電子帳簿保存法

電子保存義務化の猶予が恒久に?令和5年度税制改正大綱を解説

公開日:2022.11.10更新日:2023.03.30
電子帳簿保存法 猶予

令和5年度税制改正大綱が16日に正式発表されました。本年度の税制改正大綱に盛り込まれた内容は、インボイス制度や法人課税の見直し、NISAの拡充など多岐に渡りますが、電子帳簿保存法についても大きな変更があるようです。

本記事では、令和5年度税制改正大綱の電子帳簿保存法に関する内容を解説していきます。特に、多くの方が気になる「電子保存義務化の猶予」について詳細に解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

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税制改正大綱の電子帳簿保存法に関する内容

今回の税制改正大綱における、電子帳簿保存法に関する内容は大きく分けて以下の3つです。

  1. 「優良な電子帳簿」の範囲の変更
  2. 「スキャナ保存制度」の要件緩和
  3. 「電子取引」の保存用件の見直し

それぞれ詳しく見ていきましょう。
また、まずは電子帳簿保存法の概要をおさらいしたいという方は、こちらの記事をご確認ください。

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1.「優良な電子帳簿」の範囲の変更

国税関係帳簿に記録された事項に関して申告漏れがあった場合、その申告漏れに対して過少申告加算税が課されてしまいます。しかし、国税関係帳簿が「優良な電子帳簿」の要件を満たしてる場合は、過少申告加算税が5%軽減されることになっています。

今回の税制大綱改正では、その「優良な電子帳簿」にあたる書類の範囲が、以下のように明確に限定されました

  1. 仕訳帳
  2. 総勘定元帳
  3. 次に挙げる事項の記載に係る1.及び2.以外の帳簿
  • 手形
  • 売掛金等
  • 買掛金等
  • 有価証券
  • 減価償却資産
  • 繰延資産
  • 売上げ、その他収入
  • 仕入れ、その他経費

こちらの改正については、令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

2.「スキャナ保存制度」の要件緩和

「スキャナ保存」に関する要件は22年の改正でも大幅に緩和されましたが、今回さらに以下の3つが見直されることになりました。

  1. 解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止
  2. 記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止
  3. 相互関連性を確認できるようにしておく書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定

スキャナ保存を行うシステムに求められる条件のハードルが下がり、スキャナ保存の業務工数も減っています。よりスキャナ保存制度を利用しやすい環境になったと言えるでしょう。

こちらの改正については、令和6年(2024年)1月1日以後に保存が行われる国税関係書類について適用されます。

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3.「電子取引」の保存用件の見直し

「電子取引」に関する保存要件についても、以下のように見直されました。

  1. 検索要件の全てが不要となる対象者が変更(次の要件いずれかを満たす者)
    1. 判定期間における売上高が5,000万円以下である保存義務者
    2. 電子的記録の出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者
  2. 電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止
  3. 電磁的記録の保存義務化における「宥恕措置」が制度化

現行法では、1,000万円以下の小規模事業者かつ税務職員によるダウンロードの求めに応じられる場合のみ、全ての検索要件が免除されてました。今回の税制改正大綱によって、免除対象となる企業規模の上限が引き上げられただけでなく、「出力書面の提示又は提出」が可能であればどの企業でも免除される、という大幅な緩和がなされています。

2.についてですが、「電子取引」の保存要件には大きく「真実性の要件」と「可視性の要件」があります。その内「真実性の要件」の一つとして「取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにする」というものがありますが、今回の税制改正大綱で「保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにする」という部分が不要になりました

3.は、簡単に説明すると、電磁的記録の電子保存義務化の経過措置として整備されていた「宥恕措置」が、恒久的なものとして制度化された、ということです。実際の経理業務に大きく関わる重要な変更点ですので、以降のセクションで詳しく説明します。

なお、これら「『電子取引』の保存用件の見直し」ついては、令和6年(2024年)1月1日以後に行う電子取引で適用されます。

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電子保存義務化の猶予が恒久化?

2022年11月時点におけるNHKの報道では「取り引き書類 電子保存義務化 与党税調 猶予延長議論の見通し」という見出しがありましたが、税制改正大綱の内容を見ると、実質的には延期ではなく恒久化したという見方が適切であると思われます。

電子保存義務化の「宥恕措置」とは

ここでの「宥恕措置」とは、電磁的記録の電子保存義務化に2年間の猶予期間を設ける経過措置のことを指します。

そもそも電磁的記録の電子保存義務化(電子データの出力書面等による保存措置の廃止)は、2022年1月の改正電子帳簿保存法に盛り込まれた内容でした。しかし、改正法の施行までの準備期間が短く、直前になっても多くの企業が対応できていないというのが実情でした。この状況を踏まえ、改正法が施行される直前の21年12月に、令和4年度税制改正大綱にて「宥恕措置」が設けられる運びになりました。

具体的な措置の内容としては、「やむを得ない事情がある場合」「ダウンロードの求め・出力書面の提示又は提出に応じられる場合」の2つを条件に、2024年までの2年間は電磁的記録を紙に出力して保存することが認められる、というものです。この措置には、2024年以降は当初の通り電子保存が義務化されることも併せて明記されていました。

2024年以降も紙に出力して保存が可能に

2024年までのはずだった「宥恕措置」ですが、令和5年度税制大綱改正によって、「宥恕措置」の内容が電子帳簿保存法の本則に盛り込まれることになります。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。

引用:財務省|令和5年度 税制改正の大綱

それに併せて、「宥恕措置」は2023(令和5)年12月31日をもって廃止となります。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置は、適用期限の到来をもって廃止する。

引用:財務省|令和5年度 税制改正の大綱

したがって、2024年以降においても、電磁的記録を紙に出力して保存することが認められるようになります。

まとめ:依然として電子保存への対応は検討すべき

ここまで、令和5年度税制改正大綱の電子帳簿保存法に関する内容を説明してきました。

「優良な電子帳簿」の範囲の変更、「スキャナ保存制度」の要件緩和、「電子取引」の保存用件の見直しという3つのポイントがありましたが、やはり3つ目の「電子取引」、中でも「宥恕措置の制度化」は大きな変化です。2024年以降も紙保存ができることが決まり、安堵している経理担当者も多いと思います。

一方で、今回の税制改正大綱は「電子保存に対応しなくて良い」ということを示唆している訳では決してありません。社会全体でアナログから電子へ移行する動きは急速に進んでおり、これからも進み続けるのは明らかです。「スキャナ保存制度」の要件緩和を一つ取っても、国が取引書類の電子化を積極的に進めたがっていることは、容易に推察することができます。来年以降、社会環境の変化に応じて再度改正されることも十分予想されますので、依然として電子保存への対応は必要でしょう。

また、業務を効率化する上でも書類の電子保存には大きなメリットがあります。法対応を目的とするのではなく、「業務効率化」という視点を持って電子保存への対応方法を検討しましょう。

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