経理DX促進

経理の人材不足をシステムで解決?小さく始めて全社に広げる進め方

更新日:2025.10.23

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経理の人材不足は採用の難しさだけが原因ではありません。入力・承認・記録が分断された“流れの悪さ”や、紙・エクセル前提の運用がボトルネックになりがちです。

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本稿では、クラウドやAI-OCR、RPA、BPO、そして「経理AIエージェント」を組み合わせ、小さく始めて確実に定着させる実装の考え方を解説します。法対応とセキュリティに配慮しつつ、時間→金額で効果を測るやり方まで、経理初心者にもわかりやすく整理しました。

なぜ人材不足が起きるのか?経理フローの詰まりと影響

採用難に加え、紙・エクセル中心や分断された承認経路が処理を滞らせます。繁忙期の突発作業、属人化、法改正の追随遅れが重なると、遅延・差戻し・再作業が常態化。まずは“どこで止まるか”を工程別に把握し、処理量・待ち時間・差戻し率を可視化することが出発点です。

入力・承認・記録の分断による遅延の累積

経理の処理は「入力→承認→記録」が一続きに見えて、実際は別々のツールと担当者に分かれています。紙やエクセルで受けたデータがメール添付で渡り、誰が最新なのか分からないまま差戻しが発生し、承認者の不在で停滞します。記録側は証憑と仕訳の紐づけに時間を取られ、後で探せないリスクも抱えます。

このように、小さな遅延が次の工程に波及し、締め前に一気にひずみが露出するのが典型です。まずは情報の受け渡しの経路を確かめ、どこで手作業や待ちが増えているかを把握することが肝心です。

待ち時間・差戻し率・残業などの影響を可視化する

人手不足の深刻さは、作業時間の合計だけでは見えません。承認待ちの滞留時間、差戻し率、締め前後の残業時間を並べると、どこで人が詰まっているかが明確になります。たとえば承認自体は数分でも、承認者が気づくまでの待ちが数日発生していることがあります。差戻しは一度きりではなく、証憑不足や科目違いで繰り返されるのが負担です。

これらを工程別に集計し、週次・月次で推移を見ると、改善の優先度や効果が測れます。数値化は合意形成の基盤にもなります。

電帳法・インボイス対応への負荷

電帳法やインボイス制度は、“やるべきこと”を増やしただけでなく、証憑の保存方法や検索要件、改ざん防止の手当てなど、運用の粒度を上げました。現場では、これまでの紙や画像保管の慣行が通用しなくなり、項目の入力漏れや検索キーの不足が差戻しを招きます。

法律の要件を満たす仕組みに載せ替えない限り、チェックは人手に頼り、ミスを恐れて二重三重の確認が発生します。結果として時間が取られ、重要な判断や分析に回す余力が失われます。要件整理と仕組み化が急務です。

以下の記事では、経理の人手不足に効く“5つの打ち手”について詳しく解説しているので参考にしてください。

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システムの導入で経理人材不足を解決できる範囲と残る課題

システムは定型作業の自動化と標準化に強みがあります。AI-OCRやRPAは転記・照合作業の負荷とミスを抑制し、外部サービス連携は承認の停滞を減らします。一方、例外判断や設計不備は残りがち。“できること/できないこと”を切り分け、運用設計で埋めるのが実務的です。

システム導入による属人化の解消と品質の平準化

システムは、入力フォームや承認ルールを共有の“型”として提供できるため、担当者によって処理のやり方が変わる属人化を和らげます。申請時に必要項目を必須化すれば、記入漏れは入り口で止まり、チェックの工数が減ります。承認経路や金額基準を設定で固定化すれば、例外対応の判断も揺れにくくなります。標準化は教育の時間短縮にも効き、新任担当でも一定品質をすぐに再現できます。

システム導入による経理作業の平準化は品質の底上げだけでなく、欠員時の引き継ぎリスクを小さくする効果もあります。

AI-OCR/RPAを導入してエラーを削減する

AI-OCRはレシートや請求書の読取に強く、手入力の打ち間違いを減らします。仕入先名や金額、日付などの定型項目は高い再現性で取り込めるため、後段の照合や承認が滑らかになります。RPAはファイル整形や台帳への転記など、パターンが決まった繰り返しに向いています。

