内部統制

製造業の下請法(改正取適法)に対応した契約・検収・支払の実務

更新日:2025.10.10

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製造業_下請法

原材料高騰や仕様変更が日常化する製造業では、価格協議や支払サイトの運用が遅れると、すぐに法令違反リスクに直結します。2026年1月1日施行の改正により、下請法は名称や適用範囲が見直され、価格協議の実務も一段と重要になります

→ダウンロード:請求書支払業務を取り巻く内部統制の課題と4つの解決策

本記事は、製造委託の定義から契約・検収・支払の要点、価格交渉の進め方、証跡の残し方までを「経理が主導できる形」で整理し、今日から整えるべき対応の流れを示します。改正の事実関係も一次情報に基づき解説します。

下請法改正の全体像と製造業への影響

2026年1月1日、下請法は「中小受託取引適正化法」へ名称変更され、関与概念や運用文書も更新されます。適用範囲の見直しや価格協議の実務強化など、製造業の親事業者・下請事業者の双方に影響します。まずは名称・施行日・主な変更点を一次情報で正確に把握しましょう。

参考:(令和7年10月1日)「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について | 公正取引委員会

何がいつ変わる?名称変更と施行日

改正により、従来の「下請代金支払遅延等防止法」は「中小受託取引適正化法」という名称に変わります。施行日は2026年1月1日です。名称が変わるだけでなく、実務に使う手引きや様式、考え方の整理も更新されます。経理・購買・品質保証など関わる部署が同じ日付を基準に準備できるよう、社内の周知日程を先に決めておくと混乱が起きにくくなります。まずは「何が」「いつ」変わるのかを全員で共有し、既存の契約書式と運用ルールに重ねて影響範囲を洗い出すことが出発点になります。

従業員数基準や追加対象等の適用範囲の見直し

改正後は、対象となる取引や事業者の範囲が見直される見込みです。とくに従業員数の基準や、サービスやデジタル領域を含む委託の扱いが整理され、製造に付随する作業や情報の受託でも対象になる場面が増えます。自社が親事業者に当たるのか、下請事業者に当たるのかは、会社規模や資本金、取引の内容で判断します。

グレーに見える取引は、実際の役務や成果物の中身で捉え直すと誤りを避けられます。組織としては、主要なサプライヤーを一覧化し、どの関係が適用対象になり得るかを先にマーキングしておくと安全です。

価格協議の実務強化で求められる準備

改正の重点の一つは、価格をめぐる話し合いを形式だけで終わらせないことです。原材料や電力の上昇、仕様変更など、価格に影響する出来事が起きたとき、根拠資料をそろえ、双方で検討し、結論と理由を記録に残すことが求められます。

準備としては、指数や相場の参照先を決め、社内の見積根拠の残し方を統一し、協議の経緯を保管する台帳を用意します。短い会議でも、日時・参加者・提案内容・合意点を押さえた簡易メモを残すだけで、後日の確認や監査に耐えられる運用に近づきます。

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製造業の下請法における製造委託の定義と適用判定

自社の取引が「製造委託」に当たるかは、のちの契約・検収・支払手続きの設計を左右します。製造と加工の違い、4つの委託区分(製造/修理/情報成果物/役務)を一次資料に沿って確認し、製造業で頻出するパターンを具体例とともに整理します。

「製造」と「加工」の違いを押さえる

製造は材料から新しい製品を作る行為を指し、加工は既存の部品や製品に手を加えて性質や形状を変える行為を指します。見た目が似ていても、材料の持ち込みや作業の指示の仕方、完成品の責任の所在によって、契約の種類が変わることがあります。この違いを理解しておくと、検収基準の設定や不良時の費用負担の扱いがぶれにくくなります。現場で使う作業指示書や図面の表現も、実態に合わせて用語をそろえると判定が容易になります。

4つの委託区分と判定ステップ

取引は大きく「製造」「修理」「情報成果物」「役務」の4つに分けて考えます。最初に成果物の形があるかどうかを確認し、次に材料や設備を誰が用意するのか、図面やデータの指示はどの程度か、成果の品質責任はどちらにあるのかを順番に見ていきます。社内の判断を固めるには、簡単な分岐フローを作り、担当が同じ手順で見立てられるようにします。迷う場合は、実際の作業と成果を時系列で書き出してみると、どの区分に近いかがはっきりします。

典型例:部品・金型・印刷・組立の委託

自動車や機械の部品製作は、多くが「製造」に当たります。金型の新作や改造は、完成物の引渡しと所有の扱いを確認すると分類しやすくなります。パッケージや取扱説明書の印刷は、情報成果物に近い性質を含むため、版権やデータの扱いを契約に明記することが重要です。

