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原価計算とは?知らないと恥ずかしい!計算方法を表形式で解説

公開日:2019.01.21更新日:2022.07.27
計算

原価計算とは、売上の元になった金額を計算すること。

例えば、パン屋さんなら小麦粉や卵などの原料やパン職人さんの人件費などが原価です。原価計算は工業簿記の中に登場するので、『製品を作るときに活用する知識』と思われるかもしれませんが、どのような業種においても原価があり、原価をもとにして売価も決められているのです。その他の原価の例としては、以下のようなものがあります。

  • IT系の会社における原価計算は『ソフトウェア原価』
  • 広告代理店の原価計算は主に『人件費』
  • 建設会社における原価計算は『建設原価』
  • 電力会社の原価計算は『電気料金原価』

原価計算を知ることは経営を知ること。会社が利益を出すために発生している費用、その中の不要な工程や費用をつかむ手段にもなります。

この記事では原価計算の概要を初心者向けに一から解説しています。筆者はメーカーで原価計算担当をしていた経験があります。わかりやすく例を使いながら説明していくので、参考になれば幸いです。

原価計算とは

「原価計算って何?」という方向けにまずは原価計算の概要を解説します。原価計算の目的財務会計・管理会計との関係も説明していくので、「原価計算の基本はもう知ってるよ」って方もおさらいに読んでみてくださいね。

原価計算とは売上の元になった費用を計算すること

原価計算とは、一言で言えば「売上の元になった費用の計算」です。原材料だけではなく、製造現場の社員の人件費なども売上の元になった「原価」に入ります。

例えば、パン屋さんなら小麦粉や卵などの原料やパン職人さんの人件費などが原価になり、原価計算をすることでパン1つを作るのにかかった費用がわかります。

原価計算を無視するとどうなる?

働くうえで原価意識を持つことは大切です。製造現場はもちろんのこと、仕入部門や営業部門にも原価意識は必要なものなのです。

  • たとえ安くても、質の悪い素材を仕入れれば余計なところで損が発生する(仕入部門)
  • 顧客の要望で下げ続ければ原価割れをおこしてしまう(営業部門)

いくらで販売すれば利益が出るのかを知っておけば交渉もしやすくなります。原価を意識しないでいると、取引先から販売価格を下げるように言われて売れば売るだけ損失が出るようになってしまった、ということにもなりかねません。

原価計算をきっちりとおこない、社員一同が原価意識を持つことがこれからの経営の活路につながります。

原価計算の5つの目的と財務会計・管理会計

1962年に策定された原価計算基準では、原価計算には5つの目的があるとされています。

  1. 財務諸表目的:損益計算書など社外の人向けの決算資料をつくるため
  2. 価格計算目的:製品をいくらで売るかを検討するため
  3. 原価管理目的:原価の内容を分析して無駄なコストを削るため
  4. 予算編成目的:来月の予算、来年度の予算を考えるため
  5. 経営計画目的:今後の経営計画を考えるため

参考:企業会計審議会「原価計算基準」

企業の会計は2つに分けられます。株主など社外の人向けに報告するための「財務会計」と会社の状態を知るために使う「管理会計」です。1の財務諸表目的は財務会計、2~5は管理会計を目的にしているといえます。それぞれ解説します。

原価計算の目的1.財務諸表目的

株主やお金を借りている銀行などに、会社の経営成績を報告するために作るのが財務諸表や決算書で、原価計算は欠かせません。財務諸表の一つ、損益計算書(P/L)には「売上原価」が記載されます。

