費(衣服費等)の合計 | 領収書等で説明できる支出だけを集計 |
| ② 基準額 | 基準額(ハードル) | 給与所得控除額 × 1/2 | ここを超えた分だけが控除対象 |
| ③ 控除対象額 | 実際に控除できる金額 | (①特定支出の合計 − ②基準額) のうち、控除できる範囲 | マイナスの場合は0(控除なし) |
| ④ 税額の減り方(目安) | “戻る”のは税額 | ③控除対象額 ×(あなたの限界税率のイメージ) | 支出がそのまま返るわけではない |
モデルケース:特定支出控除はどれくらい得になる?
たとえば、年間の特定支出が30万円、給与所得控除額が80万円だったとします。
- 基準額:80万円 × 1/2 = 40万円
- 控除対象額:30万円 − 40万円 = 0円(基準額に届かないため控除なし)
一方、年間の特定支出が60万円なら、
- 控除対象額:60万円 − 40万円 = 20万円
- 税額の減り方(目安):20万円 ×(所得税・住民税の税率イメージ)
このように、まずは「基準額を超えるか」が分岐点です。超えない場合は、書類準備の負担だけが増えるため、申告前にシミュレーションしておくと安心です。なお、シミュレーションでメリットが見込めても、申告には会社の証明書と領収書等が必須です。次に、手続きで詰まりやすい書類を整理します。
必要書類(確定申告で提出・提示するもの)
特定支出控除を受けるには確定申告が必要で、申告書に「特定支出に関する明細書」と「給与の支払者(またはキャリアコンサルタント)の証明書」を添付します。あわせて、特定支出の支出事実と金額を証する書類(領収書・レシート等)も、申告書に添付または申告時に提示できる状態にしておきます。
- 給与所得者の特定支出に関する明細書(自分で作成して申告書に添付)
- 給与所得者の特定支出に関する証明書(会社に作成してもらい申告書に添付)
- 領収書・レシート等(支出の事実と金額がわかるもの:添付または提示)
ここで詰まりやすいのが「会社の証明書」です。次の段落で、会社に依頼する際のポイントを整理します。
会社の証明書(最大のボトルネック)
特定支出控除は、本人が「仕事で必要だった」と思っていても、会社(給与の支払者)が職務上必要な支出であることを証明できなければ手続きが進みません。申告では「給与所得者の特定支出に関する証明書」を添付する必要があるため、申告直前ではなく、早めに会社へ依頼しましょう。
- 依頼前に整理する:支出の種類(通勤費/旅費等/研修費/資格取得費/勤務必要経費など)と、職務との関連(なぜ必要か)
- 証憑を揃える:領収書・レシート、日付、金額、内容(品目)が確認できる形にする
- 社内ルートを確認する:人事・経理など、証明書の作成担当と、申請の締切
なお、証明書の様式は国税庁のページから確認・入手できます。会社に依頼する際は、該当の様式(PDF)を添付して依頼するとスムーズです。
書類準備の実務チェックリスト:申告前にここまで揃える
特定支出控除は、必要書類が揃っていれば手続き自体はシンプルです。以下のチェックリストを上から順に埋めると、「何を準備すればいいか」が迷わず進められます。
| チェック項目 | やること | 目安(いつ) | 詰まりやすいポイント |
|---|---|---|---|
| ① 対象支出の棚卸し | 通勤費/旅費等/転居費/研修費/資格取得費/帰宅旅費/勤務必要経費(衣服費等)に分類して「年間合計」を出す | まず最初 | 私用混在の支出を混ぜない(説明できるものだけ) |
| ② 証憑(領収書等)の整備 | 日付・金額・内容が分かる形で保管(不足分は再発行/履歴取得を検討) | 棚卸しと同時 | 品目が曖昧なレシートは補足メモを残す |
| ③ 職務との関連メモ | 「なぜ職務上必要か」を1行で書けるようにする(例:会社指定、職務上必須、業務命令等) | 証明書依頼前 | “便利だった”は弱い。会社が証明しやすい根拠に寄せる |
| ④ 会社へ証明書を依頼 | 国税庁の様式(証明書)を添付して、人事/経理へ依頼。社内締切も確認 | 申告の1〜2か月前 | 担当部署が不明だと止まりやすい。早めにルート確定 |
| ⑤ 明細書の作成 | 特定支出の内訳・金額を「特定支出に関する明細書」に整理 | 証憑が揃ったら | 分類がズレると差し戻しになりやすい |
| ⑥ 基準額を超えるか試算 | 給与所得控除額を把握し、基準額(控除額の1/2)と比較して「控除対象額」を確定 | 明細書作成時 | 基準額未満なら控除なし(準備コストだけ増える) |
| ⑦ 確定申告の提出物を最終確認 | 申告書に「明細書」「会社の証明書」を添付し、領収書等は添付または提示できる状態にする | 提出直前 | 添付漏れ・証明書未回収が一番多い |
上の①〜⑦が揃えば、特定支出控除の申告に必要な材料は一通り整います。次は、スーツ代(衣服費)など「勤務必要経費」がどこまで認められやすいか、具体例で線引きを確認しておくと安心です。
参考文献:No.1410 給与所得控除/国税庁
参考文献:No.1415 給与所得者の特定支出控除/国税庁
そもそも経費とは?節税とは?根本から見直してみよう
今回は必要経費になるかならないかを解説しましたが、そもそも必要経費とは会社の経営上、売上を上げるために必要になる支払の事です。給料を始めとした交通費、交際費、消耗品費、通信費など、簿記上の費用扱いに分類されます。
サラリーマンの必要経費とは
先程、給与所得控除の中で、サラリーマンの必要経費はすでに考慮されているというお話しをしましたが、そもそもサラリーマンの必要経費とは何なのでしょう?