ただし、読み取りにくい画像や例外フォーマットが多い場合は、無理に自動化せず“例外用の人手ルート”を残すことが現実的です。適所を見極め、例外の逃げ道を設計に含めることで、止まらない運用が実現します。

ワークフロー連携による電帳法・インボイス対応

ワークフローと会計・ストレージの連携が進むと、申請から証憑保存、仕訳までの“つながり”が途切れにくくなります。電帳法の保存要件や検索性、改ざん防止の要件を満たす形で保管できれば、監査対応の手戻りも軽くなります。インボイスの登録番号や税率区分など、制度特有の情報を必須化しておくと、後から探す負荷も減ります。

重要なのは、要件を理解したうえでシステムの設定に落とし込むことです。運用ルールと設定が一致しているか、定期的に点検する体制が欠かせません。

システムの限界:例外判断とナレッジの保全

どれほど設定を工夫しても、契約条件の特殊性や稟議の背景など、人の判断が要る場面は残ります。システムに無理をさせると、複雑な分岐で現場の理解が追いつかず、逆に混乱を生みます。例外は「どの条件で上長へへ相談するか」「誰が最終判断をするか」を決め、判断の根拠をメモとして残す仕組みが大切です。

ナレッジは個人のメールではなく、検索できる場所に集約し、再利用しやすくしておきます。人が担う部分を意識的に残し、その判断を資産化することが長期的な効率化につながります。

経理の人材不足を解決するシステムの実装方法

システムの全社一斉導入は反発を招きます。スモールスタートで“1工程×1部門”を置き換え、効果を時間→金額で測定。現場の声を反映して設定を磨き、段階的に範囲拡大するのが堅実です。設計図は「棚卸→優先順位→試行→定着→横展開」の5ステップで考えます。

経理フローを件数・待ち時間・差し戻しで見える化する

まず現状の流れを「入力→承認→記録→保存」に分け、工程ごとに件数、処理時間、待ち時間、差戻し回数を測ります。紙やメールの受け渡しも含め、実際の通り道を図にして、停滞ポイントを明らかにします。

定量のない議論は着地点が揺れるため、最低でも1か月分のデータを取り、繁忙期が近いならその前後も追加すると実態に近づきます。担当者ヒアリングでは“なぜ時間がかかるのか”を深掘りし、規程やフォームの不足が原因なら、後の設計で必ず手当てする前提にします。

量・リスク・即効性などの優先順位を決める

改善は、効果が大きく、着手が容易で、リスクが低い工程から始めます。件数が多い入力や、差戻しが目立つ承認前のチェックは、短期間で成果が出やすい領域です。一方で会計処理の根幹に触れる設計変更は、影響が大きいぶん段階を分けます。法対応が関わる部分は、要件の未達が続くほどリスクが高いので優先度を上げます。

判断に迷うときは、削減できる時間を金額換算し、投資額との見合いで比較すると、関係者の合意が取りやすくなります。

スモールスタートの手順と合意形成

全社展開を急ぐより、対象工程を1つに絞って試し、設定や運用を磨き込む方が失敗しにくくなります。対象部門と期間、評価指標、担当の役割を明文化し、途中で設定変更する手順も先に決めておきます。試行中は現場の声をこまめに拾い、フォームの必須項目や承認経路を微調整します。

結果は定例で共有し、良かった点と課題を実数で示すと、他部門の参加が得やすくなります。最初の成功体験を“見える化”することが、次の拡大の説得力になります。

効果測定:時間→金額換算のKPI

効果は「処理時間/件」「差戻し率」「締め後遅延」「問い合わせ一次解決率」など、前後で比較できる指標で追います。削減時間は時給換算して金額化し、月間・年間の削減額を提示します。初期費用や運用費も並べ、回収期間を算出すると、投資対効果が一目で伝わります。

KPIは導入前に基準値を取り、スモールスタートの期間中に同じ方法で測定することが重要です。体感ではなく数値で語ることが、拡大判断の土台になります。以下の表を利用すれば、削減時間を「H」として転記し、人件費の実勢から時給換算「R」を置いて削減額を算出できますのでご活用ください。

