引当金の仕訳を具体例で解説【引当金の基礎から税務までマスター】

「引当金の仕訳、どうやってやるの?」

この記事では、引当金の仕訳を貸倒引当金賞与引当金を具体例で解説します。

また、引当金の基礎的な内容から税務上の取り扱いまで網羅した内容になっています。

筆者は上場企業の経理担当として引当金に関しても実務経験があります。

引当金について知識を深めたい方は、参考にしてみてくださいね。

引当金の種類と仕訳例


代表的な引当金である貸倒引当金と賞与引当金を例に仕訳を解説します。

貸倒引当金の仕訳【2パターンあり】

貸倒引当金とは、売掛金や受取手形などが回収できない場合(=貸倒れ)に備えて、貸倒れになる可能性のある金額を見積もって損失に計上しておくものです。

貸倒引当金の仕訳の方法には2種類あります。

✅ 引当金の仕訳の方法

  • 洗替法:税務上の原則は洗替法
  • 差額補充法:会計上は差額補充法
  • どちらの方法で引当金の仕訳をしても当期純利益に与える影響は同じです。引当金の税務上の取り扱いについては詳しくは後述します。

    貸倒引当金の仕訳についてそれぞれ具体例で解説します。

    貸倒引当金の仕訳方法①洗替法

    貸倒引当金の仕訳方法のうち、税務上は洗替法で計上することが原則です。

    洗替法では前期の貸倒引当金の全額を「貸倒引当金戻入」という収益勘定で処理し、あらたに当期分の貸倒引当金を全額繰り入れる処理をします。

    洗替法の仕訳例
    1. 決算で貸倒引当金1,000円を計上した。
    2. 借方 貸方
      貸倒引当金繰入 1,000 貸倒引当金 1,000
    3. 決算で前期の貸倒引当金を取り崩して1,200円を新たに繰り入れた
    4. 借方 貸方
      貸倒引当金 1,000 貸倒引当金戻入 1,000
      貸倒引当金繰入 1,200 貸倒引当金 1,200

    決算の都度、全額を戻して新たに繰り入れる、というイメージです。

    貸倒引当金戻入額は特別利益に計上されます。

    貸倒引当金の仕訳方法②差額補充法

    洗替法と異なり、差額補充法ではすでに計上している貸倒引当金と当期発生した貸倒引当金との差額のみを計上します。

    上場企業では一般的に差額補充法で仕訳を行っています。

    差額補充法の仕訳例
    1. 決算で貸倒引当金1,000円を計上した。
    2. 借方 貸方
      貸倒引当金繰入額 1,000 貸倒引当金 1,000
    3. 当期の貸倒引当金は1,200円だったので差額を計上した
    4. 借方 貸方
      貸倒引当金繰入額 200 貸倒引当金 200
    5. 当期の貸倒引当金は900円だったので差額を戻し入れた
    6. 借方 貸方
      貸倒引当金 300 貸倒引当金戻入額 300
    このように、決算の都度、貸倒引当金の額を算出して残高がその金額になるように差額を計上します。

    貸倒引当金の残高が不足していれば上記の仕訳②のように貸倒引当金を追加で計上します。

    逆に、貸倒引当金の残高が多い場合には、上記の仕訳③のように貸倒引当金を戻り入れて残高を調整します。

    貸倒引当金の仕訳方法はどちらを選ぶべき?

    洗替法、差額補充法のどちらの方法で引当金の仕訳をしても、当期純利益に与える影響は同じです。

    しかし、営業利益に与える影響を考えると、差額補充法を選択したほうが有利です。

    貸倒引当金戻入額は特別利益に計上されてしまうため、営業利益が少なく見えてしまいます。

    一般的に金融機関からの借入れの審査では営業利益が重視されるため、差額補充法を選択する方が良いといえます。

    賞与引当金の仕訳例

    賞与引当金とは、決算以降に支払う賞与のためにあらかじめ計上しておくためのもの。

    例えば、賞与の支給が7月・12月の会社であれば、7月には1~6月の、12月には7月~12月が対象になります。

    実際にはまだ払っていない賞与についても、期間対応分の賞与を見積もって計上しておくことで、より実態に合う決算数値がわかります。

    賞与引当金の仕訳例
    1. 賞与引当金5,000円を計上した
    2. 借方 貸方
      賞与引当金繰入 5,000 賞与引当金 5,000
    3. 賞与を支払った
    4. 借方 貸方
      賞与引当金 5,000 預金 6,000
      賞与 1,000

