経理DX促進

マネージャーの残業はなぜ減らない?原因を分解し、すぐできる減らし方を解説

更新日:2026.02.02

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マネージャー_残業

マネージャーの残業が減らない背景には、「仕事量が多い」だけでなく、承認・調整が集中する設計、会議やチャットによる中断、評価や運用ルールの歪みといった“仕組み”の要因が重なっているケースが多くあります。まずは労働時間を見える化し、業務を「任せる/やめる/仕組みに預ける」で再設計すると、残業を構造的に減らしやすくなります。

なお、残業を見えにくく増やす元凶は「作業時間」そのものより、思考が分断される“中断コスト(再集中コスト)”です。役職者は1日複数回の中断が起きやすく、集中しなおすまでに5分以上かかる傾向も報告されています。1回15分の中断が1日に4回起きるだけで、月20時間(約2.5営業日分)の時間が失われます。まずは“夜に回りがちな承認・確認”から順に、仕組みで中断を減らすことが重要です。

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【本記事の要点】
・残業要因を「業務(締切・承認)/コミュニケーション(会議・チャット)/制度・評価(文化・ルール)」で切り分ける
・管理職も含めて勤務実態を可視化し、繁忙期は前倒し・役割分担・例外ルールで“山”を小さくする
・承認・一次チェック・定型問い合わせは、ルール化と自動化で“夜に回る仕事”を減らす

本記事では、マネージャーの残業を「原因5つ」にいったん固定し、まず“自社はどれが主因か”を最短で切り分けます。

【残業が減らない原因(5つ)】
①承認・レビュー集中(例外判断が多い)
②属人化(問い合わせ・確認が特定の人に集中)
③会議・調整・チャットによる中断コスト
④繁忙期の“山”が毎回同じ時期に立つ(前倒し不足)
⑤評価・文化(遅くまでいるほど頑張っている)

この5つは単独ではなく、連鎖して残業を増やします。最初に、原因と打ち手の全体像を「早見表」で把握しておくと、自社がどこから着手すべきか判断しやすくなります。

マネージャーの残業が減らない原因→打ち手 早見表

原因(よくある構造)典型サインまずやる打ち手(着手順)
承認・レビューが上位に集中(例外判断が多い)月末月初や締切前に承認依頼が滞留し、夜にまとめ処理が発生①差し戻し理由を分類→上流の入力ルール/テンプレ整備
②標準ケースは自動チェック・例外のみ確認へ
属人化(「その人しか分からない」業務)問い合わせ・確認が特定の人に集まり、作業が常に中断される①頻出業務から手順書・チェックリスト化
②判断基準を明文化し引き継ぎ可能にする
会議・調整・チャットによる中断コスト日中は会議と連絡対応で埋まり、集中作業が夜に回る①会議の目的/参加者/事前資料をルール化
②問い合わせ窓口・回答時間帯を決めて即レス依存を減らす
繁忙期の“山”が毎回同じ時期に立つ決算・締切前に残業が常態化し、改善の時間が取れない①繁忙カレンダーで予測→前倒しタスクを設定
②役割分担/応援要員/例外ルールで山を小さくする
評価・文化(遅くまでいるほど頑張っている)残業して回す状態が“普通”になり、是正が進まない①評価軸に「仕組み化・再現性」を入れる
②残業を前提にしない業務設計を上位合意する

経理マネージャーの残業が減らないのはなぜか?

働き方改革で一般社員の残業は減ってきた一方、経理やバックオフィスのマネージャーからは「自分だけ残業が減らない」という声も聞かれます。決算対応や経費精算の締め切り、法改正への対応など、経理部門ならではの要因が重なり、プレイングマネージャーほど長時間労働が常態化しがちです。この章では、まず経理マネージャーの残業が増えやすい背景と現状を整理し、「本人の頑張りだけでは解決できない」構造的な問題を明らかにします。