最終組立の委託は、作業手順の拘束度や検査の位置付けで「役務」と「製造」の線引きが変わることがあります。どの例でも、材料・指示・成果責任の3点を丁寧に書面化することが、正しい適用判定につながります。

製造業の下請契約・発注書で必ず残すべき項目

紛争の多くは、仕様変更や検収条件、支払期日・単価改定の取り決め不足が原因です。製造業の現場で実務的に必要となる「書面での明記事項」をコンパクトに定義し、後から検証可能な証跡化の要点(議事メモ・メール記録・添付台帳)まで示します。

仕様・検収・変更の取り決め

製造の現場では、口頭の合意や図面の軽微な修正が積み重なり、後で食い違いが起きやすくなります。基本仕様と許容差、検査の基準、納入形態を最初に明文化し、変更が出たときは「いつ、誰が、どの箇所を、どう変えたか」を一行で分かる形で残します。記録は、議事メモや確認メールの本文に加え、図面改定履歴や版数の記載で補強すると有効です。紙でも電子でも構いませんが、検索しやすく、後から追跡できる形に整えることが重要です。

契約・発注書の必須項目台帳

契約/発注IDCT-2025-045
取引先名XYZ精密
品目/工程シャフト/研磨
基本仕様(版/許容差)版3/±0.02mm
検査基準AQL 0.65
納入形態/梱包通箱/PE袋
支払条件(締め/サイト)月末/翌月末
単価表(版)単価表v2
変更履歴の有無
変更概要先端部R見直し
変更合意日2025-08-10
合意証跡(メール/議事録/改定図面)議事録_20250810.pdf
担当部門購買/品質/経理
管理者購買Mgr
備考

以下の記事では、下請法対象取引の発注書義務と実務ポイントを詳しく解説しているので参考にしてください。

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支払期日・支払サイト・価格協議の記録

支払条件は、納入日から何日後なのか、月末締めなのか、どの支払手段を使うのかまで具体的に決めます。支払が遅れると違反に直結するため、締め日と手続の流れを業務手順書に落としておくと安心です。価格の見直しが必要なときは、その理由と根拠を示し、協議の過程と結論を記録に残します。単価表と紐づく改定履歴を台帳で管理すれば、監査や照会への対応が素早くなります。

単価改定条項と根拠となる原価・指数の添付

単価改定は、どの条件を満たしたら見直すのかを事前に決めておくと、交渉が感情論に流れません。たとえば、主要材料の指数が一定割合動いた場合や、エネルギー料金が所定期間で上昇した場合など、客観的に確認できる目安を条項に入れます。合わせて、指数の出典や見積の内訳、実績データを添付し、誰が見ても計算が再現できる状態を作ります。根拠と結論がセットになっていれば、社内の稟議も通りやすく、相手方の理解も得やすくなります。

検収・支払サイト管理表

発注番号PO-2025-1032
取引先名△△製作所
品目/ロットギアASSY/2025-09
数量500
納入日2025-09-20
検収日2025-09-21
検収結果(合否/指摘)合格
支払条件(締め/サイト)月末締め/翌月末
支払期日2025-10-31
支払方法振込
支払状況(予定/完了/遅延)予定
遅延原因
是正措置
担当者経理B
合意履歴メモ単価表版2へ更新合意(2025-09-15)
関連ファイルURL/パスNAS:/検収/PO-2025-1032.pdf
最終更新日2025-09-21

製造業下請の価格交渉・価格転嫁を「経理主導」で進める

原材料やエネルギー価格の変動を放置すると、違反行為の温床になりかねません。経理が主導して、根拠資料の整備→合意形成→記録化までを一気に回せる体制を作ります。「スモールスタート」で雛形を整え、上長への引き上げと決裁フローを明確化します。

指数・見積・実績等の原価変動の根拠整理

原価の説明が曖昧だと、価格の見直しに踏み切れません。材料・エネルギー・人件費などの主要項目ごとに、指数の参照先、見積の計算根拠、過去の実績の3点を並べて示すテンプレートを用意します。月次で更新できる簡潔な様式にしておくと、担当が交代しても同じ品質で説明できます。数値は必要最小限で十分ですが、数式の考え方と参照日の明記だけは欠かさないようにします。

価格交渉メモ雛形(根拠・提案・合意欄)

