会計処理

一括償却資産と償却資産税とは?経理での扱い方はどうなる?

更新日:2023.05.22

この記事は約 4 分で読めます。

経理 計算 税金

一括償却資産と償却資産税について、皆さんはどのくらいご存知でしょうか。「一括償却資産も償却資産税も聞いたことがない」と言う方も一定数いらっしゃることでしょう。
それもそのはず、この二つにはそれぞれ該当させるための要件があり、それらに該当していないものは対象とならない。
つまり、この二つは、すべての会社または個人において、発生しているものではないのです。そのため、聞いたことがないと言う方がいらっしゃってもなんら不思議ではない代物です。

→ダウンロード:マンガで分かる!インボイス制度開始後の「隠れ課題」とは?

簡単に言ってしまいますと、一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円以下で取得した固定資産のこと。償却資産税は、減価償却をしている固定資産に掛けられる税金のことです。
一見この二つは、密接に関係があるように見えます。固定資産にかかる税金なんだから、一括償却資産にも償却資産税が掛かるのではないか、ぱっと見そう見えてしまいます。
けれど、一括償却資産は償却資産税の対象外となります。しかし、取得価額が10万円以上20万円以下の固定資産でも、一括償却資産としない経理処理を選択した場合は、償却資産税の申告の対象となります。
これだけ聞いただけでは、混乱される方も多いはず。今回はこの複雑な両者の関係について、詳しくみてゆきます。

マンガで分かる!インボイス制度開始後の「隠れ課題」とは?

1.一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円未満の資産のうち、一括償却資産として計上したもの

一括償却資産とは、取得価額10万円以上20万円未満の資産のうち、一括償却資産として計上したものが該当します。
一般的に、構築物、器具備品、建物付属設備などの勘定科目に該当する資産を取得した際に適用されることが多いです。

一括償却資産の経理処理方法2つ

取得価額10万円以上20万円以上の資産を取得した場合、経理処理の方法は2つ
一つ目は、一般的な資産と同じく毎月減価償却してゆく方法(通常の資産計上と同じ扱い)。
二つ目は、一括償却資産として3年間毎年償却してゆく方法です。
この2つの方法のうち、後者を選択した場合が、一括償却資産となります。
中小企業の方は、10万円以上の20万円以下の資産でも、要件を満たせば「少額減価償却資産」の適用を受けることができる場合もあります。そのことについては、次章にて解説してゆきます。

2.中小企業の少額減価償却資産ー30万円以下の資産が適用

中小企業の方は、要件を満たせば「少額減価償却資産」の適用を受けることができる場合もあります。

30万円以下の資産は損金算入可能

いわゆる法律上の中小企業は30万円以下の資産を取得した際、全額費用として損金に算入することが可能となります。
適用を受けるためには、確定申告時に明細書を提出する必要があります。
1事業年度における上限が300万円以内と金額としてはあまり大きくはありませんが、スタートアップしたばかりの企業にとってはありがたい制度です。

3.償却資産税とは、償却資産にかけられる税金のこと

次に、償却資産税についてご説明します。

償却資産税とは、固定資産税の一種

償却資産税とは、償却資産にかけられる税金のこと。いわゆる、固定資産税の一種です。
償却資産を保有している場合、個人、法人に関わらず、申告・納税することが必要となります。逆を言ってしまえば、償却資産を保有していない会社・個人にとっては、関係のない税金となります。
償却資産税は、毎年1月1日時点で保有している償却資産に対して納税義務が発生します。資産を取得したのが3月であれ12月であれ、同じ1年として扱われ、申告が必要になります。

4.償却資産税の対象外となるもの

固定資産税の一種とは言っても、固定資産に計上しているものすべてに償却資産税が課せられるわけではありません。
簡単に言ってしまえば、「減価償却している資産のみ」になります。
従って、取得価額が10万円以下で損金として計上してるもの、または修繕費等に該当しているものなど、そもそも資産計上されなかったものは対象外です。
また、建物や土地といった固定資産税が掛かるもの、及び自動車税が課せられてる自動車も、二重課税の観点から対象外です。(土地はもとより減価償却対象外ですが)
加えて、ソフトウェア、特許権等の無形固定資産も対象外となります。
また上記に加え、一括償却資産についても償却資産税の対象外となるのです。

