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通勤定期の私用利用は直ちに違法とは限りませんが、経路・住所・通勤手段の虚偽や、定期区間の二重精算は不正とみなされやすいため注意が必要です。
通勤定期を休日に使うこと自体は、原則として直ちに違法ではありません(ただし、社内規程や申請内容に虚偽がある場合は別です)。一方で、会社に支給された通勤費を前提に「経路・住所・通勤手段」を偽ると不正受給になり得ます。また、出張に私用の寄り道が混ざる場合は、旅費規程と申請ルートに沿って精算範囲を先に決めることが重要です。
| ケース | 原則の扱い | 不正になりやすいポイント | 先に決めるもの |
|---|---|---|---|
| 通勤定期を休日に私用利用 | 追加費用が発生しない限り問題になりにくい | 「会社負担の通勤費」を前提に虚偽申請があると別問題 | 通勤費規程(申請・変更・証跡) |
| 定期区間を含む交通費精算 | 会社支給の定期区間は二重精算になりやすく原則除外 | 定期区間分まで申請してしまう/検知できない | 申請ルール(定期区間控除) |
| 出張に私用の寄り道が混在 | 旅費規程・申請ルート基準で精算範囲を決める | 実費で出すと私用分まで会社負担になりやすい | 旅費規程(精算上限・基準ルート) |
筆者は会社内の実務担当として給与計算や交通費の精算業務を13年担当、実際にプライベート利用で交通費の精算を出されて揉めたことがあります。頭を悩めた通勤交通費の例から不正の境界線を明確にしてみたいと思います。
通勤定期のプライベート利用が違法ではない理由3つ
通勤定期とは職場へ通勤するための必要経費として、会社が支給します。支給するかしないかに法的な規定はなく、会社の裁量で決まります。ただし、支給の有無や算定方法は、就業規則・賃金規程・雇用契約等で定められるのが一般的です。
また定期券を現物支給としたり、通勤交通費を給与として支払うなど支給方法も様々です。そこで休日に通勤でないプライベート利用、不正な利用になるのではないか?と疑問に思われるのではないでしょうか。不正とならない理由は次の3つになります。
理由1.:会社に不利益や損害が生じていない
通勤定期券とは一定の期間に特定の区間内を頻繁に利用する人のためもの。乗り降り自由です。例え休日に利用したとしても、追加の費用が発生することはありません。そのため従業員が休日に利用したとしても、会社に費用が発生することはありませんので不利益や損害が生じません。実質の損害がない以上、不正として取り扱う必要がないわけです。
理由2.:給与として支給されたものなので使い方は自由
定期券の現物支給でも、定期代の現金支給であっても取り扱いは給与です。給与は従業員に支払われるもので、会社が規制することはできないという考えです。ただし利用区間や申請に虚偽があれば不正受給となります。
理由3.:休日の移動内容まで会社で把握できない
定期券は特定の区間を頻繁に利用するためのもの。通勤定期という名称を使っている電鉄会社もありますが、通勤のみと特定して販売されているものではありません。そのため通勤日でない休日に利用しても問題ないという考え方です。さらにいえば会社側が休日の利用実態まで一律に把握するのは難しい場合があります。
出張でプライベートな寄り道をした交通費の境界線
通勤定期のプライベート利用よりも判断が難しいのが、出張の際にプライベートな寄り道がある交通費精算。この場合、会社の旅費規程と出張申請の内容を確認する必要があります。
交通費で問題になりやすいプライベートの寄り道
出張の交通費精算で問題になりやすいのは、出張前後にプライベートの寄り道をする場合です。
例) 会社:東京 出張:大阪 プライベート寄り道:名古屋
正規ルート 東京ー大阪ー東京(14,000円x2)合計金額:24,000円
実費ルート 東京ー大阪ー名古屋ー東京(14,000円+6,500円+11,000円)合計金額:31,500円
【精算方法は?】
- 24,000円:正規ルートの額
- 31,500円:実費ルートの額
- 14,000円:行きのみの額、帰りは寄り道をしてルートから外れているのでなし
精算方法を領収書の実費とすると、31,500円が精算金額になります。しかしプライベートの交通費まで会社が負担する必要はありません。そこで帰りの寄り道はプライベートのため精算不可という考え方もあります。これでは従業員に不満が残るでしょう。
例の場合は帰りの寄り道ですが、従業員がプライベートで名古屋におり大阪へ出張した場合の精算はどうすべきでしょうか?
