この記事は約 6 分で読めます。

「AI化や法改正で経理の仕事が大きく変わる中、自分のスキルはこのままで大丈夫だろうか…」「リスキリングが重要だとは聞くけれど、具体的に何を学べばキャリアアップにつながるのか分からない…」
そう思う方もいるのではないでしょうか。
これからの経理に求められるリスキリングとは、AIやクラウドといった新技術を使いこなし、定型業務を効率化するスキルです。これにより、変化に対応できる市場価値の高い人材へと成長できます。
本記事では、今、経理担当者が学ぶべき具体的なスキルセットから、AIなどを活用した業務効率化の最新事例、さらにはキャリアアップに直結する資格や学習方法まで、経理のリスキリングを成功させるためのロードマップを徹底解説します。
経理とリスキリングの重要性 業務効率向上への第一歩
経理業務は企業の「お金の流れ」を管理し、財務状況を正確に把握する要となる役割です。しかし、現場では人手不足や担当者の高齢化、過去から引き継がれた属人的な業務フローなど、さまざまな課題が積み重なっています。経理スキルを高めたい、法改正に対応してミスを減らしたいといった切実なニーズと同時に、急激に進むIT化や電子帳簿保存法への対応にも追われがちです。
こうしたプレッシャーがある一方で、「リスキリング」というキーワードが注目を集めています。リスキリングとは、既存のスキルを見直し、テクノロジーや業務変革に適応するための学び直しのことです。経理分野で言えば、AIやクラウドシステムの活用方法を学ぶ、あるいはデータ分析のノウハウを身に付けるなどが代表的な例です。リスキリングによって経理担当者個人の対応力を高め、組織全体の業務効率化や経理改善につなげようとする動きが加速しています。
実際、日々の定型業務が多すぎて新たなスキルを身につける余裕がない、紙の書類が山のように積み上がっていてペーパーレス化どころではないと苦悩を抱える方も少なくありません。しかし、こうした問題こそがリスキリングの必要性を示すものでもあります。思い切った業務プロセスの見直しや、最新ツールを活用できる人材の育成が一層重要となっています。業務効率向上や生産性アップを実現するには、経理とリスキリングを結びつけた具体的な取り組みと事例が不可欠です。まずは、AIやクラウドを導入した経理自動化の事例から、その可能性を見ていきましょう。
AIやクラウドでどう変わる?経理業務の自動化事例
経理業務は、請求書や領収書の処理、仕訳入力、月次・年次決算の対応といった幅広い工程で構成されます。近年ではAIが書類の文字情報を読み取り、仕訳を半自動的に行うソリューションが拡大しつつあります。特にレシートや明細書からデータを自動抽出し、会計ソフトと連携させる取り組みが注目されています。これにより、手作業による転記ミスや単純作業の負担を大幅に削減できます。
実際の企業導入例では、従来1日あたり数時間かかっていた領収書の入力作業が、AIによる自動化で少ない人数で数十分以内に完結したという報告があります。このように、AIを活用した経理効率化は多くの企業で成果を出しており、紙の書類に依存している従来のフローが抜本的に変わる可能性を秘めています。
また、クラウド技術の進化も見逃せません。クラウド型会計ソフトを導入することで、リアルタイムにデータを確認できる環境が整備され、経理部門だけでなく経営陣や関連部署との情報共有がスムーズになります。複数拠点やリモートワーク下でも一元化したデータにアクセスできるため、テレワークが拡大する昨今には特に有効です。一方、セキュリティや導入コストなどの課題もあるため、目的や予算を明確にし、どこまで自動化するのかを検討することが大切です。
さらに、AIを活用することで問い合わせ対応の効率化にも期待が寄せられています。システムへの入力手順や税法上の扱いなど、AIチャットボットが初期対応を代行する取り組みも始まっており、人員不足が深刻な企業にとって効果が見込まれます。こうした技術を使いこなすためにも、リスキリングによるスキルアップが欠かせません。
リスキリング研修と資格取得でスキルアップをめざす
リスキリングを実現する最初のステップとして、経理担当者向けの研修や講座、資格取得が挙げられます。例えば、事務職を対象とする講座では、簿記会計やビジネスマナーに加えて、ワードやエクセルを使った文書作成・データ処理などが学べます。こうしたプログラムに参加すれば、経理スキルを底上げすると同時に、業務効率化に必要なパソコン操作も短期間で習得できます。簿記資格や計算実務検定などは基礎力を証明でき、職場の信頼を得やすい点もメリットです。
さらに幅広い視点では、日商簿記検定(2級・3級)といった資格が有名ですが、経理効率化を意識するなら、表計算(Excel)検定やワープロ(Word)検定も非常に有用です。経理に関連する事務作業は体系立ったコツやショートカット機能の使いこなしで大きく効率を上げられるため、テクノロジーを活用するリスキリングの一環としてITリテラシーの強化を計画的に進めることをおすすめします。