以下に、経理マネージャーとしての残業状況を簡単に振り返るためのセルフチェックをご用意しました。いくつ当てはまるか確認してみてください。

経理マネージャー残業セルフチェックリスト

チェック項目
□ 決算前は毎日1〜2時間以上の残業が続き、連日終電近くになることがある。
□ 月末・月初に経費精算や立替精算の承認依頼が集中し、勤務時間後にまとめて処理している。
□ インボイス制度や電子帳簿保存法に関する問い合わせがマネージャーに集中し、日中の作業がたびたび中断される。
□ 会議やチャット対応に追われて、日中は自分の確認作業や分析業務にほとんど時間を割けていない。
□ 「自分がやった方が早い」と考え、メンバーに任せられる業務まで抱え込んでしまうことが多い。
□ 繁忙期の残業が当たり前になっており、「なぜそうなっているか」を振り返る機会がほとんどない。

一般社員の残業は減っているのに、マネージャーだけ減らない理由

働き方改革の進展により、一般社員の残業時間は減少している一方で、経理やバックオフィスのマネージャーだけは残業があまり減っていないケースが見られます。表向きは「チーム全体の残業を抑える」ことが優先されるため、締め切り直前の対応やトラブル処理が上位者に集中しやすいことが一因です。また、メンバーの育成や評価、他部署との調整など、時間が読みづらい業務を抱えていることも、勤務時間を押し上げる要素になります。その結果、マネージャーが自分の仕事を後回しにし、就業時間後にまとめて対応する構図が生まれやすいのです。

プレイングマネージャー化と人手不足が招く長時間労働

経理やバックオフィスでは、人員に余裕がない状況でプレイングマネージャーが増えています。本来はチームのマネジメントに時間を割くべき立場でありながら、実務担当としても多くの処理を抱え続けている状態です。たとえば、決算の仕訳作成や経費精算の承認、取引先とのやり取りまで、マネージャー本人が手を動かしていると、日中は会議や相談対応で時間が埋まり、夜に残った作業を行うしかなくなります。人手不足の中で「自分がやった方が早い」と考えてしまうと、長時間労働から抜け出しにくくなり、結果としてマネージャーの負担が慢性的に重くなってしまいます。

経理・バックオフィス特有の「締め切り」と「突発対応」

経理やバックオフィスの仕事は、月次や四半期、年度といった定期的な締め切りがはっきりしている一方で、突発的な業務も多いことが特徴です。請求書の差し替えや支払期日の急な変更、税務やインボイスに関する問い合わせなど、予定していなかった対応が日常的に発生します。さらに、決算発表や監査の準備が重なる時期には、通常業務に加えて資料作成や確認作業が一気に増えます。こうした「締め切り」と「突発対応」が同時に押し寄せると、日中には処理しきれず、どうしても残業に頼らざるを得ない状況になりがちです。

以下の記事では、経理の平均残業時間と代表的な削減方法について詳しく解説していますので参考にしてください。

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経理・バックオフィスならではの「残業要因」を分解する

経理・バックオフィスの現場では、月次・四半期・年度決算や経費精算、立替精算、請求書処理、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応など、期限が決まった業務が集中します。加えて、監査対応やシステムトラブルなどの突発業務も少なくありません。この章では、経理マネージャーの残業につながりやすい業務を「決算」「経費関連」「法対応・監査」の3つの観点から整理し、自社のボトルネックを見つけるヒントを提示します。

まず、どの業務が経理マネージャーの残業を押し上げているのかを以下の一覧で整理しておくと、自社の課題を冷静に見極めやすくなります。

経理マネージャーの残業要因早見表

業務領域残業への影響度典型的な残業シーンAI・自動化の有効度
決算業務     高他部署からのデータ遅延や修正依頼が重なり、最終チェックや資料作成を夜間にまとめて実施している。◎(仕訳の一次チェックや残高確認の自動化により負荷を大きく軽減しやすい)
経費精算・立替精算     高月末・月初に承認依頼が集中し、差し戻しや再申請の対応で勤務時間後まで画面に張り付いている。◎(AI-OCRとワークフローで入力と一次チェックを自動化しやすい)
インボイス/電帳法・監査対応    中〜高制度対応や監査準備のために、証憑の確認や保存方法の見直しを通常業務に上乗せして夜間対応している。○(保存・検索・証憑突合の自動化で確認作業を圧縮できる)
会議・調整業務     中他部署との調整会議や定例ミーティングが日中に詰まり、肝心の確認作業が後ろ倒しになっている。△(オンライン会議や共有ツールで効率化は可能だが、運営ルールの見直しも必要)
メンバー育成・評価面談     中評価面談や育成面談を業務の合間に設定できず、終業後の時間帯にまとめて実施しがちになっている。△(記録・目標管理のデジタル化で一部効率化できるが、人が向き合う時間も必要)