    決算の期間に対応する分の賞与を計算して賞与引当金とします。

    賞与の支払いの際には、賞与引当金を取り崩して、差額を「賞与」の費用勘定で計上します。

    引当金とはそもそも何?【引当金の基本】


    引当金の仕訳について解説しました。

    ここからは、「引当金ってそもそも何なの?」という人向けに引当金の基本から丁寧に解説します。

    引当金とは将来の費用を見越して計上するもの

    引当金とは、発生すると見込まれる費用を見越して計上するものです。

    企業会計原則には次の通り記載されてます。

    将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
    製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。

    企業会計原則注18「引当金」

    つまり、以下の4点すべてに当てはまれば、引当金を計上しなくてはなりません。

    ✅ 引当金を計上する条件

  • 将来の費用または損失である
  • 費用・損失の発生が当期以前の事象に起因している
  • 費用・損失の発生の可能性が高い
  • 費用・損失の金額を合理的に見積もることができる
  • 引当金を計上することは、会計の重要な考え方である「発生主義」に反していると感じるかもしれません。

    しかし、引当金を適切に計上することで、より正確な決算資料(貸借対照表や損益計算書)を作成でき、会社の経営者や投資家・金融機関などが、正しく会社の経営状態を判断できます。

    例えば、修繕引当金。機械などの固定資産の大規模な修繕が来期以降に見込まれている場合に、あらかじめ費用を少しずつ見積もって計上しておきます。

    こうしておくことで、費用が平準化されて、実際に修繕を行ったときにだけ利益が大きく減ったように見えるのを防ぐことができます。

    賞与引当金や退職給付引当金も同様です。支払ったときにだけ費用が増えると正しい経営判断ができません。

    引当金には、正確な決算によって経営状態を適切に判断できる、費用の標準化ができるという機能があるといえます。

    また、中小企業は一定の金額までは引当金の損金算入も認められていますから、節税の効果もあります。

    引当金には2種類ある【評価性引当金・負債性引当金】

    引当金は大きく2種類に分けられます。

    ✅ 引当金の種類2つ

  • 評価性引当金:将来の損失に備える。貸倒引当金
  • 負債性引当金:将来の支出に備える。賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金など
  • 名前が難しく感じるかもしれませんが、引当金の性格上で2つに分けているだけです。

    評価性引当金とは、売り上げたのに取引先が倒産してお金が入金されないかもしれない、という損失に備えるためのもの。貸借対照表の資産の部のマイナスとして表示されます。

    一方で負債性引当金とは、賞与など将来の支出に備えて積み立てておくもの。支出の発生する時期が1年以内なら流動負債、1年を超えるなら固定負債にプラスで表示します。

    負債性引当金には多くの種類がありますが、基本的な仕訳の考え方は賞与引当金の仕訳を押さえておけば同様に仕訳ができます。

    引当金の税務上の扱い【損金不算入が原則】


    原則、税務上は引当金を損金不算入として加算して申告する必要があります。

    この章では引当金の税務上の扱いについて解説します。

    引当金の会計上と税務上の扱いの違い

  • 会計上:引当金を計上して正確な決算判断に使用する
  • 税務上:引当金は損金として基本的には認められない
  • 会計上は、正確な決算を目的に引当金の計上が求められますが、税務上は引当金は見積もりによる費用でまだ発生していないため、損金として認められません。

    法人税の申告の際には、引当金を加算調整する必要があります。

    ただし、例外として資本金1億円以下の中小企業や貸倒れが起こる可能性が一般企業よりも大きい銀行、保険会社などでは貸倒引当金の一部を損金算入することが法人税法で認められています。

    引当金が損金算入できる場合

    ✅ 中小企業の引当金の会計上・税務上の扱い

    種類 具体例 税法
    評価性引当金 貸倒引当金 損金算入可
    負債性引当金 返品調整引当金※、修繕引当金、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金(製品保証等引当金)、売上割戻引当金、工事補償引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、役員賞与引当金、工事損失引当金 損金不算入

    ※返品調整引当金は平成30年度から原則損金算入不可
    中小企業の会計に関する指針より

    上記のように、中小企業法人は貸倒引当金を損金算入することが可能です。

    また、貸倒引当金と混同しやすい「貸倒損失」があります。

    貸倒損失は引当金とは異なり、貸倒れが確定したもの。中小企業・大企業問わず損金算入できます。

    詳しくは国税庁「No.5320 貸倒損失として処理できる場合」で確認してください。

    引当金の仕訳|まとめ

    貸倒引当金の仕訳は、洗替法・差額補充法の2パターンあります。

    洗替法では決算の都度、貸倒引当金を取り崩し、全額を計上します。差額補充法では差額のみを計上します。

    また、賞与引当金などは実際に費用が発生するまで、期間対応分を費用として繰り入れます。

    引当金の仕訳は少し複雑ですが、決算の都度同じ考え方で仕訳を行いますので、一度学んでおくと役に立つでしょう。