もちろん、リスキリング研修は新たな人材を求める企業だけでなく、既存の非正規雇用の方々など、正社員化を目指す場面でも役立ちます。条件を満たせば、支援訓練を通じて完全未経験から経理業務に携わる手段もありますし、経理転職を志向する際には強力な武器になります。これらの研修を多角的に活用しながら、自分や組織にとって最適な経理スキルアップを図りましょう。
ペーパーレス化で実現する経理DXへの道
業務効率化を推し進める上で、紙の書類を減らすペーパーレス化は重要なキーワードです。経理現場では、請求書や領収書、契約書など紙ベースの書類が膨大に存在し、それらを保管・整理するために多大な労力が費やされています。ペーパーレス化を実施すれば、保管スペースの削減だけでなく、書類紛失のリスク低減や検索性の向上にもメリットがあります。組織全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを経理部門から加速するためにも、ペーパーレスの取り組みは避けて通れません。
例えば領収書や請求書をスキャンして電子データ化し、クラウド上で管理するシステムを導入すると、電子帳簿保存法の要件を満たしつつ、書類の検索・参照が容易になります。紙媒体の場合は、保管場所から取り出して閲覧・コピーするまでに時間がかかるうえ、紛失や誤配送のリスクも否定できません。電子化すれば、担当者が結集してファイルを探し回る必要がなくなり、業務が滞留する事態を減らせます。
また、ペーパーレス化は法改正やインボイス制度への迅速な対応を強力にサポートします。電子データならば「いつどこで仕入れがあったか」の履歴を簡単に追跡できるほか、修正や更新が必要になった場合の履歴管理にも優れています。紙で対応する場合の複数枚にわたる改訂作業や差し替え作業を大幅に削減でき、経理担当者の負担を軽減します。このように、ペーパーレスを核としたデジタル化こそ、経理DXの重要な柱といえます。リスキリングを通じてITスキルを伸ばし、この流れをリードできる人材になることが、生き残りのカギとなるでしょう。
出典:TOKIUM、経理DXの成功事例集を公開~年間3万枚の領収書や請求書のペーパーレスを実現した事例や年間5万枚の領収書を削減した事例を掲載~
人手不足解消と経理アウトソーシングで革新を
地方の中堅・中小企業などでは特に、経理人員の確保が難しく、高齢化や属人化による業務停滞に悩む例が多いです。そこで選択肢となるのが経理アウトソーシングです。自社の経理管理を外部の専門家集団に委託することで、限られた人的リソースを戦略計画や経理革新に集中させやすくなります。ただし、すべて任せきりにするのではなく、セキュリティや責任所在の明確化などを入念にチェックし、最適な組み合わせを模索することが重要です。
アウトソーシングと同時に、社内で蓄積されてきたノウハウの散逸を防ぐ仕組みづくりも欠かせません。例えば、システム化・マニュアル化を進めて属人化を取り除いた上で、一部の定型業務をアウトソースすれば、企業の生産性を大きく高められます。経理担当者は判断を要する重要な業務に集中し、付加価値の高い仕事を担うことができます。さらに、今の実務担当者がリスキリングを重ねて新技術に対応できるようにすれば、社外のリソースと社内の専門性が連動した柔軟な体制を構築できるでしょう。
経理アウトソーシングによって変化する業務フローに対応するためには、部長や経理責任者が適切に指示を行える知識を身につけることが不可欠です。リスキリングを通じて、AIやクラウドサービスの可能性・制約を理解し、適切に運用する力を養いましょう。そうすることで、外部企業との連携を円滑に進め、組織全体が安定して経理業務を回していく基盤が生まれます。
法改正・インボイス対応と経理テクノロジーの活用
電子帳簿保存法の施行やインボイス制度の導入によって、経理部門には複雑な手続きや書類保存方法が求められるようになりました。特にインボイス制度では、請求書の形式や発行・保存方法に細かい規定があり、企業が遵守できない場合は税制上の不利益を被るリスクが高まります。しかし、AIによる自動チェック機能や、クラウド型の帳簿保存システムを導入すれば、各種資料をデータ管理しながらスピーディーに要件を満たせるようになります。
こうしたテクノロジーの導入は企業規模や業種、既存のシステム環境によって進捗が異なります。大企業では積極的な投資が進んでいる一方で、中堅・中小企業ではコスト面や人材不足から導入が遅れるケースが少なくありません。とはいえ、リスキリングを取り入れ、社内にノウハウを蓄積していけば、必ずしも大がかりなシステムを導入しなくても段階的にテクノロジーを活かせます。例えば、まずは会計ソフトやスキャン保存の導入から着手し、徐々にAI活用やワークフロー管理を強化していく方法が考えられます。
