会計処理

セールアンドリースバックの基本的な会計処理や注意点について解説!

更新日:2025.06.16

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「資金調達の手段としてセールアンドリースバックが良いと聞くけど、実際にどう活用できるのか分からない」「会計処理や税務の扱いが難しそうで不安…。 そう思う方も多いのではないでしょうか。 

セールアンドリースバックは、資産を手放さずに資金調達ができる柔軟な手法であり、正しい会計処理と契約の設計を行えば財務改善に大きく寄与する手段となります。

本記事では、セールアンドリースバックの基本的な仕組みから、会計処理・税務上の留意点、契約時の注意点、さらに実務における事例とそのリスク管理まで、経理担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。

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セールアンドリースバックの概要

セールアンドリースバックは、企業が所有する不動産や設備などの資産を一旦売却し、その後同じ資産を売却先からリースバックする取引形態です。この手法は資金調達や財務体質の改善を目的として活用されており、近年多くの企業が戦略的に取り入れています。

会計上は売却取引とリース取引の組み合わせとして捉えられますが、その処理方法は契約内容や会計基準によって大きく異なります。経理担当者は取引の実態を正確に把握し、適切な会計処理を行うことが求められます。

セールアンドリースバックとは

セールアンドリースバックとは、自社が保有する資産を投資家や金融機関などに売却し、その後すぐに同じ資産を賃借するという金融取引手法です。企業は資産の売却によって即時に資金を調達できると同時に、リース契約を通じてその資産の使用権を維持することができます。

この取引は実質的には資産を担保とした資金調達手段として機能し、不動産や生産設備、車両などの固定資産が対象となることが一般的です。企業が事業継続に必要な資産を手放すことなく、バランスシートの改善や資金繰りの安定化を図ることができる点が大きな特徴です。

仕訳の基本

セールアンドリースバックの仕訳は、売却フェーズとリースバックフェーズに分けて考える必要があります。売却時には、まず対象資産の帳簿価額を除却し、売却代金と帳簿価額の差額を売却損益として計上します。現金や預金の増加と固定資産の減少が基本的な取引となります。

一方、リースバック時の会計処理はリース契約の内容によって異なります。ファイナンス・リースの場合は使用権資産とリース負債を計上し、オペレーティング・リースの場合はオフバランス処理となりますが、新リース会計基準適用後は多くのケースで資産・負債として計上されることになります。

目的とメリット

セールアンドリースバックの主な目的は、固定資産に凍結されていた資金を活性化させることにあります。企業は資産を売却することで多額の現金を一度に獲得でき、その資金を成長分野への投資や負債の返済に充てることが可能になります。

また、財務指標の改善効果も大きく、総資産回転率や自己資本比率といった経営効率や財務健全性を示す指標を向上させることができます。さらに、資産維持に関わる修繕費や固定資産税などの負担を軽減できる点も企業にとって魅力的であり、本業に経営資源を集中させることができるという戦略的なメリットも生まれます。

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セールアンドリースバック取引と会計処理

セールアンドリースバック取引の会計処理は複雑であり、適用される会計基準によって大きく異なります。日本基準、IFRS、米国会計基準それぞれにおいて処理方法が異なるため、企業はどの基準を適用すべきか慎重に検討する必要があります

特に重要なのは、売却取引が会計上の売却として認められるかどうかの判断と、リースバック部分の分類です。会計処理によって財務諸表への影響が大きく変わるため、取引設計段階から会計上の影響を考慮することが重要です。

会計基準とIFRS

セールアンドリースバック取引の会計処理において、国際財務報告基準(IFRS)の影響は特に重要です。IFRS第16号「リース」では、売却が資産の移転として会計上認められるかどうかをIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に基づいて判断します。売却が認められる場合、売手(借手)は資産の使用権のみを認識し、使用権に相当する譲渡益のみを計上します。

一方、日本基準では企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」に基づき処理されますが、2022年に公表された改正リース会計基準(ASBJ第16号)ではIFRSに近い処理が導入されています。国際的な会計基準のコンバージェンスに伴い、経理担当者はこれらの動向を常に把握しておく必要があります。