時間→金額換算表

項目算式備考
月間削減時間(時間)     H(導入前時間−導入後時間)対象工程の合計
時給換算(円/時間)     R人件費総額 ÷ 月間労働時間社会保険・賞与按分を含める
月間削減額(円)= H × R     —主要KPIとして掲示
年間削減額(円)=(H × R)× 12     —投資回収の目安
投資額(初期/運用)I0 / Iop見積値ツール/委託/教育を含む
回収期間(月)= I0 ÷ 月間削減額     —12か月以内が目安

月間削減額は H×R、年間はその12倍で算出し、初期費用と運用費の見積もりと並べて回収期間を計算します。導入判断では、回収が何か月で見込めるかを明示し、全社展開の優先順位づけに使います。費用面の前提が変わった場合はRや見積値を更新し、最新の回収見通しに差し替えると投資判断の透明性が保てます。

運用マニュアルと問合せ動線で定着させる

仕組みは作って終わりではなく、使い方が浸透して初めて成果になります。申請者向けの簡易マニュアルや動画、承認者向けの要点資料を用意し、よくある質問はテンプレ回答にして検索しやすく整えます。問い合わせはチャネルを一つに絞り、一次対応は事務局またはAIエージェントで受け、上長へ判断を求める基準を明確にしておきます。

運用変更は“いつ・何が・なぜ変わったか”を周知し、変更履歴を残して迷いを減らします。定着の鍵は、現場が迷わない設計です。

経理の人材不足を解消するSaaS・BPO・AIエージェント

人手不足に対する処方箋は単体ではありません。SaaSで定型化/BPOで平準化/AIエージェントで一次判断と自動応答がシステム運用のポイントとなります。それぞれの“適所”を押さえ、委託や自動化の境界を明確にすることで、少人数でも止まらない運用を実現します。

以下の表では、主要工程ごとに「どの手段で置き換えると止まらないか」を確認できます。自社の工程に置き換えて読み替えると、SaaS・BPO・AIエージェントの境界線が明確になり、誰が何を担うかを合意しやすくなります。

主要工程と自動化手段の対照表

工程代表タスク自動化手段
(適用の例)
運用ポイント
請求書受領~照合~承認受領/読取・ベンダー照合・金額/期日確認・承認依頼AI-OCR+SaaSワークフロー
高頻度例外はRPA補助
読取テンプレ整備・取引先マスタ整合・承認経路の固定化
経費申請~一次チェック~承認レシート読取・規程チェック・差戻し・承認モバイル申請SaaS+AI-OCR
不定形はRPAで補助
規程の機械可読化・差戻し文面の定型化・モバイル運用
支払処理~自動仕訳~証憑保存支払データ作成・FB/振込・仕訳計上・証憑保管SaaS連携(会計/銀行)+RPAでのファイル整形支払ファイル様式の標準化・期日管理・仕訳ルールの明示
月次決算(締め)残高照合・振替/按分・例外レビュー・締め報告仕訳ルール自動適用+異常検知(SaaS/AI)ルールの版管理・例外メモの保存・締め日程の固定
問合せ一次対応ステータス確認・必要書類案内・期限通知経理AIエージェント(FAQ化+ワークフロー連携)定型回答の整備・チャネル統一・回答ログの活用

SaaSの適所となる申請・精算・受領の標準化

SaaSは、申請フォームや承認フロー、証憑の保存までを一体で提供でき、紙やエクセル中心のやり方を“共通の型”に置き換えます。必須項目や承認基準を設定すれば、入力漏れや判断の揺れが入り口で抑えられ、後段の差戻しが減ります。証憑と仕訳を紐づけた保存ができれば、検索と監査対応も軽くなります。

導入時は既存規程との整合を取り、使わない機能を無理に広げないことが定着の近道です。運用変更を設定で反映できる柔軟さも、忙しい現場に向いています。

BPOの適所となる季節波動・集中工程の外出し

繁忙期に一気に増える読取や一次チェックなど、件数が集中する工程は外部に任せると効果的です。BPOは作業量の波に合わせて体制を調整できるため、社内の残業や採用負担を抑えられます。依頼範囲は、品質基準や納期、例外の扱い、やり取りの窓口を事前に決めることが重要です。

