税金・保険料

消費税の非課税取引とは?免税や不課税との違いを徹底解説

更新日:2025.01.28

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非課税取引

インボイス制度の導入後、これまで以上に消費税を含んだ取引が複雑化しています。特に非課税や不課税、免税などの違いを明確に理解していないと、経理業務の効率化は難しいでしょう。

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この記事では消費税の非課税取引について、基本から具体的な取引例、不課税や免税との違い、非課税取引でのインボイス発行の必要性などを解説します。経理業務の効率化に加え、経理担当者としてのスキルアップを目指す場合にも、ぜひ参考にして下さい。

非課税取引、不課税、免税の定義と違い

消費税の取引には非課税取引以外に不課税取引、免税など似たような取引がいくつかあります。ここではそれぞれの取引の概要を見た上で、非課税取引との違いを見てみましょう。

非課税取引とは

非課税取引とは、通常の取引が消費税を含む取引なのに対し、消費税が課税されない取引を指すものです。

非課税取引の対象となるのは、土地や有価証券、商品券などの債権譲渡が該当します。その他、預貯金や貸付金の利子、社会保険医療、介護保険サービスの提供、助産、学校教育、住宅の貸付けなども非課税取引です。

これらは事業者が対価を得て行う取引ではあるものの、社会政策的配慮や課税対象としてなじまないことを理由に消費税を課税せずに取引を行います。

参考:国税庁|No.6201 非課税となる取引

不課税取引とは

不課税取引とは、非課税取引に含まれない取引全般を指すものです。具体的には国外で行われる取引、資産の譲渡に該当しない取引などが不課税取引となります。主なものとして挙げられるのは次のような取引です。

  • 給与・賃金
  • 寄付金・祝金・見舞金・国や地方公共団体からの補助金や助成金
  • 無償による試供品や見本品の提供
  • 保険金や共済金
  • 株式配当金やその他の出資分配金
  • 資産を廃棄、もしくは盗難、滅失があった場合
  • 心身や資産について加えられた損害の発生に伴って受け取る損害賠償金

参考:国税庁|No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例

免税取引とは

免税取引とは、課税取引ではあるものの、国外へ輸出する取引のため消費税が免除される取引を指すものです。具体的には次のような取引が免税取引の対象となります。

  • 国内からの輸出として行われる資産の譲渡もしくは貸付
  • 国内と国外との間での通信や郵便、信書便
  • 非居住者に対する鉱業権や工業所有権、著作権、営業権などの無体財産権の譲渡もしくは貸付
  • 非居住者に対する役務の提供

参考:国税庁|No.6551 輸出取引の免税

なお、免税取引が可能なのは輸出物品販売所であり、国内事業者が免税取引を行う場合は税務署への申請が必要です。

非課税取引と不課税取引の違い

不課税取引は、消費税の課税がない点では非課税取引と変わりません。異なるのは課税売り上げ割合を計算する際の取り扱いです。

通常、課税売り上げ割合は、分母が課税取引と非課税取引、免税取引の合計額である総売り上げ高で、分子は課税取引および免税取引の合計額である課税売り上げ高となります。

非課税取引は、上述したように分母にのみ含んで計算しますが、不課税取引は元から消費税の適用範囲外となるため、分母、分子のどちらにも含みません。

参考:国税庁|No.6209 非課税と不課税の違い 消費税のあらまし(令和6年6月)

非課税取引と免税取引の違い

非課税取引は消費税が課税されない取引で、土地や有価証券の譲渡など国内取引でも消費税の対象とならないものです。

一方の免税取引は、輸出や国際輸送など国外で消費される取引で、消費税が免除されます。免税取引では仕入れにかかる消費税を控除できるのに対し、非課税取引では控除が認められません。ただし、免税取引に該当するためには一定の条件や証明書が必要です。

