仕訳FAQ

還付金の勘定科目は?法人税還付の仕訳で重要なポイントを解説

更新日:2023.05.23

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法人には、事業年度で得た所得に対して一定の税率によって法人税が課せられます。法人税の申告には中間申告と確定申告が定められており、所轄税務署へ提出しなければなりません。

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法人税は期末に納税する前に、中間申告で前年度の法人税の半分を前払いしておく必要があります。その為事業年度の確定申告では、業績によっては納税額が超過している場合もあります。

超過した納税額は、制度によって還付を請求することが可能です。では、どのような制度があるのかこれから見ていきましょう。

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そもそも還付金とは?

法人には、事業年度において事業活動を通じて得た課税対象となる所得に対して法人税が課せられます。課税対象となる所得とは、会計上の利益に課税されるものではなく益金から損益を引いたものが課税対象となり、法人税を納付します。

しかし前期の業績とは反対に当期事業年度の業績が悪く赤字になってしまう場合や、法人税の申告には中間納税による予定納税があり、前期の2分の1を納付した場合に当期事業年度の年税額を超過してしまう場合もあります。

この場合納め過ぎた税金を税務署へ請求し返還される金銭を還付金といいます。

法人税の還付金の仕訳方法は?

法人税の還付金が振り込まれた場合の仕訳を見ていきましょう。

中間納付をしていた場合の仕訳ですが、納付した時点ではまだ税額が確定されていないので、仮払法人税等という勘定科目で仕訳します。決算で税額が確定した場合、中間納付していた税額を充当させ、中間納付していた税額が確定した税額よりも大きくなっていた場合は、差額を未収法人税等として後日還付金が振り込まれた金額を充当させます。

【仕訳例】

・中間納付で300万円納付していたが、確定した税額が100万円だった場合

借方貸方
法人税等100万仮払法人税等 300万
未収法人税等200万

・後日還付された場合

借方貸方
普通(当座)預金200万未収法人税等200万

・中間納付で150万納付していたが、当期決算が赤字だった場合

借方貸方
未収法人税等150万仮払法人税等150万

・後日還付された場合
還付金の振込みと一緒に還付加算金も振り込まれる場合があります。

借方貸方
普通(当座)預金150万未収法人税等150万

還付加算金とは

還付加算金とは、納税された税金の還付金につけられる利息のことを言います。還付加算金は、税金を納税された日の翌日から還付の支払いが決定された日までの日数に応じて年7.3%の割合を乗じた金額が加算されたものになり、雑収入として処理します。

注意しなければならない点は、還付金には税金の戻りの為法人税はかかりませんが還付加算金は法人税の対象となるので、還付金と分けて仕訳しておかなければなりません。

・還付金50万円、還付加算金5千円の合わせて50万5千円が振り込まれた場合

借方貸方
普通(当座)預金505,000未収法人税等500,000
雑収入5,000

次に欠損金を繰越す場合を見ていきましょう。

欠損金が生じた場合、翌期以降に繰越して将来の税額を少なくさせる為に、繰延税金資産として計上します。

繰延税金資産とは、法人税の前払いとして繰延処理する為の資産になります。仕訳としては、借方に繰延税金資産、貸方に法人税調整額として処理し、翌期以降の所得と相殺します。

・決算で欠損金100万円が発生し、法定実行税率40%により40万円を繰越欠損金とした場合

借方貸方
繰越税金資産40万法人税等調整額40万

・繰越欠損金を全額損金算入した場合

借方貸方
法人税等調整額40万繰延税金資産40万

還付金が発生する理由は3つ

1.中間納付していた納税額が決算により超過していたことが分かった場合

法人税には事業年度の中間に、中間納付をする制度があります。中間納税には2通りの中間申告の仕方があり、1つは前期に納税した税額の半分を納税する方法、もう1つは事業年度の中間に仮決算を行い中間申告する方法です。

中間申告により納付した税額が確定申告による税額よりも超過していた場合、還付を請求することができます。

2.中間納付していたが業績悪化により決算が赤字になってしまった場合

前期に納税した税額の2分の1を中間納付していた場合や、仮決算をして中間申告をしていたが業績が悪化してしまい、確定申告で赤字になってしまう場合もあります。

この場合も中間申告で納付していた税金の還付を請求することができます。

3.災害等により損失が発生してしまった場合

法人が災害にあい損失を受けたことにより災害損失欠損金額がある場合、法人税額から控除することができなかった税額について還付を請求することができます。

法人には中間申告による中間納付の制度がありますが、ここで注意しなければならないのは納付税額が10万円以下である場合や、仮決算での中間申告での納付税額が前期に納税した税額による中間納付の額を超えた場合中間申告をすることができないので間違えないようにしましょう。