IFRS16」についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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資産計上の方法

セールアンドリースバック取引における資産計上は、リースの分類によって大きく異なります。ファイナンス・リースの場合、リースバック後は「使用権資産」として資産計上し、同時に「リース負債」も計上します。この使用権資産の当初測定額は、リース負債の当初測定額に前払リース料を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除して算定します。使用権資産は償却対象となり、リース期間にわたって規則的に償却されます。

オペレーティング・リースの場合でも、IFRS第16号や新日本基準では基本的に資産計上が必要となります。資産計上に際しては、リース料の現在価値計算に用いる割引率の決定が実務上の大きな課題となるため、適切な割引率の選定方法について社内で方針を明確にしておくことが重要です。

実務における注意事項

セールアンドリースバック取引を実行する際には、会計処理だけでなく、契約内容や実務面でも注意すべき点が多数あります。特に重要なのは契約内容の精査であり、リース期間、更新オプション、買戻し条項、変動リース料の取り扱いなどが会計処理に大きな影響を与えます。

また、取引の経済的実態が法的形式と異なる場合、会計上は実態を優先して処理する必要があるため、取引の目的と内容を明確に文書化しておくことが重要です。適切なリスク管理と内部統制の整備も不可欠です。

契約内容の確認

セールアンドリースバック契約を締結する際は、細部にわたる条件を慎重に確認することが極めて重要です。特に注目すべきは、リース期間の設定、リース料の算定方法、契約更新や中途解約のオプション、資産の維持管理責任の所在、原状回復義務の有無などです。

また、売却価格が市場価格と著しく乖離していないかも重要なチェックポイントとなります。市場価格と大きく異なる場合、税務上の否認リスクや会計上の売却処理が認められないリスクが高まります。さらに、契約条件によっては実質的に金融取引として扱われる可能性もあるため、契約書の文言一つひとつが会計処理に影響を与えることを認識し、法務・税務・会計の専門家を交えた綿密な検討が必要です。

実際の事例とケーススタディ

実務では、様々なセールアンドリースバックの事例が見られます。例えば、ある製造業企業では工場建物と土地を投資法人に売却後、20年間のリースバック契約を締結しました。この事例では、売却益の一部を繰り延べる会計処理を適用し、リース期間にわたって償却しています。また、小売業では店舗物件を不動産投資信託(REIT)に売却し、比較的短期のリースバック契約を結ぶ事例も増えています。

これらの事例から学べる重要点は、取引目的の明確化、適切な契約期間の設定、売却価格の合理的な算定方法などです。成功事例と失敗事例の両方を研究することで、自社の取引設計に活かすことができます。リース期間と資産の経済的耐用年数の関係が会計処理に大きく影響するため、この点にも注意が必要です。

リスク管理の重要性

セールアンドリースバック取引には様々なリスクが伴うため、適切なリスク管理体制の構築が不可欠です。最も重要なのは、会計基準や税法の解釈の変更による遡及的な影響リスクです。

また、長期契約特有の市場変動リスクも考慮すべきです。例えば、市場賃料が下落傾向にある中で高額なリース料を長期間支払い続けることになるリスクや不要になった資産を解約できないリスクなどが考えられます。さらに、売却先の信用リスクや、資産の維持管理に関するトラブルリスクも無視できません。これらのリスクを軽減するためには、契約書に適切な条項を盛り込むことや、定期的なリスク評価を実施すること、そして会計・税務・法務の専門家によるクロスチェック体制を整備することが効果的です。

税務に関する注意点

セールアンドリースバック取引における税務上の取り扱いは、会計処理とは異なる側面があるため、特別な注意が必要です。税務上は取引の法的形式よりも経済的実質を重視する傾向があり、形式的には売買であっても実質的に金融取引と見なされるケースがあります。

特に重要なのは消費税、法人税、登録免許税、不動産取得税などの取り扱いです。税務リスクを最小化するためには、事前に税務当局への相談や税務専門家の関与が不可欠であり、取引の経済合理性を明確に説明できる文書の整備も重要です。

