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差し戻しが多い承認フローをどう減らす?現場に効く運用で効率化しよう

更新日:2025.12.05

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差し戻し_フロー_効率化

経費精算や稟議の承認フローで差し戻しが多いと、申請者・承認者・経理の三者にムダなやり取りが発生し、決裁がなかなか進まなくなります。

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本記事では、差し戻しの原因を「書類・ルート・ルール・フォーマット」の4つに整理し、差し戻しフローをどのように効率化すべきかを、チェックリストとKPI、システムと運用の両面から具体的に解説します。中小〜大企業の経理部門でそのまま使える指標とステップを示し、「差し戻し率▲50%」「承認リードタイム▲30%」を目指すための考え方をご紹介します。

承認フローの差し戻しを減らして効率化するには?

具体的な原因や改善ステップを見る前に、「そもそも何から手を付けるべきか」「どれくらい差し戻しを減らせばよいのか」といった全体像をQ&A形式で整理します。自社の状況と照らし合わせながら、この記事で解決したいポイントをイメージしてみてください。

Q1. 差し戻しが多い承認フローは、何から手を付けるべきですか?

A. まずは「どの申請で・どの理由で・どの段階で差し戻されているか」を見える化し、差し戻し件数の多いパターンから優先的に対策することが近道です。代表的な原因は、記入漏れや添付不足、承認ルートの誤り、ルールの曖昧さ、申請フォーマットの複雑さといった5つに絞れます。本記事では、この5つの原因に対応する具体策を順番に整理します。

Q2. 差し戻し削減の目標値は、どれくらいを目安にすれば良いですか?

A. 一般的には「差し戻し率▲50%」「承認リードタイム▲30%」を最初の目標に置くと、現場の体感としても変化が分かりやすくなります。差し戻し率・承認待ち時間・再提出までの時間など、数値で追える指標をあらかじめ決めておくことで、対策の効果を客観的に評価しやすくなります。

Q3. システム導入と運用見直しは、どちらを先に進めるべきでしょうか?

A. 「現状分析 → ルールとフォーマットの整理 → 小さくシステムで試す」という順番で進めることをおすすめします。いきなり全社システムを導入するのではなく、差し戻しの多い経費精算や稟議など1〜2業務に絞ってスモールスタートし、チェックルールや承認ルートの設計をチューニングしながら全社展開していくと、現場の負担を抑えつつ失敗を避けやすくなります。

差し戻しだけでなく、承認フロー全体の設計やKPI、SLAの決め方まで含めて見直したい場合は、承認業務全体の効率化にフォーカスした以下の記事も併せてご覧ください。

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承認フローにおける「差し戻し」とは?却下との違いは?

差し戻しは「修正して再提出してほしい」という保留状態であり、申請自体を無効にする却下とは目的もリスクも異なるため、まずは用語と状態を整理しておくことが重要です。

差し戻しの基本的な定義

経理業務の承認フローでは、申請内容に不備や確認不足があると、承認者が申請をいったん申請者へ戻す「差し戻し」が発生します。差し戻しは申請自体を否定するものではなく、情報の追加や修正を求めるための手続きですが、修正・再申請・再確認という往復が増えるほど、申請者・承認者双方の工数が膨らみます。日常的に大量の申請を扱う経理部門では、この差し戻しの頻度が承認フロー全体のスピードと効率を大きく左右します。

差し戻しと類似用語の違い

承認フローには、差し戻しのほかに「却下」「取り消し」「承認保留」といった処理もあります。却下は申請内容そのものが承認できない場合に行うもので、修正ではなく新規申請としてやり直す必要があります。取り消しは申請者側の操作で、申請後に誤りに気づいた際に自ら申請を撤回するものです。承認保留は判断に必要な情報が不足しているときに一時的に判断を止める状態で、追加情報を待ってから再度審査します。差し戻しは「修正すれば承認に進めるケース」で使う処理であり、再申請を前提とする点がほかの用語との大きな違いです。

以下の記事では、入力ミス・添付漏れ・規程違反など、差し戻しの上位原因と現場での止め方について詳しく解説しているので参考にしてください。

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経理業務で差し戻しが発生しやすい場面

経理業務では、経費精算の領収書の不備や添付漏れ、交通費・出張費の計算ミスなどが典型的な差し戻し要因です。購入申請では、見積書や仕様書の不足、支払い依頼では電子帳簿保存法やインボイス制度の要件を満たしていない請求書が問題になります。さらに、契約稟議で金額や内容に応じた承認ルートが正しく選べていない場合も、差し戻しの頻度を押し上げる要因となります。

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差し戻しが多い承認フローには、どのような問題があるのか?