決算業務:締め切りが集中する時期の残業パターン

決算期の経理部門では、売上や経費の計上、残高確認、資料作成など、多数のタスクが短期間に集中します。マネージャーは自分の担当仕訳やチェックに加え、メンバーからの質問対応や、経営層・監査人への説明も行う必要があります。そのため、日中は確認やミーティングで時間が埋まり、肝心のレビューや最終チェックを退社後に行う、というパターンになりやすいのです。また、他部署からのデータ遅れや修正依頼が発生すると、当初のスケジュールが崩れ、夜間や休日に作業を持ち込む要因にもなります。こうした構造を理解したうえで、前倒しや役割分担の見直しが求められます。

経費精算・立替精算:承認渋滞と差し戻しの負荷

経費精算や立替精算は、件数が多いだけでなく、ルールに沿っているかどうかの判断が必要なため、マネージャーの大きな負担になりがちです。申請内容に不備が多い場合、差し戻しや再申請が繰り返され、そのたびに確認とコミュニケーションの時間が発生します。

月末や期末に申請が集中すると、通常業務の合間に承認作業を挟み込むことが難しくなり、結果として就業時間後にまとめてチェックせざるを得ません。また、「承認が止まっていると申請者の業務も止まる」というプレッシャーから、マネージャーが優先して対応しようとして、長時間労働につながることも少なくありません。

ここで重要なのは、「承認=意思決定」と思い込まないことです。意思決定とは右か左か正解がない中で、不完全な情報に基づいて判断する行動です。一方、経費承認は意思決定に見えても、分解すると多くは「必要事項が揃っているか」「ルールに沿っているか」といった確認項目のチェックの連続にすぎません。だからこそ、標準ケースは自動チェック(一次判定)に寄せ、意思決定が必要な例外だけを人が見る設計に切り替えると、承認滞留と差し戻しが一気に減ります。

インボイス・電帳法・監査対応:法改正とチェック業務の増大

インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正により、経理部門には新たな確認項目や保存ルールが加わりました。マネージャーは、制度の内容を理解したうえで社内ルールに落とし込み、現場に浸透させる役割を担います。同時に、日々の取引がルールに沿って処理されているかをチェックし、監査や税務調査に備えた証跡管理も行う必要があります。こうした法対応は一度整備して終わりではなく、運用のたびに細かな確認が発生するため、マネージャーの作業時間をじわじわと押し上げます。結果として、通常業務に加えてチェックや説明資料の作成が積み重なり、残業の大きな要因になっていきます。

残業を生み出す「マネジメントと仕組み」の課題

残業が多い状態が続くと、「単純に仕事が多すぎるから」と考えがちですが、実際にはマネジメントや仕組みの課題が隠れていることも多いです。業務の棚卸しが十分に行われていない、担当者に任せ切れずマネージャーに仕事が集中している、会議や承認フローが非効率、といった要因が残業を押し上げます。この章では、経理マネージャーの残業を生み出す構造的な課題を整理し、どこから手を付けるべきかを考えます。

業務の棚卸し不足と「なんでもマネージャー経由」問題

残業が多い組織では、誰がどの業務を担当し、どれくらい時間がかかっているのかが整理されていないことがよくあります。特に経理やバックオフィスでは、「重要な処理はマネージャーが最終確認する」という文化が強く、結果として細かな確認や承認までマネージャーに集中しがちです。本来ならメンバーに任せられる作業も、「念のため」「前からそうしている」という理由で上位者が引き取り、業務が積み上がっていきます。業務の棚卸しを行い、担当者レベルで完結できるタスクと、マネージャーが関与すべきタスクを整理し直すことが、残業削減の第一歩になります。

部下の残業が減らないとマネージャーの残業も減らない

マネージャーの残業は「自分の仕事」だけで発生しているように見えて、実際には部下側で生じている残業・手戻り・詰まりが、最終的に承認やリカバリーとしてマネージャーに集約されるケースが少なくありません。典型は、締切直前に申請やレビュー依頼が集中し、差し戻しが連鎖して夜に処理が回るパターンです。

