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リース契約の解約は本当に難しい?新リース会計基準と注意点を徹底解説

更新日:2025.05.14

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リース契約_解約

事業運営において、オフィス機器や車両、ソフトウェアなど、さまざまな資産をリース契約で導入するケースは少なくありません。しかし、契約期間中に予期せぬ状況変化が生じ、リース契約の解約を検討しなければならない場面も起こりえます。

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本稿では、リース契約の解約を検討しているが抱える疑問や不安を解消するため、解約が原則として難しい理由、例外的に解約が認められるケース、そして解約を検討する際に知っておくべき重要な注意点について、新リース会計基準の内容も踏まえながら網羅的に解説します。

リース契約の解約を考えている方、あるいは将来的にリース契約を検討している方は、ぜひ本稿をお読みいただき、適切な判断をするための一助としてください。

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リース契約の解約は本当に難しい?原則と例外を解説

リース契約は、一見すると賃貸借契約と似ていますが、その仕組みには大きな違いがあり、原則として契約期間中の解約は容易ではありません。ここでは、その理由と、例外的に解約が認められるケースについて詳しく解説します。

リース契約の基本的な仕組み:なぜ解約が原則として認められないのか

リース契約は、ユーザー(借り手)が選定した特定の物件を、リース会社がユーザーに代わって購入し、その物件を一定期間ユーザーに貸し出すという仕組みです 。リース会社は、物件の購入費用だけでなく、その資金調達にかかる金利や手数料などを、契約期間中のリース料としてユーザーから回収することを前提としています 。

したがって、契約期間の途中でユーザーの都合により解約されてしまうと、リース会社は投資した資金を回収できなくなるため、原則として中途解約は認められていません 。リース会社にとって、リース契約は長期にわたる金融取引としての側面が強く、契約期間全体のリース料収入を見込んで事業計画を立てているため、ユーザーの都合による一方的な解約は、その事業の根幹を揺るがす事態となりかねません。

ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いが解約に与える影響

リース契約はその性質によって、主にファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類に分類されます 。ファイナンスリースは、リース期間終了時にリース物件の所有権がユーザーに移転するか、または実質的に移転すると認められるリースであり、ユーザーはリース期間中に物件がもたらす経済的利益をほぼ全て享受し、物件の使用に伴うコストもほぼ全て負担することになります 。このような性質から、ファイナンスリースは原則として中途解約が認められていません 。

一方、オペレーティングリースは、ファイナンスリースに該当しないリースであり、リース期間終了時に物件の所有権はリース会社に残ります。オペレーティングリースは、契約によっては中途解約が認められる場合もありますが、その際も違約金が発生することが一般的です 。リース契約の種類によって解約の可否や条件が大きく異なるため、自身が締結しているリース契約がどちらに該当するのかを契約書で確認することが重要です。

リース契約期間中に解約が認められる例外的なケースとは

原則として中途解約は難しいリース契約ですが、例外的に解約が認められるケースも存在します。例えば、リース契約者が重大な病気や事故で車の運転ができなくなった場合や 、海外転勤など、契約者に起因しないやむを得ない事情が発生した場合などには、リース会社が個別に判断し、解約を認めることがあります 。

また、リース会社によっては、一定期間経過後に違約金なしで別の車両に乗り換えができるプランを提供している場合もあります 。さらに、事業の廃業や倒産といった、事業継続が困難になった場合にも、残りのリース料を一括で支払うなどの条件付きで解約が認められることがあります 。

ただし、これらの例外的なケースにおいても、通常は残りのリース料全額またはそれに相当する高額な違約金の支払いが必要となることが一般的です 。例外的な解約が認められるかどうかは、リース会社との個別の交渉によって判断されるため、まずはリース会社に事情を説明し、相談することが重要です 。

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新リース会計基準がリース契約の解約にどう影響する?改正前後の変更点を解説

2024年9月に改正された新しいリース会計基準は、企業の会計処理に大きな影響を与えており、リース契約の解約についても新たな視点をもたらしています。ここでは、新リース会計基準の概要と、改正前後でリース契約の解約に関連する部分がどのように変わったのかを解説します。

新リース会計基準の概要と、リース契約における「解約不能期間」の考え方

新しいリース会計基準は、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)との整合性を図ることを主な目的としています 。この新基準では、従来の形式的な判断ではなく、リース契約の実態を重視し、原則としてすべてのリース取引を貸借対照表に計上(オンバランス化)することが求められます 。