差し戻しが増えると、処理リードタイムの長期化、担当者の精神的負荷、組織全体の生産性低下という3つのコストが同時に膨らみ、決裁スピードと統制の両方に悪影響が生じます。まずは、現場でよく見られる「差し戻しの症状」と、その影響・改善優先度を一覧に整理します。自社の状況と照らし合わせながら、どこから手を付けるべきかを確認してみてください。

表:差し戻しの症状・影響と改善優先度

症状具体的な状態業務への影響改善優先度
差し戻し率が高い同じ申請が2回以上差し戻されるケースが多い申請者・承認者の工数が増え、申請1件あたりの処理時間が長くなる    高
承認待ち時間が長い締め切りギリギリで決裁が下りることが多い支払遅延や機会損失のリスクが高まり、関係部門からの不満が増える    高
添付漏れが頻発する領収書や見積書など、必要な書類が不足している申請が多い税務調査や監査で指摘されるリスクが高まり、後追いの確認作業が増える    高
承認ルートの誤りが多い本来の承認者ではない担当者に申請が回ってしまう不在の承認者に申請が滞留し、ボトルネックや属人化の要因となる    中
ルールが人によって違う承認基準や差し戻し理由が担当者ごとにバラバラになっている申請者の不公平感や混乱につながり、組織としてのガバナンスが弱まる    中

デメリット1:承認待ち時間の累積的な増加

差し戻しが発生すると、小さな修正であっても「問い合わせ→修正→再申請→再確認」という往復が生じ、その分だけ承認完了までのリードタイムが伸びます。特に申請が集中しやすい月末や四半期末に差し戻しが重なると、どの案件を優先すべきか判断が難しくなり、支払い期限や月次決算の締め切りに遅れが出るリスクが高まります。

デメリット2:担当者の業務負荷と精神的コスト

差し戻しによる影響は、作業時間の増加という物理的な負担だけにとどまりません。経理担当者にとって、短期間で不備を発見し修正を依頼して再確認するという繰り返し作業は、大きな精神的負担となります。特に月次決算や税務申告など締め切りが厳格に設定されている業務では、差し戻しへの対応が他の重要タスクを圧迫する形となり、常に時間に追われる状況が生まれます。

さらに、承認を待つ側の部門からは「早く処理してほしい」という要望が強くなるため、担当者は両側からのプレッシャーを感じることになります。このような緊張とストレスが継続すると、かえって注意力が散漫になり、新たなミスを誘発する悪循環に陥ります。差し戻しが差し戻しを生むという状況は、担当者の士気低下や離職リスクの増大にもつながる深刻な問題です。

デメリット3:組織全体の生産性低下

差し戻しの影響は経理部門だけでなく、組織全体の生産性にも波及します。差し戻しが発生するたびに、申請者と承認者の間で確認や調整のためのコミュニケーションが必要となり、社内の連絡業務が増大します。このコミュニケーションコストは目に見えにくいものの、積み重なると企業全体で相当な時間的損失となります。

また、承認フローに関わる複数の担当者間で認識のズレが生じると、さらなる混乱を招くことがあります。例えば、ある担当者は修正済みと認識しているのに、別の担当者は未修正と考えているといった齟齬が発生すると、無駄なやり取りが増えてしまいます。経理担当者本来の役割は、正確な財務情報を迅速に経営陣へ提供し、戦略的な意思決定を支援することです。しかし、差し戻し対応に時間を取られることで、財務分析や改善提案といった付加価値の高い業務に割ける時間が減少してしまいます。

差し戻しとあわせて注意したいのが、そもそも承認されずに申請が埋もれてしまう「承認漏れ」です。承認漏れの原因と具体的な対策については、以下の記事で詳しく紹介しています。

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差し戻しが多い承認フローでは、どこに原因が潜んでいるのか?