案件IDEX-2025-001
取引先名〇〇工業
対象品目/工程アルミ押出材/切削
背景(見直しの起点)原材料指数の上昇
指数出典(URL/名称)〇〇指数(月次)
指数参照日2025-09-30
見積根拠(式/内訳)材料比率×指数/歩留
実績データ(期間/値)2025Q2の消費量と単価
提案案A+5%改定
提案案B段階改定(+3%→+5%)
相手方の反応/論点影響額の確認要
合意内容+4%で合意
適用開始日2025-11-01
次回見直し目安6か月後
関連ファイルURL/パス社内NAS/議事録_20250930.pdf
作成日2025-10-02
作成者購買A
承認者経理部長

議事録・メール・台帳で合意プロセスを記録する

話し合いの内容は、箇条書きのメモでもかまいませんが、日時・参加者・提案内容・相手方の反応・合意点という骨格だけは毎回そろえます。メールで要点を送り、相手から短い了承の返信をもらうだけでも立派な記録になります。最終の結論は台帳に反映し、単価表や契約書の版とひも付けます。議論が長引く場合でも、途中経過を定期的に記録しておくと、後で経緯をたどりやすくなります。

単価改定台帳(指数・見積・実績ひも付け)

台帳IDPR-2025-020
取引先名〇〇工業
品目/工程プレス/外板
現行単価¥120.00
改定後単価¥126.00
改定差額¥6.00
改定理由材料指数上昇
指数出典/参照日〇〇指数/2025-09-30
見積根拠(式/内訳)材料60%/工賃40%
実績データ期間2025Q2
合意日2025-10-01
適用開始日2025-11-01
契約条項(見直し条件)指数±3%で再協議
関連会議メモURL/パスNAS:/会議/20251001_単価改定.pdf
担当者購買A
承認者経理部長
最終更新日2025-10-02

上長への引き上げと決裁フローの設計

現場で判断できない事項は、迷いが生じた時点で早めに上長へ引き上げます。金額の大きさや影響範囲に応じて、誰の決裁が必要かを一覧化し、承認の順番と期限を明確にします。緊急時の例外ルートもあらかじめ定めておくと、支払遅延や納期遅れを避けやすくなります。引き上げの基準と流れが決まっていれば、相手方とのやり取りも落ち着いて進められます。

下請に発注する製造業の親事業者が避けるべきNG行為

受領拒否、支払遅延、買いたたき、返品、購入強制などは明確に禁止されています。グレーゾーンになりやすい「品質問題時の再作業費」や「仕様変更と減額」の境界を、条文・考え方に基づいて押さえ、未然防止の社内チェックを整えましょう。

親事業者NG行為セルフチェック表

チェック日2025-10-02
取引段階(発注/受領/価格/支払)価格
確認者購買C
該当有無
疑いのある行為
状況メモ指数連動条項に基づき協議済み
条文・公表資料参照先公表資料 第4条
是正対応記録台帳へ反映
期限2025-10-05
完了日

典型的な禁止行為を条文ベースで再確認する

親事業者がしてはならない行為には、受領の拒否、支払の遅れ、正当な理由のない減額、返品の押しつけ、購入や役務利用の強制などがあります。これらは種類ごとに具体的な要件が定められています。現場の担当者が迷わないよう、各行為の定義と典型例を、社内マニュアルに短く整理しておくと有効です。新任者には、契約段階と検収段階での注意点を別々に説明すると理解が進みます。

正当な理由となる減額・返品の可否判断

数量や品質に明確な問題がある場合でも、減額や返品が許されるには、事前の取り決めや検収手順に沿った確認が必要です。たとえば、検査基準に適合しない不具合が判明し、再作業が不可避であることが客観的に示せるなら、対応の協議が可能になります。

一方、単に自社の販売不振を理由にした値引き要請は認められません。正当性を判断するには、合意済みの仕様・検査記録・連絡の時系列をセットで見直すことが欠かせません。

支払遅延の未然防止と是正フロー

支払の遅れは重大な違反につながります。未然防止には、締め日と伝票締切の社内ルールを明確にし、例外が出たときの対応先を一本化しておくことが有効です。遅延の兆しが出た場合は、原因を分類し、直ちに相手方へ連絡したうえで、具体的な支払日と手段を提示します。是正後は、再発を避けるために承認経路や確認タイミングを調整し、手順書を更新します。