特に、リース期間の算定方法が大きく変わり、「解約不能期間」に加えて、借手(リース利用者)が合理的に確実に行使すると見込まれる延長オプションの期間や、合理的に確実に行使しないと見込まれる解約オプションの期間もリース期間に含めて決定されるようになりました 。

ここでいう「解約不能期間」とは、借手が契約上、リースを解約できない期間を指します 。新基準では、リース期間は単に契約書に記載された期間だけでなく、経済的なインセンティブなどを考慮して、借手がその資産をどれくらいの期間使用すると見込まれるかで決定される点が大きな変更点です 。

改正前:旧リース会計基準におけるリース期間と解約の扱い

旧リース会計基準では、リース期間は原則としてリース契約書に記載された契約期間に基づいて決定されていました 。オペレーティングリースは原則としてオフバランス処理され、貸借対照表には計上されず、費用として処理されていました 。

解約については、契約書に中途解約に関する条項が定められている場合にのみ可能であり、その場合も違約金が発生することが一般的でした。旧基準では、リース期間の決定において、延長や解約のオプションが考慮されることは限定的であり、契約期間がそのまま会計上のリース期間となることが多かったと言えます。

改正後:新リース会計基準におけるリース期間の定義と解約オプションの考慮

新リース会計基準では、リース期間を契約書に記載されている期間だけでなく、解約オプションや延長オプションも考慮することを求めています。借手が原資産(リース対象の資産)を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が合理的に確実に行使すると見込まれる延長オプションの期間と、借手が合理的に確実に行使しないと見込まれる解約オプションの期間を加えた期間として定義されます 。

この「合理的に確実」かどうかを判断する際には、契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)、過去の慣行、経済的インセンティブ、原資産の重要性などが考慮されます 。例えば、契約期間が1年6ヶ月で、1年後に解約できるオプションがある場合でも、解約しないことが経済的に合理的であると判断されれば、会計上のリース期間は1年6ヶ月となる可能性があります。

このように、新基準では解約オプションの存在が必ずしも会計上のリース期間を短縮するとは限らず、そのオプションが行使されない可能性が高いと判断されれば、リース期間に含められることになります。

新基準下でのリース契約条件変更と解約時の会計処理

新リース会計基準では、リース期間の変更やリース料の変更など、リース契約の条件が変更された場合、または中途解約が行われた場合の会計処理についても詳細な規定があります 。リース契約が中途解約された場合、企業は貸借対照表に計上している使用権資産とリース負債を帳簿から消去し、その差額を損益として認識する必要があります 。

また、リース契約の範囲が縮小した場合(例えば、一部の資産の解約など)、使用権資産の帳簿価額を、リースの部分的または全面的な解約を反映するように減額し、それに対応する損益を認識する処理が行われます 。リース負債についても、改訂後のリース料と改訂後の割引率を用いて再測定されます 。

新基準下では、リース契約の解約や条件変更は、企業の財務諸表に直接的な影響を与えるため、これらの意思決定を行う際には、会計上の影響を十分に理解し、慎重な判断が求められます。

項目旧リース会計基準新リース会計基準
リース期間の定義原則として契約期間解約不能期間+合理的に確実な延長・非解約期間
解約オプションの考慮限定的合理的に確実に行使しないと見込まれる期間はリース期間に含む
リース解約時の会計処理個別規定による使用権資産とリース負債を帳簿から消去し、差額を損益認識
オペレーティングリースの扱い原則としてオフバランス原則としてオンバランス

リース契約の解約を検討する際に知っておくべき重要な注意点

リース契約の解約は原則として難しいものですが、検討する際にはいくつかの重要な注意点があります。これらを理解しておくことで、予期せぬトラブルを避け、適切な判断を下すことができます。

中途解約時の違約金:その種類と計算方法、高額になるケース

リース契約では、原則として契約期間中の解約は認められておらず 、やむを得ず中途解約する場合でも、残りのリース料全額またはそれに相当する高額な違約金の支払いが求められることが一般的です 。違約金の計算方法はリース契約によって異なりますが、一般的には、解約時点から契約満了までの残りのリース料に、一定の解約手数料が加算されることが多いです 。