出張で寄り道する場合の交通費は規程で明確にする
例のようなプライベートの交通費利用が発生することは多くあります。精算方法に法的な決まりはありませんので、会社の旅費規程で明確にしておきましょう。明確になっていれば経理担当者も申請する従業員もストレスなく精算することができます。
また事前の出張申請書に交通費のルートを記載するフォームにしておけば、プライベートで寄り道をしたとしても申請ルートで精算することができます。出張管理システムを利用すれば申請から精算まで手続きがスムーズです。
出張の交通費で揉めないためには、旅費規程で「精算範囲・基準ルート・例外」を先に決めておくのが近道です。以下の記事も併せて確認しておくと、ルール設計がスムーズです。
定期区間を含む交通費精算は「二重請求」にならない形で切り分ける
通勤定期の私用利用より、実務で揉めやすいのは「定期区間を含む交通費精算」です。会社が通勤定期(通勤費)を支給している場合、定期区間分まで交通費として申請すると二重精算とみなされやすく、原則は定期区間を除外して精算します。
一方、社員が自腹で購入した私用の定期券を業務移動で使った場合は、会社ルールと合理的経路の考え方に沿って精算可否を判断します。
| 状況 | 原則 | 実務のチェック観点 |
|---|---|---|
| 会社が通勤定期(通勤費)を支給している | 定期区間分は原則「精算対象外」(二重精算になりやすい) | 申請ルートが定期区間を含むなら、定期区間外のみで再計算・再申請 |
| 社員が自腹で私用の定期券を購入している | 業務移動に使った分は精算できる余地がある | 合理的(最短・最安)ルート/私用移動の混在の有無を確認 |
例外が出やすい部署(営業等)ほど、申請フォームに「定期区間控除の有無」「私用混在の有無」を必須化すると差戻しを減らせます。
通勤の交通費はプライベート利用より申請内容が重要
通勤の交通費について話を戻します。通勤定期を休日利用することは問題ないことは確認できました。しかし通勤交通費の不正利用についてはこれだけではありません。交通機関利用の定期代を受け取りながら、徒歩や自転車通勤をしていると不正利用となります。
これは給与の所得税が正しく計算されないという別の問題が発生するため。また通勤経路を誤魔化したり、住んでいる場所を正しく申請していなかった場合は明らかな不正受給となります。
通勤の交通費で不正受給になるもの
通勤の交通費で不正となるものをまとめると、次の3つになります。
- 交通機関利用の定期代を受け取りながら、実態は徒歩・自転車通勤だった場合(申請内容と実態が一致せず、非課税の前提を満たさない(課税対象が生じる)可能性があります)
- 正しい住所地から通勤していない
- 正しい通勤経路で申請していない
不正が疑われたときの基本フロー(証拠→本人確認→返還→再発防止)
通勤手当の不正が疑われる場合は、感情的に詰める前に「手順」を固定しておくと再発防止まで一気通貫で進みます。
- 証拠を揃える(申請書・通勤経路・住所変更履歴など)
- 本人に事実確認(弁明の機会も含める)
- 不正受給額の算定と返還(合意書などで認識を揃える)
- 必要に応じて懲戒処分を検討
- ルール改定・チェック方法の見直しで再発防止へ
通勤交通費は給与の非課税限度額がある
通勤の交通費を支給しなければならないという決まりはないことは、先にお伝えしています。それは通勤交通費が給与に含まれるためです。そこで関係してくるのが、従業員の給与にかかる源泉所得税。国税庁では交通費に該当する部分を非課税としています。
そのため定期代を申請している従業員が徒歩通勤をしていたとなると、非課税扱いにすることができません。非課税の扱いするには、国税庁が次のような条件を出しています。
また交通機関や有料道路を利用する以外に、マイカーや自転車などの交通用具を利用する人には通勤距離によって非課税限度額を定めています。
片道2km未満:(全額課税)
片道2km以上10km未満:4,200円
片道10km以上15km未満:7,300円
片道15km以上25km未満:13,500円
片道25km以上35km未満:19,700円
片道35km以上45km未満:25,900円
片道45km以上55km未満:32,300円
片道55km以上:38,700円
引用:国税庁PDF「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(01.pdf)
徒歩通勤の人には非課税限度額の規定はなく、全額課税になります。改正には支給日等の適用関係があるため、対象期間(支給日・差額支給の扱い)を国税庁の案内で確認して運用を統一します。
定期区間を含む交通費精算は、二重精算にならないよう控除の考え方を先に統一しておくのが重要です。具体例つきで整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 通勤定期を休日にプライベートで使うのは違法ですか?
A. 追加費用が発生せず、会社に損害が生じない範囲での利用であれば、原則として問題になりにくいです。ただし、経路・住所・通勤手段の虚偽申請がある場合は別問題(不正受給)になります。
Q2. 定期区間を含む業務移動の交通費は、精算できますか?
A. 会社が通勤定期(通勤手当)を支給している場合、定期区間分は二重精算になりやすいため、原則として除外して精算します。定期区間外の区間だけを申請できる形にルールとフォームを整備しておくのが安全です。
Q3. 自腹で購入した私用の定期券を、業務移動で使った場合はどうなりますか?
A. ケースにより扱いが分かれます。私用移動の混在有無、合理的な経路・費用の説明ができるかを前提に、社内ルール(旅費規程・交通費精算ルール)に沿って判断します。
Q4. 出張に私用の寄り道が混ざった場合、どこまで会社負担にできますか?
A. 法的な一律ルールはなく、会社の旅費規程と出張申請内容に基づいて決めます。揉めやすいので「基準ルート」「精算上限」「例外時の申請方法」を規程で固定するのが基本です。
Q5. 通勤手当の不正が疑われた場合、会社は何から対応すべきですか?
A. まずは証拠(申請書・経路・住所変更履歴等)を揃え、本人に事実確認(弁明の機会を含む)を行います。不正が認定できた場合は不正受給額の算定・返還、必要に応じて懲戒検討、最後に再発防止(ルール・チェック方法の見直し)までセットで進めます。
まとめ
通勤交通費のプライベート利用は、直ちに違法とは限りません(規程・虚偽は別)。しかし経路や通勤用具の申請は正しく行われなければ不正とみなされる可能性がありますので注意が必要です。また出張ですと、プライベートな寄り道が起こりやすく精算時に問題が発生します。出張申請や旅費規程で精算方法を明確にしておくと、申請者も経理担当者もストレスなくスムーズな手続きができます。
さらに旅費の精算をスムーズに行うにはTOKIUM経費精算を利用すると申請から精算までWebで完了する便利です。電子帳簿保存法にも対応しているので、経理業務の効率化と法対応を同時に実現することが可能です。