以下の記事では、下請法と独禁法の“やってはいけない”を事例で詳しく解説しているので参考にしてください。

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製造業の下請事業者が守るべき実務

下請側も、書面交付の請求や検収不備の記録、価格協議の申し入れなど、能動的にリスクを減らす手順が重要です。トラブル時は客観証拠の整備と、一次情報の参照が早道です。

書面交付・変更合意の記録を欠かさない

発注書や仕様書は、口頭の依頼で作業を進めず、書面の交付を求めます。変更が生じたときは、変更点と実施日、影響範囲を双方で確認し、短い合意メモを残します。メールでのやり取りでもかまいませんが、件名と本文に要点を整理しておくと後から探しやすくなります。記録がそろっていれば、納入後に認識の違いが出ても、落ち着いて説明できます。

検収不備のエビデンス化と再発防止

検収で不備が疑われるときは、写真や検査記録、計測値などの証拠をすぐに集め、時系列でまとめます。原因が自社か相手方かを急いで決めつけず、事実を淡々と確認する姿勢が大切です。再発防止は、同じ不具合が起きた条件を整理し、作業手順や検査項目を必要に応じて見直すことで実現します。小さな改善でも、記録に残して共有すれば、次のトラブルを減らせます。

根拠資料を添えて価格協議の申し入れる

材料や電力の高騰が続くときは、遠慮せずに価格の見直しを申し入れます。申し入れは、指数や見積、実績の3点をそろえ、上がった理由と影響額を分かりやすく示すのが近道です。先方が検討しやすいよう、複数の案を用意し、段階的な改定や一時的な調整も選択肢に含めます。提案から合意までの経緯は、必ず台帳に残し、次回以降の協議にも活かします。

製造業ならではの下請法の論点

金型・治具の費用負担、図面・データの扱い、試作・共同開発、品質問題時の再作業費など、製造業特有の論点を業種別ガイドラインの観点で整理します。自社の業種ガイドラインを必ず確認しましょう。

金型・治具・図面の扱い

金型や治具は、費用負担と所有の帰属、保管と返却の条件を明確にします。親事業者が費用を負担する場合でも、所有や修繕の範囲、使用制限をはっきりさせないと、後で争いの種になります。図面や三次元データは秘密情報として扱い、利用目的や複製の可否、返却時の方法まで決めておくと安全です。更新のたびに版数をそろえ、旧版の扱いを統一することも実務では重要です。

仕様変更・図面改定ログ

改定IDECN-2025-012
対象(図面No./手順)DWG-AX12
改定理由不具合再発防止
改定内容要約肉厚+0.3mm
影響範囲(品質/納期/コスト)品質○/納期△/コスト△
適用開始日2025-10-15
旧版の扱い旧版廃止
関係者設計/製造/品質/購買
承認者技術部長
証跡URL/パスNAS:/ECN/2025/012.pdf
最終更新日2025-09-30

試作・共同開発の取り決め

試作や共同開発では、完成を前提にしない段階的な成果が多く、費用と知的財産の扱いが曖昧になりがちです。どの段階でどの成果が誰のものになるのか、次の段階へ進む条件は何かを、契約書に段階ごとに書いておきます。失敗した場合の費用負担や、得られた知見の利用範囲も整理すると、後からの解釈の揺れを防げます。

品質問題と再作業費の線引き

品質の問題が出たとき、再作業費を誰が負担するかは、仕様と検査の取り決めで決まります。合意済みの基準に照らして不適合が明らかな場合は、その原因に応じた負担を話し合います。判断が難しいときは、事実関係の記録と第三者の測定結果など、客観的な材料を集めて冷静に整理します。感情的なやり取りを避けるには、手順と記録の積み上げが何よりの予防策です。

改正下請法への対応を継続的に回す仕組み作り

電帳法の保存要件と整合した証跡化、申請・承認の標準化、AIエージェント活用による台帳・議事録の自動整理など、継続的に回る仕組みへ移行します。小さく試す「スモールスタート」で、効果と安全性を検証しながら全社展開へつなげます。

検索・改ざんを防止する電帳法と整合する証跡保存

メールや議事録、台帳、契約書は、電帳法の要件に沿って保存します。検索ができ、改ざんが防止され、いつ作られたかが分かる状態にしておくことが大切です。紙と電子が混在している場合は、保管場所と参照手順を一つにまとめ、誰が見ても同じ経路で辿れるようにします。監査時に慌てない仕組み作りは、日々の小さな整備の積み重ねで実現します。

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申請・承認・決裁の標準化(責任分担の明確化)

発注、仕様変更、価格改定、検収、支払のそれぞれで、誰が申請し、誰が確認し、誰が最終判断をするのかを明確にします。責任分担がはっきりしていれば、判断が速く、誤解も起きにくくなります。例外処理が必要なときは、事前に基準を決め、記録を残すことを徹底します。標準化は完全を目指すより、まず主要なパターンから整えるのが現実的です。