特に、ファイナンスリース契約においては、リース会社が物件の購入代金を回収することを目的としているため、違約金が高額になる傾向があります。中途解約を検討する際には、違約金の額が非常に高額になる可能性があることを十分に認識しておく必要があります。事前に契約書で違約金の条項を確認し、リース会社に見積もりを依頼するなどして、具体的な金額を把握しておくことが重要です。

リース契約書に隠された解約に関する条項:確認すべきポイント

リース契約書には、中途解約に関する条項が必ず記載されています。解約の可否だけでなく、解約可能な時期、解約時の予告期間、違約金の計算方法、物件の返還方法など、詳細な条件が定められているため、契約締結前にこれらの条項を確認することが不可欠です 。

特に、違約金の計算方法については、具体的な事例や計算式が記載されているかを確認し、不明な点があれば必ずリース会社に質問するようにしましょう。また、解約に関連して、物件の撤去費用や原状回復費用など、追加の費用が発生する場合もあるため、これらの点についても確認が必要です。リース契約書は、解約に関する重要な情報源です。契約締結前に解約条項を十分に理解しておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

悪質なリース契約に注意!解約トラブル事例と対策

近年、ホームページ作成やSEO対策、業務ソフトなどのリース契約において、実際には価値のないサービスであるにもかかわらず、巧みな勧誘によって契約させて、中途解約を困難にするという悪質な事例が報告されています 。これらの契約では、リース物件そのものに価値がないにもかかわらず、リース契約であるという理由で中途解約が認められず、高額なリース料を支払い続けなければならないというトラブルが発生しています 。

例えば、ホームページの作成やSEO対策を謳いながら、実際には粗悪なホームページしか作成されなかったり、全く上位表示されなかったりするケース 、あるいは「節電効果がある」と勧誘された電子ブレーカーのリース契約で、実際には電気代が安くならなかったというケース などがあります。

このような悪質なリース契約に巻き込まれないためには、契約内容を慎重に検討し、不明な点があれば契約前に必ず確認すること、甘い言葉や強引な勧誘には注意することが重要です。少しでも不審に感じたら、契約を急がずに第三者の意見を聞くなど、慎重な対応を心がけるべきです。もし、悪質な契約であると感じた場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします 。

リース契約とクーリングオフ制度:事業者の場合は適用されるのか

クーリングオフ制度は、一般消費者を保護するための制度であり、事業者間のリース契約には原則として適用されません 。したがって、事業者が締結したリース契約は、原則としてクーリングオフによる解約はできないと考えられます 。訪問販売などで強引に勧誘された場合でも、事業者が契約した場合はクーリングオフの対象外となることが一般的です 。

ただし、例外的に、小規模な個人事業者の場合など、消費者に準ずるとしてクーリングオフの適用を認めた裁判例も存在します 。しかし、原則としては適用されないため、安易に期待することは避けるべきです。

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リース契約の解約に向けて具体的な行動:交渉、法的手段、代替案

どうしてもリース契約を解約したい場合、どのような行動を取るべきでしょうか。ここでは、リース会社との交渉、法的手段の検討、そして解約以外の代替案について解説します。

リース会社との解約交渉:成功の可能性と進め方

中途解約が原則として認められないリース契約ですが、状況によってはリース会社との交渉によって解約や条件変更に応じてもらえる可能性があります 。特に、長期にわたって良好な取引関係を築いている場合や、経営状況が著しく悪化している場合などには、誠意をもって交渉することで、違約金の減額や分割払いなどの柔軟な対応をしてもらえることがあります 。

交渉の際には、解約を希望する理由を具体的に説明し、可能な限り客観的な証拠を提示することが重要です。また、代替案として、新しいリース契約への切り替えや、リース物件の買い取りなどを提案することも有効な場合があります 。リース会社もビジネスとして成り立っているため、一方的な解約は難しいですが、誠実な態度で状況を説明し、代替案を提示することで、交渉の余地は生まれる可能性があります。

弁護士に相談するケース:悪質商法や契約不履行

悪質なリース商法に巻き込まれた場合や、リース会社またはサプライヤーが契約内容を守らないなどの契約不履行があった場合には、弁護士に相談することを強くおすすめします 。弁護士は、法的観点から契約内容を分析し、解約や損害賠償請求などの適切な法的措置を検討してくれます 。

