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本記事は、2026年1月20日に開催されたオンラインカンファレンス「TOKIUM AI VISION AIとともに企業の未来を創る」のウェビナーレポートです。本当に人間がやるべきは、現場の本音を引き出し、行動変容を促す創造的な仕事であると話すのは、株式会社月刊総務 代表取締役の寺田氏。バックオフィスは分化から統合へ向かう考え方や、全社を動かす「2・6・2の法則」についてお話を伺いました。
【3行要約】
- AIを恐れる人は「この仕事は自分にしかできない」と囲い込んでいる人。その仕事は形ができて誰でもできるものになりつつあり、本当に人間がやるべきは現場の本音を引き出し、行動変容を促す創造的な仕事。
- バックオフィスは分化から統合へ向かう。テクノロジーの進展で分業する意味がなくなり、コンパクトなバックオフィスとして全体最適の目線で経営に近づいていく時代が始まった。
- AI推進の成功パターンは「2・6・2の法則」。全社一斉研修ではなく、得意な2割の人を探して成功体験を共有させ、6割を動かす。AIは最後はデータの勝負であり、そのデータを握っているのはバックオフィス。
【登壇者情報】
豊田 健一 氏(株式会社月刊総務 代表取締役社長)
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)IT顧問化協会専務理事、(一社)日本オムニチャネル協会フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
AIへの恐怖とワクワク、2つのパターン
豊田氏: AIがバックオフィスにもたらす変化には2パターンあると思っています。自分の仕事が取って代わられるのではないかという恐怖を感じている人と、AIを活用してリソースができて、やりたいことができるという楽しみを持っている人です。
豊田氏: 語弊を恐れずに言うと、怖がっている人は「この仕事は自分にしかできない」と囲い込んでいる人たちです。その仕事がその人の存在意義になっている。でもその仕事は実は形ができて、誰でもできるようになりつつあります。本当に人間がやるべきなのかどうか。むしろそれを手放して、もっと創造的な人間らしい仕事に突き進むべきです。
豊田氏: AIは既にあるものを食べていますが、現場の今の思いや不安、課題といった世に出ていないものは食べていません。総務の世界では「ぶらぶら総務」という言葉があります。現場に行って声かけをして、本音を引き出す。人間が自己開示をして、共感性をもって相手の話を引き出す。これはAIにはできない、人間として残っていく仕事です。
熱量を感じ、心を動かす仕事は人にしかできない
豊田氏: 熱量を感じる、心を動かす仕事は人にしかできないと思います。AIは確かに格好いいことを言いますが、「お前やってみろよ」という話もあるわけです。AIには心や創造性がないので、思いを引き出すことと、思いをぶつけて人の行動変容を促すことは人間の仕事として残ります。
豊田氏: 一方でAIは、いろいろなデータを分析してパターンを見出すことが得意です。今まで総務やバックオフィスは定性的な会話が多かった。「なんとなく」「みんな大体」という言い方。これをデジタルツールでデータ化し、AIに読み込んで分析してもらい、自社の傾向を定量化する。それによって経営者に説得力を持った会話ができるようになります。
バックオフィスのミッションは「従業員が輝く舞台装置を作る」こと
豊田氏: バックオフィスには不易流行があります。AIが出ようが、どんなテクノロジーが出ようが変わらない本質的な部分と、テクノロジーの進展によって変わる部分です。
豊田氏: 不易の部分は「場」です。総務も人事も情報システムも社内広報も、みんなまとまって働く場を構築している。従業員が輝く舞台装置を作っているのがバックオフィスです。どういう時代になろうが、従業員がパフォーマンスを発揮できる場を作っていくことが変わらない本質です。
豊田氏: バックオフィスで重要なのは、何をしているか、どうしているかではなく、「なぜそれをやるのか」というWHYの部分です。目の前の伝票チェックも、それが部門のP/Lになり、会社全体の経理になり、経営者がいち早く見て素早くアクションを打てることにつながっている。このつながり感をみんなが共有できるかどうかが大事です。
効率性ではなく「最適化」の目線を持つ
豊田氏: キーワードは「最適化」だと思います。効率性だと足元を楽にするだけですが、最適化と考えると、今会社としてどういう事業にフォーカスしているのか、従業員はどんな働き方をしているのか、だとしたら働く場や人事制度はどうあるべきか、という目線になります。
豊田氏: 効率性を求めて何でもかんでも一つにしましょうではなく、最適なものとして組み上げることが重要です。そうすると事業とリンクせざるを得ない。部門でパーパスを設定し、会社のパーパスと連動させ、個人の力につなげる。常にビジョン・ミッションドリブンで日々の業務を見直していくことが必要です。
豊田氏: AIで仕事が取られると感じる人は、作業にアイデンティティを持っています。その先にある目的にアイデンティティを持つべきです。作業を取られても、目的に対する貢献は変わらない。「何をしているか」ではなく「その仕事が何をもたらしているか」を見ることが大事です。
バックオフィスは分化から統合へ向かう