消費税の取り扱い

セールアンドリースバックにおける消費税の取り扱いは実務上の大きな課題です。不動産の売却部分には原則として消費税が課税されますが、土地部分は非課税となります。

また、リースバック部分のリース料にも消費税が課税されるため、資金計画を立てる際には消費税の支払いと還付のタイミングを考慮する必要があります。特に注意すべきは、売却時に多額の消費税を一括で支払う必要がある一方、リース料に係る消費税は分割して還付を受けることになるため、一時的に大きなキャッシュアウトが生じる点です。

さらに、非課税売上割合が高い企業では、仕入税額控除が制限される可能性があるため、消費税計算への影響を事前にシミュレーションしておくことが重要です。

税務否認のリスク

セールアンドリースバック取引において最も警戒すべきは税務否認のリスクです。税務当局は経済的実態に基づいて取引を判断するため、形式的な売買であっても実質的に金融取引と認定される可能性があります。特に、売却価格が明らかに市場価格と乖離している場合やリース期間終了時に買戻し条項がある場合、取引の主な目的が租税回避と判断される可能性が高まります。

過去の裁判例では、売主に実質的な所有権が残っていると認められた場合に売却損益が否認された事例があります。このリスクを軽減するためには、取引の事業上の合理性を明確に文書化し、売却価格の根拠となる不動産鑑定評価書などの客観的証拠を保存しておくことが重要です。また、税務上のリスクが高い取引については、事前に税務当局への照会を検討することも一つの対策となります。

法人税における影響

セールアンドリースバック取引は法人税の計算にも大きな影響を与えます。売却益が発生した場合、原則としてその事業年度の益金として一括計上されますが、会計上は繰延処理される場合もあるため、申告調整が必要になることがあります。また、リースバック部分がファイナンス・リースに該当する場合、税務上は売買処理となり、減価償却費とリース債務に対する支払利息が損金算入されます。

オペレーティング・リースの場合は、リース料が全額損金算入されます。さらに、不動産を対象とした取引では、固定資産税の負担者や減価償却方法の変更にも注意が必要です。長期的な税負担を正確に予測するためには、会計と税務の差異を明確に認識し、将来の税効果も考慮した綿密な分析が求められます。また、グループ法人税制の適用対象となる関連会社間取引の場合は、さらに複雑な税務処理が必要となる点にも留意すべきです。

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セールアンドリースバックのメリット

セールアンドリースバック取引は、企業にとって様々な戦略的メリットをもたらします。最も直接的なメリットは即時の資金調達が可能になる点ですが、それ以外にも財務指標の改善、資産管理コストの削減、事業の柔軟性向上など、複合的な効果が期待できます

特に近年は不動産価格の上昇を背景に、含み益のある不動産を活用したセールアンドリースバックが注目されています。ただし、これらのメリットを最大化するためには、企業の経営戦略や将来計画と整合性のある取引設計が不可欠です。

資金調達の柔軟性

セールアンドリースバックの最大のメリットは、固定資産を活用した柔軟な資金調達が可能になる点です。通常の借入や社債発行と比較して、信用力が低い企業でも資産価値に基づいて資金を調達できるため、資金調達手段の多様化につながります。

また、金融機関からの借入では担保設定や財務制限条項などの制約が課されることが多いですが、セールアンドリースバックではそうした制約が少ない場合もあります。さらに、不動産などの含み益がある資産を活用することで、簿価以上の資金を調達できる点も大きな魅力です。調達した資金は設備投資や研究開発投資など成長分野への再投資に充てることができるため、企業の競争力強化にも貢献します。資金調達の選択肢が広がることで、経営の自由度も高まるでしょう。

経営の改善

セールアンドリースバックは財務面だけでなく、経営改善にも大きく貢献します。固定資産を売却することで総資産が減少し、総資産利益率(ROA)や自己資本比率といった財務指標が改善します。これにより企業の信用格付けが向上する可能性もあります。

