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経理や人事などのバックオフィスは直接的な利益を上げる部署ではないことから、業務改善を後回しにされる傾向にあります。しかし、バックオフィスは企業経営の根幹となる業務を行うため、非効率のままでは企業全体の業務にも悪い影響を与えます。そのため、バックオフィスの効率化は最優先事項として進めることが重要です。
本記事では、バックオフィスの概要や発生しやすい課題、効率化のメリット、スムーズに進めるための手順、おすすめのツールなどを紹介します。効率化の方法を検討している経理担当者は、ぜひ参考にしてください。
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バックオフィスとは?
バックオフィスとは経理や人事、総務など、顧客と関わることなく間接的に企業の利益に貢献する職種の総称です。
これに対し、営業やカスタマーサポート、マーケティングなど顧客と直接やり取りし、企業の利益に貢献する職種はフロントオフィスと呼ばれます。
バックオフィスの主な役割は、全従業員が円滑に業務を進められるように環境を整備して、健全な企業活動を後方から支援することです。
バックオフィス業務にありがちな課題
バックオフィス業務が円滑に進まない場合、考えられる課題は次の4点です。
- 業務負担が大きい
- 業務が属人化している
- デジタル化が遅れている
- 人手不足
それぞれの課題について詳しく解説します。
業務負担の大きさ
バックオフィス業務が円滑に進まない理由の1つとして挙げられるのは、業務負担の大きさです。バックオフィスが行う業務は主なものだけでも、フロントオフィスのサポート、社内体制や環境の整備、保険や各種契約の手続きなど多岐にわたります。
さらに、経理処理や請求書作成などの業務は他部署からの情報提供に依存するため、データ収集の遅れが業務の停滞を招きやすく、効率的な処理の妨げとなります。
しかし、前述したように直接的に企業の利益向上に関与する業務ではないことから、人手不足であっても改善が後回しにされてしまうケースがほとんどです。その結果、バックオフィス業務の負担はますます大きくなってしまいます。
業務の属人化
バックオフィス業務は、経理や財務、法務、情報システムなど専門的な知識が求められる業務が多く、業務の属人化が起こりやすいことも課題です。
本来であれば業務マニュアルや手順書を作成し、業務を具体的に伝える体制を構築する必要があるものの、前述したように人手不足が常態化しているケースが多く、属人化につながってしまいます。
デジタル化の遅れ
バックオフィス業務は、請求書や契約書、領収書など文書を扱う業務が多く存在します。デジタル化を進めるべく電子帳簿保存法の推進が進んではいるものの、中小企業ではバックオフィス業務のデジタル化が滞っているケースが多いのが現状です。
その結果、多くの企業のバックオフィスでは紙ベースでの作業が中心となり、押印や稟議の承認などオフィスでなければ完結しない作業が発生してしまいます。
もし担当者が出張やテレワークでオフィスを不在にした場合に作業が進まなくなることも、バックオフィスに関する大きな課題です。
人手不足の問題
一般的に経理や人事、総務などバックオフィスを扱う部署は、繁忙期と閑散期の差が大きく、定まった人数の配置が困難です。
そのため閑散期の人数が基本となり、繁忙期に人手不足に陥ってしまう企業が多く見られます。人手不足はあらゆる作業が滞ってしまうリスクが高い課題です。
バックオフィス効率化のメリット
バックオフィス業務の効率化を実現させる主なメリットは次の5点です。
- コスト削減
- 生産性向上
- ヒューマンエラー防止
- 社員満足度向上
- 内部統制・ガバナンス強化
ここでは、それぞれについて詳しく解説します。
コスト削減
バックオフィス業務が効率化されれば、作業工数や人件費を削減できます。少ない人数で現状と変わらない業務ができるようになるため、特に人手不足に悩む企業にとっては大きなメリットでしょう。
また、バックオフィス業務に欠かせない請求書や契約書などがデジタル化されれば、印刷代や郵送コストも無くなるため、大幅なコスト削減につながります。
生産性向上
生産性が向上することも、バックオフィス業務の効率化によるメリットです。
例えば経理部署でデジタル化が進めば、請求書の印刷、押印、封入、郵送といった作業が不要です。その結果、マネジメントやガバナンス強化といった、より付加価値の高い業務に注力できます。
また、稟議の回覧や承認業務をオフィスにいなくても行えるようになるため、担当者の不在時も業務が滞ることなく迅速に進められます。その結果、業務スピードが上がり生産性向上が実現するでしょう。
ヒューマンエラーの防止