【一般的な損益計算書】
原価計算 売上原価 PL 損益計算書
売上から売上原価を除いた「売上総利益(粗利)」は重要な経営指標の一つです。

売上総利益(粗利)=売上-売上原価

売上総利益が低ければ、営業利益や経常利益といった会社の利益も少なくなってしまいます。財務諸表について詳しく知りたい方は、以下も参考にしてください。

原価計算の目的2.価格計算目的

作った商品をいくらで売るのかを決めるために、原価計算は必要です。原価よりも高い価格で売らなければ、利益が出ません。

原価を正確に把握すれば、適正な価格はいくらか、どこまで値下げができるのか、といった判断が合理的にできるようになります。

原価計算の目的3.原価管理目的

コスト削減できるところはどこか、を把握するために原価計算を行います。原価として何にいくらかかっているのかがわかれば、無駄を削りやすくなります。

パン屋さんの例で言えば、「店舗の家賃が高すぎる」「材料の小麦粉の値段が上がっている」などのコストを把握できるようになるのです。

原価計算の目的4.予算編成目的

次期の予算編成をする目的で原価計算を行います。

利益の目標額を決めても、原価がわからなければ目標の立てようがありません。原価計算を行うことで、費用の項目別に予算目標を立てることもできます。

  • 材料の安い仕入先を見つける
  • 効率化で残業代を減らす
  • テナント家賃交渉をして賃料を減らす

原価においてどこが無駄なコストなのかを把握して、原価の目標額を決めて予算編成を行うことで前年よりも利益が改善するはずです。

原価計算の目的5.経営計画目的

中長期的な視野で、経営計画を策定する目的で原価計算を行います。

「3年後の売上は2倍に、利益は3倍にする」といった経営計画も原価計算を行わなければ、達成可能かどうかがわかりません。原価計算を行うことで、経営計画の数値的な根拠を持たせることができます。

原価計算の「原価」は3種類


製造原価を計算するうえで大切なのは、製造するためにかかった費用を分類ごとにわけ、それぞれ計算をすることです。『形態別分類』と呼び、以下の3つに分けられます。

  1. 材料費
  2. 労務費
  3. 経費

以下で詳しく解説します。

原価の構成要素1.材料費

材料費は製造に使用する主な材料や原料の原価で、製造すればするほど発生する費用。

たとえば、パン屋ならば小麦粉やパンの中に入れる食材や調味料が材料費にあたります。
また、あんぱんに使用する小豆など外部から仕入れてくるもの、パンを焼くための燃料、製造過程で使用するハケや手袋、1万円以内の機械なども材料費に分類されます。

製造される品物の主な原料を直接材料費、その他の材料については間接材料費に分類されます。たとえば、パン屋ならば小麦粉が直接材料費、生地の中に入れる塩や砂糖、イースト菌が間接材料費に分類されます。

材料費をさらに細かく見ると5つにわけることができます。

  • 素材・原材料費:製造される物の主な材料
  • 買入部品費:外部企業から仕入れて使用する物
  • 燃料費:製造にかかるガス代、燃料など
  • 工場消耗品費:製造工程で補助的に使用される少額のもの
  • 消耗工具器具備品費:耐用年数が1年以内、金額が10万円以下の工具や器具

原価の構成要素2.労務費

労務費には製造現場で働く人の賃金、事務所などで働く人の給料、賞与手当や退職金の繰り入れが分類されます。

商品を製造し販売するまでに発生する労働力への対価が労務費です。
労務費をさらに細かく見ると6つにわけられます。

  • 賃金:製造現場・工場などで働く人に支払われる費用
  • 給与:主に事務所など、製造現場外で働く人に支払われる費用
  • 雑給:パートタイマーやアルバイトへ支払われる費用
  • 賞与手当:年に数回のボーナス、報奨金、夏季・冬季手当として支払われる費用
  • 退職給与引当金の繰入:将来支払われる退職金として企業内で毎月積み立てられる費用
  • 福利厚生費:社会保険の会社負担分など

原価の構成要素3.経費

上記の材料費、労務費以外の費用が経費に分類されます。そのため経費は多種多様なものが入ります。
金額的にも大きなものから小さいものまであり、とくに大きな金額は工場や作業場を維持する電気代などです。

材料費にも燃料費がありますが、製造機械を動かしたり直接的に製造にかかったものが材料費の燃料です。経費も細かく分けられますが、材料費と労務費とは分類方法が異なります。

  • 測定経費:電気代や水道代などメーターが設置され消費量が測定できる経費
  • 支払経費:何に発生した経費か直接把握できる経費
  • 月割経費:賃貸料や保険料など数か月分を支払う経費
  • 発生経費:発生はしているが、お金の支払いは伴わず経費として把握しておくもの

以上の材料費・労務費・経費は『原価の3要素』と呼ばれ、原価計算の基礎となる考えです。

原価計算の費用の考え方ー直接費と間接費ー

原価は1つの製品ごとに計算をします。材料費・労務費・経費と、直接費・間接費をまとめると以下の表になります。

原 価
材料費直接材料費間接材料費
労務費直接労務費間接労務費
経 費直接経費間接経費

例えば、原料Aは商品Aにだけ使用され、原料Bは商品Bにだけ使用する場合。この場合はどこにどれだけの量が消費されているのかが直接把握できますね。でも、電気代は商品Aと商品Bに同じように消費され、くわえて工場の明かりや事務所にも使われるとします。