また、資産保有に伴う固定資産税や保険料、修繕費などのコストが削減され、資産管理の負担も軽減されます。さらに重要なのは、不動産などの非コア資産から解放されることで、経営資源や経営者の注力を本業に集中できる点です。特に事業再生局面にある企業では、バランスシートのスリム化と同時に本業の立て直しが図れるため、V字回復の有効な手段として活用されています。経営者は資産の「所有」から「利用」への発想転換によって、より効率的な経営を実現できるでしょう。

オフバランス効果

従来のセールアンドリースバック取引の大きなメリットとして、オフバランス効果が挙げられてきました。資産を売却してリースバックすることで、バランスシートから資産と関連負債を除外できる可能性があります。特にオペレーティング・リースとして処理される場合、リース料は単なる費用として損益計算書に計上されるだけで、資産・負債は計上されませんでした。これにより、総資産が減少し、自己資本比率や資産回転率などの財務指標が改善します。

ただし、近年のIFRS第16号や改正日本基準の適用により、多くのリース取引がオンバランス処理されるようになってきています。とはいえ、セールアンドリースバック取引は依然として、不動産などの重い資産をより軽い使用権資産に転換できるメリットがあり、バランスシートの効率化に貢献します。財務諸表の改善効果は、投資家や金融機関からの評価向上につながる重要な要素です。

セールアンドリースバックのデメリット

セールアンドリースバックには多くのメリットがある一方で、看過できないデメリットも存在します。最も大きな問題は、長期的にはリース料の総額が当初の売却価格を上回る可能性が高く、財務的には割高になりやすい点です。

また、資産の所有権を失うことで生じる事業上の制約や契約条件による自由度の低下も考慮すべき重要なデメリットです。企業はこれらのデメリットを十分に理解した上で、メリットと比較衡量し、自社の経営状況や将来計画に照らして慎重に判断する必要があります。

所有権の移転とその影響

セールアンドリースバックの最大のデメリットは、資産の所有権を手放すことによる影響です。所有権が移転することで、資産の改修や用途変更、増築などに関して貸主の承諾が必要となり、事業運営の自由度が制限されます。

特に事業用不動産の場合、将来的な事業拡大計画や施設のリニューアルが制約を受ける可能性があります。また、所有権に基づく資産価値の上昇メリットも享受できなくなります。不動産価格が上昇傾向にある地域では、将来的な値上がり益を逸失するリスクがあります。

さらに、長年使用してきた資産には企業文化や歴史が刻まれていることも多く、所有権の喪失は従業員のモチベーションや企業イメージにも影響を与える可能性があることを認識しておくべきでしょう。

リース料の負担

セールアンドリースバックでは、一度に大きな資金を調達できる反面、長期間にわたってリース料の支払い義務が発生します。通常、リース料の総額は売却価格を上回るため、長期的には資金コストが増大する傾向にあります。特に固定リース料の契約では、事業環境の変化や収益の悪化に関わらず、一定額の支払いが継続的に必要となり、キャッシュフローの硬直化を招く恐れがあります。

また、インフレ対応などのために組み込まれる賃料増額条項がある場合は、将来の負担増加リスクも考慮しなければなりません。さらに、会計上のオンバランス処理により、リース負債が計上される場合は、財務レバレッジの上昇につながり、新たな資金調達の障害となる可能性もあります。リース料負担の妥当性を評価する際は、単純な現在価値計算だけでなく、事業計画との整合性や将来の資金繰りへの影響を総合的に検討することが重要です。

契約上の制限

セールアンドリースバック契約には様々な制限条項が設けられることが多く、これが事業運営の障害となる可能性があります。一般的な制限としては、転貸の禁止、用途変更の制限、改修・増築の制限などが挙げられます。

特に重要な制限は中途解約に関するものであり、多くの契約では一定期間の解約禁止条項や多額の違約金条項が含まれています。これにより、事業環境の変化に応じた柔軟な対応が困難になる場合があります。また、定期的な建物の検査や修繕義務、報告義務などの管理上の負担が増加することもデメリットの一つです。