特に、契約時に虚偽の説明を受けたり、重要な情報を告知されなかったりした場合などには、消費者契約法や特定商取引法などに基づいて契約の取り消しや無効を主張できる可能性もあります 。法的な問題が絡んでいる場合は、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。

リース契約の譲渡や買取という選択肢

中途解約が難しい場合でも、リース会社に相談することで、リース契約を第三者に譲渡したり 、リース物件を買い取ったりするという選択肢が考えられます 。リース契約の譲渡は、新たな借り手を見つける必要があるなどの条件が付く場合がありますが、違約金を支払うことなくリース契約から解放される可能性があります。

また、リース物件を買い取る場合は、残りのリース料に加えて、物件の残存価値に応じた金額を支払うことになるのが一般的ですが、中途解約による違約金よりも負担が少なく済む場合があります 。これらの選択肢についても、リース会社に積極的に相談してみる価値があります。

やむを得ない事情で解約できない場合の現実的な対応

どうしてもリース契約を解約することができない場合でも、リース料の支払いを滞らせることだけは避けるべきです 。支払いが滞ると、遅延損害金が発生するだけでなく、信用情報に傷がつき、今後の資金調達などに悪影響を及ぼす可能性があります 。

まずはリース会社に現状を説明し、支払い方法の変更や一時的な支払いの猶予などを相談してみるのが現実的な対応と言えるでしょう。また、リース期間満了まで物件を使用し続けることで、リース料の支払いを最小限に抑えるという考え方も重要です。

リース契約の解約で後悔しないために:契約前のチェックリスト

将来的にリース契約の解約で後悔しないためには、契約前にしっかりと確認しておくべき事項があります。以下のチェックリストを参考に、慎重に契約内容を検討しましょう。

  • 契約期間や解約条件を慎重に確認する: 契約期間が自身の事業計画や物件の使用期間と合致しているか、中途解約の条件はどうなっているか、違約金はどの程度になるのかなどを確認しましょう 。不明な点があれば、必ずリース会社に質問し、納得できるまで説明を受けるようにしてください 。
  • リース物件の必要性と契約内容の妥当性を検討する: 本当にそのリース物件が必要なのか、リースという契約形態が自社にとって最適なのかを慎重に検討しましょう 。物件の購入と比較してリースの方が有利なのか、リース期間は適切か、リース料は相場と比べて妥当かなど、多角的な視点から検討することが重要です 。
  • 複数のリース会社から見積もりを取り比較検討する: リース契約を結ぶ際には、複数のリース会社から見積もりを取り、リース料や契約条件を比較検討することが重要です 11。リース会社によって、リース料だけでなく、中途解約の条件や違約金の額、その他のサービス内容などが異なる場合があります。
  • 不明な点は契約前に必ず質問し、納得してから契約する: リース契約の内容について少しでも不明な点や疑問点があれば、契約前に必ずリース会社に質問し、納得できるまで丁寧に説明を受けるようにしましょう 27。曖昧なまま契約してしまうと、後々トラブルの原因となる可能性があります。
チェック項目確認事項
契約期間と解約条件の確認契約期間は適切か、中途解約は可能か、違約金の金額や計算方法は明確か、解約時の予告期間はあるか
リース物件の必要性と契約内容の妥当性の検討本当に必要な物件か、リースという契約形態が最適か、購入と比較して有利か、リース期間は適切か、リース料は相場と比べて妥当か
複数のリース会社からの見積もり取得と比較検討複数のリース会社から見積もりを取り、リース料、契約条件、中途解約条件、違約金などを比較検討する
不明な点の質問と納得契約内容について少しでも不明な点や疑問点があれば、契約前に必ずリース会社に質問し、納得できるまで説明を受ける。曖昧なまま契約しない

まとめ

リース契約の解約は原則として難しいものですが、本稿で解説したように、例外的に認められるケースや、解約に向けた具体的な行動、そして契約前の注意点などを理解しておくことで、適切な対応を取ることが可能です。特に、新リース会計基準の導入により、リース期間の考え方や解約時の会計処理が変化している点には注意が必要です。

リース契約の解約を検討する際には、まずは契約書を確認し、リース会社との交渉を試みることをおすすめします。もし、悪質な契約である疑いがある場合や、法的な問題が絡んでいる場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することが重要です。また、将来的にリース契約を検討する際には、本稿で紹介したチェックリストを参考に、慎重に契約内容を確認し、後悔のない選択をしてください。

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