また、電子文書化された請求書や領収書なら、自動仕訳やモニタリング機能を通じて不正や入力ミスを発見しやすい点もメリットです。法改正がたびたび行われる中で、都度膨大な紙ベースの書類を修正・管理するよりも、電子ベースならシステムのアップデートで網羅的に対処できる場合が多いです。リスキリングにより自社のプロセスにどのテクノロジーをどう取り入れるかを判断するスキルを養うことが、これからの経理職には欠かせない能力となるでしょう。
経理キャリアアップへ リスキリング転職の可能性
経理は数字に強い人だけが行う業務と思われがちですが、AIやクラウドの進化に伴い、システムを使いこなしビジネス全体を俯瞰するスキルを持つ人材が求められています。こうした状況では、リスキリングによって経理AIや経理クラウドに精通し、経営陣の判断をサポートできる人材は貴重な存在となります。経理スキルアップを念頭に転職を考えるなら、経理DXに強い企業や、新しい経理テクノロジーに積極的な組織を視野に入れるのも選択肢の一つです。
また、法改正対応をスムーズに行える知識を有する人材も重宝されます。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応力を武器にすれば、転職市場での評価は高まるでしょう。さらに、リスキリングプログラムで培ったプロジェクト管理力やITリテラシーは、経理以外の部門とも連携しやすいというメリットがあります。社内外のチームを巻き込んで業務を進める姿勢は、企業の成長や新たな事業展開へ貢献できる大切なポイントです。
これらのキャリアアップを実現するためには、日々の定型業務ばかりに追われないようにタスクの効率化を図りながら、余裕をもって学習時間を確保していくことが不可欠です。ワークライフバランスを維持しつつ、自分に合ったリスキリング方法を見つけましょう。例えば週末のオンライン講座に参加する、業務の空き時間に資格勉強を進めるといった柔軟なアプローチも可能です。中長期的に先を見据え、一歩ずつスキルを積み重ねることで、経理担当者としての価値と自信は必ず高まっていきます。
経理AIエージェントとは?従来の会計ソフトやRPAとの違い
近年注目されている「経理AIエージェント」とは、AI技術を活用して経理業務の自動化や効率化を実現する新しいツールです。従来の会計ソフトやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、あらかじめ設定されたルールや手順に従って業務を自動化しますが、経理AIエージェントはAIが学習しながら業務フローを最適化し、より柔軟な対応が可能です。
例えば、請求書や領収書のデータ化、仕訳の自動化、問い合わせ対応の自動化など、従来のツールでは難しかった複雑な判断や例外処理にも対応できる点が特徴です。経理AIエージェントを活用することで、経理担当者は単純作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。今後は、経理AIエージェントの導入が経理業務の革新や効率化の鍵となるでしょう。
まとめ
本記事では、AIの進化や相次ぐ法改正といった大きな変化の波に直面する経理業務において、「リスキリング」がいかに重要であるかを、具体的な事例と共に解説してきました。
AIやクラウドの活用、ペーパーレス化、そして電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は、もはや避けては通れない課題です。これからの経理担当者に求められるのは、単に従来の業務を正確にこなすスキルだけではありません。AIやクラウドといった新しいテクノロジーを積極的に使いこなし、定型業務を自動化・効率化していく能力が不可欠です。
リスキリングとは、単に新しい資格を取ることだけを指すのではありません。請求書や領収書の処理といった日々の繰り返し作業から自らを解放し、そこで生まれた時間とエネルギーを、データ分析を通じた経営への提言や、業務プロセス全体の改善といった、より付加価値の高い仕事に振り向けるための「学び直し」です。
「何から始めればいいか分からない」と感じるかもしれませんが、その一歩は決して大きなものである必要はありません。
- Excelの関数やショートカットキーを一つ新しく覚える
- クラウド会計ソフトの無料セミナーに参加してみる
- まずは身の回りの書類を一つスキャンして電子保存してみる
このような小さな「スモールスタート」の積み重ねが、やがて大きな業務効率化と自身のスキルアップにつながります。
変化を脅威と捉えるか、成長の機会と捉えるかはあなた次第です。リスキリングという武器を手に、変化の波を乗りこなし、これからの時代に不可欠な経理人材として、ご自身のキャリアをさらに輝かせていきましょう。