経理の現場では、記入ミスや添付漏れだけでなく、承認ルートの誤設定、ルールの不明確さ、申請フォーマットの複雑さといった構造的な要因が差し戻しを増やしているケースが少なくありません。

原因1:記入漏れ・誤記・計算ミス

差し戻しの最も典型的な原因は、申請書における記入漏れや誤記、計算ミスです。経費精算申請では、日付や金額の記入漏れ、部署名や勘定科目の選択ミスが頻繁に発生します。特に手入力が必要な項目が多い場合、人的ミスは避けられません。交通費精算では経路の選択ミスや運賃の計算間違い、出張旅費では宿泊費と交通費の合計額の誤りなどが典型例です。

こうした単純なミスは、申請者の不注意だけが原因とは限りません。複雑な申請フォーマットや、記入すべき項目が多すぎる場合、どれだけ注意深く確認してもミスが発生しやすくなります。また、同じような項目が複数回登場する申請書では、どこに何を記入すべきか混乱することもあります。月末や決算期など業務が集中する時期には、時間的プレッシャーからこうしたミスがさらに増加する傾向があります。

原因2:添付書類の不足・不備

領収書や見積書、仕様書などの添付漏れや、スキャン画像が不鮮明で日付・金額が読み取れないといった品質不良は、差し戻しの代表的な原因です。電子帳簿保存法やインボイス制度により、証憑に求められる要件が増えたことで、この種の差し戻しは増加傾向にあります。また、初回申請では添付していたものの、修正後の再申請時に添付し忘れるといった二次的なミスも起こりやすくなっています。

原因3:承認ルートの誤設定

申請内容に対して適切な承認ルートが選べていないことも、差し戻しの大きな要因です。金額や品目、契約内容などに応じて必要な承認者が変わるにもかかわらず、誤ったルートで申請してしまうと、いったん差し戻して構成をやり直す必要があります。人事異動や組織変更に伴う承認者情報の更新漏れや、法務・情報システム部門など専門部署の追加承認が必要なケースの周知不足も、誤ったルート選択を招きます。

原因4:ルールや基準の不明確さ

承認の判断基準が承認者ごとにばらついている、いわゆる属人化の状態では、同じ内容の申請でも承認されたり差し戻されたりと結果が揺れます。社内規程やマニュアルが整備されていない、あるいは内容が古く現場の運用と合っていない場合、申請者は「必須項目はどこか」「どの書類が必要か」「どの金額で承認ルートが変わるか」を把握しきれません。その結果、善意で申請しても承認者の期待とすれ違いが起こり、差し戻しが増えてしまいます。

原因5:申請フォーマットの複雑さ

項目数が多すぎる、似たような項目が並んでいる、紙やエクセルで入力規則が効いていない――このような使いづらい申請フォーマットは、記入漏れや誤入力を誘発します。複数のフォーマットが混在していると、申請者は最新版を見分けられず、古い様式で申請してしまうこともあります。経理担当者にとっては分かりやすく見えても、申請者の視点が欠けていると、構造的に差し戻しが減らない状態が続きます。

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差し戻しを減らして承認フローを効率化するには、どんな対策が有効か?

申請前の自動チェック、フォーマットの最適化、承認ルートの自動制御、ワークフローシステムの活用、チェックリストやマニュアル整備の5つを組み合わせることで、差し戻しを構造的に減らすことができます。

対策1:申請前の自動チェック機能の導入

差し戻しを削減する最も効果的な対策の一つが、申請前に自動的に不備を検出する仕組みの導入です。システム上で入力必須項目を設定することで、該当欄が空欄のまま申請ボタンを押すことができないようにします。これにより記入漏れという最も基本的なミスを防ぐことができます。金額計算についても、システムが自動的に合計金額を算出したり、入力された数値の妥当性をチェックしたりする機能を持たせることで、計算ミスを大幅に削減できます。添付ファイルについても、必須の書類が添付されていない場合はエラーメッセージを表示し、申請を進められないようにする設定が有効です。

さらに、リアルタイムでエラーを通知する機能があれば、申請者はその場で不備を修正できるため、承認者に届く前に問題を解決できます。このような自動チェック機能は、人的ミスを構造的に防ぐ仕組みとして、差し戻し削減に直結する効果を持ちます。

対策2:申請フォーマットの最適化

申請フォーマット自体を見直すことも、差し戻し削減に大きな効果をもたらします。まず重要なのは、記入項目を必要最小限に絞ることです。本当に承認判断に必要な情報だけを残し、不要な項目は削除することで、申請者の負担を減らすと同時にミスの発生確率を下げられます。入力方法についても、自由記述よりもドロップダウンメニューからの選択式にすることで、表記のばらつきや誤入力を防げます。勘定科目や経費区分などは特に選択式が有効です。各入力欄には具体的な記入例を表示することで、申請者が何を書けばよいか迷わずに済みます。

さらに、申請内容に応じて必要な項目だけを表示する条件分岐の仕組みを取り入れると、フォーマットがシンプルになり使いやすさが向上します。申請者にとって直感的で分かりやすいフォーマットにすることが、差し戻し削減の基本です。