バックオフィス業務の効率化は、ヒューマンエラーの防止にも高い効果が期待できます。例えば、各支店からの売り上げ報告をExcelに打ち込む作業などを自動化すれば、基本的にエラーは生じません。
データの入力ミス、書類の送付先間違いといったヒューマンエラーのリスクが大幅に削減される上、人による二重チェックも必要なくなり、作業時間の短縮も可能です。
社員満足度の向上
バックオフィス業務を担当する従業員の負担を増やす業務といえば、データ入力や集計、請求書の送付など、単純ではあるものの間違いが許されない作業です。
しかし、システムやツールの導入により作業の効率化が進めば、担当者はこれらの間違いが許されない定型業務から解放されて負担が軽減します。
その結果、ワークライフバランスが改善され、生産性が上がることによる利益増大が待遇の改善につながれば、社員満足度の向上も期待できるでしょう。
内部統制・ガバナンスの強化
バックオフィス業務が効率化されれば、業務フローの可視化や標準化につながるため、内部統制を強化しやすくなります。
業務フローの可視化が進むと属人化が解消され、組織全体の業務の流れが把握しやすくなり、不正が起きたとしても早期発見が可能です。
さらに、経理や財務業務でのヒューマンエラーが減ることで、財務報告の正確性が向上し、ガバナンスの強化にもつながります。
バックオフィス業務効率化の成功事例は、以下の記事に紹介されていますので参考にしてください。
バックオフィス効率化の手順
バックオフィス効率化は闇雲に進めてもうまくいきません。成功させるには次の手順を踏んで進めるのがおすすめです。
- 課題の洗い出しと分析
- 導入サービスの検討と選定
- 実行とモニタリング
ここでは、それぞれの手順について具体的な方法やポイントを解説します。
1. 課題の洗い出しと分析
バックオフィスの効率化を進める際は、まず現状を把握しましょう。業務フローを可視化し、業務を滞らせているボトルネックを洗い出して分析します。
電子化できそうなフローを洗い出す
まずは電子化できそうなフローの洗い出しからはじめましょう。アナログ業務を電子化すれば、それだけで大幅な効率化が実現します。そして、効果はそれだけではありません。
例えば業務Aを自動化することで、別の業務B・Cが不要になるケースが考えられます。つまり特定の業務の電子化により、業務フロー全体の見直しにつながる可能性があります。
業務の電子化が複数の課題解決につながることを意識して、電子化できるフローを洗い出しましょう。特に資料や書類など大量の紙を使っている業務の電子化が進めば、同時にコスト削減も実現できます。
自動化できそうなフローを洗い出す
電子化できるフローを洗い出す中で、自動化できそうなフローを選定しましょう。
例えばデータ入力や集計、請求書作成といったパソコンを使った定型業務であれば「ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)」(以下RPA)ツールで自動化が可能です。電子化と自動化をセットで進めることで、大幅な効率性の向上が実現できます。
外注できそうなフローを洗い出す
どうしても自社でなければできない業務以外は、外注を検討することで楽に効率化を進められます。例えば、給与計算や年末調整、安全衛生管理などです。
こういったフローの外注により社内のリソースをより専門的な業務に集中できれば、バックオフィス業務の効率化につながります。
経理業務の外注化については、以下の記事に詳しく解説しているので参考にしてください。
2. 導入サービスの検討と選定
業務フローを可視化させて課題の洗い出しが完了したら、実際に課題解決するためのシステムやツール導入を検討します。以下で導入を検討する際の基準や、導入によるメリットなどを見てみましょう。
システムの導入
バックオフィス業務の効率化を進めるための主なシステムには、以下が挙げられます。
- 給与計算システム
- 勤怠管理システム
- 文書管理システム
- ワークフローシステム
これらの中から、自社の課題解決につながるシステムの導入を検討します。選択のポイントは、既存システムとの互換性があるか、複数のシステムを導入する際はそれぞれのシステムが連携できるかどうかです。
システム同士に互換性がない場合、例えば勤怠管理システムのデータを給与計算システムに取り込む際、フォーマットを変換する作業が新たに発生します。
また、システムを導入しても現場が使いこなせなければ意味がありません。導入と同時に研修やマニュアル作成も進めましょう。
RPAの導入
RPAとは、パソコンを使って行う定型業務を自動化させるためのプログラムです。RPAツールを活用すれば、データ入力や集計、システムをまたいだ連携作業などを自動化し、業務スピードの向上、ヒューマンエラーの削減が実現します。
前述したシステムを導入すると共に、RPA導入も検討することでさらなる効率化が可能です。
外注の活用
