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「領収書を送りたいけれどマナーが分からない」「送付状の書き方が分からない」など、領収書の送り方に迷っている人も多いのではないでしょうか。領収書は商品やサービスの代金を受け取ったことを証明する大事な書類です。取引先から代金を受け取った場合は、適切な方法で領収書を発行しましょう。
この記事では、領収書の送付で必要となる送付状の基本的な役割や具体的な書き方について詳しく解説します。領収書送付状の書き方を理解できれば、業務効率が格段にアップします。紹介する例文を参考に、領収書送付状をスピーディーに作成しましょう。
領収書送付状のマナーと送り方の注意点にも触れるため、ぜひ最後までご覧下さい。
送付状とは?
送付状とは、書類を送付する際に同封する書類で、相手が最初に目にするものです。添え状や添え書と呼ばれることもあります。郵送であれば書類の1番上、ファックスであれば1枚目になります。
まずは、送付状の役割と記載すべき内容を確認しておきましょう。
送付状の役割とは?
送付状には、送付した文書の概要を知らせる役割があります。送付状を添えることで、「誰に送りたいのか」「何を送るのか」が一目で分かるようになります。
領収書を取引先に送る場合は、領収書だけでなく送付状もセットで送るのが一般的です。送付状を添えることで、相手に失礼のないようにあいさつをしたり、日頃の感謝を伝えたりできます。また、同封した書類に関する補足事項を付け加えることも可能です。
送付状なしで領収書を送った場合、マナーを知らない人だと思われたり他の書類に紛れたりするおそれがあります。領収書に限らず、請求書や見積書、契約書などの送付時にも必要となるため、書き方をしっかりマスターしておきましょう。
送付状に記載すべき内容
送付状には、記載すべき内容がいくつかあります。
領収書に送付状を添える場合は、以下を参考に作成しましょう。
令和〇年〇月〇日 〇〇株式会社〇〇部 〇〇〇〇様 領収書送付のご案内 拝啓 立冬の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 早速ではございますが、〇月〇日にご購入頂きました商品「◇◇」の代金をお振込み頂きまして誠にありがとうございました。 つきましては、領収書を送付させて頂きますので、ご査収の程、よろしくお願い申し上げます。 敬具 記 内容:領収書 1通 以上 株式会社△△ 〒〇〇〇-〇〇〇〇東京都〇〇区〇〇町〇-〇-〇 TEL:03-0000-0000 担当 △△△△ |
以下では、送付状に記載すべき内容を詳しく解説します。
日付
いつ作成した送付状なのかが分かるように、「令和〇年〇月」のように和暦・西暦を省略せずに日付を記載します。参考例では右上に記載していますが、本文の左下に記載しても問題ありません。和暦・西暦が混在しないように、書類内の書き方は統一しましょう。
なお、送付状に記載する日付は、領収書の発行日ではなく送付状を作成した日を記載します。領収書と送付状の日付を一致させる必要はありません。
作成時に発送日が決まっていなければ他の部分を先に埋めておき、日付が確定次第、記載すればスムーズに準備できます。ただし、送付前に必ず日付が記載されているか確認しましょう。
宛先
誰に対して領収書を送っているのかを示すために、用紙の左上に宛先を記載します。「〇〇株式会社〇〇部〇〇〇〇様」のように、取引先の社名と担当者の部署・氏名を記載するのが一般的です。部署や氏名が分からなければ省略しても問題ありません。
ただし、取引先の社名は、(株)(有)と略さずに正式名称を記載しましょう。取引先が個人の場合は、「氏名のみ」もしくは「屋号 名前」を記載します。
社名や氏名の誤りは失礼に当たるため、間違いがないか必ず最終チェックをしましょう。
表題(件名)
送付する書類の内容が一目で分かるように、本文の上に表題(件名)を記載します。領収書送付状の表題は、「領収書送付のご案内」「領収書送付のお知らせ」が一般的です。表題が長過ぎると分かりにくくなるため、簡潔にまとめましょう。