まずは、部下の業務量と難易度が偏っていないか、締切が「月末・月初」など特定日に過度集中していないかを点検します。加えて、差し戻し理由(必須項目漏れ/根拠不足/規程不適合など)を分類し、上流(申請時点)で潰せるルールやテンプレートを整備すると、マネージャー側の“夜の承認渋滞”が減りやすくなります。

次に、1件ずつの即時対応をやめ、「例外だけを見る」運用へ寄せることがポイントです。標準ケースはルール化・自動チェックに寄せ、マネージャーは例外判断と方針決定に集中できる状態を作ると、残業削減と品質統制を両立しやすくなります。

会議・承認フロー・チャットが膨らませる“見えない残業”

経理マネージャーの時間を圧迫しているのは、目に見える作業だけではありません。定例会議やプロジェクト会議、承認に関する打ち合わせ、チャットでの相談対応など、コミュニケーションにかかる時間も大きな割合を占めます。資料が事前に共有されていない、参加者が多すぎる、目的があいまいといった会議が続くと、本来集中して行いたいチェックや分析の時間が細切れになり、生産性が下がります。

また、チャットでの問い合わせに即時対応し続けると、作業が中断され続け、結局残業で取り戻すことになりがちです。会議の目的や参加者を見直し、承認フローや連絡方法を簡素化することが重要です。

評価・人事制度と「遅くまで残るほど頑張っている」という錯覚

組織によっては、長時間働いているマネージャーが「責任感が強い」「頑張っている」と評価される雰囲気が残っていることがあります。こうした風土があると、効率的に仕事を終えるよりも、遅くまで残業している姿が評価につながりやすくなり、結果的に残業を是正しにくくなります。経理マネージャーは、締め切りを守るために自ら時間外対応を引き受けがちですが、それが当たり前になると、業務の見直しや人員配置の議論が後回しになってしまいます。本来は、限られた時間で成果を出すことや、チーム全体の負荷を下げる工夫こそ評価されるべきです。人事評価の軸を見直すことが、残業削減の前提条件になります。

管理職の残業に関する基本ルール(管理監督者・残業代・上限規制)

「管理職=残業代が出ない」と捉えられがちですが、肩書と法的な扱いは必ずしも一致しません。制度運用を誤ると、本人の健康リスクだけでなく、組織としての労務リスクにもつながります。ここでは、マネージャーの残業を考えるうえで押さえるべき基本ルールを整理します。

ポイント1:肩書の「管理職」と、法的な「管理監督者」は別

役職名ではなく、職務内容・権限と責任・勤務態様・待遇などの実態で総合判断されます。安易に「管理職だから残業代なし」と運用せず、社内の判断基準を人事・法務と揃えておくことが重要です。

ポイント2:時間外労働には上限規制がある(36協定の運用が前提)

残業時間には上限があり、原則として月45時間・年360時間が目安となります。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)など、超えられない枠があります。まずは「実態を把握できる勤怠」と「超過を未然に止める運用」をセットで整えます。

ポイント3:管理職の残業対策は“業務設計”と“運用”がセット

制度だけ整えても、承認集中・差し戻し・会議過多などの業務設計が変わらなければ、残業は別の形で残り続けます。本記事の後半で紹介する「棚卸し」「繁忙期の前倒し」「ルール化・自動化」を、制度運用と一体で進めるのが現実的です。

Q1. 管理職(マネージャー)には残業代は必ず出ないのですか?

A. 肩書の「管理職」と、法的に労働時間規制の適用除外となる「管理監督者」は一致しない場合があります。役職名だけで判断せず、職務内容・権限と責任・勤務態様・待遇などの実態で整理することが重要です。

Q2. 管理監督者に当たるかどうか、社内では何を基準に判断すべきですか?

A. 役職名ではなく実態で判断するのが基本です。判断のブレを防ぐために、人事・法務と「どの職務・権限・勤務態様・待遇なら該当とみなすか」を社内基準として明文化し、運用とセットで整えます。

Q3. 残業時間の上限(36協定・上限規制)は、マネージャーの働き方にも関係しますか?

A. 関係します。残業時間には上限があり、まずは「勤怠で実態を把握できる状態」と「超過を未然に止める運用(前倒し・役割分担・例外ルール)」をセットで設計することが重要です。

Q4. マネージャーが残業を減らすために、最初に見直すべきは制度ですか、業務ですか?