還付金の種類は2つ

還付金は、還付金の還付過誤納金による還付の大きく2つに分けられます。

還付金の還付とは、納め過ぎた税金が返還される金銭のことを言い、過誤納金による還付とは、減額更正や不服審査の採決により返還される金銭や、確定前に納付があった場合により返還される金銭のことを言います。

では、どのような例があるか見ていきましょう。

1.還付金の還付

還付金の還付とは、納め過ぎた税金が返還される金銭のことを言いますが、下記のようなことがあげられます。

  • 法人税や消費税の中間納付額の超過分の還付
  • 法人税法や消費税法による税額の控除等の還付
  • 法人税法による欠損金の繰戻しによる還付
  • 租税や過大申告、災害を受けたことによる還付
  • たばこ税などの輸出での還付

たとえば法人税や消費税には中間申告の制度があり、中間納付した税額が当期事業年度の年税額を超過した場合還付の請求をすることができます。

また当期の業績が悪く赤字になってしまった場合も前期で納税した法人税が還付される制度があります。

2.過誤納金による還付

過誤納金による還付には、過納金によるものと誤納金によるものとがあります。

過納金による還付とは、確定された税額が納付された後、減額更正や不服審査の採決などに取消等がされ、減額になった税額が返還される金銭のことを言います。

また誤納金とは、税額の確定前に納付した場合や納期開始前に納付した場合、確定した税額を超過して納付した場合に還付される金銭のことを言います。

還付金等の還付を受ける場合は納付手段に関わらず、預貯金口座への振込みと最寄りのゆうちょ銀行各店または郵便局に出向いて受け取る方法になります。

還付金が請求できる企業は?

欠損金の繰戻し還付の制度を利用できる法人は、資本金1億円以下の中小企業で青色申告法人が対象になります。

欠損金による繰戻し還付とは、前期まで黒字で法人税を納付した法人が、当期事業年度で業績が悪く赤字になった場合に、前期に納付した法人税の還付を請求できる制度を言います。
欠損金とは赤字のことを言い、繰戻し還付の制度は法人税のみに適用されるので、法人住民税や事業税には適用されません

しかし法人住民税は翌年度以降に繰越控除として減税に適用させることができます。また法人事業税は欠損金を翌年度以降に繰越すことができますが、法人税の繰越し欠損金と法人事業税の繰越し欠損金に誤差が生じることに注意しなければなりません。

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法人税額の還付を受ける場合の要件は?

欠損金による繰戻し還付の制度を利用できる法人は、資本金が1億円以下の中小企業で青色申告法人が対象ですが、還付を受けるには要件を満たしていなければ繰戻し還付の制度を利用することができません

青色申告法人の場合は、各事業年度において青色申告者の確定申告書を提出し、欠損事業年度に青色申告書の確定申告書を期限内に提出していることが要件になります。また確定申告書と同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出しなければなりません。

災害により損失欠損金のある法人の場合は、各事業年度において確定申告書を提出し、欠損事業年度の確定申告書又は仮決算での中間申告書を提出していることが要件になります。また確定申告書又は仮決算での中間申告書と同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出しなければなりません。

還付金の計算方法を実例で解説

還付金の計算の例

欠損金の繰戻し還付による還付金額は、還付所得事業年度つまり前期の法人税に欠損事業年度の欠損金額を還付所得事業年度の所得金額で割った金額に掛けたものが還付請求できる金額になります。

たとえば還付事業年度の所得が1,500万円、法人税が300万円、欠損事業年度の欠損金が900万円だと仮定すると、

300万円×(900万円÷1,500万円)=180万円

となり、還付請求できる金額は180万円になります。

ここで注意しなければいけない事は、欠損事業年度の欠損金が還付事業年度の所得金額を超える場合もあるということです。

欠損事業年度の欠損金の限度額は還付事業年度の所得金額になる為、超過した欠損金は「欠損金の繰越控除制度」を利用して翌期以降の9年間を上限に繰越すことができます。

欠損金繰越しの要件と注意点

欠損金の繰越控除とは、欠損金が発生した時に翌期以降に繰り越してその事業年度の所得から控除する制度を言い、黒字の事業年度の課税所得を減らし法人税等を減額できるというメリットがあります。
欠損金の繰越控除の制度を利用する為には、要件を満たしていることが必要になります。