仕事に関連する書籍代、仕事で必要な語学のレッスン代、忘年会や新年会を始めとした会社の飲み会の参加費、休日の接待ゴルフなど。毎年、全てのスーツや靴やカバンを買い替える必要はないと思いますし、年収が300万円の人でも108万円の給与所得控除があるわけですから、サラリーマンの必要経費としては十分なのではないでしょうか?
逆に給与所得控除以上の自腹を切って経費を払っているのであれば、会社に請求できる領収書があるかどうかの見直しや、支払っている経費が本当に必要なものなのかどうかの見直しをした方がいいような気がします。どのみち、サラリーマンの経費として特定支出控除制度を利用し確定申告をするのであれば、会社からの証明が必要になる訳ですから、会社が証明できるものであれば会社経費にできる物もあると考えるのが普通でしょう。
特定支出控除制度を利用し、確定申告で申請したところで、何パーセントかの節税になるかもしれないものに比べ、会社経費扱いされれば100%戻ってきますから、どちらが得なのかと考えると、後者ですよね。
節税とは
節税とはその名の通り、税金を節約する事ですね。税金は会社であれば利益に、サラリーマンであれば所得に対して税率をかけ、算出します。サラリーマンの節税に焦点を当てて考えてみると、給与-給与所得控除-その他の所得控除=課税所得となり、課税所得に税率をかけて所得税が計算されます。という事は課税所得が少なくなれば、所得税も少なくなり、節税になるという方程式が成り立ちます。
そして、給与所得控除は個人的に金額は変えられませんので、節税にアプローチできるところはその他の所得控除という事になります。そこで、今回の記事でご紹介している特定支出控除制度がサラリーマンの節税につながるでしょうか?
給与所得控除の半分の金額を超える範囲で、自腹で必要経費を支払い、会社からも証明をもらえて尚且つ、確定申告もきちんとやるというのであれば、確かに課税所得は減りますので結果いくらかの節税になるでしょう。しかし使った出費の方がはるかに痛いはずです。
それならば特定支出控除制度ではなく、別の節税対策に目を向けるか、給与所得控除の金額内で、できるだけお金を使わない方がよっぽどいいのではないかと思います。サラリーマンは始めから給与所得控除で節税状態になっている訳ですから、有り難くあやかっちゃいましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社員でもスーツ代を「経費」として落とせますか?
A. 原則として落とせません。会社員(給与所得者)は、給与から一定額を差し引く「給与所得控除(みなし経費)」があるため、スーツ代を個別の必要経費として計上するのは基本的にできません。例外として、条件を満たす場合に限り「特定支出控除」の対象になり得ます。
Q. 特定支出控除を使うには何が必要ですか?
A. 主に、①会社が支出内容を証明する書類(証明書)、②支出を証明する領収書等、③確定申告で提出する明細書が必要です。あわせて、特定支出の合計が「基準額(給与所得控除額の1/2)」を超えた分だけが控除対象になる点も押さえておきましょう。
Q. スーツ代が「戻ってくる」制度ですか?
A. 支出額がそのまま戻る制度ではありません。特定支出控除は「所得から差し引ける控除」が増えることで、結果として所得税・住民税が減る仕組みです。
Q. クリーニング代も対象になりますか?
A. ケースによります。一般的なスーツのクリーニングは私用と区別しにくく、原則として個別の経費化は難しい考え方になります。特定支出控除として扱うには、職務上必要な支出であることを会社が証明できるか、支出を客観的に説明できるかがポイントです。
Q. 車の購入費やガソリン代は会社員の経費になりますか?
A. 会社員が車の購入費を個別に経費化するのは一般的ではありません。通勤・出張などの移動費は会社の規程に沿って会社精算(交通費・旅費など)するのが基本です。会社が負担しない自己負担が残る場合に限り、特定支出(通勤費・旅費等)として検討余地があります。
Q. 特定支出控除は年末調整でできますか?
A. 年末調整ではできず、原則として確定申告が必要です。必要書類をそろえて申告します。
まとめ
会社員(給与所得者)が、スーツ代や車の購入費を「個別の必要経費」として落とすのは原則できません。会社員には給与所得控除(みなし経費)があるため、スーツや仕事用の身だしなみ費用は、基本的にその範囲で負担する前提です。
ただし例外として、条件を満たすと「特定支出控除」として控除できる可能性があります。ポイントは①会社(給与の支払者)の証明書が必要、②特定支出の合計が基準額(給与所得控除額の1/2)を超えた“超過分”だけが控除対象、の2点です。
車についても、購入費を会社員が個別に経費化するのは一般的ではなく、通勤・出張などの移動費は会社の規程に沿って会社精算するのが基本です。自己負担が残る場合に限り、特定支出(通勤費・旅費等)として検討余地があります。まずはシミュレーションで「基準額を超えるか」を確認し、メリットが見込める年だけ、会社の証明書と領収書等を揃えて確定申告を行うのが現実的です。