視認性を高めるために、中央配置で本文よりひと回り大きいフォントを選択します。本文の文字サイズの1.3倍が目安です。本文の文字サイズが11ポイントの場合は、表題のサイズを14ポイントにするとバランスが良くなります。メリハリがつくように表題に下線を引くのも効果的です。
本文
本文には、以下の内容を順に記載します。
- 時候のあいさつ
- 本件の詳細
- 締めのあいさつ
時候のあいさつは季節に合わせて変える必要があります。何を記載すればいいか悩む場合やバリエーションを増やしたい場合は、「時候のあいさつ 〇月」のようにインターネットで検索してみましょう。
本件の詳細には、請求した日付や取引内容を詳しく記載します。担当者がイメージしやすいように、「〇月〇日にご購入頂きました商品の代金」など具体的に記載するのがポイントです。続けて入金に対するお礼の言葉を述べ、領収書を送付した旨を記載しましょう。
最後に、簡単なあいさつ文を添えて本文を締めくくります。
記書きをして締める
記書きとは、書面の要点を明確化させるために役立つ項目です。書面の中で1番伝えたいことを箇条書きにします。領収書送付状では、「領収書 1通」のように一緒に送る書類の内容と部数を記載しましょう。
本文下の中央に「記」、1行あけて左寄せで領収書の内容と部数、1行あけて右寄せで「以上」を配置します。送付状に限らず、ビジネス文書では「記」「以上」をセットで使い、1ページに収めるのが基本です。2ページに分けないように注意しましょう。
差出人情報
誰が送った書類なのか一目で分かるように、右寄せで差出人情報を記載します。封筒に差出人情報が書かれている場合でも、雨で濡れて読めなくなったり封筒を処分したりする可能性もあるため、必ず送付状にも記載しましょう。
差出人情報に記載する内容は、以下の通りです。
- 発行会社
- 住所
- 電話番号
- 担当者名
個人の場合は、個人名を記載します。会社名の横に会社角印、担当者名の横に担当者印を押すことで、より正式な文書であることを示せます。
領収書送付状のマナーと注意点
領収書送付状を作成し送付する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 簡潔に分かりやすく1枚に収める
- 書類の1枚目に添える
送付状はあくまで送付する書類の内容を簡潔に示すためのものです。長いと読み手が内容を把握するのに時間がかかり、負担になります。また、長過ぎるあいさつ文や必要以上に丁寧な表現は、読みにくさにつながることがあります。相手に手間と時間を取らせないように、必要な情報のみを記載して1枚に収めましょう。
さらに、相手が書類を目にした際にすぐに内容を確認できるように、送付状は必ず1枚目にします。書類の順番を間違えると、送付状の役割を果たさなくなるため注意しましょう。
領収書送付状の具体例とテンプレート
領収書送付状は、送付手段によって書き方にやや違いがあります。
郵送・ファックスで送る場合とメールで送る場合の具体例とテンプレートを確認しておきましょう。
郵送・ファックスで送る場合の送付状
領収書を郵送・ファックスで送る場合は、正式なビジネス書面の形式で送付状を作成します。
郵送・ファックスで送る場合のテンプレートは、以下の通りです。
令和〇年〇月〇日 〇〇株式会社〇〇部 〇〇〇〇様 領収書送付のご案内 寒さも一段と厳しくなる折、いかがお過ごしでしょうか。色々とご懇情をたまわり、深謝申し上げます。 早速ではございますが、〇月〇日にご購入頂きました商品「◇◇」の代金をお振込み頂きまして誠にありがとうございました。 つきましては、領収書を送付させて頂きますので、ご査収の程、よろしくお願い申し上げます。 記 内容:領収書 1通 以上 株式会社△△ 〒〇〇〇-〇〇〇〇東京都〇〇区〇〇町〇-〇-〇 TEL:03-0000-0000 担当 △△△△ |
ファックスで送る場合は、表題を「FAX送付状」にすると送付手段が明確になります。
メールで送る場合の送付状
