インボイス制度

【インボイス制度】免税事業者への対応で注意すべき「下請法」「独占禁止法」とは?

公開日:2022.07.05更新日:2022.08.09
インボイス制度における免税事業者への対応

2023年10月1日からインボイス制度が始まります。免税事業者から仕入を行う課税事業者は、適格請求書(インボイス)を保存できないため仕入税額控除を受けられなくなります。そのため、免税事業者との取引を見直す動きが多くの企業で進んでいます。しかしながら、免税事業者に対して取引の再交渉などを行う際に、「独占禁止法」や「下請法」に違反するリスクがあることをご存知でしょうか。

本記事では、インボイス制度と関連のある「独占禁止法」と「下請法」について説明し、違反になりうる具体的なケースを紹介します。記事後半では、インボイス制度に向けて企業が対応すべきことについて解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

インボイス制度ガイド

そもそもインボイス制度とは

インボイス制度とは、2023年10月1日から開始される「適格請求書等保存方式」のことです。インボイス制度下においては、仕入税額控除の要件として、原則、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要になります。 

適格請求書(通称インボイス)とは、取引年月日、適格請求書発行事業者の登録番号、消費税額などの一定の事項を満たした請求書(※1)のことです。

適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者として登録を受けた課税事業者に限られます。すなわち、免税事業者は適格請求書を発行できず、免税事業者との取引がある企業は、原則、仕入税額控除ができなくなります。(※2)(※3)

※1 納品書、領収書、レシート、その他これらに類する書類を含む
※2  6年間の経過措置あり
※3  簡易課税制度を選択している事業者を除く

インボイス制度については以下の記事で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。

免税事業者とは

免税事業者とは、基準期間(個人の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者で、消費税の納税義務が免除される制度の適用を受ける事業者のことです。なお、基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、所轄税務署長への事前届出により、課税事業者となることは可能です。

免税事業者は消費税の納税義務がないため、売上のうち消費税相当分はそのまま事業者の利益(=益税)になってしまいます。税制の不備として長年問題視されており、今回のインボイス制度は、このような免税事業者の益税を抑制する目的もあります。

免税事業者から仕入れを行うとどうなる?

前述の通り、免税事業者から仕入を行う課税事業者は、仕入税額控除をすることが出来なくなり税負担が増加します。そのため、免税事業者の仕入先に対しては、取引価格を含めた取引条件の見直しを求めるべきでしょう。

具体的には、課税事業者になってもらい適格請求書を発行するよう要請すること、あるいは仕入税額控除を受けられないことを考慮して、取引価格の引き下げ交渉を行うことなどが考えられます。場合によっては、取引の打ち切りを検討する必要もあるでしょう。

しかし要請や交渉の進め方によっては、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」に該当したり、下請法に違反してしまうことが考えられます。

独占禁止法とは

独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的に制定されました。

独占禁止法では、取引上優越した地位にある事業者が取引の相手方に対して不当な不利益を課すことを、「優越的地位濫用」として規制しています。

インボイス制度を契機とした免税事業者との取引見直しの際、独占禁止法上問題となるかの判断軸としては、大きく以下の2つがあります。

  • 行為者の地位が相手方に優越していること
  • 相手方が今後の取引に与える影響等を懸念して、行為者による要請等を受け入れざるを得ないこと

独占禁止法違反となった場合

公正取引委員会による「排除措置命令」や「追徴金納付命令」を受ける可能性があります。先方から損害賠償請求されることや、違反行為が反復して行われ排除措置に従わないなどの場合には、刑事告発されることもあります。

下請法とは

下請法の正式名称は、「下請代金支払遅延等防止法」です。下請取引の公正化を図り、立場の弱い下請事業者の利益を保護する目的として、独禁法を補完する法律として制定されました。

下請取引における下請代金の支払遅延などの行為は、 「優越的地位の濫用」として、独占禁止法で既に規制されています。しかし、独占禁止法の要件は規範的で認定がされにくく、迅速に対応することができないという問題がありました。そこで、具体的な取引を細かく制限し、処理手続きを簡略化した下請法が、独占禁止法を補う形で制定されたのです。

対象取引

下請法の対象となる取引は、いわゆる「親事業者」と「下請事業者」の間でなされる業務委託取引のことです。厳密には、事業者の資本金規模と取引の内容で以下のように定義されています。(第2条7項、8項)

親事業者下請事業者
・製造委託
・修理委託
・情報成果物作成委託(プログラム作成)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫保管及び情報処理に係るもの)
資本金3億円超資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下(個人を含む)
・情報成果物作成委託(プログラム作成を除く)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫保管及び情報処理に係るものを除く)
資本金5千万円超資本金5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下(個人を含む)

親事業者の義務・禁止事項

下請法では下請事業者の利益を守るため、親事業者に対して以下のような4つの義務と11の禁止行為を定めています。

義務

  1. 書面の交付義務(3条)
  2. 書類の作成・保存義務(5条)
  3. 下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)
  4. 遅延利息の支払義務(4条の2)

