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タイムスタンプとは?経理必見の電子署名との違いや仕組みを解説

更新日:2024.12.23

この記事は約 6 分で読めます。

タイム_スタンプ_とは

2022年1月に改正された電子帳簿保存法により、2024年1月から一定の条件を満たせば電子書類に必ずしもタイムスタンプを付与する必要がなくなりました。

しかし、場合によってはタイムスタンプを付与しない方が、業務が非効率になるケースがあります。そのため、現在においてもタイムスタンプに関する知識を把握しておくことが重要です。

→ダウンロード:タイムスタンプによる電子化マニュアル

この記事ではタイムスタンプの概要や仕組み、電子署名との違い、利用のメリット、付与の方法などをわかりやすくお伝えします。経理担当者はぜひ参考にして下さい。

タイムスタンプとは何か

タイムスタンプとは、契約書や納品書などの電子データに付与されるものであり、付与した時間に電子データが存在していたこと、それ以降に改ざんされていないことを証明する技術です。

電子データは紙の書類とは異なり、複製が簡単にできてしまうため、複製や改ざんによる悪用を防止するためにタイムスタンプが付与されます。

タイムスタンプの正確性を担保しているのは、TSA(Time-Stamping Authority:時刻認証業務認定事業者)の存在です。自社と取引先に関連のない第三者機関のTSAがタイムスタンプを発行することで、複製・改ざんリスクの低減を実現します。

電子署名との違い

タイムスタンプと混同されやすい技術に電子署名が挙げられます。電子署名とは、電子データに付する電子的な署名・サインです。

電子署名はタイムスタンプと異なり、第三者機関が付与するのではなく電子データの作成者が付与します。また、タイムスタンプが電子データの存在と非改ざん性を証明するのに対し、電子署名は電子データの真正性を証明する点も大きな違いです。

電子署名は作成した電子データが間違いではないこと、何かしらの契約が成立したことを証明するために付与します。これは紙の書類におけるサインや印鑑と同じ役割です。

タイムスタンプのように存在や非改ざん性を証明するものではなく、電子署名だけで複製や改ざんリスクを低減させられるわけではありません。電子署名とタイムスタンプの双方を付与することで、電子データの真正性と存在証明、非改ざん性を実現します。

電子署名を付与したファイルを交換することで行う契約書の電子化について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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タイムスタンプの仕組み

タイムスタンプはどのような仕組みで発行されるのでしょうか。ここでは、タイムスタンプの付与に欠かせないハッシュ値の仕組みや発行する手順、利用のメリット、タイムスタンプの付与が必要な書類について解説します。

ハッシュ値とは

タイムスタンプの仕組みを知るにはハッシュ値の理解が欠かせません。ハッシュ値とは、あるデータから特定のアルゴリズムによって生成される不規則な文字列です。

ハッシュ値は、原本を書き替えると必ずハッシュ値が変わる「非衝突性」、ハッシュ値から原本を再現できない「不可逆性」という特徴をもっています。

例えば「1」というデータを入力すると「823」が返ってくる、「2」を入れると「148」が返ってくるといった形で、不規則に文字列が変換されます。そして、入れる側からすると何が返ってくるか分からず、返ってきたものが元に戻ることもありません。

ただし、この場合であれば「1」を入れれば必ず「823」が返ってきます。実際はより複雑な文字列となるため、外部から値を複製したり改ざんしたりすることはできず、データの真実性が守られます。これが非衝突性・不可逆性であり、ハッシュ値の仕組みです。

このような特徴により「TSAからタイムスタンプが発行された際のハッシュ値」と「元のデータから求められたハッシュ値」を比較し、原本の変更有無を確認します。

タイムスタンプを使えばこのハッシュ値と時刻情報の組み合わせによって、電子データの真正性の担保が可能です。

タイムスタンプの発行手順

タイムスタンプは「要求」「付与」「検証」と3つの段階を経て発行されます。具体的な流れは次の通りです。

  • 要求

作成した電子データを保管する際、TSAにハッシュ値を送付してタイムスタンプの発行を要求しましょう。

  • 付与

TSAはデータの作成者からハッシュ値を受領すると、ハッシュ値に時刻情報を紐づけたタイムスタンプトークンを付与して作成者に戻します。作成者は受領したタイムスタンプトークン、そして電子データの原本を併せて保存します。なお、この時点ではまだタイムスタンプトークンにカギがかかっている状態です。

