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領収書は訂正できる?注意点や再発行が望ましいケースを解説

更新日:2024.12.27

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領収書の記載内容に間違いを見つけたとき、訂正は可能なのでしょうか。宛名や金額を訂正していいか悩んだり、取引先から訂正を求められて対応に困ったりした経験がある方も多いはずです。

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本記事では、領収書の正しい訂正方法や、再発行が望ましいケース、注意点についてわかりやすく解説します。読めば、領収書の訂正・再発行時の適切な対応がわかり、取引先との信頼関係を損なうことなく、スムーズな経理処理が行えるようになります。

領収書保管マニュアル

原則、発行者側であれば領収書の訂正が可能

領収書に日付や金額、但し書きなどを間違って記載してしまった場合、発行者側であれば基本的に訂正することができます。ただし、領収書に「訂正したものは無効」などの文言が記載されている場合は、訂正すると無効になってしまうため、再発行による対応が必要です。

また、クラウド領収書やインボイス(適格請求書)として発行した領収書についても、訂正ではなく再発行で対応する必要があります。これは、電子データの性質上、事後的な修正が改ざんとみなされる可能性があるためです。

訂正が認められる場合でも、金額や宛名、日付など重要な項目の訂正は、後日のトラブルを避けるため、可能な限り再発行で対応することが望ましいでしょう。特に、税務調査の際に不審に思われないよう、慎重な対応が求められます。

金額の訂正する必要がある場合は領収書の再発行を

領収書の記載内容の中でも、金額は特に重要な項目です。金額の訂正は法律でも認められておらず、取引先との信頼関係にも関わる重要事項となります。そのため、金額を間違えて記載してしまった場合は、訂正ではなく必ず再発行での対応が必要です。

再発行する際は、金額の前に「¥」、後ろに「ー」を記載し、3桁ごとにカンマを入れるなど、基本的な記載ルールを守ることが重要です。これは、後から金額が改ざんされるのを防ぐための対策です。

また、再発行した領収書には「再発行」である旨を明記し、枝番を振るなどして、オリジナルの領収書と区別できるようにしましょう。書類の混乱や二重請求を防ぐためにも、発行者側の責任として、誤った領収書は必ず回収するようにします。

領収書の再発行が望ましいケース

領収書の訂正は発行者側であれば可能ですが、特に重要な項目については再発行での対応が推奨されます。

  • 日付を間違えた場合
  • 宛名を間違えた場合

ここでは、再発行が望ましい代表的なケースとして、日付と宛名の間違いについて解説します。

日付を間違えた場合

領収書の日付を間違えた場合、二重線と訂正印による修正は可能ですが、再発行での対応が望ましいとされています。その理由は、日付の訂正が税務調査の際に不審に思われる可能性があるためです。

例えば、売上が多かった月に支出を集中させて納税額を抑えるような不正に利用される可能性があります。そのため、取引の信頼性を保つためにも、日付の訂正は避け、正しい日付で再発行することをおすすめします。

宛名を間違えた場合

宛名の間違いは、取引先に対して失礼になるだけでなく、税務上の問題も引き起こす可能性があります。特にインボイス制度への対応において、宛名は仕入税額控除の適用要件の一つとなっているため、正確な記載が求められます。

訂正した領収書では税務署に正式な証拠書類として認められないリスクもあるため、宛名を間違えた場合は速やかに領収書を回収し、正しい宛名で再発行することが推奨されます。取引先との良好な関係を維持するためにも、丁寧な対応を心がけましょう。

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領収書の訂正で起こり得るリスク

領収書の訂正は、適切な方法で行わなければ深刻な問題を引き起こす可能性があります。特に注意すべきは、不適切な訂正方法による修正は、私文書偽造罪(刑法159条)に該当するリスクがあるということです。

また、税務調査の際に不審な領収書として指摘される可能性もあります。特に、金額の訂正や複数箇所の訂正がある場合、取引の信憑性を疑われる可能性が高くなります。その結果、経費として認められず、追徴課税を受けるリスクもあります。

さらに、取引先との関係性にも影響を及ぼす可能性があります。頻繁な訂正や不適切な訂正方法は、業務の正確性や信頼性に疑問を持たれる原因となり、取引関係の悪化につながる恐れがあります。

そのため、訂正が必要な場合は、可能な限り再発行での対応を検討し、やむを得ず訂正する場合も、必ず二重線と訂正印という正しい方法で行うことが重要です。

領収書を訂正する方法

やむを得ず領収書を訂正する必要がある場合、以下の手順で正しく訂正を行います。

まず、訂正したい部分に二重線を引きます。この際、元の文字や数字が読み取れる状態を維持することが重要です。次に、二重線を引いた部分の上に訂正印を押します。訂正印は、誰が訂正したのかを明確にするため、社内書類の場合は担当者の印鑑、社外書類の場合は会社の角印を使用することが推奨されます。