A. 多くのケースで「業務設計(承認集中・差し戻し・会議過多)」がボトルネックです。制度運用の整備と並行して、業務を「任せる/やめる/仕組みに預ける」で再設計すると、効果が出やすくなります。

Q5. チームの残業を減らしたいのに、結局マネージャーだけ残業が増えるのはなぜですか?

A. 締切直前の承認集中、差し戻しの連鎖、属人化した問い合わせ対応などが、最終的にマネージャーへ集約されるためです。標準ケースはルール化・自動チェックへ寄せ、「例外だけを見る」運用に変えると改善しやすくなります。

組織として整えるべきマネージャー残業削減の土台

経理マネージャーの残業削減を、本人の工夫だけに任せていては限界があります。労働時間の正確な把握や、繁忙期・閑散期をふまえた人員配置、属人化を減らすマニュアル整備など、組織としての土台づくりが不可欠です。また、テレワークやフレックスタイムの仕組みを、経理業務でも活用できるようにすることもポイントです。この章では、人事・経営を含めた組織全体で取り組むべき基本的な対策をまとめます。

管理職も含めた労働時間の見える化と繁忙期の事前対策

残業を本気で減らすには、一般社員だけでなく管理職の労働時間も正確に把握する必要があります。勤怠システムや打刻ルールを整え、マネージャーが自らの勤務時間を過小申告しないようにすることが前提です。そのうえで、月別・週別に残業時間を見える化し、決算期や法対応が重なるタイミングを把握すれば、事前に応援要員の確保や業務の前倒しを検討できます。経理部門の繁忙カレンダーを作成し、人事や他部署と共有しておくことで、「忙しくなってから慌てる」のではなく、「忙しくなる前に準備する」体制に近づけることができます。

最後に、経理マネージャーの残業が増えやすいタイミングを年間カレンダーとして整理し、前倒しや人員調整を検討しやすくします。

表:経理マネージャーの繁忙期カレンダー

時期主な業務・イベント想定負荷対策メモ
    1〜2月年末分の経費精算、源泉徴収関連の確認、年度末に向けた準備。     中証憑の整理とデータ入力を前倒しし、年度末の山を少しでも低くしておく。
     3月年度末決算の準備、残高確認、仕訳の最終調整。     高繁忙期前にタスクと担当を明確にし、応援要員の確保や自動化の対象業務を早めに決めておく。
    4〜5月決算本番、開示資料作成、株主総会関連の資料準備。     高会議体を絞り込み、マネージャーの確認時間を確保するために、事前資料の共有と前倒しチェックを徹底する。
    6〜7月株主総会後の対応、各種報告書の提出、制度改正への追随。     中次の繁忙期に向けて業務の棚卸しと見直しを行い、自動化や業務分担の改善案を検討する。
     9月中間決算の対応、予算実績差異の分析。     中年度末決算の予行演習と位置づけ、データ取得方法やチェックフローの改善点を洗い出す。
     12月年末調整、賞与支給に伴う処理、翌年度予算の最終調整。     高年末調整のスケジュールや必要書類を早めに周知し、問い合わせ対応の手間を減らす工夫を行う。
   その他の月通常の月次決算や経費精算、日常的な問い合わせ対応。    低〜中繁忙期に向けたマニュアル整備や自動化の検討など、将来の残業削減につながる取り組みに時間を充てる。

業務マニュアル・引き継ぎの整備で属人化を減らす

経理・バックオフィス業務が特定のマネージャーに集中する背景には、手順や判断基準が頭の中にしかない、という属人化の問題があります。業務マニュアルやチェックリストを整備し、誰が見ても同じ品質で処理できる状態にしておくことで、担当の分散や引き継ぎがしやすくなります。最初から完璧なマニュアルを目指すのではなく、頻度が高くミスが許されない業務から、エクセルや社内ツールを使って簡易な手順書を作るところから始めると現実的です。定期的に内容を見直し、メンバーからの質問や改善提案を反映させることで、マネージャーだけに頼らない運用体制に近づきます。