対策3:承認ルートの自動制御

承認ルートに関する差し戻しを防ぐには、システムによる承認ルートの自動制御が効果的です。申請金額や購入品目、契約内容などの条件をあらかじめシステムに設定しておくことで、申請内容に応じた適切な承認ルートが自動的に選択されるようにします。

例えば、5万円以下の経費は課長承認のみ、5万円以上10万円未満は部長承認、10万円以上は役員承認といった金額基準による自動分岐が可能です。人事異動があった場合も、システム上の組織情報を更新すれば、自動的に新しい承認者にルートが変更されます。承認者が不在の際の代理承認者をあらかじめ設定しておけば、出張や休暇中でも承認フローが止まることがありません。

また、申請のステータスを可視化する機能があれば、現在どの段階で止まっているのか、誰の承認待ちなのかが一目で分かり、フォローアップもしやすくなります。このような自動制御により、承認ルートに関する人的ミスを大幅に削減できます。

対策4:ワークフローシステムの活用

経費精算システムや専用のワークフローシステムを導入することで、差し戻しの発生を構造的に防ぐことができます。これらのシステムには、申請から承認、決裁に至るまでの一連の流れを一元管理する機能が備わっています。クラウド型のシステムであれば、場所を問わずにアクセスでき、テレワーク環境でもスムーズな承認業務が可能です。過去の申請履歴がデータベースに蓄積されるため、類似の申請内容を参照したり、以前承認された内容を再利用したりすることで、申請の精度を高められます。

差し戻しが発生した場合も、システムから即座に通知が届く機能があれば、申請者は迅速に対応できます。コメント機能やチャット機能を活用すれば、差し戻しの理由や修正すべきポイントを具体的に伝えられるため、修正後の再差し戻しを防げます。システム導入により、差し戻しの削減だけでなく、承認業務全体の効率化が実現します。

具体的にどのような承認フローシステムを選ぶべきか、機能や比較ポイントを整理したい場合は、以下の記事を参考に、自社に合うシステムを検討してみてください。

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対策5:チェックリストとマニュアルの整備

システム導入と並行して、申請者向けのチェックリストやマニュアルを整備することも重要な対策です。申請前に確認すべき項目を一覧にしたチェックリストがあれば、申請者は提出前に自己点検を行うことができます。このチェックリストには、記入必須項目の確認、添付書類の有無、金額計算の正確性、承認ルートの適切性などを含めます。

また、過去に発生した差し戻し事例をまとめた「よくある不備事例集」を作成し、同じミスを繰り返さないための注意喚起を行うことも有効です。申請手順については、文書だけでなく動画マニュアルを用意することで、視覚的に理解しやすくなります。特に新入社員や異動してきたばかりの担当者にとって、動画は分かりやすい学習ツールとなります。さらに、申請に関する疑問点をまとめたFAQを定期的に更新し、申請者が自己解決できる環境を整えることで、差し戻しの予防につながります。

次に、よくある原因ごとに「運用でできること」と「システムで仕組み化できること」を整理します。自社の差し戻しパターンと近い行から、優先的に着手する対策を検討してみてください。

表:差し戻しの原因と対策・効果

主な原因対策の方向性すぐできること(運用)システムでの仕組み化期待できる効果
申請内容の記入ミス・抜け漏れ入力項目の整理と事前チェックを強化するよくある記入ミスをまとめたチェックリストを作成し、申請前に確認してもらう必須項目の未入力チェックや形式チェック(桁数・日付形式など)を設定する記入不備による差し戻し件数が減り、申請1件あたりの処理時間を短縮できる
添付書類の不足申請種別ごとに必要書類を明確にする「申請種別×必須添付」の一覧表を作成し、マニュアルや社内ポータルに掲示する申請内容に応じて必要な添付ファイルの有無をチェックし、不足時は警告を表示する添付漏れの差し戻しが減り、税務・監査対応の安心感が高まる
承認ルートの誤設定・誤申請金額や部門に応じた承認ルートを自動化する承認権限表を最新化し、申請者向けの簡易フロー図を用意する金額や勘定科目、部門に応じて承認ルートを自動判定するワークフローを設定する誤った承認者への回付が減り、承認待ちによる滞留を防ぎやすくなる
承認ルールの曖昧さ定量的な承認基準を明文化する「いくらまでなら承認不要」「どの条件なら上長承認が必要か」などを文章で整理する金額や回数、期間などの条件に応じて承認ステップを自動追加・省略する差し戻し理由のバラつきが減り、申請者・承認者の判断基準をそろえやすくなる
申請フォーム・フォーマットの複雑さ現場目線でシンプルな項目に見直す実際の申請画面を使いながら、現場ヒアリングで不要な項目や分かりにくい表現を洗い出す入力内容に応じて表示項目を出し分けるなど、画面レイアウトを最適化する入力負荷が減り、誤入力や途中離脱が減ることで、全体の処理スピードが向上する

差し戻し削減の取り組みは、どのようなステップで進めるべきか?