一括償却資産は償却資産税の対象外

1章でご説明差し上げた一括償却資産については、償却資産税の対象外となります。
一括償却資産は金額も小さく、償却資産税の対象としていると税務署にとっても事業者にとっても処理が煩雑すぎるから、というのがその理由になります。取得価額が10万円以下の資産が損金算入できるのと同じ理由です。

償却資産税が申告対象外となるのは、一括償却資産として計上したもののみ

しかし、償却資産税が申告対象外となるのは、「一括償却資産として計上したもの」のみになります。
先にご説明差し上げた通り、取得価額が10万円以上20万円以下の資産を取得した場合の経理処理の方法は2つ。一般的な資産と同じく毎月減価償却してゆく方法と、一括償却資産として3年間償却してゆく方法の2つです。
このうち後者を選んだ場合のみ、償却資産税が対象外となります。
前者の経理処理を選択した場合、そもそもの資産の取り扱いが固定資産となりますので、対象外とされている一括償却資産からは外れることになります。
そのため、一般的な資産と同じ経理処理を選択した場合は、取得価額が10万円以上20万円以下の資産についても、償却資産税の申告対象となってくるので注意が必要です。
次章からは、一括償却資産について詳しくみてゆきます。

5.一括償却資産の取り扱い方

この章では、取得価額10万円以上20万円以下の資産を一括償却資産として処理する方法、及びそのメリット・デメリットについて解説してゆきます。

一括償却資産の償却方法は、取得価額を3年間均等額で毎年償却

一括償却資産の経理処理の方法は非常にシンプルです。取得価額を3年間均等額で毎年償却して行きます。
つまり、取得価額が15万円であった場合、毎年5万円ずつ3年間に渡って償却します。その計算のシンプルさゆえ、税務処理業務を始めて間もない方が担当となることが多い資産です。

20万円前後の資産で購入を迷っている場合、20万円以下の商品の購入がおすすめ

当然のことながら、一括償却資産の対象となる取得価額は、一つの資産につき10万円以上20万円以下となります。もし15万円の資産を5つ購入した場合、その資産それぞれを一括償却資産として計上することが可能です。
金額が20万円以下と、20万円以上でほぼスペックの変わらない商品で購入を迷っている場合は、これから述べるメリットを鑑みても、20万円以下の商品を購入されることをおすすめします。

6.一括償却資産のメリット・デメリット

この章では、一括償却資産のメリット・デメリットについて解説してゆきます。

一括償却資産のメリットは、償却資産税の対象とならないこと

一括償却資産のメリットは、やはり何と言っても償却資産税の対象とならないことです。純粋に、その分税金を納める額が少なく済みます。
また、経理処理をする方にとっては、一般的な固定資産とするより償却額の計算が楽である上に税務申告もしなくてよい、というメリットもあります。

一括償却資産の大きなデメリットは、すぐに損金算入できないこと

一括償却資産のデメリットは、すぐに損金算入できないことがあげられます。これは金額によるところが大きいので、固定資産となる額ではなかっただけでも良しとしましょう。

一括償却資産のその他のデメリットー残存価額を除却損とすることができないこと

また、その他のデメリットとして、もし一括償却資産として計上している資産をまだ残存価額が残っているうちに廃棄した場合、その残存価額を除却損とすることができないということがあげられます。
一般的な固定資産として計上していた場合、残存価額があるうちに資産を廃棄すると、残りの価額は除却損としてその年の損金に算入することが認められています。
しかし、一括償却資産ではその処理は認められていませんので、間違って損金算入してしまうことがないよう廃棄する際には注意が必要となってきます。

7.まとめ

以上が、一括償却資産と償却資産税についての解説になります。一見複雑に見える両者の関係も、一度理解してしまえば間違うことはありません。この機会に一度、知識のアップデートにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
減価償却 定率法』について詳しく知りたい方はこちら

本記事では、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応について解説した資料を期間限定で無料配布しています。自社の法対応に不安が残る方は、下記よりダウンロードしてご覧ください。

▶ 電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイド【全20ページ | 対応方針まで丸わかり】
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック 電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック
DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
【4システム比較】経費精算システム選び方ガイド
経費精算システム選び方ガイド
【4システム比較】
電子帳簿保存法ガイドブック
電子帳簿保存法ガイドブック【2023年版】

関連記事