テレワークやフレックスを経理業務でも活かすための工夫

テレワークやフレックスタイムは、経理業務には向かないと考えられてきましたが、電子帳簿保存法への対応やクラウドサービスの普及により、活用の余地が広がっています。たとえば、紙の書類を減らし、証憑をデジタルで保管・共有できるようにすれば、自宅や別拠点からでも確認作業が可能になります。また、早朝や夕方の時間帯に集中しやすい業務を柔軟な勤務時間で分散させることで、特定の時間帯に残業が偏るのを防ぎやすくなります。ただし、セキュリティや権限管理には十分配慮し、ルールを明文化して運用することが重要です。

AI・自動化で経理マネージャーの残業を減らし時間を生み出す

最近は、経費精算や請求書処理、仕訳の一次チェックなど、経理の定型業務をAIや自動化ツールで効率化する事例が増えています。マネージャーが夜にまとめて対応していた承認やチェックを、日中のスキマ時間に処理できるようにすれば、残業時間の削減につながります。この章では、経理・バックオフィスのどの業務をAI・自動化ツールに任せられるのか、マネージャーの残業削減という観点から具体例を紹介します。

まず前提として、AIは「効率化ツール」から、業務を自律的に進めるエージェント(代理人)へと質が変わり始めています。経理AIエージェントの全体像(何が変わるのか/どこまで任せられるのか)を短時間で掴みたい方は、PIVOTでの対談も先に見ておくと理解が早いです。

以下の表を参考に、AIや自動化ツールを検討する際には、「どの業務にどれだけ効くのか」「どこに注意が必要か」を整理しておくと、導入の優先順位を付けやすくなります。

AI・自動化の適用表(業務×効果×注意点)

業務領域自動化しやすさマネージャー時間削減インパクト導入時の注意点
経費精算・立替精算◎(領収書読取や規程チェックは定型処理が多い)大(承認・差し戻し対応の時間を大きく削減しやすい)経費規程や申請パターンを整理し、例外ルールを事前に洗い出しておくことが重要です。
請求書処理・支払業務○(請求書データの取り込みや振込データ作成を自動化しやすい)中〜大(件数が多いほど効果が大きくなる)取引先マスタや勘定科目のルール設計を丁寧に行い、誤振込防止のチェックフローを残す必要があります。
仕訳入力・一次チェック○(パターン化された取引は自動仕訳の対象にしやすい)中(定型取引が多い企業ほど効果が出やすい)自動仕訳ルールの妥当性を定期的に見直し、例外処理の扱いを明確にしておくことが求められます。
社内問い合わせ対応(規程・過去データ)◎(よくある質問やルール説明はパターン化しやすい)中(細切れの対応時間をまとめて削減できる)最新の規程やマニュアルと常に内容を同期し、誤った回答を防ぐための監修フローを用意しておくと安心です。

経費精算・立替精算:AI-OCRとワークフローで承認作業を圧縮

経費精算や立替精算には、領収書の内容確認や規程との照合といった定型的な作業が多く含まれます。AI-OCRを活用すれば、金額や日付、店舗名などの情報を自動で読み取り、エクセルやシステムに手入力する手間を大幅に減らせます。さらに、ワークフローシステムと組み合わせることで、申請内容が自動でマネージャーに回り、規程に反している項目にはアラートを出すことも可能です。よくある差し戻し理由をひな形として登録し、定型のコメントで対応できるようにしておけば、一件あたりの承認時間を短縮できます。こうした仕組み化により、マネージャーが夜にまとめて処理していた承認作業を、日中のスキマ時間で無理なくこなせるようになります。

「失敗事例」にならないための請求書受領システムの選び方

請求書処理・仕訳:自動入力とルールベースチェックで夜間作業を削減

請求書処理や仕訳入力も、AIや自動化ツールの活用によってマネージャーの負担を軽くできる領域です。請求書の画像やPDFから取引先名や金額、支払期日などを自動で取り込み、あらかじめ設定したルールに基づいて勘定科目や補助科目の候補を表示するしくみを整えれば、担当者は候補を確認して承認するだけで済みます。また、異常値や科目の誤りが疑われる取引だけを自動でピックアップし、マネージャーに確認を回すようにすれば、すべての仕訳を一つひとつチェックする必要はなくなります。これにより、夜間に集中して行っていた確認作業を大幅に削減し、本来マネージャーが担うべき分析や改善提案に時間を振り向けることができます。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