  • 検証

電子データが原本であることを証明するためには、作成者と取引相手がTSAからタイムスタンプトークンのカギを受け取った後、電子データとのハッシュ値を照合します。情報が合致していれば、電子データはタイムスタンプが発行されてから改ざんされていないことの証明となります。

タイムスタンプのメリット

電子データにタイムスタンプを付与することで得られる、主なメリットは次の通りです。

  • 電子帳簿保存法やe-文書法に対応できる

国税関係書類や取引関係書類などを対象とした電子帳簿保存法、会社法や商法に基づく民間企業の法定保存文書を対象としたe-文書法などの、電子データ保存を認める法律に対応できます。

以下の記事で、電子帳簿保存法の導入メリットや手順を詳しく解説していますので参考にしてください。

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  • 電子データの有効期限を長期化できる

タイムスタンプが付与された電子データは電子署名だけの電子データに比べ、有効期限の長期化が可能です。通常、電子署名だけの電子データの有効期限は1年程度から最長でも5年のため、この期間を過ぎてしまうと電子データの有効性を判断できなくなります。

しかし、電子署名とタイムスタンプが付与された電子データは、安全性と信頼性の担保に加え、完全性を確保できるため、有効期限は最長で10年まで延長可能です。

そして、有効期限内に改めてタイムスタンプを付与すれば、さらに10年間有効期限を延長できます。10年を超える長期契約を締結する際には大きなメリットです。

  • 電子署名だけの電子データに比べ完全性を確保できる

電子署名だけの電子データは契約内容が確かであることの証明にはなるものの、悪意を持った第三者が契約日を変更したり、内容を書き換えたりといった改ざんリスクは防げません。

しかし、電子署名に加えタイムスタンプを付与すれば、作成した日時と付与してから改ざんされていないことを担保できるため、電子データの完全性を確保できます。

タイムスタンプが必要な書類

タイムスタンプの付与が必要となる主な書類は、電子帳簿保存法の対象となる書類の一部です。具体的には、紙から電子化した取引関係書類や電子取引でやり取りをした取引情報が該当します。主な書類には以下が挙げられます。

  • 請求書
  • 領収書
  • 納品書
  • 注文書
  • 見積書

書類にタイムスタンプを付与する方法

電子データにタイムスタンプを付与する主な方法は、時刻認証業務認定事業者への依頼と、タイムスタンプを付与するためのシステム導入の2つです。ここではそれぞれの方法について、具体的な方法を解説します。

時刻認証業務認定事業者に依頼する方法

1つ目の方法は、時刻認証業務認定事業者に依頼してタイムスタンプを付与してもらう方法です。時刻認証業務認定事業者とは認定タイムスタンプを付与できる業者で、時刻認証局とも呼ばれます。

具体的には、前述したように電子データを作成後に時刻認証業務認定事業者へハッシュ値を送付して、タイムスタンプの発行を要求し、付与してもらいます。

2024年4月1日時点で「一般財団法人日本データ通信協会」に承認を得て登録されている時刻認証業務認定事業者は次の4社です。

  • 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
  • セイコーソリューションズ株式会社
  • GMOグローバルサイン株式会社
  • アマノ株式会社

時刻認証業務認定事業者に依頼する場合、注意すべきは専用のアプリケーションを導入するソリューションを用いる必要がある点です。

また、付与を受ける度に費用がかかる従量制、もしくは定期的に一定の費用がかかる定額制のどちらかを選択する必要があります。

タイムスタンプが必要な時だけスポットで利用する場合であっても、初期費用を含めてある程度のコストがかかることは、あらかじめ把握しておかなくてはなりません。

タイムスタンプを付与するためのシステムを導入

2つ目は、タイムスタンプを付与するシステムを導入する方法です。この方法を選択すれば自社ハッシュ値を取得したり、直接時刻認証業務認定事業者と契約して発行を依頼したりする手間がかかりません。

タイムスタンプを付与するシステムには、電子契約システムや電子帳簿保存サービスなどが挙げられます。

電子契約システムとは、インターネット上で電子契約を締結するためのシステムです。タイムスタンプ電子署名機能が付いたものであれば、時刻認証業務認定事業者に依頼しなくてもタイムスタンプを付与できます。

