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フリーランス新法をわかりやすく解説!企業が取るべき対応とは?

更新日:2025.10.14

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2024年11月1日、フリーランスとして働く人々を保護するための新しい法律、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス保護新法」が施行されます。IT、Web制作、デザイン業界など、多くの企業でフリーランスとの協業が不可欠となっている昨今、この法改正は決して他人事ではありません。

法務や経理、人事・購買部門のご担当者様の中には、「具体的に何が変わるのか?」「自社は対象になるのか?」「対応が遅れた場合のリスクは?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。日常の契約管理や支払い業務に追われる中で、新たな法対応への準備にまで手が回らない、というのが正直なところかもしれません。

→ダウンロード:請求処理業務効率化チェックリスト

しかし、この法改正は単なる規制強化ではありません。正しく理解し、適切に対応することで、フリーランスとの取引プロセスを見直し、業務全体の効率化や、より良いパートナーシップの構築へと繋げる絶好の機会となり得ます。

【柏市役所様】
市内52校の食材費の請求書処理をわずか2名で実現!

柏市役所ご担当者の写真

柏市役所では、学校給食費の公会計化に伴い、52校分・月間600枚以上の請求書をわずか2名で処理する必要が生じ、業務の逼迫が深刻な課題でした。

この課題解決のため「TOKIUMインボイス」を導入。決め手となったのは、手書きの請求書にも対応できる点や、AI-OCRと専任オペレーターの組み合わせによる精度の高いデータ入力により、市役所側の確認・修正作業が大幅に削減できる点でした。

導入の結果、月間約100時間かかると想定された請求書処理が約2時間に短縮され、年間1000時間以上の業務時間削減を達成。仕入れ先や学校側に新たな負担をかけることなく、職員の業務負担を劇的に改善し、コア業務に集中できる環境を実現しました。

本記事では、フリーランス新法の概要から、企業に課される具体的な義務、そして今から準備すべき実務対応まで、網羅的に解説します。さらに、この法改正を機に、契約・支払業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのヒントもご紹介します。

フリーランス新法とは?

まず、この新しい法律がどのようなものなのか、その全体像を掴むところから始めましょう。法律の目的や背景、施行日、そして誰が対象となるのかを正確に理解することが、適切な対応への第一歩となります。

法律の目的と背景

フリーランス保護新法は、フリーランスが事業者との取引において、安定的かつ公正な条件で業務を行える環境を整備することを目的としています。近年、働き方の多様化により、企業に属さずに個人で仕事を受けるフリーランスの数は増加の一途をたどっています。しかし、その一方で、発注者である事業者との間で、報酬の未払いや一方的な契約解除といったトラブルが後を絶たないという課題がありました。

これまでの下請法では、資本金規模によって保護の対象外となるケースがあり、すべてのフリーランスを十分に保護できていませんでした。そこで、事業者とフリーランス間の取引を適正化し、トラブルを未然に防ぐための新たなルールとして、この法律が制定されたのです。企業にとっては、コンプライアンスを遵守することはもちろん、優秀なフリーランスと長期的に良好な関係を築くための基盤作りとも言えます。

いつから施行される?

フリーランス保護新法は、2024年11月1日に施行されました。まだ何も準備ができていないという企業は、早急な対応が求められます。施行日以降にフリーランスへ業務を委託する際には、この法律に定められたルールを遵守しなければなりません。今のうちから社内の体制を見直し、必要な準備を進めておくことが重要です。

法律の対象となる事業者とフリーランス

この法律が適用されるかどうかは、非常に重要なポイントです。法律では、業務を委託する側を「特定業務委託事業者」、業務を受託するフリーランス側を「特定受託事業者」と定義しています。

特定業務委託事業者(発注者側)とは、従業員を使用する事業者のことです。正社員やパート・アルバイトなど、雇用形態にかかわらず、一人でも従業員がいれば対象となります。つまり、ほとんどの中小企業、中堅企業がこの「特定業務委託事業者」に該当すると考えてよいでしょう。逆に、社長一人だけで従業員がいない会社や個人事業主がフリーランスに発注する場合は、対象外となります。