社外に出すほど、証跡やセキュリティの基準は厳密にし、受け入れ後のデータ形式も標準化しておくと、社内フローへの戻しがスムーズです。内外の役割をはっきりさせるほど成果が安定します。

AIエージェントの適所である問い合わせ一次対応と振り分け

申請方法や必要書類、承認状況の確認など、定型の問い合わせはAIエージェントが得意です。最新の規程やFAQを学習させ、ワークフローと連携すれば、状況を確認したうえで回答や案内ができます。対応履歴はログとして残り、繰り返しの質問や滞留の傾向を分析する材料になります。

判断が必要な内容は、基準に沿って上長へ回付し、案件の情報を添えて引き渡します。人の判断を減らすのではなく、判断が必要な場面に人を集中させる設計がポイントです。

役割を分けて誰がどこまで担うかの基準を決定する

SaaS、BPO、AIエージェントを同時に使う場合は、誰が何をどの水準で担うかを先に決めます。たとえば、申請と承認はSaaS、読取の山はBPO、問い合わせはAIエージェントが一次対応といった分担です。各工程に目標値を置き、回答期限や精度などの基準を共有します。異常時の連絡経路や、上長の指示を仰ぐ条件も事前に合意すると、止まった時に迷いません。責任の境界を明確にし、基準を数字で定義するほど、運用の安定度は高まります。

以下の記事では、AI活用で人手不足をどう埋める方法について詳しく解説しているので参考にしてください。

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経理の人材不足を解消するシステム運用で外せない4点

電帳法・インボイスの要件、権限設計操作ログ、そして上長への報告は、システム運用の土台です。要件不整合は後戻りが大きいので、導入前にチェックリストで潰し込み、更新方針まで決めておきます。

保存要件・検索性・改ざん防止などの法対応をチェック

電帳法では、証憑の真実性と可視性を担保するため、保存形式や検索項目、改ざん防止の手当てが求められます。保存先は長期でも劣化しない構成にし、取引先、日付、金額などの検索キーを揃えておきます。タイムスタンプや変更履歴で“いつ・誰が・何をしたか”を追える状態にしておくと、監査での説明が円滑です。制度の更新や社内ルールの変更があった際は、設定やマニュアルにも反映させ、周知と記録をセットで行うことが重要です。

以下の記事では、請求書の電子保存を失敗しないための実務ポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。

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権限と職務分掌:申請・承認・記録の分離

不正や誤りを防ぐ基本は、申請、承認、記録の役割を分け、同じ人に集まらないようにすることです。金額基準や勘定科目の変更といった影響の大きい操作は、より上位の承認を必須にします。権限は部署異動や人員の増減でズレやすいので、定期的な見直しが欠かせません。

システム上は、見える情報や操作できる範囲を役割ごとに制限し、承認経路を設定で固定化します。分担を明文化し、例外時の回付先まで決めておくと、現場で迷いが減ります。

誰が・いつ・何をしたかを記録するログと証跡

運用の健全性は、後から説明できるかどうかで決まります。申請、承認、修正、削除、出力などの操作は、ユーザー名、日時、対象、理由を記録し、検索できるようにしておきます。メールや口頭での指示は見落とされがちなので、可能な限りシステム内のコメントやメモに残し、関連する証憑やチケットと紐づけます。ログは保存期間とアクセス権限も含めて設計し、監査時に必要な形で抽出できることを確認しておくと、万一のときに慌てません。

上長への回付基準とフロー設計

現場で判断できない案件を無理に抱えると、遅延や不整合の原因になります。金額や取引先の変更、期日超過、規程外の申請など、上長への回付が必要な条件を先に決め、誰に、どの情報を添えて渡すかをフローに落とします。

連絡はチャネルを統一し、案件番号や関連書類を添えると、上長が短時間で判断できます。判断後は結果と理由を記録し、次回に同種の案件が出たときに参照できるようにしておくと、運用が回るたびに強くなります。

