仕訳FAQ

労働保険料の勘定科目は法定福利費!難易度別に仕訳例も解説! 

更新日:2023.06.14

この記事は約 4 分で読めます。

労働保険料とは、雇用保険と労災保険に対して支払うお金のこと。
✅ 労働保険とは

  • 雇用保険:雇用安定や就労促進を目的にした保険。会社と従業員が負担
  • 労災保険:勤務中のケガなどに備える保険。全額会社が負担

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労働保険料は雇用保険の一部を従業員が負担するので、少しわかりにくくなっています。
労働保険料の仕訳で最もシンプルなのは、以下のように全額を法定福利費で処理する方法です。
労働保険料の仕訳の例
【概算保険料を納付した時の仕訳】

借方貸方
法定福利費60,000預金60,000

【給与の支払い時の仕訳】

借方貸方
給料XX預金XX
法定福利費2,000

【確定保険料を納付した時の仕訳】

借方貸方
法定福利費30,000預金30,000

上記はシンプルでわかりやすい仕訳ですが、一部税務上の問題があります。
そこでこの記事では、上記を含めてよく使われている仕訳の方法を難易度別に3パターン紹介します。
「社会保険料って何?」という人向けに一から解説しています。
筆者は上場企業で法定福利費の仕訳を実際に行っていました。参考にしてみてくださいね。

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労働保険料とは?【社会保険についておさらい】


労働保険料の仕訳を理解しやすくするために、労働保険の概要をおさらいしましょう。

労働保険とは【社会保険の概要】

労働保険とは、雇用保険と労災保険を合わせた呼び方で、社会保険の一部です。

医療保険狭義の社会保険広義の社会保険
年金保険
介護保険
雇用保険労働保険
労災保険

紛らわしいですが「社会保険」というと、労働保険を含めた5つの社会保険を指す「広義の社会保険」を指すときと、年金保険など3つだけを指す「狭義の社会保険」を指すときがあります。
頭の片隅に入れておきましょう。
この記事で扱うのは雇用保険労災保険です。内容を簡単に紹介します。

雇用保険とは:会社と従業員双方で負担

雇用保険とは失業した際に失業手当を受け取れるなど、雇用安定や就労促進を目的にした保険です。
費用は会社と従業員の双方が負担します。従業員が払うべき雇用保険料は、会社が給与から天引きして会社が納付します。

労災保険料:全額を会社が負担

労災保険の費用は全額会社が負担しています。
勤務中や通勤中のケガなどの際に手当を受け取れる保険です。

労働保険料の納付と損金算入

労働保険料は4/1~翌3/31までを計算期間として、毎年6/1~7/10に申告と納付をします。これを年度更新といいます。
労働保険の年度更新

  • 概算保険料:その年の4/1~翌3/31の金額を申告
  • 確定保険料:前年4/1~その年の3/31の確定保険料を前年の概算保険料と差額精算

労働保険料の納付期限は7/10が原則ですが、40万円以上の場合は7/10、10/31、1/31の3回に分けて納付することも認められています。
労働保険料の損金算入の時期は申告書を提出した日もしくは納付した日とされています。

概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額は当該概算保険料に係る同法第15条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第3項に規定する決定に係る金額については、その決定のあった日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。

引用:国税庁「労働保険料の損金算入の時期等9-3-3

これらのことを踏まえて、仕訳をみていきましょう。

労働保険料の仕訳と勘定科目【難易度別に3パターン】


労働保険料の勘定科目は、「法定福利費」に計上するのが基本です。租税公課ではないので注意。
法定福利費の勘定科目は、労働保険料のほか年金保険料、健康保険料などの支払いなど社会保険料の支払いで使います。
労働保険料の仕訳は、従業員負担と会社負担があること、概算保険料と確定保険料の納付があることなどから少しわかりにくくなっています。
労働保険料の仕訳の方法は色々ありますが、よく利用されているものを難易度が簡単な順に3パターンを紹介していきます。

労働保険料の仕訳①最も簡単で中小企業で一般的に使われる方法

労働保険料の納付の時点で法定福利費に計上する、もっともシンプルでわかりやすい仕訳です。
厳密にいえば税務上は正しくない点もありますが、中小企業など小規模法人において一般的に使われている仕訳です。
従業員数が多くない企業であれば税務上の指摘事項になることも考えにくいので、この方法での仕訳で十分といえます。

【労働保険料の仕訳例①】

  • 概算保険料:60,000円(うち従業員負担20,000円)
  • 確定保険料:90,000円(うち従業員負担24,000円)

概算保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
法定福利費60,000預金60,000

支払った概算保険料をすべて法定福利費に計上します。

給与の支払い時の仕訳

借方貸方
給料XX預金XX
法定福利費2,000

毎月の給与の支払い時点で、従業員が本来負担する雇用保険料を法定福利費のマイナスとして計上します。

確定保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
法定福利費30,000預金30,000

確定保険料が概算保険料よりも少ない場合には貸借が逆になります。

確定保険料の納付額の全額を法定福利費に計上します。この仕訳方法は、勘定科目が「法定福利費」のみなのでいちばんわかりやすいです。
ただし、問題点があります。
その問題点とは、本来は従業員が負担するはずで損金にならない法定福利費が損金に過大計上されてしまうこと。
厳密にいえば税務上正しくありません。
ただ、従業員が少ない場合には金額的な影響も少ないので、経理処理の手間と照らし合わせてこの仕訳方法を選ぶ会社も多いです。