また、時刻認証業務認定事業者ではない企業が提供する電子契約システムでも、タイムスタンプ自体は認定事業者による「認定タイムスタンプ」を利用できるのが一般的です。

電子帳簿保存サービスとは、電子帳簿保存法の対象となる書類を電子データの状態で保存・管理できるサービスです。電子契約システム同様、電子署名やタイムスタンプを付与する機能があるサービスを選択すれば、時刻認証業務認定事業者に依頼する必要はありません。

いずれも時刻認証業務認定事業者に依頼するのと同じように、初期費用やランニングコストがかかります。ただし、電子契約や電子データの保存・管理も同時に行える点や、ハッシュ値取得のためにプログラムを扱う手間、逐一依頼する手間がかからないのは大きなメリットです。

タイムスタンプを利用する際の注意点

タイムスタンプを利用する際にはいくつかの注意点があります。具体的には、保管方法の要件を把握すること、タイムスタンプを付与するタイミングに注意すること、原本の取り扱いに注意することです。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

保管方法の要件にも注意

電子帳簿保存法では電子データの作成時において、改ざんされていないことや削除されていないことといった「真実性」の確保が求められます。

そして、保管時に求められるのは簡単に電子データを検索できること、明瞭な状態で閲覧できることといった「可視性」と「検索性」の確保です。

タイムスタンプが付与されて真実性の確保ができていたとしても、可視性・検索性が確保できていない場合、電子帳簿保存法の保存要件を満たしていないと判断されます。そうなると、法的に電子データが認められなくなってしまいます。

可視性に関しては、電子データを常にディスプレイやプリンターで閲覧できる状態にしておくことが必要です。そして、検索性についてはExcelを使って管理台帳を作成する方法や、文書管理システムを導入する方法があります。

電子データを電子帳簿保存法に準拠した状態で保存・管理するのであれば、電子帳簿保存サービス「TOKIUM電子帳簿保存」の活用がおすすめです。

TOKIUM電子帳簿保存は最新の電子帳簿保存法に対応しているだけでなく、タイムスタンプを付与する機能もあるため、効率的かつ適正な保存・管理を実現します。

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タイムスタンプを付与する際のタイミング に注意

タイムスタンプは、付与までの期間が「2ヶ月と概ね7営業日まで」と決められているため、付与を後回しにしていると真実性を確保できなくなります。

電子データを作成して取引相手に送付する際は、タイムスタンプを付与しておく必要があるため、後回しにしてしまうことはないでしょう。問題は電子データを受け取り、保存する際の対応です。

電子データを受け取り、内容を確認してすぐに保存する場合、タイムスタンプの付与を忘れてしまう恐れがあります。そのため、保存する際は速やかにタイムスタンプを付与するルールを明確化し、担当者に向けた周知の徹底が重要です。

原本の取り扱いに注意

2022年1月の電子帳簿保存法改正により、紙の書類にタイムスタンプを付与してスキャン保存した際、原本をすぐに廃棄することが可能になりました。しかし、企業によっては業務フローの都合で一定期間原本を保存しなくてはならないケースもあるでしょう。

また、原本との同一性・見読性を確保する意味において、原本をすぐに廃棄できない企業も存在します。電子取引の場合は特に企業ごとにルールが定められているケースがあるため、必ず事前に確認し、原本保存が必要な場合は適切に扱いましょう。

電子帳簿保存法と社内ルールを把握してタイムスタンプの付与を行おう

タイムスタンプとは、付与した時間に電子データが存在していたこと、それ以降に改ざんされていないことを証明する技術です。電子データは紙の書類と異なり、簡単に複製・改ざんできてしまうため、タイムスタンプを付与することで電子データの真実性を確保します。

タイムスタンプの取り扱いについては、電子帳簿保存法の把握が必須です。しかしそれだけではなく、社内ルールの把握も欠かせません。原本の保存や電子データを受け取った際のタイムスタンプ付与など、明確に社内ルールとして文書化し、適切に扱うようにしましょう。

電子データを電子帳簿保存法に準拠した状態で保存・管理するなら、電子帳簿保存サービス「TOKIUM電子帳簿保存」がおすすめです。TOKIUM電子帳簿保存は最新の電子帳簿保存法に対応しているだけでなく、タイムスタンプを付与する機能もあるため、効率的かつ適正な保存・管理が可能です。

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