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経費精算のミスはなぜ起こる?原因と防止策を徹底解説【チェックリスト付】

更新日:2025.06.27

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経費精算 ミス

経費精算業務は、企業の経理部門にとって日常的かつ重要な業務です。しかし、申請者による入力ミス、領収書の添付漏れ、規程違反といった細かなエラーが後を絶たず、その確認と修正作業に多くの時間と労力を費やしているのが実情ではないでしょうか。

これらのミスは、単なる「うっかり」で片付けられるものではありません。その背景には、業務プロセスに根差した構造的な問題が潜んでいます。ミスが頻発する職場では、経理担当者の精神的な負担が増大し、生産性の低下を招くだけでなく、不正の温床となるリスクさえはらんでいます。

本記事では、経費精算でなぜミスが繰り返されるのか、その根本原因を多角的に分析します。そして、明日からでも実践できる具体的な防止策から、経費精算システムの導入による抜本的な解決策、さらには「経理AIエージェント」が拓く未来の業務像までを、専門的な視点から徹底的に解説します。経費精算のミスを撲滅し、経理部門をより戦略的な業務へとシフトさせるための第一歩として、ぜひご一読ください。

経費精算で頻発する「あるある」ミス大全

経費精算のミスは、申請する従業員側と、それを処理する経理担当者側の双方で発生します。まずは、どのようなミスが頻発しているのかを具体的に把握することが、対策を講じる上での出発点となります。

申請者側で起こりがちなミス

申請者側のミスは、主に「入力」「書類」「ルール理解」の3つの側面に起因します。

データ入力のミス

最も多いのが、金額の「0」を一つ多く、あるいは少なく入力してしまう桁間違いや、日付の入力ミスです。集中力が途切れた際や、締切間際に急いで処理する際に起こりやすくなります。

書類に関するミス

領収書の添付忘れは典型的な例です。また、領収書の代わりにクレジットカードの利用控えを添付してしまうケースも非常に多く見られます。さらに、宛名が「上様」や空欄であったり、但し書きが具体的な内容を示さない「お品代として」であったりするなど、証憑として不十分な書類を提出してしまうことも少なくありません。

社内規程の違反

経費として認められない費用の申請、交際費や会議費といった勘定科目の判断間違い、定められた上限金額の超過など、社内ルールへの無理解や誤解から生じるミスです。

経費精算規定について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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申請の遅延

「後でまとめてやろう」と経費精算をため込むことで、何に使った費用か思い出せなくなったり、領収書を紛失したりするリスクが高まります。

経理担当者側で起こりがちなミス

経理担当者側のミスは、手作業による処理の過程で発生することが大半です。

処理・入力のミス

申請書の内容を会計システムへ転記する際の人為的な入力ミスや、同じ経費を誤って二重に計上してしまう「二重計上」が挙げられます。

支払いに関するミス

従業員への立替経費の振込金額を間違えたり、振込先の口座番号を誤ったりするミスです。これは企業の信用問題にも直結しかねません。

確認・チェックの漏れ

月末などの繁忙期に申請が集中すると、多忙さから申請内容のチェックが甘くなり、申請者側のミスを見逃してしまうことがあります。

なぜミスは繰り返されるのか?5つの根本原因を分析

経費精算のミスが「個人の不注意」だけで解決しないのは、その背景に組織的・構造的な問題が存在するからです。ミスが繰り返し発生する企業には、共通する5つの根本原因が見られます。

属人化と複雑な社内ルール

「この費用はどの勘定科目だろう?」といった疑問が生じた際、明確なルールがなければ担当者の個人的な判断に頼るしかありません。経費精算のルールが複雑すぎたり、そもそも全社に十分に周知されていなかったりすると、従業員は勘違いや思い込みで申請を行い、ミスが多発します。

紙と手作業への過度な依存

多くの企業でいまだに主流となっている、紙の申請書に領収書を糊付けし、上長にハンコをもらって経理に提出するという一連のフローは、ミスを誘発する温床です。手書きでの転記や電卓での計算、会計システムへの再入力など、すべての工程でヒューマンエラーが介在する余地が極めて大きいのです。