一方、特定受託事業者(フリーランス側)とは、従業員を使用しない事業者のことです。法人形態であっても、社長一人だけで従業員を雇っていない「一人社長」の会社も、この定義に含まれます。

自社と取引先のフリーランスがそれぞれどちらに該当するのか、以下の表で確認しておきましょう。

特定業務委託事業者(発注者)特定受託事業者(フリーランス)
定義業務委託をする事業者で、従業員を使用する業務委託を受ける事業者で、従業員を使用しない
具体例従業員を雇用している法人・個人事業主従業員を雇用していない個人事業主・法人(一人社長など)
ポイント資本金の額は問われない事業形態(法人か個人か)は問われない

この法律の大きな特徴は、下請法と違って事業者の資本金額が要件となっていない点です。そのため、これまで下請法の対象外だった小規模な事業者であっても、従業員を一人でも雇用していれば、フリーランス保護新法の対象となる可能性があります。

参考:マネーフォワードクラウド フリーランス新法とは?対象や事業者がとるべき対

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発注事業者に課される4つの大きな義務

それでは、具体的に企業にはどのような義務が課されるのでしょうか。フリーランス保護新法では、発注事業者に対して主に4つの大きな義務を定めています。これらはフリーランスとの取引における実務に直結する重要な内容ですので、一つひとつ丁寧に確認していきましょう。

① 業務委託時の取引条件の明示義務

フリーランスに業務を委託する際には、給付の内容、報酬額、支払期日といった取引条件を、書面または電磁的方法(PDFファイルのメール送付など)で速やかに明示することが義務付けられます。これは、口頭での曖昧な依頼による「言った・言わない」のトラブルを防ぐための重要なルールです。

明示が必要な項目は多岐にわたりますが、特に重要なのは以下の点です。

  • 発注事業者とフリーランスの名称
  • 業務委託をした日
  • 業務の内容(給付の内容)
  • 納期または業務の実施期間
  • 報酬額とその算定方法
  • 報酬の支払期日
  • その他、公正取引委員会規則で定める事項

これらの項目を網羅した契約書や発注書を、業務を開始する前に必ず取り交わす必要があります。現在使用している契約書のひな形がこれらの要件を満たしているか、今一度見直すことが不可欠です。契約内容をデータとしてきちんと保管・管理できる体制を整えることも、コンプライアンスと業務効率化の両面から非常に重要と言えるでしょう。

② 60日以内の報酬支払期日の設定義務

フリーランスの生活安定を図るため、報酬の支払期日にもルールが設けられます。具体的には、フリーランスから納品物を受け取った日(役務提供の場合は役務の提供が終わった日)を起算日として、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定しなければなりません。

例えば、月末締めの翌々月末払い(検収に時間がかかる場合などを除く)といった支払サイトは、起算日から60日を超えてしまう可能性があり、見直しが必要になるケースが考えられます。経理部門としては、現在の支払プロセスがこの規定に準拠しているかを確認し、必要であれば関連部署と連携して支払サイトの短縮を検討しなければなりません。この規定は下請法と同様の考え方ですが、適用対象が広がるため、より多くの企業が注意を払う必要があります。

③ 発注事業者の7つの遵守事項(禁止行為)

発注事業者は、フリーランスに対して優越的な地位を濫用することがないよう、以下の7つの行為が禁止されます。これらはフリーランスの正当な利益を保護するための重要なルールです。

  1. 受領拒否の禁止: フリーランス側に責任がある場合を除き、発注した納品物の受け取りを拒否してはなりません。
  2. 報酬の減額の禁止: フリーランス側に責任がある場合を除き、一度合意した報酬を一方的に減額することは許されません。
  3. 返品の禁止: フリーランス側に責任がある場合を除き、受け取った納品物を返品することはできません。
  4. 買いたたきの禁止: 通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めることは禁止されます。
  5. 購入・利用強制の禁止: 発注する側が指定する商品を購入させたり、サービスを利用させたりすることを強制してはなりません。
  6. 不当な経済上の利益提供要請の禁止: フリーランスに対し、協賛金の提供など、業務内容とは関係のない経済的な利益を提供するよう不当に要求することはできません。
  7. 不当なやり直しの禁止: フリーランス側に責任がないにもかかわらず、無償で作業のやり直しをさせるなど、不当に経済的な不利益を与えることは禁止されます。

