— 御社の事業内容について教えてください。
山口県山口市に本拠を置き、日本で初めて農業の会社として株式上場した企業です。農業生産から加工、販売、さらにレシピの提案まで一貫して提供しており、自社生産の鶏肉を中心に、有機野菜や無農薬野菜などの生鮮品、無添加の食材や加工食品などを扱っています。生協向けの卸売に加えて、一般のお客さまへの宅配事業があります。特に鶏肉については雛から育て、製品に加工していることが当社の大きな特徴です。また、カタログから商品を選ぶ宅配事業では、生鮮品を通年販売しているため、四季を通して日本全国から厳選した野菜などを仕入れています。卵の販売から始まった事業も「こういうものが食べたい」というお客さまの声にお応えするうちに、鶏肉や牛肉、豚肉、牛乳や乳製品、生鮮品へと拡大していきました。
— TOKIUM導入前に感じられていた課題について教えてください。
まず全体感として、属人的な業務に限界が生じていたことです。それまで10年以上のキャリアを持つ3人の社員が、各々担当する経理業務を「職人技」のようにこなしていました。それぞれの社員は、各自専門的な業務を抱えていたので、情報の共有やアップデート、業務の平準化がしきれていませんでした。
そんな中、3人のうち1人のベテラン社員が退職することになり、アナログで属人的な体制で業務を続けていくのが一気に難しくなったのです。
また、個別の課題として、経費精算と請求処理においてそれぞれ改善が必要でした。主な課題は次の3つです。
1つ目は、経費精算における小口の現金管理です。小口現金は手提げ金庫で保管し、各部署から提出されたレシート貼付済みのExcelの紙を目視で確認したうえで現金を渡していました。毎回対応に手間がかかり、他の業務の手も止まる状態でしたし、1円単位での精算が必要で、金額が合わないと大変でした。また、今思うと、セキュリティの面でもリスクがあったと感じます。
さらに、複雑な条件に基づいて支払われる日当の計算も手作業で行われていたため、社員の負担になっていました。
2つ目は当社特有の事業を背景とした煩雑な請求処理です。当社のサプライチェーンネットワークは、そだてる(生産)、つくる(加工)、たべる(消費)と多岐にわたり、取引先も大手から中小企業まで幅広く存在します。そのため、受領する請求書の様式も紙や電子、手書きのものなど様々で、経理処理が煩雑になっていました。
また、請求書の件数が多く、手作業による負担が大きかったです。以前の運用方法では、請求書が届くと経理部門で開封し、部署ごとに仕分ける作業を行っていました。ピーク時には、この開封作業と仕分け作業だけで1日2時間以上かかることもありました。
仕分け作業が終わった請求書は、各部門の担当者が事務所に取りに来る仕組みでした。その後、担当者は販売・在庫管理システムに請求書のデータを入力した上で、部門長に承認を申請します。承認後、経理部門に回され、経理担当者が内容を確認し、会計ソフトに入力していました。この一連の作業では、「請求書がどこに行ったのか分からない」という問題や、データが紛失するリスクが発生していました。
処理を間に合わせるために、工場勤務の担当者の机の上に放置された請求書を探しに行くこともあり、物理的に時間を要していましたね。
3つ目は属人的な支払い処理による非効率な業務が課題となっていました。当社で導入している販売管理システムでは、支払い処理まで自動で対応できず、毎月約400〜450件に及ぶ請求金額を都度インターネットバンキングに手作業で入力していました。データの加工や集計など属人的な作業が多く、効率面・人員面ともに限界を感じていました。
— TOKIUM導入の具体的な背景について教えてください。
属人的な仕組みからの脱却が不可欠な待ったなしの状況でした。これには3つの背景がありました。
1つ目は先の課題でもお伝えしたように属人的で紙ベースの業務処理からの脱却です。当時、全社的にペーパーレス化のプロジェクトが進んでいたこともTOKIUM導入の後押しになりました。
2つ目は人手不足と業務量の増加によるアンバランスの発生です。ベテラン社員の退職だけではなく、子会社や他部署で分散して行われていた請求データの入力作業が、担い手の減少によって経理課のもとに集中するようになりました。また新たに採用した社員についてもITリテラシーにばらつきがあるなど、個人の能力に依存するということに限界を感じていました。加えて新規採用も難しく、特に地方では人材を集めることが困難という状況も影響していました。
3つ目は法改正への対応です。2023年の電子帳簿保存法の改正とインボイス制度への対応については「自社だけではとてもではないが対応しきれない」という危機感がありました。
こうした背景から「これまでの対応をかなぐり捨てるほど」の覚悟が必要だと思いました。人手による対応を抜本的に見直し、システムの導入やBPO(業務プロセスのアウトソーシング)も選択肢に入れなければ業務の継続が難しいという結論に至ったのです。
—「TOKIUM経費精算」を選定した決め手を教えてください。
最大の決め手は料金体系です。他社のシステムがアカウント数の料金設定に対し、「TOKIUM経費精算」は領収書の枚数に応じた従量課金だった点です。これであれば「社内に展開しやすい」と考え、導入のハードルが下がりました。さらに出張の日当計算も当社の規程通りに自動計算できる点や、勘定科目も自動で紐づくので申請者や承認者、入力者の手間も削減でき、生産性の向上もポイントになりました。
— 続いて、「TOKIUMインボイス」を選定した決め手についてはいかがでしょうか。
すでに「TOKIUM経費精算」を利用していた実績や、マスター設定を活かせることに加えて、TOKIUMさんはシステムだけでなく、人による丁寧なサポートがあることが決め手になりましたね。AIや自動化だけでなく、担当者が伴走して柔軟に対応してくれる点に安心感があり、単なるツールではなく、チームの一員のように信頼できるパートナーだと感じたからです。
— TOKIUMの導入サポートに対する感想を教えていただけますか。