現状分析→要件定義とツール選定→スモールスタート→本格展開と継続的改善の4ステップで進めると、現場の負担を抑えながら改善効果を確認しつつ、ムリ・ムダの少ない導入が可能になります。

ステップ1:現状分析と課題の洗い出し

差し戻し対策は、思いついた施策を個別に打つよりも、現状把握から段階的に進めたほうが効果的です。いきなり大規模なシステム導入に踏み切るのではなく、まずはどこで何が起きているかを可視化し、優先度の高い領域から順に手を打つことで、リスクを抑えながら着実に改善できます。

ステップ1では、過去数か月分の申請データを分析し、どの申請種別で差し戻しが多いか、主な理由は何かを数値で把握します。記入漏れ、添付書類不備、承認ルート誤りなど原因別に件数を集計し、特に影響度の高いパターンを特定します。あわせて、承認フローのどの段階で止まりやすいか、申請者・承認者へのヒアリングで運用上の不便さを洗い出し、改善すべきポイントに優先順位を付けます。

ステップ2:要件定義とツールの選定

現状分析で明らかになった課題をもとに、解決するために必要な機能や要件を定義します。例えば、記入漏れが多い場合は入力必須項目の設定機能が、承認ルート誤りが多い場合は自動分岐機能が必要になります。要件が固まったら、予算と導入期間を設定し、それに見合ったツールの選定を進めます。市場には多様なワークフローシステムや経費精算システムが存在するため、自社の課題に最も適したものを選ぶことが重要です。

複数のツールを比較検討する際は、機能の充実度だけでなく、既存システムとの連携性、ユーザーインターフェースの使いやすさ、サポート体制の手厚さなども評価基準に含めます。可能であれば無料トライアルや試用期間を利用し、実際に使ってみることで、現場での使い勝手を確認することが推奨されます。適切なツール選定が、その後の導入成功を左右する重要なポイントとなります。

ステップ3:スモールスタートによる検証

大規模なシステムをいきなり全社展開するのではなく、特定の部署や申請種別に限定した試験導入から始めることがリスク軽減につながります。例えば、まず経理部門内の経費精算申請だけで運用を開始し、実際の業務での課題を洗い出します。このスモールスタートの期間中に、ユーザーからのフィードバックを積極的に収集し、システムの設定やフォーマットの調整を行います。

想定していなかった操作上の不便さや、業務フローとのミスマッチが発覚することもあるため、この段階で十分に検証と改善を繰り返すことが大切です。また、申請者や承認者向けの操作説明会を実施し、新しいシステムに慣れてもらう期間を設けることも重要です。試験導入で得られた知見をもとにマニュアルを改訂したり、FAQ を充実させたりすることで、本格展開時のトラブルを最小限に抑えられます。

効果指標早見表

指標定義測定方法導入前3か月後目標値備考
差し戻し率差し戻し件数 ÷ 申請件数月次で申請/差し戻し件数を集計  —%  —% ▲50%トップ3原因を先行対策
承認待ち時間申請から最終承認までの平均日数システムの履歴から平均を計算  — 日  — 日 ▲30%期限・通知・代理承認の運用で短縮
再提出までの平均時間差し戻し通知から再提出までの平均差し戻し履歴で平均を計算 — 時間 — 時間 ▲40%再提出の動線とチェックリストを明示
担当工数1件当たりの処理時間(申請者/承認者/経理)代表サンプル10件の実測(ストップウォッチ) — 分/件 — 分/件 ▲20%入力時の自動チェックで手戻り削減
添付漏れ率必要書類の添付漏れ件数 ÷ 申請件数チェックルールのアラート件数を集計  —%  —% ▲70%必須項目と形式チェックを厳密化
事前相談率金額・取引の基準超過時に事前相談された比率基準超過フラグ件数に対する事前相談件数  —%  —% +30pt「上位者への相談」導線と基準の明文化

ステップ4:本格展開と継続的改善

試験導入で一定の効果を確認できたら、対象部署を段階的に広げながら全社展開を進めます。その際は、事前に操作説明やルールの共有を行い、申請者・承認者が新しい仕組みに戸惑わないようにすることが重要です。導入後は差し戻し件数や承認リードタイムの推移を定期的に確認し、当初の目標と比較しながら、残っている課題に追加対策を講じます。

システムやルールは導入して終わりではなく、業務内容の変化や法改正に合わせて見直しが欠かせません。ユーザーからの要望や現場の声を継続的に取り込み、設定や運用ルールをアップデートし続けることで、「差し戻しが起きにくい承認フロー」を長期的に維持できます。

経費精算システム選び方ガイド 経費精算システム選び方ガイド

差し戻しが起きにくい承認フローを設計するには、業務をどう可視化する?

