この記事は約 3 分で読めます。
e文書法とは、保存義務のある文書の電子保存を認める法律です。業務のリモート化やオンライン化の促進に伴い、e文書法の要件に対応することが重要になっています。
今回は、e文書法の概要や対象となる書類、基本要件を解説します。また、e文書法に似た法律である電子帳簿保存法とe文書法の違いについても触れておりますので、社内で文書の電子保存を検討する際は、ぜひ本記事を参考にしてください。
本記事では、電子帳簿保存法への不完全対応の問題とその解決策と解説した漫画を無料配布しております。電子帳簿保存法への対応に不安が残っている方は、下記よりご覧ください。
【関連する無料マンガ】
▶ マンガで分かる!油断が生んだ電子帳簿保存法の不完全対応
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
e文書法とは
e文書法とは、商法や税法などで保管が義務付けられている文書や帳簿などを、紙媒体だけでなく電子文書(電磁的記録)の保存を認める法律です。
2005年4月に施行された「民間事業者が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律から、e文書法は成り立っています。
書類を電子化するためには法令要件を満たす必要がありますが、法令要件を満たすことさえできれば、文書の保管スペースや印刷代を削減することができます。
e文書法の対象となる書類
e文書法では、証券や医療、保険関係書類などの保存義務のある法定文書が対象となります。e文書法は多数の法律に関連しており、対象となる書類は多岐にわたります。
具体的には、下記のような書類がe-文書法の対象とされます。
- 注文書
- 契約書
- 見積書
- 納品書
- 請求書
- 領収書
- 預金通帳
- 会計帳簿
- 賃借対照表
- 損益計算表
- 取締役会議事録
また、書類の管轄の対象となる法律や省庁によって、上記に属する書類でもe文書法の対象外である場合もあります。そのため、書類を電子保存する場合は、e文書法の対象かどうかを事前に確認しましょう。
なお、e文書法の対象となる書類の種類は、内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室の「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」で確認できます。
上記に属する書類のうち注文書はその電子保存の方法が、電子帳簿保存法の改正に伴い変更点がありました。気になる方はこちらの記事をご覧ください。
e文書法の対象でない書類
e文書法では、緊急時にすぐ読める状態でなければならない書類や、現物性が高い書類、条約による制限がある書類などは対象外とされています。具体的には、下記のような書類がe-文書法の対象外とされます。
- 機械や乗り物の手引書
- 免許書
- 許可書
e文書法の基本要件
e文書法の要件は、関連する府省によって異なります。しかし、基本的には以下で紹介する4つの要件が基本要件とされています。文書の電子化保存を行う場合、扱っている文書がどの要件を満たせば良いのかを、事前に確認しておきましょう。
見読性
電子化された書類が、モニター上やプリントした際に明瞭な状態で見れる必要があります。そのため、文書を適切な解像度や階調で保存しなければなりません。
また、必要な時は書類を紙面に出力できるように、プリンターなどを準備することも求められます。なお、この見読性は可視性と表現される場合もあるのでご注意ください。
完全性
法律で義務付けられている文書の保存期間中、データが消去されないような措置が取られている必要があります。万が一、データを喪失してしまった場合は、喪失してしまった事実がわかるようになっている必要もあります。
なお、電子文書の発行日を正しく記録するための措置として、電子署名とタイムスタンプが一般的に使われます。電子署名とタイムスタンプを使用することで、原本の日付の改ざんを防ぐことが可能です。
検索性
必要な時にすぐに文書へアクセスできるような、検索性が確保されている必要があります。どの文書がどこに格納されているかわからない状態になっていると、要件を満たしていることにはなりません。
機密性
許可を得ていない第三者が、書類にアクセスできないような措置がされている必要があります。セキュリティ対策が万全でないと、重要書類の内容を第三者に盗まれてしまう可能性があります。
e文書法と電子帳簿保存法との違い
e文書法に似た法律として、1998年に施行された電子帳簿保存法と呼ばれる法律があります。ここからは、e文書法と電子帳簿保存法の2つの法律の違いについて解説します。
電子帳簿保存法については、以下の記事で詳しく説明しています。
電子帳簿保存法は「国税関連書類」が対象
電子帳簿保存法では、財務省と国税省が管轄する「国税関連書類」が対象になります。電子帳簿保存法の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」であり、法律名からも国税関連書類を対象としていることが分かります。
電子帳簿保存法では、国税に関係する注文書や請求書などの電子化に関して、施行規則やガイドラインを設けており、1998年の施行後2005年、2015年、2016年、2019年と改正を重ねています。
電子帳簿保存法は承認が必要?
以前までは、電子帳簿保存法の対象となる書類の電子化を行うためには、税務署長から承認を受ける必要がありました。
ただし、税務署長への承認制度は、2021年の電子帳簿保存法改正によって廃止されます。そのため、2022年の電子帳簿保存法改正後は承認が不要になります。
要件範囲の違い
電子帳簿保存法の要件は、e文書法のものとは異なります。電子帳簿保存法では、「真実性」と「可視性」の2つが確保されている必要があります。
真実性の確保とは、書類の訂正や削除した履歴、書類の相互関連性の記録、対象書類に付随する関係書類の備付けを義務付けるものです。可視性の確保とは、見読可能性と検索機能の確保を義務付けるものです。
電子帳簿保存法では、それぞれの2つの要件の中に複数の要件が含まれているため、要件の見落としがないように注意しましょう。電子帳簿保存法に対応するためのおすすめシステムとその比較ポイントについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
e文書法のまとめ
本記事では、e文書法の概要や対象書類、基本要件、電子帳簿保存法との違いについて解説しました。解説してきたe文書法の内容をまとめると、以下のようになります。
- e文書法は商法や税法に関する書類に電子保存を認める法律
- e文書法は多数の法律に関連しており、その関連法律の対象となる文書が主にe文書法の対象になる
- e文書法では、見読性、完全性、検索性、機密性の4つが基本要件として定められている
e文書法に対応して文書の電子保存を行えば、書類作成の工数削減や業務効率化、印刷代などのコスト削減につながります。基本要件さえ満たせばe文書法に対応できるため、文書の電子保存を検討してみてはいかがでしょうか。