これらの禁止事項は、いずれもフリーランスとの健全な関係を築く上で基本となる事柄です。社内の発注担当者にもこれらのルールを周知徹底し、無意識のうちに違反行為を行ってしまうことがないよう、教育体制を整えることが求められます。

④ 募集情報の的確な表示義務と契約解除の事前予告

その他にも、フリーランスを募集する際の広告表示や、契約を途中で解除する場合のルールが定められています。

フリーランスを募集する広告には、虚偽の表示や誤解を生むような表示をしてはなりません。提示する業務内容や報酬、その他の条件は、正確かつ最新の情報である必要があります。

また、継続的な業務委託契約を途中で解除する場合や、契約を更新しない場合には、原則として30日前までにその旨を予告しなければなりません。さらに、フリーランスから請求があった場合には、契約解除の理由を明示する義務も課されます。これにより、フリーランスは突然仕事を失うリスクが軽減され、安定して事業を継続しやすくなります。

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下請法との違いは?

これまでフリーランスとの取引において注意すべき法律として「下請法」がありましたが、今回のフリーランス保護新法とはどのような違いがあるのでしょうか。法務やコンプライアンスを担当されている方にとっては、特に気になる点かと思います。

両者の最も大きな違いは、適用対象となる事業者の範囲です。下請法は、発注者と受注者の「資本金規模」によって適用されるかどうかが決まります。一方で、フリーランス保護新法は前述の通り、資本金の額に関係なく、発注者側が従業員を使用しているかどうかで判断されます。

このため、下請法の対象外であった、資本金の小さい企業がフリーランスに発注する場合でも、フリーランス保護新法は適用されることになります。両方の法律が適用されるケースもあれば、片方だけが適用されるケースもあります。自社の取引がどちらの法律の対象となるのかを正しく理解し、より厳しい方のルールを遵守するのが安全です。

比較項目フリーランス保護新法下請法
目的フリーランスの取引適正化、就業環境の整備下請事業者の利益保護、取引の公正化
適用範囲(発注者)従業員を使用する事業者(資本金要件なし)資本金1,000万円超の事業者(取引内容により変動)
適用範囲(受注者)従業員を使用しない事業者(個人・法人)資本金1,000万円以下の事業者(個人含む)
主な義務・禁止事項条件明示、60日以内支払、遵守事項など書面交付、支払期日、減額禁止、買いたたき禁止など
遅延利息規定なし年14.6%

このように、フリーランス保護新法は下請法を補完し、より広い範囲のフリーランスを保護する役割を担っています。

違反した場合の罰則

フリーランス保護新法に違反した場合、どのような措置が取られるのでしょうか。法律の実行性を担保するため、行政による監督と罰則が定められています。

まず、違反の疑いがある事業者に対しては、国(公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)による助言や指導が行われます。それでも改善が見られない場合には、勧告が出され、その勧告に従わない場合には、企業名を公表の上で命令が出されることがあります。

そして、この命令に違反した場合には、50万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。金額自体は大きくないと感じるかもしれませんが、企業名が公表されることによるレピュテーションリスクは計り知れません。「フリーランスを不当に扱う企業」というイメージが広がれば、優秀な人材の確保が困難になるだけでなく、企業のブランドイメージ全体に傷がつく恐れがあります。

参考:フリーランス保護新法とは?企業・発注者に必要な対応と罰則について解説

フリーランス新法に対応するために企業が今すぐ準備すべきこと

法律の概要を理解したところで、次は具体的なアクションプランに移りましょう。施行日である2024年11月1日までに、企業はどのような準備を進めるべきでしょうか。ここでは、最低限実施すべき4つのステップを解説します。

① 社内のフリーランス取引の実態把握

まずは、自社がどのようなフリーランスと、どのような条件で取引しているのか、その全体像を正確に把握することから始めましょう。どの部署が、誰に、どのような業務を、いくらで、どのような支払サイトで委託しているのかをリストアップします。この実態把握が、具体的な課題を洗い出し、的確な対策を講じるための基礎となります。