欠損金を繰越す為の要件は、欠損金が生じた事業年度において青色申告書を提出し、その事業年度以降も継続して確定申告書を提出していることが挙げられます。

また欠損金の控除は古い年度から行わなければならず、欠損金が生じた事業年度の帳簿書類も9年間の保存が必要です。

繰戻し還付も欠損金繰越控除も税金を減らすという意味では同じですが、過去に納付した税金を戻すのか将来的に納付する税金を減らすのかという点が違ってきますので、制度を利用する場合は経営状態によってどちらの制度を利用するのかを見極めることが大切です。

税込方式と税抜き方式による仕訳の違い

税込方式の場合

中間申告により納付した税額を税込方式により処理した場合の仕訳には、勘定科目に『租税公課』を使用します。

・中間納付時

借方貸方
租税公課○○○円普通(当座)預金 ○○○円

・還付された場合

借方貸方
普通(当座)預金 ○○○円租税公課○○○円
雑収入(差額分)○○○円

租税公課』についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

税抜き方式の場合

中間申告により納付した税額を税抜き方式により処理した場合の仕訳には、勘定科目に「仮払金」を使用します。

・中間納付時

借方貸方
普通(当座)預金○○○円仮払金○○○円

・決算時

借方貸方
未収入金○○○円仮払金○○○円
雑収入(差額分)○○○円

・還付された場合
(借方)普通(当座)預金 ○○○円 /(貸方)未収入金 ○○○円

借方貸方
普通(当座)預金○○○円未収入金○○○円

仮払金』についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

個人事業主の場合の還付金の処理について

所得税還付金は「事業主借」で処理

個人事業主の場合は法人税ではなく、確定申告した際に所得税の還付を受けることがあります。
まず、所得税の還付金についてです。所得税還付金は、事業主自身が納めた所得税が戻ってきたものです。したがって課税の対象にはなりません。

よって、還付金をそのまま個人事業主自身の収入とするための仕訳を行います。事業主が個人で稼いだお金を家計などに移す時の勘定科目は「事業主借」、逆に仕事で使うものを個人のお金で支払った場合の勘定科目は「事業主貸」となります。

例えば所得税還付金が口座に振込まれた時の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
普通(当座)預金 ○○○円事業主借 ○○○円

しかし還付加算金の場合は課税対象となるため処理が異なります。

還付加算金は「雑所得」で処理

所得税還付金は課税対象となりませんが、還付加算金の場合は課税対象となるため、仕訳の際に注意が必要です。

還付加算金とは以下のようなものを指します。

税金の還付金につける利息。税金の還付金または誤過納の税金は,遅滞なく金銭で還付しなければならないが,その際,還付金額には,その税金の納付があった日の翌日から還付のための支払決定の日までの期間の日数に応じて,その金額に年 7.3%の割合を乗じて計算した金額を加算しなければならない(国税通則法 58など) 。
参照:還付加算金の意味(ブリタニカ国際大百科事典より)

還付加算金は還付金に付随する利息のようなものなので課税対象となります。そのため還付金とは区別して「雑所得」で処理しておく必要があります。

以下の例題を元に理解を深めましょう。

・普通預金口座に所得税還付金10,000円と、還付加算金60円が入金された。

借方貸方
普通預金 10,060円事業主借10,000円
雑所得60円

還付金と還付加算金は名称が似ていても処理が異なるので、仕訳を区別してマスターしましょう。

勘定科目の仕訳ミスを減らすには?

ここまでで、還付金の勘定科目や仕訳について解説してきました。この還付金に関わらず、お金の動きがある際には必ず正しく勘定科目を選択する必要があります。しかし、たとえ経理が勘定科目についてを理解していても、もしも経費精算をする際に「従業員は勘定科目を把握しておらず、申請された経費は毎回修正が必要...」なんてことがあれば、非常に手間が発生します。

近年多くの企業では、経費精算システムを使って勘定科目の設定が簡略化されています。申請から承認までをスマートフォンで完結できる「TOKIUM経費精算」では、勘定科目を従業員が理解しやすい言葉に置き換えて設定することができます。

従業員はわかりやすくなった科目名を選んで申請できるため、経理担当者の確認時において勘定科目の訂正が不要になります。また、会計システムにデータを連携する際には、正規の勘定科目名やコード情報を出力できるので、データの加工や修正に手間がかからない点も安心です。

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まとめ

法人税の還付には中間納税で納め過ぎた税金を還付してもらう場合や、欠損金が生じた場合には前期に納付した法人税を繰戻し還付する場合と、翌期以降に欠損金を繰越して税額を減少させることもできます。

特に欠損金が生じた場合は、過去に納付した税金を戻すか将来的な税額を減少させるかは、経営状況によって適切な判断をしなければなりません。
いずれの場合でも、制度をしっかりと理解して上手に利用していくことが大事です。

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