フローチャートによる流れの見える化と、金額や日数など数字で決めたルールの明文化、必要書類の一覧化によって「誰が・いつ・何をもとに判断するか」を整理すると、差し戻しが起きにくいフローを設計しやすくなります。

承認フローの可視化方法

差し戻しを根本的に減らすには、システム機能だけでなく、業務プロセスそのものを見直す必要があります。判断基準や必要項目があいまいなままでは、どれだけツールを整えても差し戻しはなくなりません。誰がどの条件で承認し、どのような書類が必要なのかを可視化し、共通のルールとして整理することが重要です。

まず、申請から最終決裁までの承認フローをフローチャートなどで図示し、金額や内容による分岐条件、各承認者の権限範囲を明確にします。あわせて、申請種別ごとに必要な書類やデータを一覧化し、「この申請には何を準備すべきか」が一目で分かるようにします。各承認段階の処理期限も設定することで、どこで承認が滞っているかを把握しやすくなり、申請者・承認者ともに迷わず手続きを進められるようになります。

定量的なルールの設定

差し戻しを減らすには、曖昧な判断基準を排除し、定量的で明確なルールを設定することが効果的です。例えば、承認ルートについては「10万円以上の購入申請は部長承認を経由する」「50万円以上の契約は役員決裁が必要」といった金額基準を明文化します。申請区分ごとに必須項目を具体的に定義し、どの項目を必ず記入しなければならないかをリスト化します。

承認期限についても「申請から3営業日以内に一次承認」「最終決裁まで5営業日以内」といった具体的な日数を設定します。例外処理が必要なケースについても、あらかじめ条件とプロセスを定めておくことで、その場その場の判断に頼らずに済みます。電子帳簿保存法インボイス制度など法令対応が必要な場合は、「この金額以上の場合は事前に経理部長へ相談」「適格請求書発行事業者の登録番号を必ず確認」といったルールを具体的に定めます。定量的なルールがあることで、判断のばらつきが抑えられ、差し戻しの大幅な削減が期待できます。

請求書受領サービスの活用

請求書受領サービスを導入することで、経理部門における書類処理の標準化と効率化が実現します。これらのサービスは、取引先から届く紙やPDF形式の請求書を電子化し、クラウド上で一元管理する仕組みを提供します。経理担当者は常に統一されたインターフェースで情報を処理できるため、フォーマットのばらつきによる混乱を避けられます。AI-OCR技術を活用することで、請求書に記載された日付や金額、取引先名などのデータを自動的に読み取り、入力ミスや転記ミスのリスクを大幅に削減できます。読み取り精度も年々向上しており、手書きの請求書でも高い認識率を実現しています。

また、電子帳簿保存法に対応した形式でデータを保存する機能があるため、法令遵守の観点からも安心です。請求書の受領から承認、支払いまでの一連のフローがシステム上で完結することで、関係者全員が進捗状況をリアルタイムで把握でき、追加の修正が必要な場合もすばやく気づける環境が整います。

属人化からの脱却

差し戻しの根本原因である業務の属人化から脱却するには、組織全体で共通の基準を適用する体制づくりが不可欠です。まず、現場の担当者からの意見を積極的に取り入れる姿勢が重要です。差し戻しが発生する現場で実際に何が起こっているのか、なぜ書類の不備が生じたのか、どうして承認が進まなかったのかを関係者全員で共有する場を定期的に設けます。この話し合いを通じて、表面化していなかった問題点や改善のアイデアが出てくることも少なくありません。

収集した知見は文書化してナレッジベースとして蓄積し、誰もがアクセスできる状態にします。新しく配属された担当者でも、過去の事例や判断基準を参照することで、経験豊富な担当者と同じレベルの業務が行えるようになります。組織全体で共通の基準を適用することで、特定の個人に依存しない持続可能な業務体制が構築され、単に時間を短縮するだけでなく、結果として精度の高い経理業務が実現します。

なお、「誰がどの順番で承認するか」といった承認経路そのものの設計や見直しのポイントについては、承認ルートの考え方を図解で整理した以下の記事で詳しく解説しています。

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差し戻しを減らすために、組織としてどのような学習サイクルを回すべきか?