② 契約書ひな形や発注プロセスの見直し

次に、把握した実態をもとに、現在の契約書や発注書のひな形が、新法で定められた明示義務の項目をすべて満たしているかを確認します。不足している項目があれば、弁護士などの専門家に相談しながら、ひな形を改訂しましょう。また、契約書を締結せずに口頭やメールのやり取りだけで発注しているケースがあれば、必ず書面または電磁的方法で条件を明示するプロセスをルール化し、社内に徹底する必要があります。

③ 経理部門の支払サイトの確認と徹底

経理部門は、フリーランスへの支払サイトが「納品・役務提供から60日以内」のルールを遵守できているか、全社的にチェックする必要があります。特定の取引先だけが長い支払サイトになっている、といった例外がないかを確認し、もし違反の恐れがあれば、事業部門と連携して取引条件の見直し交渉を行う必要があります。支払い遅延が発生しないよう、請求書の受付から承認、支払処理までの社内フローを再点検することも重要です。

④ 社内への周知・教育

最後に、これらの新しいルールや変更された業務プロセスを、社内全体に周知し、教育することが不可欠です。特に、フリーランスと直接やり取りをする事業部門の担当者が、法律の内容を正しく理解していなければ、意図せず違反行為を犯してしまうリスクがあります。勉強会を開催したり、分かりやすいマニュアルを作成・配布したりするなど、全社的なコンプライアンス意識を高めるための取り組みを行いましょう。

法対応をDXの好機に!TOKIUMで契約・支払業務を効率化

出典:TOKIUMインボイス-支払い漏れをなくせる請求書受領クラウド

ここまで読んで、「法対応は義務だから仕方ないが、正直、業務負担が増えるだけでメリットがない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、見方を変えれば、この法改正は、これまで後回しにしてきた契約管理や請求書処理といったバックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める絶好の機会です。

煩雑な契約管理・支払業務からの解放

フリーランスとの取引が増えるほど、契約書の作成・保管、請求書の受け取り、内容確認、承認、そして支払いといった一連の業務は煩雑になります。紙の契約書や請求書が部署ごとに散在し、支払いの進捗状況が不透明になる、承認プロセスに時間がかかって支払いが遅延するといった課題を抱えている企業は少なくありません。フリーランス保護新法への対応は、こうしたアナログな管理体制からの脱却を後押しします。

TOKIUMインボイスが実現するスムーズなフリーランス取引

請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」は、まさにこうした課題を解決するためのソリューションです。フリーランスから送られてくる請求書を、紙やPDFなどあらゆる形式で受け取り、正確にデータ化します。受け取った請求書はクラウド上で一元管理され、承認ワークフローもシステム上で完結するため、ペーパーレス化と業務効率化を同時に実現できます。

TOKIUMインボイスを活用すれば、請求書の処理状況が可視化されるため、支払遅延のリスクを大幅に低減でき、フリーランス保護新法の「60日以内の支払い」義務の遵守にも繋がります。また、電子帳簿保存法にも対応しているため、法対応とDXを一挙に推進することが可能です。

請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策

まとめ

本記事では、2024年11月1日に施行されるフリーランス保護新法について、その概要から企業が取るべき具体的な対応までを網羅的に解説しました。

この法律は、フリーランスとの取引があるすべての企業にとって重要な変更点を含んでいます。まずは自社が対象となるかを確認し、「取引条件の明示」「60日以内の支払い」といった義務を遵守するための社内体制を早急に整えることが求められます。

そして、この法改正を単なるコストや負担と捉えるのではなく、フリーランスとの契約・支払業務全体を見直し、デジタル技術を活用して効率化・高度化させる絶好のチャンスと捉えてみてはいかがでしょうか。

TOKIUMのようなサービスを導入することで、コンプライアンスを確保しつつ、バックオフィス業務の生産性を飛躍的に向上させることが可能です。法対応をきっかけに、より強く、より効率的な事業基盤を築き、優秀なフリーランスと共に成長していく未来を描きましょう。

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