参考:国税庁|No.6205 非課税と免税の違い

電子インボイス基礎ガイド

非課税取引が適用される品目と条件

改めて非課税取引が適用される品目の詳細を紹介した上で、条件についても見てみましょう。

非課税取引の対象となる性質の商品やサービス

非課税取引の対象となる性質の商品やサービスは、大きく次の2つに分けられます。

  1. 税の徴収が好ましくない性質の商品やサービス
  2. 社会政策的な配慮がなされるべきと判断される商品やサービス

上記の性質をもつ商品やサービスには以下が該当します。

土地の譲渡と貸付け

土地の譲渡や貸付けは、消費に負担を求めるという性質になじまないとされるため、税の徴収が好ましくない性質の商品、サービスです。なお、土地には借地権や所有権など土地の上に存じる権利も含まれます。

ただし、1ヶ月未満の土地の貸付けや、駐車場・資材置き場など施設の利用に伴って土地が使われる場合に関しては、非課税取引の対象外です。

保険料や有価証券の譲渡

保険料は社会政策的な配慮により、国債や株券など有価証券の譲渡は課税対象として好ましくないとされるため、非課税取引となります。

なお、保険料に類する共済掛金も同様の理由で非課税取引です。ただし、株式・出資・預託などの形態によるゴルフ会員権や、スポーツクラブ会員権などの譲渡は非課税取引には該当しません。

社会福祉事業などのサービス

社会福祉事業に関するサービスは、社会政策的な配慮を理由として非課税での取引となります。主なサービスには以下が挙げられます。

  • 生活保護法に規定する救護施設の経営
  • 児童福祉法に規定する各種施設の経営
  • 老人福祉法に規定する養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホームの経営
  • 更生保護事業法に規定する更生保護事業 など

住宅の家賃や手数料

住宅の家賃や手数料は、私たちが生活する上で欠かせない要素の1つであり、消費税の課税は好ましくないということから非課税取引です。

ただし、1ヶ月未満の貸付けや事務所、店舗で建物を貸付けている場合は、非課税取引に該当しません。

非課税対象品目の例外条件

上述したように非課税対象品目であっても、有価証券の譲渡におけるゴルフ会員権や住宅家賃における建物の家賃など、一部例外になるものもあります。他に非課税対象品目でありつつも例外になっているものには以下が挙げられます。

  • 銀行券や硬貨、小切手などで使用を目的とせず収集品として譲渡する場合
  • 健康保険法・国民健康保険法などによる医療や労災保険、自賠責保険の対象となる医療で、美容整形、入院にかかる差額ベッドの料金、市販薬の購入など
  • 介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスで、利用者の選択により特別な居室の提供、送迎などの対価を支払う場合

参考:国税庁|No.6201 非課税となる取引

課税取引の対象と非課税・免税取引の違い

消費税の課税対象となる取引は「国内取引」「事業取引」「対価を得て行う取引」の大きく3つです。ここでは、それぞれの概要を解説します。

また、2023年10月より施行されたインボイス制度との関連性も併せて見てみましょう。

国内で行われる取引

日本国内で行われる取引は、基本的に課税取引で消費税の対象です。そして、日本国外で行われる取引は不課税取引として消費税の課税対象外となります。

また、課税取引であっても、国外へ輸出したり外国にある事業者に対してサービスを提供したりする場合は免税取引です。免税取引のために仕入れを行った課税仕入れについては消費税が免除されます。

事業として行う取引

基本的に国内で法人が行う取引は全て事業として行う取引であり、消費税の課税対象です。

具体的には、対価を得て行う取引を反復・継続・独立して行うものを事業取引といいます。ただし、次のようなケースは、事業を目的とした取引とはみなされません。

  • 給与所得者が趣味で作成した工作品、工芸品などを不定期に販売した場合
  • 個人が利用する自動車を買い替え目的で売却した場合
  • 引っ越しで使わなくなった家具や家電製品を売却する場合

対価を得て行う取引

商品やサービスの販売を行い、対価を得る取引も消費税の課税対象です。そのため、無償で行う贈与や寄付金、補助金などは対価を得るための取引ではなく、消費税の課税対象になりません。