領収書をメールで送る場合は、ビジネスメールのマナーを守りつつ送付状を作成しましょう。
メールで送る場合のテンプレートは、以下の通りです。
件名:【領収書】○月分領収書送付(添付書類1通) 本文:〇〇株式会社〇〇部 〇〇〇〇様 いつもお世話になっております。○○株式会社の○○です。 先日は〇月〇日にご購入頂きました商品「◇◇」の代金をお振込み頂きまして誠にありがとうございました。 つきましては、領収書をお送りいたしますので、ご査収の程、よろしくお願い申し上げます。 (添付ファイル:××××領収書(PDF)) 株式会社△△ 〒〇〇〇-〇〇〇〇東京都〇〇区〇〇町〇-〇-〇 TEL:03-0000-0000 MAIL : ××××@××××.co.jp 担当 △△△△ |
件名には、一目で要件が分かるように「○月分領収書送付」と簡潔に記載します。領収書を電子的に送付するには、事前に領収書をスキャンまたはPDF化しておく必要があります。領収書作成システムで発行・送信することも可能です。
領収書を郵送する際の方法と注意点
領収書を郵送する場合は、確実に取引先に届くように適切な方法で送らなければなりません。
ここからは、領収書の郵送方法と注意点について詳しく解説します。
領収書の郵送方法
領収書および送付状は、国税関係書類に分類されます。領収書の発行は原則1取引につき1枚です。税金の申告時に必要となる書類であるため、安全性の高い方法で送りましょう。
領収書や請求書、申告書などの信書の郵送ができるのは、総務大臣の許可を受けた信書便事業者(日本郵便株式会社など)に限られます。万が一、信書便事業者以外の方法で領収書を送った場合、法律違反とみなされるおそれがあります。
日本郵便株式会社は信書便事業者であるため、普通郵便を利用しても法律的には問題はありません。ただし、普通郵便は配達情報の把握ができないため、紛失や遅延のリスクがあります。安全かつ確実に領収書を郵送するには、配達状況を追跡できる簡易書留や引き受けを記録する特定記録などの利用が適しています。
なお、領収書の再発行は不正使用のリスクがあるため避けた方が無難です。
簡易書留
簡易書留は、郵便物の引き受け日時と配達の時間が記録される郵送方法です。郵便物は手渡しされるため、安全性・確実性が高い方法と言えます。休日配送にも対応しており、不在時には希望日時に再配達が可能です。
簡易書留の利用料金は、「基本料金+350円」です。重量50gまでの定形郵便物であれば、「110円+350円=460円」で郵送できます。万が一、郵便物が壊れたり届かなかったりした場合は、原則5万円までの実損額が賠償されます。
ただし、簡易書留はポスト投函ができません。郵便局の窓口で郵便物と書留・特定記録郵便物等差出票を渡す必要があります。
レターパック
レターパックは、郵便物の配達状況を把握できる郵送方法です。休日も配送されるため、時間のロスが生じにくいのがメリットです。
レターパックには、「レターパックプラス」「レターパックライト」の2種類があり、それぞれの特徴と利用料金は、以下の通りです。
特徴 | 利用料金 | |
レターパックプラス | 対面手渡しで受領印を受け取る | 全国一律600円 |
レターパックライト | 郵便受けへ投函される | 全国一律430円 |
いずれもA4ファイルサイズまでの書類を送ることができます。レターパックライトは厚さが3cm以内の規定がありますが、領収書など厚みのない書類であれば問題なく利用できます。郵便局の窓口での差出しの他、ポスト投函も可能です。
特定記録
特定記録は、郵便物の引き受けを記録できる郵送方法です。配達完了メール通知サービスを利用してインターネット上で配達状況の確認ができます。
特定記録の利用料金は「基本料金+210円」です。郵送する場合は、郵便局の窓口で郵便物と書留・特定記録郵便物等差出票を渡しましょう。簡易書留と同様に、ポスト投函はできません。特定記録はゆうメールにも対応していますが、ゆうメールで信書を送ることはできないため注意が必要です。領収書を送る際は、必ず郵便物扱いで出しましょう。