禁止事項(4条)

  1. 受領拒否の禁止(4条1項1号)
  2. 下請代金の支払遅延の禁止(4条1項2号)
  3. 下請代金の減額の禁止(4条1項3号)
  4. 返品の禁止(4条1項4号)
  5. 買いたたきの禁止(4条1項5号)
  6. 購入・利用強制の禁止(4条1項6号)
  7. 報復措置の禁止(4条1項7号)
  8. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(4条2項1号)
  9. 割引困難な手形の交付の禁止(4条2項2号)
  10. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(4条2項3号)
  11. 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(4条2項4号)

今回のインボイス制度で気をつけたいのは、禁止事項の中の3.下請代金の減額の禁止 4.買いたたき の2つです。具体的なケースについては後述します。

下請法違反となった場合

下請法違反となった場合、公正取引委委員会から違反行為を取りやめるよう勧告を受け、企業名・違反事実の概要などが公表されます。最高50万円の罰金が課せられる場合もあります。

独占禁止法・下請法違反になりうるケースとは

インボイス制度を踏まえて、免税事業者との取引を見直そうと考える事業者も多いと思います。しかし、交渉の仕方や内容によっては、独占禁止法及び下請法違反になる危険があります。ここでは、どのような場合に違反になるのかについて具体例を上げて説明します。

1.取引価格の引き下げ

取引先である免税事業者に対して、消費税相当額の取引価格引き下げを交渉することがあると思います。しかし、以下のような場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となったり、下請法の取引に当てはまる場合には、下請法の「3.下請代金の減額の禁止」に該当してしまいます。

  • 再交渉が形式的(実際は買い手の言いなりになっている)
  • 買い手の都合のみで著しく低い価格を設定
  • 免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を買い手が一方的に設定

買い手側の都合だけでなく、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに関係する消費税の負担も考慮し、しっかりと協議した上での取引価格引き下げであれば、問題になることはありません。

2.課税事業者になるような要請等

取引先である免税事業者に対して、課税事業者になるよう要請することがあります。結論、要請を行うこと自体は問題になりませんが、買い手の働きかけによって、取引先が課税事業者にならざるを得ないような場合には、独占禁止法上問題になるおそれがあります。

また、要請によって取引先が課税転換を行った場合に、明示的な協議を行わずに価格を据え置く場合も、一方的に消費税の負担増を押し付けるものとして問題となります。下請法の取引に当てはまる場合には、「5.買いたたき」として問題になるおそれがあります。

「課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる」「それにも応じなければ取引を打ち切る」などと一方的に通告することは避ける、そして取引先が課税転換を行った際には、取引先との価格交渉に真摯に対応し、相手の税負担を考慮した上で再協議を行うことが必要です。

3.取引の停止

免税事業者との取引が多い課税事業者は、場合によっては、取引を停止するという判断も必要になると思います。取引を継続するか否かは各事業者の自由でありその行為自体は問題になりません。

しかし、例えば、取引の継続を担保として、取引先免税事業者に対して不当な条件を一方的に提示し、その結果として取引の停止に至った場合などは、​​独占禁止法及び下請法違反になるおそれがあります。

一方で、再協議を行った結果、交渉が決裂し取引の停止に至った場合などに関しては、やむを得ないものとして法令違反になることはありません。

インボイス制度開始に向け対応すべきこと

これまで、インボイス制度後の免税事業者への対応を中心に説明してきました。仕入税額控除を行う課税事業者にとって、法令違反に十分注意した上での取引見直しは必須になるでしょう。

しかしそれよりも高い優先度として、仕入税額控除を適用したい課税事業者は、既存の仕入先及び新たな仕入先が適格請求書発行事業者かどうかの確認や、受け取ったインボイスが記載事項を満たしているかどうかの確認対応が必要になります。インボイスを一枚一枚目視で確認するのは大変な上、インボイスに不備があった際には仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。

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まとめ

本記事では、インボイス制度対応における独占禁止法及び下請法違反のリスクについて説明しました。企業の法令遵守が強く叫ばれる昨今、独占禁止法及び下請法に違反することは企業価値を大きく損なう行為であり、十分注意する必要があります。

しかし、インボイス制度に対応する上で、取引先免税事業者への課税転換要請、価格引き下げ交渉、取引停止などの決定を行うこと自体は問題にはなりません。法律の論点としては、「公正な手続きを経て取り決めたのか」「優位な立場を濫用していないか」ということであり、取引先と対等な立場で真摯に協議を行うことが大切です。

 間近に迫るインボイス制度に向けて、免税事業者との対応を今一度確認しましょう。また、インボイス制度における適格請求書の処理業務を省力化したい場合には、TOKIUMインボイスをご検討ください。

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