さらに、契約更新時に賃料が市場相場に合わせて改定される場合、想定以上の負担増加リスクもあります。これらの制限を軽減するためには、契約交渉段階で将来の事業展開を見据えた柔軟性を確保することが重要ですが、それが売却価格やリース料に影響することも理解しておく必要があります。

リースバックの流れ

セールアンドリースバック取引を成功させるためには、適切なプロセスを踏むことが重要です。一般的な流れとしては、まず取引の目的明確化と対象資産の選定から始まり、売却先の選定、売却価格の算定、リース条件の交渉、契約締結、そして実行へと進みます。

各ステップには専門的な知識や外部専門家の支援が必要となることが多く、特に会計・税務・法務の観点からの綿密な検討が不可欠です。適切なプロジェクト管理と関係部署間の密な連携によって、スムーズな取引実現が可能となります。

取引のステップ

セールアンドリースバック取引は通常、いくつかの明確なステップに分けて進行します。まず最初に行うべきは、取引の目的を明確化し、対象資産の選定を行うことです。続いて、不動産鑑定士による資産評価を実施し、適切な売却価格を算定します。並行して、潜在的な買い手の選定と交渉を開始し、複数の候補者からベストオファーを引き出すことが重要です。買い手が決定したら、リース条件(期間、賃料、更新オプション、維持管理責任など)の詳細な交渉に入ります。

その後、法務・会計・税務の専門家によるデューデリジェンスを経て、最終的な契約締結へと至ります。最後に、売買代金の決済と物件の引き渡し、そしてリース契約の開始という流れになります。各ステップで適切な意思決定を行うためには、社内の関係部署(財務、経理、法務、事業部門)の緊密な連携が不可欠です。

必要な書類と手続き

セールアンドリースバック取引の実行には、多岐にわたる書類の準備と手続きが必要となります。主要な書類としては、不動産売買契約書、リース契約書、物件引渡証、登記関連書類などが挙げられます。不動産の場合は、登記簿謄本、建築確認通知書、検査済証、耐震診断報告書なども準備する必要があります。

税務面では、固定資産課税台帳、不動産取得税申告書、消費税申告書などの書類も重要です。また、会計処理の根拠となる不動産鑑定評価書や資産評価書も必須です。手続き面では、所有権移転登記、固定資産税の按分計算、リース料の支払い設定など、細かな作業が発生します。

これらの書類準備や手続きを効率的に進めるためには、チェックリストの作成と進捗管理が有効です。また、締結後の書類管理も重要であり、電子データでのバックアップを含めた保管体制の構築が推奨されます。

契約の交渉ポイント

セールアンドリースバック契約の交渉においては、いくつかの重要なポイントに焦点を当てることが成功の鍵となります。最も重要なのは売却価格とリース料の水準であり、両者のバランスが取引の経済性を左右します。

次に、リース期間の設定と更新オプションの条件も慎重に交渉すべき点です。長すぎるリース期間は将来の柔軟性を損なう一方、短すぎると事業継続性にリスクをもたらします。また、修繕・維持管理の責任分担、原状回復義務の範囲、中途解約条件なども明確にしておくべき重要事項です。

さらに、将来的な買戻しオプションの有無や条件も検討価値があります。交渉においては、自社の優先事項を明確にした上で、相手方の意向も理解し、Win-Winの関係構築を目指すことが重要です。契約条件が会計・税務処理に与える影響も考慮し、専門家の助言を得ながら総合的な判断をすることで、長期的に有利な条件を引き出すことができるでしょう。

まとめ

セールアンドリースバックは、企業の資金調達と財務改善のための有効な手段ですが、会計・税務・法務など多方面からの検討が必要な複雑な取引です。本稿で解説したように、会計処理においては適用される会計基準に応じた適切な判断が求められ、税務面では様々なリスクへの対応が必要となります。

契約内容の詳細な検討や専門家の関与が成功の鍵となります。メリットを最大化しデメリットを最小化するためには、自社の経営戦略との整合性を常に意識し、長期的視点での判断が不可欠です。企業の状況に応じた最適なセールアンドリースバック取引の設計と実行が、持続的な企業価値向上につながるでしょう。

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