経理AIエージェント的な活用:問い合わせ・確認作業を任せる

経理マネージャーの時間を奪う見えない業務として、社内からの問い合わせ対応や過去データの確認があります。経費規程の細かなルールや、インボイスの扱い、過去の支払履歴などに関する質問が日々寄せられ、そのたびにエクセルやシステムを検索して回答していると、想像以上の時間がかかります。経理AIエージェントのような仕組みを活用すれば、よくある質問への回答や、社内規程・マニュアルの検索、簡易な集計などをツール側に任せることができます。マネージャーは、例外的な判断が必要な案件や、方針決定が絡む相談に集中できるため、残業時間の削減と業務の質の向上を同時に目指しやすくなります。

AIや自動化、業務見直しの効果をイメージしやすくするために、経理マネージャーの1日の時間配分がどのように変わるかを、ビフォー/アフターで比較します。

経理マネージャーの1日の時間配分表

時間帯導入前の主な過ごし方導入後の主な過ごし方
    9:00〜12:00メールとチャットの確認、突発的な問い合わせ対応に追われ、予定していたタスクに着手できないことが多い。AIが集約した重要な通知を確認し、午前中は決算スケジュールの管理やメンバーのフォローに集中できる。
    13:00〜17:00会議や他部署との調整が詰まり、経費精算の承認や仕訳チェックは合間に慌ただしく実施している。自動化された承認フローの例外分のみを確認し、残りの時間は分析や改善提案の資料作成に充てられる。
    17:00〜20:00以降日中に終わらなかった精算承認や決算チェックをまとめて行い、連日残業が続く。日中のうちに定型業務が片付き、残業は必要な日のみ。帰宅前に翌日の優先タスクを整理できる程度で済む。

以下の記事では、経理マネージャー業務をAIで支援する最新トレンドについて詳しく解説していますので参考にしてください。

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小さく始めてマネージャーの残業を減らそう

AIや自動化ツールを活用すれば残業削減の余地は広がりますが、いきなりすべての業務を置き換える必要はありません。まずは、マネージャー自身の残業に直結している業務から、小さく試して効果を確認し、チームで運用ルールを整えていくことが大切です。この章では、「スモールスタート」で導入・改善を回しながら、長期的に残業を減らしていくための進め方を整理します。

いきなりすべての業務を変えるのではなく、経理マネージャーの残業に直結する領域から小さく始めていくためのステップを、タイムライン形式で整理します。

スモールスタートで進める導入ステップ表

ステップ期間の目安目的実施内容の例
ステップ1:現状把握   〜1か月残業時間が多い業務と繁忙期のパターンを把握する。直近数か月の勤怠やタスクを振り返り、どの業務にどれだけ時間を使っているかを洗い出す。
ステップ2:対象業務の選定   〜1か月自動化や業務見直しの優先度が高い領域を絞り込む。決算・経費精算・請求書処理などの中から、残業削減効果と実現可能性のバランスが良い業務を選ぶ。
ステップ3:スモールスタート   〜3か月限定的な範囲で試行し、使い勝手と効果を検証する。特定の部門や一定期間だけ新しいツールやフローを試し、現場の声や運用上の課題を収集する。
ステップ4:運用ルール整備 ステップ3と並行実務に合ったシンプルなルールを整え、属人化を防ぐ。入力ルールや承認フロー、例外対応の方針をまとめ、マニュアルやチェックリストとして文書化する。
ステップ5:範囲拡大と定着   〜6か月効果が確認できた取り組みを他部門や全社に広げる。効果指標と現場の反応を共有しながら、対象部門を段階的に増やし、定期的な振り返りで改善を続ける。

残業時間の多い業務から優先順位を付ける

AIや自動化を導入する際は、すべての業務を一度に対象にするのではなく、マネージャーの残業時間に直結している業務から着手することが重要です。まずは、直近数か月の勤務実績や感覚値をもとに、「どの業務にどれくらい時間を使っているか」をざっくりで構わないので書き出してみます。そのうえで、単純作業の割合が高いものや、繁忙期に集中しやすいもの、ミスが多く差し戻しが発生しているものなどを優先候補として挙げます。優先順位を決めて一つずつ取り組むことで、スモールスタートでも効果を実感しやすくなり、部門内の理解も得やすくなります。