経理部門の業務過多とプレッシャー

特に中小企業において、経理部門は少人数で多くの業務を抱えているケースが少なくありません。月末や決算期には大量の経費精算申請が集中し、時間に追われる中で処理しなければならないというプレッシャーが、ケアレスミスを引き起こす直接的な原因となります。

申請・承認プロセスの非効率性

申請書が紙で運用されている場合、承認者が出張などで不在にしていると、承認プロセスがそこで停滞してしまいます。結果として、締切間際に申請が殺到し、経理部門の業務負荷をさらに高めるという悪循環に陥ります。

原因5:意図せぬ不正を誘発する環境

手作業が多く、チェック体制が形骸化している環境は、ミスだけでなく意図的な不正の隙も生み出します。実際より高い交通費を申請したり、私的な飲食代を接待費として紛れ込ませたりといった不正は、チェックが甘ければ容易に行えてしまいます。ミスが常態化し、ルールの基準が曖昧な組織風土は、こうした「小さな不正」を誘発するリスクを内包しています。

ミスが引き起こす経営リスクと、意図せぬ「不正」の境界線

経費精算のミスは、単なる手間の問題にとどまりません。放置すれば、企業の財務や信用に深刻な影響を及ぼす経営リスクに直結します。

  • 財務的リスク:金額の入力ミスによる過払いや二重申請は、会社の資金を不当に流出させます。また、勘定科目の誤りは不正確な税務申告につながり、企業の納税額が増加する恐れがあります。
  • 業務的・組織的リスク:ミスを修正するための差し戻しや再確認といった作業は、関係者全員の時間を奪う非生産的な活動です。さらに、経費精算の遅れは月次決算の遅延を招き、タイムリーな経営判断を妨げることにもつながりかねません。
  • コンプライアンス・ガバナンスリスク:ミスが常態化している組織は、内部統制が脆弱であるとみなされ、企業の社会的信用を損ないます。さらに、ミスの多いプロセスでは、それが意図しない過失なのか、意図的な不正なのかの判断が非常に難しく、従業員の規範意識を低下させ、より大きな不正行為へのハードルを下げてしまいます。

今すぐできる!経費精算ミスを防ぐための具体的対策

抜本的な解決にはシステムの導入が不可欠ですが、その前に、現行の運用の中でも改善できる点は数多くあります。

経費精算マニュアルの整備と周知徹底

ミスの多くは、ルールが曖昧であること、あるいは従業員に知られていないことに起因します。まずは、誰が読んでも理解できる、シンプルで分かりやすい経費精算マニュアルを作成し、全社で共有することが重要です。マニュアルには、経費として認められる範囲、迷いやすい勘定科目の具体例、上限金額、申請フローなどを明記しましょう。

チェックリストの活用

人間の注意力には限界があります。そこで有効なのが、申請者、承認者、経理担当者がそれぞれの立場で確認すべき項目をリスト化した「チェックリスト」の活用です。提出前、承認前、処理前にこのリストに沿ってセルフチェックを行うことを義務付けることで、単純なミスを大幅に削減できます。

対象者チェック項目
申請者□ 申請日、支払日、金額は正しく入力されていますか?
□ 支払先の名称は正式名称で記載されていますか?
□ 目的・内容は具体的に記載されていますか?
□ 勘定科目はマニュアルに沿って正しく選択されていますか?
□ 交通費は、定期区間を控除していますか?
□ 領収書(または会社が認める証憑)はすべて添付されていますか?
□ 添付した領収書の宛名、日付、金額、但し書きは適切ですか?
承認者□ 申請内容は、申請者の業務実態と合致していますか?
□ 会社の経費精算規定(上限金額など)を遵守していますか?
□ 申請内容に不自然な点や、私的利用の疑いはありませんか?
□ 交際費の場合、参加者や目的は適切に記載されていますか?
□ 添付されている証憑は適切ですか?
経理担当者□ 申請内容と添付証憑の金額は一致していますか?
□ 勘定科目や税区分は正しく処理されていますか?
□ 過去に同じ領収書で申請されていないか(二重申請の可能性)を確認しましたか?
□ (インボイス制度)適格請求書の場合、登録番号は有効ですか?
□ 申請内容に不備はなく、承認はすべて完了していますか?