特定記録の郵便物は、郵便受けへの投函になります。手渡しを希望する場合は簡易書留やレターパックプラスを利用しましょう。
封筒に関する注意点
封筒の表面に記載すべき内容は、以下の通りです。
- 取引先の住所
- 取引先の会社名
- 敬称
- 「領収書在中」
取引先の住所・会社名を記載し、会社名に続けて「御中」と記載します。個人宛であれば、「様」を記載するのがマナーです。縦書きであれば左下、横書きであれば右下に「領収書在中」と記載するか判子を押すことで、郵便物の内容を把握しやすくなります。
領収書は三つ折りにして、開封時に書類の上側が見えるように封筒に入れます。雨に濡れないように、クリスタルパック(OPP袋)に入れると万全です。郵便料金は郵便物の重さによって変わるために、切手の値段を間違わないように注意しましょう。
郵送後は、トラブルを防ぐために取引先へ領収書を郵送した旨をメールで連絡するのがおすすめです。
領収書を郵送する際の方法と注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
領収書の電子化のすすめ
領収書を電子化することで、郵送ではなくメールに添付する形での送付が可能です。近年、電子帳簿保存法の施行を受けて、領収書を電子化して発行・管理する企業が増えています。
ただし、領収書を電子化するには、いくつかの要件を満たさなければなりません。
領収書の電子発行のメリットや電子化に必要な要件を理解した上で、今後の対応を検討しましょう。
領収書の電子発行のメリット
領収書の電子化には、以下のメリットがあります。
- 送料がかからない
- 瞬時に送付できる
- 5万円以上の領収書も収入印紙を貼付しなくて良い
領収書を紙で郵送する場合、1通当たりの郵送コストは500円前後です。電子化してメールで送付すれば、郵送コストだけでなく紙やインク代などの消耗品費も削減できます。
また、郵送は取引先に到着するまでに数日かかりますが、メールなら瞬時に送付できます。印刷・封入・投函などの手間も減らせるため、業務効率化にも効果的です。
さらに、紙の領収書を発行する場合、取引金額が5万円以上になると収入印紙の貼付が必要です。一方、電子化してメールで送付すれば収入印紙は不要となるため、コスト削減になります。
領収書を電子化すれば手間とコストが減る
領収書の電子化によって手間とコストが減ることは、会社にとって大きなメリットです。業務の効率化はもちろん、従業員のモチベーションの向上や環境への配慮にもつながるでしょう。
ただし、電子帳簿保存法では、電子化した領収書の保存に以下の要件を設けています。
- システム概要書やディスプレイなどを備え付けること
- 税務職員の求めに応じてデータをダウンロードできる状態にしておくこと
参考:国税庁|「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)」
電子帳簿保存法で定める電子化した領収書の保存要件を満たしていない場合、規定違反とみなされるおそれがあるため注意しましょう。
領収書の電子化についてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧下さい。
テンプレートを参考に正確かつ丁寧な送付状を作成しよう
この記事では、領収書送付状の役割と書き方、マナーと注意点について詳しく解説しました。
送付状には、送付した書類の内容を簡潔に伝えること以外に、企業の顔としての役割もあり、取引先との関係性を良好に保つ上で重要なツールです。正確かつ丁寧な送付状を作成することで、企業の信頼性を高めたり領収書の送付に関するトラブルを防ぐことができます。
スムーズに領収書の送付状を作成したい場合は、ご紹介した見本や無料のテンプレートを活用するのがおすすめです。
しかし、近年では電子帳簿保存法の施行やペーパーレス化の推進により、領収書を電子化する企業が増えてきました。領収書の電子化はコスト削減や業務効率化などのメリットが得られるため、電子化した領収書の保存要件を確認した上で、今後の対応を検討してみましょう。