小さく試して、メンバーと一緒に運用ルールを整える

新しいツールや仕組みは、最初から完璧な形で導入する必要はありません。まずは決算前の一定期間だけ試してみる、特定のチームだけで使ってみるなど、小さく始めることでリスクを抑えられます。その際、現場のメンバーにも試行段階から参加してもらい、使い勝手や運用上の困りごとを率直に出してもらうことが大切です。マネージャーは、実際の運用で見えた課題をもとに、入力ルールや承認フロー、例外対応の方法を整理し、シンプルな運用ルールにまとめていきます。現場と一緒にルールを作ることで、形だけの仕組みではなく、定着しやすい仕組みになります。

月次・四半期の振り返りで、効果を数字と言葉で共有する

残業削減や自動化の取り組みは、やりっぱなしにせず、定期的に振り返ることが重要です。月次や四半期ごとに、マネージャー自身の残業時間や、部門全体の残業時間の推移を確認し、「どの対策がどれくらい効いたのか」を数字で振り返ります。同時に、メンバーからの感想や改善提案も集め、働きやすさやミスの減少といった定性的な変化も共有します。こうした振り返りを通じて、単なるツール導入ではなく、「残業を前提としない働き方への変化」として位置づけることで、経営層や他部署も巻き込みやすくなります。小さな成果を積み上げて共有することが、継続的な改善の原動力になります。

経理マネージャー一人に残業を背負わせないために

経理マネージャーの残業は、個人の働き方だけでなく、業務設計・組織の仕組み・IT活用のすべてが影響する問題です。決算や経費精算など、避けられない業務が多いからこそ、「どの業務をやめるか」「どこをAIや自動化に任せるか」を意識的に選ぶ必要があります。最後に、本記事で整理したポイントを振り返りながら、経理マネージャーが無理なく成果を出せる働き方に近づくための視点をまとめます。

“頑張り”ではなく“仕組み”で残業を減らす視点を持つ

経理マネージャーは責任感が強く、「自分が頑張ればなんとかなる」と考えがちです。しかし、個人の努力だけで残業を減らそうとすると、体力的にも精神的にも限界が訪れます。重要なのは、「誰がやっても残業しなくて済む状態」を目指すという視点に切り替えることです。業務の分担や手順、ツールの使い方、承認フローなどを見直し、仕組みそのものを改善することで、マネージャーの負担はもちろん、チーム全体の働き方も変わっていきます。“頑張り”ではなく“仕組み”を整えることが、長期的に持続可能な残業削減につながります。

経理・人事・経営が一体となってマネージャーを支える

マネージャーの残業を減らす取り組みは、経理部門だけで完結するものではありません。人事部門は労働時間や健康面のリスクをモニタリングし、必要に応じて配置転換や採用を検討する役割を担います。経営層は、残業削減を単なるコスト削減ではなく、組織の持続的な成長や人材確保のための投資として位置づける必要があります。経理・人事・経営が共通の問題意識を持ち、データと現場の声に基づいて対策を検討することで、マネージャー一人に負担を押し付けない体制が整っていきます。こうした連携こそが、働き方改革を実のあるものにする鍵です。

AI・自動化を前提にした新しい経理マネージャー像を描く

AIや自動化が経理業務に広がるなかで、マネージャーの役割も変化しつつあります。従来のように、自ら大量の仕訳や承認作業をこなすだけでなく、どの業務を自動化し、どの業務に人の判断を残すかを設計する役割が重要になっています。定型業務をツールに任せることで、マネージャーは経営への報告や分析、リスク管理、人材育成といった付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。AI・自動化を前提とした新しい経理マネージャー像を描き、その実現に向けて少しずつ業務の形を変えていくことが、残業削減と組織の成長を両立させるポイントになります。

まとめ

マネージャーの残業は、本人の頑張りだけでは解決できない「構造的な問題」が絡み合っています。業務量の増加やプレイングマネージャー化に加え、制度運用の曖昧さや「管理職は遅くまで残るもの」という暗黙の前提が、長時間労働を当たり前にしてしまいます。まずは労働時間の見える化とタスクの棚卸しを行い、どの業務を前倒し・任せる・やめるのかを整理することが重要です。そのうえで、テレワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方の選択肢を増やし、会議・承認フローを見直すことで、マネージャーが「残業しなくても成果を出せる」働き方に近づけます。継続的な振り返りと、経営層・人事・現場が一体となった取り組みが、マネージャーとチーム双方のパフォーマンス向上につながります。

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