定期的な差し戻し事例の分析・共有、承認者・申請者への教育やOJT、フィードバックをもとにしたルール改善というサイクルを回すことで、「同じ差し戻しを繰り返さない」組織文化を育てることができます。

定期的な事例分析と共有

差し戻しを継続的に減らすには、発生した事例をその場限りで終わらせず、組織で学びに変える仕組みが必要です。月次や四半期ごとに差し戻し案件を集約し、記入漏れ、添付不備、計算ミスなどの原因別に整理すると、どのパターンが多いかが分かります。特定の部署や申請者に偏っている場合は、背景にある業務設計や教育の問題を確認します。

分析結果は経理部門だけでなく関係部署とも共有し、差し戻しが減った部署の工夫や成功事例もあわせて紹介します。蓄積した事例と対策をナレッジとして整理しておけば、新任担当者でも過去の判断や基準を踏まえて申請・承認ができるようになり、時間の経過とともに予防可能な差し戻しを大きく減らすことができます。

研修とOJTの実施

システムやルールを整備しても、それを使う担当者のスキルが不足していては効果は限定的です。新入社員や異動してきたばかりの担当者には、申請ルールの基礎から丁寧に説明する研修を実施します。座学だけでなく、実際のシステムを使った実践トレーニングを組み合わせることで、理解が深まります。経験豊富な担当者からベストプラクティスを共有してもらうセッションも有効です。

例えば、差し戻しが少ない担当者の申請書作成のコツや、効率的な書類整理の方法などを学ぶことができます。法改正や社内ルールの変更があった際には、速やかに説明会を開催し、変更内容と対応方法を周知します。電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入時など、経理業務に大きな影響がある場合は特に重要です。

OJTでは、実際の業務を通じて先輩社員が後輩社員を指導する体制を整えます。申請書のダブルチェックを行いながら、よくあるミスのポイントを伝えることで、実践的なスキルが身につきます。

フィードバックループの確立

差し戻しが発生した際には、単に修正を指示するだけでなく、建設的なフィードバックを提供することが重要です。承認者は差し戻しの理由を具体的かつ分かりやすく記載し、申請者が何をどう修正すればよいかを明確に伝えます。「不備があります」といった曖昧な表現ではなく、「領収書の日付が不鮮明なため、再スキャンしてください」といった具体的な指示が効果的です。申請者にとって学習の機会となるよう、なぜその修正が必要なのか、どのような基準で判断しているのかも説明すると、次回以降の申請精度が向上します。

また、申請者からの改善提案を受け入れる仕組みも大切です。現場で申請業務を行う担当者は、フォーマットやルールの不便な点を最もよく知っています。定期的に意見を収集し、合理的な提案は積極的に採用することで、使いやすいシステムへと進化させることができます。差し戻しが大幅に減少した事例や、工夫によって業務効率が改善した成功事例は、社内で表彰したり共有したりすることで、組織全体のモチベーション向上にもつながります。

以下の記事では、権限分岐・期限・代理承認・監査ログまで含めて承認を“仕組み化”するポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。

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承認フローの差し戻し削減は、組織全体の効率化にどのようにつながるのか?

差し戻しを減らして承認フローがスムーズになると、決裁リードタイムの短縮や残業削減だけでなく、部門間のコミュニケーションやガバナンスの質も向上し、組織全体で付加価値の高い業務に時間を振り向けられるようになります。

業務処理速度の向上

差し戻しを削減することで、申請から最終承認までのリードタイムが大幅に短縮されます。修正や再確認のための往復が減ることで、承認フローがスムーズに進行し、経費精算や支払い承認が迅速に完了するようになります。この処理速度の向上は、月次決算の早期化にも直結します。経理部門では月末から月初にかけて決算業務が集中しますが、承認待ちによる遅延が減ることで、より早く正確な財務数値を確定できます。早期化された月次決算により、経営陣はタイムリーに業績を把握でき、迅速な経営判断が可能になります。

差し戻し削減効果のビフォーアフター比較表

項目改善前改善後削減率
月間差し戻し件数    120件     35件   71%削減
承認平均日数     6.5日    2.8日   57%短縮
担当者残業時間    25時間    12時間   52%削減
経費精算処理時間    180分    65分   64%短縮
注記(測定期間・対象範囲)測定期間:[20XX年X月〜20XX年X月]/ 対象範囲:[経費精算ワークフロー(申請〜最終承認)/全社 or 部門名]。数値は月次平均。
削減率・短縮率の算出:(改善前 − 改善後) ÷ 改善前(%表記)。