TOKIUMさんの導入サポートは構造化されており、マニュアルも充実していてわかりやすかったですし、特に導入後においては、TOKIUMさんの請求書受領チームの丁寧なサポートには助けられています。ユーザーに伴走するTOKIUMイズムとも思われるTOKIUMさんの成長志向の企業姿勢には大変共感しました。
例えば、システムの改修をお願いした際、「今はできないけれど、必ず実現させます」と誠実に対応してくれたことに信頼感を持ちました。できないことを突き放すのではなく、今できること・できないことを見極めてきちんと説明し、真摯に向き合う姿勢から、TOKIUMさんの成長への意欲と「一歩ずつ前に進もう」とする気概が伝わってきました。「完璧でなくても前に進めていこう」という姿勢に共感したんです。
経費精算の導入を進める上で、「TOKIUMさんと一緒に少しずつでも前進していこう」という気持ちになれたのは、そうした姿勢やスタンスが伝わってきたからです。
— TOKIUMのスムーズな導入のため、御社内で取り組んだことがあれば教えてください。
まずは「TOKIUM経費精算の導入」を「決断」したことですね。何事も新しい取り組みには周囲の抵抗がありますが、「決断」こそが、新しいプロセスの受け入れにつながるのではないでしょうか。
一方で、新しい仕組みを導入したとしても、定着には時間がかかるのも事実です。都度精算だった経費精算を特定日にまとめることは社員個人のキャッシュフローにも影響するため、仮払金やクレジットカード連携機能を活用するなどの工夫をしながら利用の促進を図っています。また、出張などで経費精算の利用頻度が高い営業職はTOKIUMを使いこなしていく一方で、利用頻度が少ない社員は使い方を忘れてしまいがちです。そのため、利用方法のYoutubeで動画を作成し、社内の誰でも見られるようにしています。動画の作成は、経理課においても利用方法を整理することにつながりました。
—「TOKIUM経費精算」と「TOKIUMインボイス」の導入効果について教えてください。
最大の効果は経理業務のDXを実現できたことですね。当社のDXの前例と実績ができたので、これからは経理業務に限らず、「他の業務においても当社でデジタル化を進める糸口になるのでは」という自信につながったのではと考えています。
—「TOKIUM経費精算」の導入効果について教えていただけますか。
まず、経費精算の手間と時間を削減することができました。これまでの出張経費の精算では申請書作成、印刷、領収書貼付といった手間と時間が必要でした。しかし、現在ではスマホの画面から経費精算を行えるため、出張先のホテルや空港での待ち時間などを活用して場所や時間にとらわれず申請を行えるようになりました。さらに交通系ICカードの使用履歴も自動読み取りもできるため「便利になった」との声を聞くことが多いですね。
—「TOKIUMインボイス」の導入効果について教えていただけますか。
TOKIUMインボイスによる請求書の処理件数が増加し、利用が浸透しています。2025年1月に導入してから、2カ月が経ちましたが、初月は240件、2カ月目は310件と処理件数は順調に増えています。当社の請求書の処理件数は、紙ベースの対応も含めて1か月あたり約450件ですが、過半数から約7割程度がTOKIUMインボイスによって対応されるようになりました。これまで紙ベースでの請求書への押印のためだけに事務所に立ち寄るというようなケースもありましたが、スマホ画面からも承認ができるようになったことにより、“押印のための出社”もなくなったのは、デジタル化による大きな効果ですね。
また、経理部門とユーザー部門の共通の意見として「スキマ時間を有効活用できるようになった」というメリットを感じています。
逐次処理ができなかったことによる待ち時間が解消し、業務のリードタイム(所要時間)が削減されたことを実感しています。TOKIUMインボイスの導入前は、請求書の承認作業はバッチ処理で行っていました。そのため、無駄な待ち時間が発生していたのです。例えば、申請者が1日に30件の請求書の処理を申請した場合、データ入力が完了し、関係部門の回覧が終わるまで、承認者は、承認作業を行うことができませんでした。
しかし、TOKIUMインボイスの導入後は申請者が入力・申請を終えた段階で、その都度、確認・承認作業を行えるようになりました。さらに、経理課でも人手に頼る作業を効率化できました。例えば、取引先から送付された請求書の封筒の開封や仕分け、綴じ込み作業、押印作業など、アナログな作業がデジタル化されました。無駄な時間の筆頭のような迷子の請求書を探すことも減りましたね。可視化が難しく「チリも積もれば山となる」ような細かい作業をDX化できたことに加え、明細入力データの共有や支払い処理の効率化が実現しました。支払い処理を銀行のシステムと連携できるのは驚きましたね。
— 今後どのような経理課を目指したいとお考えでしょうか。展望をお聞かせください。
会社の「要」としての役割を果たしていきたいと考えています。経理課には、財務諸表等を作成するため、さまざまな情報が集まります。こうしたデータを有効に活用し、会社の発展や成長をサポートするような仕事に注力していきたいですね。今回、TOKIUM経費精算とTOKIUMインボイスを導入し、業務の切り分けが実現しました。ルーチンの業務や単純な業務を外出しすることで、時間や気持ちの余白が生まれました。
さらに経理DXによって生まれた変化や働き方を社内に広めていきたいと考えています。「If you want to go fast, go alone . If you want to go far, go together」というアフリカの諺があります。「早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」という意味ですが、経理課メンバーや関わる社員全員が、TOKIUM経費精算やTOKIUMインボイスの仕組みを理解することで、共通認識を持って業務効率化や生産性の向上を進めたいと思います。そして効率化によって新たに生まれた余白を、より価値を生み出す業務に活かしていきたいですね。
— 本日は貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。
【取材日:2025年3月】