この電気代のように複数の製品にまたがったり、どこでどのように消費されているかが把握しにくいものが出てきます。それらの計算をスムーズにするために費用を直接費と間接費に分けるのです。

  • 直接費:どの製品に消費されたかが直接把握できる費用
  • 間接費:複数の製品にまたがって発生したり、製造現場外で発生する費用

先ほどの例で言えば、原料A・Bは直接費、電気代は間接費です。

原価計算の種類


簿記の中でも工業簿記の原価計算は複雑で、計算方法も多岐にわたるので苦手な人も多いです。
ここで、原価計算の種類を整理しましょう。

原価計算の種類を一覧表にすると以下の通りです。

考え方原価計算の種類
目的別標準原価計算
全部原価計算(実際原価計算)
直接原価計算
生産形態別総合原価計算単純総合原価計算単純工程単純総合原価計算
工程別単純総合原価計算
等級別総合原価計算単一工程等級別総合原価計算
工程別等級別総合原価計算
組別総合原価計算単一工程組別総合原価計算
工程別組別総合原価計算
個別原価計算

原価計算は考え方によって計算の方法が違います。原価計算を大きく分けて目的別・生産形態別に分けて解説していきます。

原価計算を目的で分けた場合

原価計算を目的別に分類すると3種類です。

  • 標準原価計算
  • 全部原価計算(実際原価計算)
  • 直接原価計算

標準原価計算

標準原価計算は目標原価計算とも呼ばれ、理想的な原価で計算をする方法です。
予算編成の際には標準原価計算を使用します。
材料費の目安、労務費の目安、経費の目安を設定して計算をし、目安以上の費用が発生した場合は分析をします。
以下で述べる全部原価計算(実際原価計算)で実際に発生した原価と比べることで、コスト削減のための分析ができます。

全部原価計算(実際原価計算)

実際に発生した費用で行うのが全部原価計算です。実際原価計算とも呼ばれます。
一番正確な原価が把握できる計算方法ですが、費用が発生しない限り計算ができず時間がかかります。
この全部原価計算は簿記を学ぶ上でとても重要です。簿記でいうところの原価計算とは全部原価計算を指します。
先に述べた標準原価計算との差を見ることで、目標の原価を達成できたかを確認します。

直接原価計算

直接費のみで原価計算を行うのが直接原価計算です。
間接費は加えずに計算する方法で、いくつ商品を売れば固定費を回収できるのかといった管理会計の考え方です。
損益分岐点の算出にも使われます。
損益分岐点について詳しくは以下の記事をご覧ください。

原価計算を生産形態で分けた場合

原価計算を生産形態別に分けると以下の2つに分けられます。

  • 総合原価計算
  • 個別原価計算

さらに総合原価計算は3つに分けられます。以下で一つずつ説明してきます。

総合原価計算

1つから複数の規格品を連続して量産する場合に用いられる計算方法です。
多くの会社・工場で採用されており、総合原価計算はさらに3つに分類されます。

A.単純総合原価計算

総合原価計算の基本になる計算方法で、1つの製品を量産する場合に使用される方法。
さらに詳しく見ると、単純工程単純総合原価計算と工程別単純総合原価計算に分けられます。

B.等級別総合原価計算

同じ規格品を連続して製造しますが、品質などで等級をわける必要がある場合に使用されます。等級とはサイズ、機能などがあげられます。
さらに詳しく見ると、単一工程等級別総合原価計算と工程別等級別総合原価計算にわけられます。

C. 組別総合原価計算

同じ種類の製品ですが、デザインなどが違うものを量産する場合に使用されます。
さらに詳しく見ると単一工程組別総合原価計算と工程別組別総合原価計算にわけられます。
工程別とは、第一工程、第二工程など次の工程へ引き継がれながら製造される場合において、工程ごとに計算をすることです。
どの工程でロスが出ているかなど把握ができます。

個別原価計算

顧客からの個別注文に応じて製品を受注し、そのつど原価を計算する方法です。
主に建設業やソフトウェア開発などで採用されています。

原価計算まとめ

原価計算とは、売上の元になる費用を計算することです。原価計算は、財務諸表を作成するだけではなく、商品の価格を決めたり予算を決めたりする目的にも使われています。

原価計算は会社の経営状態を知るための考え方の基礎になります。
原価意識を経理部門だけではなくそれぞれが持つことで会社の経営力向上になるでしょう。

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