承認フローマトリクス

対象手続価格改定
金額閾値差額10万円超
影響範囲条件納期影響あり
一次承認者購買Mgr
二次承認者経理Mgr
最終決裁者事業部長
引き上げ基準差額/納期/品質のいずれか該当
標準リードタイム(日)5
例外ルート緊急時:経理Mgr→事業部長
備考

AIエージェントで台帳・議事・添付の自動整理

台帳や議事録、添付資料の整理は、時間がかかる一方でミスが生じやすい工程です。AIエージェントを使えば、件名や日付、相手先、合意内容を自動で拾い上げ、台帳に反映するところまでを支援できます。最初は一部の取引だけで運用を試し、うまくいったら範囲を広げていく「スモールスタート」の発想が有効です。人が最後に目を通す地点を残しておけば、精度と安全の両方が確保できます。

証跡レジスター(電帳法整合)

証跡IDEV-2025-0001
証跡種別(契約/議事/メール/台帳/図面)議事
概要価格協議 定例ミーティング
作成日2025-09-30
作成者購買A
保存場所(URL/パス)NAS:/議事/20250930.pdf
検索キー(案件ID/取引先/品目)案件EX-2025-001/〇〇工業/押出材
改ざん防止手段(タイムスタンプ/監査ログ)時刻署名付与
保存期限7年
閲覧権限購買/経理/品質
備考
経理AIエージェントの概要資料ご案内

付録:すぐ使えるテンプレート

今日から使える実務テンプレをまとめました。社内の言い回しに合わせて調整し、ナレッジとして共有してください。

価格交渉メモ雛形(根拠・提案・合意欄)

案件ID
取引先名
対象品目/工程
背景(見直しの起点)
根拠:指数出典(URL/名称)
根拠:指数参照日
根拠:見積根拠(式/内訳)
提案:案A
提案:案B
提案:案C
合意内容
適用開始日
次回見直し目安
記録:相手方の反応/論点
記録:関連ファイルURL/パス
作成日
作成者
承認者

交渉メモは、背景、根拠、提案、相手の反応、合意内容の順で一ページに収めます。背景では、何が起点で見直しを求めるのかを簡潔に書き、根拠には指数や見積、実績の数字と出典を明記します。提案は複数案が望ましく、段階的な改定や一時的な特例も選択肢に入れます。最後に、合意した条件と適用開始日、次回見直しの目安を記録しておくと、後の運用がスムーズです。

検収・支払サイト管理表(期日・合意履歴)

発注番号
取引先名
品目/ロット
数量
納入日
検収日
検収結果(合否/指摘)
支払条件(締め/サイト)
支払期日
支払方法
支払状況(予定/完了/遅延)
遅延原因
是正措置
担当者
合意履歴メモ
関連ファイルURL/パス
最終更新日

管理表には、発注番号、品目、数量、納入日、検収日、支払期日、支払方法を並べます。検収で問題が生じた場合は、原因と対応、相手方との確認日を追記します。支払条件の変更があったときは、合意の経緯と適用日を履歴として残しておくと、トラブル時の説明が容易です。担当者が代わっても同じ見方で運用できるよう、列の並びと記入ルールを固定します。

親事業者NG行為セルフチェック(条文ひも付け)

チェック日
取引段階(発注/受領/価格/支払)
確認者
該当有無
疑いのある行為(受領拒否/支払遅延/減額/返品/購入強制 など)
状況メモ
条文・公表資料参照先
是正対応
期限
完了日

セルフチェックは、取引の各場面に沿って「してはならない行為」を点検していきます。発注時、受領時、価格見直し時、支払時に分け、それぞれの禁止行為に該当しないかを自問自答できる設計にします。チェック項目には、条文や公表資料の参照先を併記しておくと、判断に迷ったときにすぐ確認できます。定期的に見直し、実例を加えて更新すると、教育効果が高まります。

以下の記事では、「J-SOXの“3点セット”で承認フローと証跡を型化する方法を詳しく解説しているので参考にしてください。

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まとめ

製造業の下請取引は、契約・検収・支払・価格協議のいずれかが緩むと、すぐに違反リスクへつながります。まずは自社の取引が「製造委託」に該当するかを一次情報で判定し、仕様・検収・支払・単価改定の取り決めを「書面と記録」でそろえましょう。そのうえで、根拠資料に基づく価格協議を経理主導で回し、「スモールスタート」で証跡化の型を固める。この順番が、2026年施行に向けた最短距離になります。

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