支払いサイクルについても、承認の遅延がなくなることで取引先への支払いが期日通りに実行され、企業の信頼性向上にもつながります。さらに、承認業務にかかる時間が削減されることで、経理担当者は財務分析や予算管理、経営層へのレポーティングといった、より戦略的で付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。

コスト削減効果

差し戻し削減による効果は、時間だけでなく具体的なコスト削減としても現れます。申請者と承認者の工数が減ることで、人件費の削減効果が期待できます。差し戻し対応に費やしていた時間を本来の業務に充てられるため、残業時間の削減にもつながります。ワークフローシステムを導入し、紙ベースの申請から電子申請に移行することで、用紙代やプリント費用、郵送費なども削減されます。

特に拠点が複数ある企業では、書類の物理的な移動コストが不要になるため、その効果は顕著です。システムによる自動チェック機能や承認ルートの自動制御により、人的ミスが減少することで、誤った支払いや二重支払いといったトラブルの防止にもつながります。こうした直接的なコスト削減に加えて、業務効率化により組織全体の生産性が向上し、限られた人員でより多くの業務を処理できるようになります。結果として、人員の適正配置や採用コストの最適化など、間接的なコスト削減効果も期待できます。

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働き方改革への貢献

差し戻しのない承認フローは、従業員の働き方改革にも大きく貢献します。ルールが明確化され、システムによる自動チェックが機能することで、申請者は安心して申請できるようになります。差し戻しによる予期せぬ手戻りがなくなることで、スケジュール通りに業務を進められ、計画的な働き方が可能になります。承認者にとっても、システム上で申請内容を確認できるため、場所や時間を問わず承認業務が行えます。テレワーク環境でも滞りなく承認フローが回ることで、柔軟な働き方を実現できます。

差し戻し対応に追われる時間が減ることで、経理担当者は定時での退社が可能になり、ワークライフバランスの改善につながります。業務のストレスが軽減されることで、従業員の満足度が向上し、モチベーションの向上や離職率の低下といった効果も期待できます。明確なルールと効率的なプロセスが整備された職場環境は、優秀な人材を惹きつけ、定着させる要因ともなります。

継続的な改善文化の醸成

差し戻し削減に向けた一連の取り組みは、組織全体に継続的な改善文化を根付かせる効果があります。現状を分析し、課題を特定し、対策を実施し、効果を測定するというPDCAサイクルが定着することで、他の業務領域でも同様のアプローチが適用されるようになります。データに基づいて意思決定を行う文化が浸透し、勘や経験だけに頼らない科学的な業務改善が可能になります。現場からの改善提案が積極的に出されるようになり、ボトムアップでの業務効率化が進みます。従業員一人ひとりが問題意識を持ち、自ら解決策を考える姿勢が育まれることで、組織全体の問題解決能力が向上します。

差し戻し削減という具体的な成果が見えることで、改善活動への参加意欲が高まり、さらなる改善のサイクルが回り始めます。こうした継続的改善の文化は、経理部門だけでなく、営業、製造、人事など他部門にも波及し、企業全体の競争力強化につながります。差し戻し削減は単なる業務効率化にとどまらず、組織変革の起点となる重要な取り組みといえます。

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まとめ:差し戻しフローの効率化で押さえておきたいポイントは?

差し戻し削減は、原因を可視化し、ルールとツールをセットで整え、KPIで成果を測りながら改善を続けることで実現できるため、単発の対策ではなく「継続的な運用設計」として捉えることが大切です。差し戻しを効果的に削減するには、その発生原因を正確に把握し、システム導入、フォーマット最適化、ルール明確化といった多面的なアプローチが必要です。特に、申請前の自動チェック機能やワークフローシステムの活用は、記入ミスや添付漏れといった典型的な差し戻し原因を大幅に削減できます。

また、システム導入だけでなく、業務プロセスの可視化やルールの定量化により、判断基準の属人化を解消することも重要です。さらに、過去の差し戻し事例を分析し、組織全体で学習するサイクルを確立することで、継続的な改善が可能になります。差し戻しのない承認フローは、経理部門の生産性向上だけでなく、組織全体の働き方改革や従業員満足度の向上にもつながります。本記事で紹介した対策を段階的に実践し、スムーズな承認フローを実現してください。

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