外注できるフローについては外注を検討し、外注先を選定します。外注は、経理や総務に関する業務をはじめ、コールセンター業務のようなフロントオフィス業務も一部委託可能です。
自社で人材が不足している業務や、フローの改善が難しい業務を洗い出して外注に委託すれば、効率化と共に人材不足の課題解決にもつながります。
3. 実行とモニタリング
バックオフィス業務を効率化するための施策を立案したら、実行に移すためのスケジュールを立てます。
スケジュールを立てる際のポイントは、上層部だけで決めるのではなく、現場の意見を聞くことです。実際に業務を行うのは現場であるため、現場の声を反映させてより現実的なスケジュールを立てましょう。
また、実行の際には必ずリーダーがサポートし、新たな業務フローが間違いなく機能しているか、期待した効果が得られているかモニタリングを実施します。モニタリングは定期的に行い、もし計画通りに進んでいない場合は迅速に改善することも重要です。
バックオフィス効率化に役立つおすすめツール
バックオフィスを効率化するためにはツールの活用が欠かせません。ここでは、効率化に役立つ主なツールを紹介します。
電子印鑑作成ツール
バックオフィス業務の効率化を進めるには、書類のデジタル化が欠かせません。そして、承認作業などのデジタル化を進めるために必要なのが電子印鑑作成ツールです。
ただし、デジタル化された書類はコピーされやすく改ざんのリスクもあるため、改ざんを防止する機能をもつ電子契約サービスがおすすめです。
電子契約サービスはセキュリティが強固なだけでなく、承認作業のためだけにオフィスに出社する必要が無くなるため、大幅な業務効率化・経費削減につながります。
電子承認に関しては、以下の記事でも紹介しているのであわせてご覧ください。
ERPシステム
「企業資源計画(Enterprise Resource Planning)」(以下、ERP)とは、企業がもつ「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を、適切に管理することです。企業の経営資源を一元管理し、業務効率化を図るツールがERPシステムです。
ERPシステムが活用できる範囲は広く、人事や財務、購買の他、在庫管理、生産管理、販売管理など、バックオフィスが抱える多くの業務の効率化に役立ちます。
ただし、ERPシステムは機能が豊富過ぎて、中小企業では必要のない機能も多く、使いこなせないケースがあります。導入する際は目的を明確にし、本当に必要かどうか十分検討しましょう。
RPAツール
RPAは毎日決まった時間に決まったデータを取得したり、加工されたデータを定期的に特定の相手へメールで配信したりといった、提携的な業務の効率化に役立ちます。
24時間365日稼働させられるため、単純ではあるものの毎日同じ業務に時間を奪われている場合や、毎日出社しないと進まない業務がある場合などにおすすめです。
クラウドサービス
バックオフィス業務の効率化には、クラウドサービスの活用も効果的です。例えば、時間や場所を問わずオフィスのデータにアクセスできるクラウドサーバーや、採用・勤怠・人事管理などを在宅でも行えるHRシステムなどがあります。
また、経理業務もクラウドサービスを活用すれば、大幅に効率化が実現します。例えば経費精算や電子帳簿保存、インボイス、契約管理など、全てクラウド上で管理するならTOKIUMの支出管理プラットフォームがおすすめです。
チャットボット
バックオフィス業務の効率化で盲点となりやすいのが、社内部署間での情報共有や問い合わせへの対応です。特に新たなシステム導入時や社内規定の改正時などには、バックオフィスへの問い合わせが増えて担当者の負担が増えてしまいます。
そこで、できるだけ担当者の負担を減らしつつ、従業員の問い合わせに迅速に対応するために便利なのがチャットボットです。従業員の問い合わせに自動で回答するため、担当者のコミュニケーションコスト軽減に大きく貢献します。
自社に合ったシステム、ツールの導入がバックオフィス業務効率化のポイント
ひと口にバックオフィス業務といっても、その内容は多岐にわたります。そのため効率化を実現するには、バックオフィス業務全体のフローを見直し、解決策を検討しなければなりません。
その中でも大きな改善が必要となるのが、紙を扱う業務です。バックオフィス業務は紙を使った業務が多いため、迅速にデジタル化を進めなければ効率化は難しいでしょう。
デジタル化を進めるためのポイントとしては、業務フローを可視化し、デジタル化が可能な業務を洗い出して、必要なシステムやツールの導入を行うことです。自社に合ったシステム・ツールを導入し、バックオフィス業務の効率化を進めましょう。
特に負担となりやすい経理関連の業務効率化を図るなら、クラウド上で経費精算や電子帳簿保存などの業務を管理できる、支出管理プラットフォーム「TOKIUM」がおすすめです。