テキスト

中程度の精度で自動的に生成された説明

なお、訂正印としてシャチハタなど誰でも入手できる印鑑は避けるべきです。これは、受領側が勝手に訂正できてしまう可能性があるためです。また修正液や修正テープ、砂消しゴムなどでの訂正は認められません。

訂正する箇所が多いと書類が見づらくなり、信頼性も低下するため、下書きを作成してから訂正することをおすすめします。ただし、できるだけ訂正は避け、再発行での対応を検討しましょう。

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領収書を訂正する際の注意点

領収書の訂正は、取引の信頼性と透明性を確保するために、正しい方法で行う必要があります。

  • 修正ペンや修正テープは使用しない
  • シャチハタの利用はしない

ここでは、訂正時に絶対に避けるべき方法として、修正ペン・修正テープの使用とシャチハタの利用について説明します。

修正ペンや修正テープは使用しない

領収書の訂正に修正ペンや修正テープを使用することは、絶対に避けなければなりません。これらの方法で訂正すると、元の記載内容が完全に見えなくなってしまい、改ざんの疑いを持たれる可能性があります。

税務調査の際にも、修正箇所の履歴が確認できないため、不正な処理として指摘される恐れがあります。領収書は重要な証憑書類であるため、訂正前の内容が確認できる二重線での訂正が必要です。

税務調査については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

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シャチハタの利用はしない

領収書の訂正印として、シャチハタなどのインク浸透印を使用することは推奨されません。その理由は、シャチハタが誰でも簡単に入手できる印鑑であり、受領側が勝手に訂正できてしまう可能性があるためです。

特に社外向けの書類では、角印などの会社の正式な印鑑を使用することが望ましいとされています。これは、訂正した人の特定を可能にし、取引の信頼性を担保するためです。シャチハタは社内書類に限り、会社で認められている場合のみ使用するようにしましょう。

領収書を訂正しないために!間違えずに書くためのポイント

領収書の訂正は可能な場合でも、できるだけ避けるべきです。ここでは、領収書作成時の間違いを防ぐための効果的な方法を紹介します。

  • 名刺をもらうまたは宛名を書いてもらう
  • 下書きをしてから書く

特に多いミスである宛名の書き間違いへの対策と、確実に正しく記載するための下書きのポイントについて解説します。

名刺をもらうまたは宛名を書いてもらう

宛名は領収書でよく間違えやすい項目の一つです。特に、会社名の正式名称や漢字の旧字体、カタカナ・アルファベット表記など、細かな部分での間違いが発生しやすくなっています。

このような間違いを防ぐため、取引先からあらかじめ名刺をもらっておくことをおすすめします。口頭でのやり取りだけでは、「川元」を「川本」、「株式会社〇〇」を「〇〇株式会社」と間違えるなどのミスが起こりやすいためです。名刺を見ながら記載することで、正確な宛名を書くことができます。

下書きをしてから書く

領収書を作成する前に、必ず下書きを行うことをおすすめします。下書きの際は、以下のポイントに注意しましょう。

まず、必要事項を記入する確認リストを作成し、チェックしながら下書きを進めます。金額は「¥」と「ー」の記載、3桁ごとのカンマ区切りなど、細かいルールを意識して書きます。特に高額な取引の場合は、複数の担当者でチェックするとより確実です。

また、但し書きは具体的な内容を記載し、「お品代」などの曖昧な表現は避けましょう。下書きの段階で取引先に内容を確認してもらうことで、より正確な領収書を作成することができます。

領収書を間違えた際のお詫びの仕方

領収書の記載内容に間違いがあった場合、迅速な対応とともに、適切なお詫びの姿勢を示すことが重要です。間違いを発見したら、すぐに取引先に連絡し、状況を説明するとともに、誠意を持って謝罪しましょう。

領収書を間違えた際のお詫びの文章の書き方・例文

お詫びの文章は、以下の要素を含めて作成します。

  • 日頃の取引への感謝
  • 間違いの具体的な内容と原因
  • 再発防止に向けた取り組み
  • 今後のお願い

【例文】

拝啓

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

先日お送りした〇月分の領収書について、弊社担当者の確認不足により、金額に誤りがございました。ご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。

つきましては、正しい金額で再発行した領収書を同封させていただきましたので、お手数ではございますが、誤った領収書は破棄いただきますようお願い申し上げます。

今後はこのような事態が発生しないよう、チェック体制を強化して参ります。何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

敬具

領収書の郵送方法については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

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まとめ

領収書の訂正は、発行者側であれば可能ですが、取引の透明性と信頼性を確保するためには、再発行での対応が望ましいケースが多くあります。特に金額、日付、宛名などの重要項目については、税務上のリスクや取引先との関係性を考慮し、再発行を検討すべきです。

やむを得ず訂正する場合も、正しい方法で行うことが重要です。二重線と訂正印による適切な訂正手続きを踏むことで、後のトラブルを防ぎ、スムーズな経理処理が可能となります。また、名刺の活用下書きの徹底など、事前の対策を講じることで、領収書の間違いを未然に防ぐことができます。

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