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労働保険料の仕訳②税務上の問題がない方法

従業員が負担する雇用保険料を「立替金」で仕訳する方法です。
先ほど述べた国税庁が提示している損金算入の方法に従っていて税務上問題がない仕訳になります。

概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額~略~申告書を提出した日~略~又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。

引用:国税庁「労働保険料の損金算入の時期等9-3-3

仕訳を見ていきましょう。先ほどと同じ前提です。

【労働保険料の仕訳例②】

  • 概算保険料:60,000円(うち従業員負担20,000円)
  • 確定保険料:90,000円(うち従業員負担24,000円)

概算保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
法定福利費40,000預金60,000
立替金20,000

従業員が負担する分の労働保険料を立替金で処理します。
国税庁が、「被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし」と述べている部分ですね。

給与の支払い時の仕訳

借方貸方
給料XX預金XX
立替金20,000

毎月の給与の支払い時に、従業員負担の労働保険料は立替金と相殺します。

確定保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
法定福利費26,000預金30,000
立替金4,000

確定保険料を納付した金額には、従業員が負担する労働保険料が含まれています。
従業員の毎月の給与支払いの際に発生していた立替金と相殺します。
なお、確定保険料が概算保険料よりも少ない場合には貸借が逆になります。

上記の仕訳は、本来は従業員が負担すべき労働保険料を「立替金」として処理しているので、税務上は問題ありません。
ただし、概算保険料の納付の時にすべて「法定福利費」で処理すると本来は支払った日よりも先の分の保険料もいっぺんに支払い時に費用処理されてしまうことになります。
上場企業など従業員数が多い企業であれば、労働保険料の支払い月に法定福利費が大きくなり、正しい経営判断の妨げにもなりえます。
そこで、費用の発生を標準化する仕訳の方法が以下の③になります。

労働保険料の仕訳③上場企業などで使われる方法

前払費用を使って費用の発生を毎月標準化する仕訳の方法です。
仕訳が煩雑になりますが、従業員数が多く法定福利費を支払い時に一度に計上すると影響が大きい企業、月次決算を正確に把握したい企業がこの仕訳方法を選択しています。

【労働保険料の仕訳例③】

  • 概算保険料:60,000円(うち従業員負担20,000円)
  • 確定保険料:90,000円(うち従業員負担24,000円)

概算保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
前払費用40,000預金60,000
立替金20,000

概算保険料の納付の仕訳では、会社負担分を前払費用、従業員負担分を立替金に計上します。

給与の支払い時の仕訳

借方貸方
法定福利費5,500前払費用5,500

実際に発生した労働保険料の分だけ、前払費用を取り崩して法定福利費を発生させます。

借方貸方
給料XX預金XX
立替金20,000

従業員が負担する労働保険料は、概算納付の時に発生した立替金と相殺します。

確定保険料を納付した時の仕訳

借方貸方
未払費用26,000預金30,000
立替金4,000

確定保険料が概算保険料を上回った場合の仕訳です。
概算納付のときに発生した前払費用・立替金の残高が足りなくなったときには、未払費用・預り金の勘定科目で処理して上記の仕訳で相殺されることになります。
概算保険料が確定保険料よりも多かった場合は、次期の概算保険料に充てることができるので仕訳は不要です。
還付を選択する場合は以下の仕訳が発生します。

概算保険料>確定保険料で還付を選択した時の仕訳

借方貸方
未収入金XXX前払費用XXX
立替金XXX

概算保険料の納付時には前払費用として資産計上し、毎月法定福利費に振り替えることでいっぺんに費用が発生せずに標準化できます。

勘定科目の仕訳ミスを減らすには?

ここまでで、労働保険料の勘定科目や仕訳について解説してきました。この労働保険料に関わらず、お金の動きがある際には必ず正しく勘定科目を選択する必要があります。しかし、たとえ経理が勘定科目についてを理解していても、もしも経費精算をする際に「従業員は勘定科目を把握しておらず、申請された経費は毎回修正が必要...」なんてことがあれば、非常に手間が発生します。

近年多くの企業では、経費精算システムを使って勘定科目の設定が簡略化されています。申請から承認までをスマートフォンで完結できる「TOKIUM経費精算」では、勘定科目を従業員が理解しやすい言葉に置き換えて設定することができます。

従業員はわかりやすくなった科目名を選んで申請できるため、経理担当者の確認時において勘定科目の訂正が不要になります。また、会計システムにデータを連携する際には、正規の勘定科目名やコード情報を出力できるので、データの加工や修正に手間がかからない点も安心です。

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労働保険料の仕訳|まとめ

労働保険料の仕訳を3パターン紹介しました。
労働保険料の勘定科目は、発生時にほかの勘定科目を挟むとしても最終的には「法定福利費」になります。
法定福利費が決算に与える影響と経理の事務の手間を考えて、どのような処理をするのか選択するようにしましょう。

また、記事内で紹介した「TOKIUM経費精算」で「勘定科目の選択ミスを防ぎたい」「経費精算を効率化したい」という方は、下記のリンクからサービス資料をご覧ください。

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