豊田氏: ずばり言うと、バックオフィスは統合していくと思います。今まで大きくなればなるほど分化していきましたが、テクノロジーがありますから、そんなに分ける必要がなくなります。
豊田氏: 哲学者のヘーゲルが「歴史は螺旋階段状に進化する」と言っています。横から見ると上に上がっているが、真上から見ると行ったり来たりしている。組織も分化していった時代から、統合に向かうのです。
豊田氏: 何に対して統合するかというと、「人」です。人手不足の時代、人のために働く場があり、オフィスがあり、制度があり、インフラがある。今まで分業でバラバラだった問い合わせ先が、コンパクトなバックオフィスとして統合していく。個別最適から全体最適へ、経営者に近い目線に近づいていくバックオフィスになるでしょう。
バックオフィスからAI変革を始めるべき理由
豊田氏: バックオフィスの仕事は基本的にほぼ全員が関わります。タイムカード、稟議書、申請書など、全社員がやらなければならない仕事がバックオフィスに集中しています。
豊田氏: そこをAI化すると、全社に良い意味での成功体験を味わってもらえます。単独のどこかの部署を変えるよりはるかにインパクトが大きく、全員に影響力を与えることができます。例えば経費精算の質問にAIが答えてくれれば、いちいち経理に電話しなくて済む。好きな時に聞ける。「AI使うんだ、便利だな」という体験を全社で積めるのがバックオフィスの強みです。
AI推進の成功パターンは「2・6・2の法則」

豊田氏: 成功しているところは、まず好きな人がやり始めて、プロンプトを作って「このプロンプトをそのまま使うといいよ」とどんどん共有します。AIはプロンプトさえあれば同じようにできますから、成功体験を共有して、みんなでできるような風土・文化を作ることが一番いいのです。
豊田氏: 月刊総務で何百件と取材しましたが、成功パターンはこれです。何か施策をやって、使い出す人がいる。その人に取材をして、こういう使い方をするとこうなるよ、と社内報に出す。すると「2・6・2の法則」の6の人が見て「ああ、こうやればいいんだ」となります。
豊田氏: 10人いれば得意な人は1人か2人は絶対にいます。その2割を探して羽ばたかせる。全社で一斉に研修をやるのではなく、得意な人を探して伝道師になってもらう。これが成功パターンです。
次のフェーズは「良質なデータとの対話」

豊田氏: 壁打ちや文書作成はそこそこ皆さんやり始めていますが、それ以上に使いこなせているのは1割、2割でしょう。次のフェーズは、良質なデータを食べさせて対話することです。
豊田氏: 取材したAI大好きな総務担当者は、経営会議の議事録をAIに食べさせていました。彼はオフィスレイアウト変更を提案する際、経営者が考えていることをベースに壁打ちするのです。すると経営者が今考えている文脈に沿ったオフィスのコンセプトが出てくる。これをそのまま経営会議に出せば通るわけです。
豊田氏: AIを使うのは最後はデータの勝負になる気がします。バックオフィスは人事データ、経理データ、従業員の声など、良質なデータを握っています。だからAI時代はバックオフィスが栄えると思います。とにかく楽しむこと、それが創造性を豊かにする原点です。
「TOKIUM AI VISION AIとともに企業の未来を創る」見逃し配信中!
AIは、もはや単なる業務効率化ツールではありません。
企業の未来をともに創る「ビジネスパートナー」へと進化しています。
私たちは、どのようにAIをパートナーとして、企業の未来を創るべきか。 本カンファレンスでは、元OpenAIのZack Kass氏や国内の有識者の知見、先進企業の事例を通じて、 バックオフィスから企業の未来を創るための、具体的なヒントと次の一歩を提示します。
2026年1月20日に開催された本イベントの見逃し配信を行っております。
ぜひご覧ください。
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