ただし、対価を得ていない場合でも、例えば個人事業者が事業目的で課税仕入れもしくは製造した商品を販売せずに個人として利用した場合は、消費税の課税対象です。

また、法人が自社で課税仕入れもしくは製造した商品を従業員に贈与した場合も、少額な記念品や福利厚生品の提供などでない限り、消費税の課税対象となります。

課税売り上げ高が基準値を超えた場合とインボイス制度

ここまで消費税の課税対象となる取引について解説してきました。しかし、全ての企業、個人事業主に消費税の納税義務があるわけではありません。

基本的に消費税を納税する義務があるのは、一定の期間で課税売り上げ高が1,000万円を超えている企業、個人事業主です。

ただしインボイス制度により、課税売り上げ高が1,000万円を超えていなくとも「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、任意で課税事業者になり納税義務が発生します。

以下の記事では、消費税の仕訳方法について詳しく解説しているので参考にしてください。

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課税と非課税が混在する場合の対応とインボイス発行

インボイス制度とは、10%と8%の複数税率に対応した仕入税額控除の方式です。消費税は、売り上げに係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引いて算出します。この計算が仕入税額控除です。

しかし、インボイス制度に対応した請求書でなければ、買い手は仕入れに係る消費税を差し引くことができません。そのため、取引相手が免税事業者の場合、本来であれば売り手が納税する消費税まで、買い手が納税する必要が生じます。

そこで、仕入税額控除を受けるために必要なのがインボイス(適格請求書)であり、インボイスを発行するためには課税事業者になる必要があります。

参考:国税庁|インボイス制度とは

課税取引と非課税取引が混在する場合のインボイス対応

インボイスは、課税取引で複数税率に対応するための制度です。そのため、非課税取引を行った場合は消費税が発生しないため、インボイスを発行する必要はありません。

しかし、課税取引と非課税取引が混在する取引をした場合は、課税取引の部分に応じたインボイスの発行が必要です。

参考:国税庁|消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(問53)

不課税取引と課税取引の混在について

課税取引と非課税取引が混在するケースは少ないながらも存在しますが、1枚の請求書で不課税取引と課税取引が混在するケースはほとんどないでしょう。

しかし、例えば国内の取引と国外の取引をまとめて行う場合など、課税取引と不課税取引が混在するケースもゼロではありません。そのため、課税取引と不課税取引が混在した場合は、不課税取引を非課税取引として扱うのが一般的です。

非課税取引を行った場合のインボイス発行の要否

非課税取引のみの請求書を作成する場合は、インボイスを発行する必要はなく、従来の適格請求書発行事業者の登録番号が入っていない請求書を使用します。

請求書業務の効率化で登録番号の入ったインボイス形式の請求書で統一している場合は、非課税取引であってもそのままインボイスを発行して構いません。

参考:国税庁|消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(問23、問53)

非課税取引の際のインボイスの扱いについて、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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非課税取引と課税取引の混在時の適格請求書発行事業者登録の有無

法人の場合は基本的に課税事業者であるため、適格請求書発行事業者登録は必須といえます。

しかし、個人事業主の場合や取引先が免税事業者や消費者の場合は、課税事業者にならなくても問題ありません。また、取引先が簡易課税制度を選択している場合も、課税者登録はしなくても良いでしょう。

ただし非課税取引を行いつつ課税取引の量もそれなりにある場合は、課税者登録を行い請求書発行システムを導入するのがおすすめです。クラウド請求書発行システム「TOKIUM請求書発行」であれば、スムーズにインボイスを発行できます。

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インボイス制度を理解して適切な請求書発行業務を実現しよう

インボイス制度が導入されたことで、請求書発行業務は複雑化し、担当者の負担は大幅に増加しています。特に、課税取引と非課税取引、不課税取引の違いなどを理解しないとミスが生まれやすく、取引先の信用を失ってしまうリスクもあるでしょう。

しかし、インボイス制度が導入された今だからこそ、正しい税務知識を習得して適切な処理を行えば、企業の信頼性向上にも大きく貢献します。

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