属人化と手作業からの脱却 ― 経費精算システムの導入効果

マニュアルやチェックリストによる対策は有効ですが、ミスを根本からなくし、業務を飛躍的に効率化するためには、テクノロジーの活用が不可欠です。経費精算システムを導入することで、前述したミスの根本原因を解消できます。

システムが根本原因をどう解決するか

手入力作業の撲滅

スマートフォンのカメラで領収書を撮影するだけで、AI-OCRが日付や金額を自動でデータ化します。交通系ICカードや法人カードと連携すれば、利用履歴が自動で取り込まれ、入力ミスそのものがなくなります。

ルールのシステム化と自動チェック

社内ルールをシステムに設定すれば、規定違反の申請を自動で検知し、差し戻しの手間を大幅に削減できます。

ワークフローの効率化と可視化

申請から承認までがシステム上で完結し、承認者は場所を選ばずに作業できます。プロセス全体がスピードアップし、遅延や紛失のリスクがなくなります。

不正の抑止とガバナンス強化

システムは二重申請を自動で検知し、すべての操作ログが記録されるため、不正行為への強力な抑止力となります。

会計ソフトとのシームレスな連携

承認された経費データは、会計ソフト用の仕訳データとして出力されるため、手作業での再入力が不要になり、転記ミスを排除できます。

法令対応の必須ツールとして

さらに、現代の経理業務において、システムの導入は単なる効率化ツールにとどまりません。子帳簿保存法インボイス制度といった複雑な法制度へ適切に対応するための必須ツールとなっています。システムを導入することで、領収書のペーパーレス化を実現したり、インボイスの有効性を自動で確認したりでき、コンプライアンスを遵守した正確な経理業務を遂行できます。

経費精算の未来像:「経理AIエージェント」がもたらす業務の自動運転

経費精算システムの導入は、ミスをなくし業務を効率化する上で非常に強力な手段です。しかし、テクノロジーの進化はそこで止まりません。その先に見えるのは、AIがより自律的に業務を遂行する「経理AIエージェント」が活躍する未来です。

これはRPA(定型作業の自動化)や従来のAI(認識・予測)を発展させ、AIの「頭脳」とRPAの「手足」を統合し、自律的に目標を達成する次世代の存在です。例えば「この請求書を処理して」という指示だけで、AIエージェントが内容の確認、仕訳、支払いデータ作成、会計システムへの登録といった一連のタスクを自律的に実行します。

これは、まさに経理業務における「自動運転」の実現です。人間は、日々の反復的な「作業」から完全に解放され、財務データの分析を通じた経営への提言といった、より付加価値の高い戦略的な業務に集中できる時間を確保できるようになるのです。

TOKIUMが提供する「TOKIUM AI出張手配」では、移動経路の検索や宿泊先の手配、出張申請の作成など、出張手配の「探して、予約して、申請して」をAIエージェントが代わりに実行します。出張旅費規程の内容に沿って申請するため、意図しない規程違反や記載漏れなどのミスがなくなるため、申請者、承認者それぞれで負担を軽減することが可能です。

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

https://www.keihi.com/keiri-ai-agent/biz-trip-arrangements/

まとめ

経費精算におけるミスは、決して個人の注意力の問題ではなく、紙と手作業に依存した旧来の業務プロセスに起因する構造的な課題です。その影響は、業務効率の低下にとどまらず、財務的損失やコンプライアンス違反といった深刻な経営リスクにまで及びます。

マニュアルの整備やチェックリストの導入は、即効性のある対策として有効ですが、それだけでは限界があります。ミスの連鎖を断ち切り、属人化から脱却するためには、経費精算システムの導入によるデジタルトランスフォーメーション(DX)が不可欠です。システムは、入力作業の自動化、ルールの徹底、プロセスの可視化を通じて、ミスが発生しにくい環境を構築し、同時に電子帳簿保存法やインボイス制度といった法制度への対応も実現します。

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