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経理人材不足解消のためのシステムを利用した業務自動化

導入効果は体感ではなく数値で語れるようにします。請求書、経費精算、月次決算の代表工程で処理時間・差戻し率・締め後遅延の前後差を提示し、月間○時間=○円の削減を明示。全社展開の合意形成に効きます。

以下のKPIテンプレートは、導入前後の差を数値で示すためのひな形です。まずは現状の処理時間や差戻し率を基準値として押さえ、スモールスタート後に同じ指標で実績を記録します。削減した時間は時給換算で金額に直し、月間・年間の効果や回収期間までを可視化できます。部門展開の判断材料としてそのまま使える設計になっています。

導入効果のKPIテンプレート

指標定義計測式(例)基準値(導入前)実績(導入後)差分目標値の置き方(例)
処理時間/件対象工程の平均処理時間合計処理時間 ÷ 件数mm分nn分mm−nnトップ25%のチーム水準に合わせる
差戻し率差戻し件数の割合差戻し件数 ÷ 全件数x.x%y.y%x.x−y.y規程の機械可読化で半減を狙う
締め後遅延締め工程の遅延件数/時間遅延合計時間 or 件数aa時間bb時間aa−bb重要勘定はゼロ遅延を目標
一次解決率問合せの初回応答で解決した割合一次解決件数 ÷ 問合せ件数p.p%q.q%q.q−p.p80%以上を維持

はじめに対象工程を決め、直近1か月分の実測から「処理時間/件」「差戻し率」「締め後遅延」「一次解決率」を基準値として記録します。スモールスタートを実施したら、同じ期間・同じ集計方法で“導入後”の実績を埋め、差分欄で改善幅を確認します。目標欄は、社内の上位水準や他部門の達成値を目安に設定すると現実的です。この表は週次・月次の定例で共有すると、数字を基準にした合意形成が進みます。

請求書受領および支払における読取・照合・承認の自動化

請求書は件数が多く、入力と照合の負荷が高いです。AI-OCRで取引先名や金額、日付を読み取り、取引先マスタと自動照合すれば、転記ミスと手作業の照合が減ります。承認は金額や部門で自動ルート化し、承認待ちの可視化で滞留を早期に発見できます。

支払データの作成から会計への連携までを自動化すれば、証憑と仕訳の紐づけも自動で残ります。前後で処理時間と差戻し率、締め後の遅延を測り、削減時間を金額換算して示すと、全社展開の合意が得やすくなります。

経費精算では規程チェックと証憑の自動保存が効果的

経費精算は入力者が多く、ばらつきが出やすいです。モバイルで撮影したレシートをAI-OCRで読み取り、金額や日付、用途を自動補完すれば、入力の手間とミスが減ります。規程の上限や禁止項目を設定で反映し、違反は申請時にアラートを出して入口で防ぎます。

承認後は証憑と仕訳を自動で紐づけ、検索や監査に備えます。差戻し率や一次解決率、処理時間/件を前後で比較し、削減分を金額に置き換えて共有すると、現場にも管理層にも説得力があります。

月次決算では自動仕訳と例外レビューの分業が効果的

月次決算では、定型の仕訳はルール化して自動適用し、差異分析や按分の例外は人がレビューします。勘定残と補助残の不一致や急な金額変動は、しきい値で検知して担当へ通知します。自動化は“全部”を狙わず、正確さを優先して対象を徐々に広げるのが安全です。

前後の締め後遅延や修正件数、レビューにかかる時間を測定し、どの仕訳ルールが効果的だったかを記録しておくと、次の改善に生きます。人と仕組みの分業が決算の安定化につながります。

データで意思決定を後押しする“攻めの経理”を目指そう!

自動化で確保した時間は、予測・分析・改善提案に振り向けます。売上・原価・回収のデータを横断し、資金繰り予測や異常検知を運用に載せると、少人数でも“攻め”の機能が回り始めます。将来のAI活用を見据えたデータ設計が鍵です。

異常検知と早期是正の仕組み

自動化で生まれた時間は、数字の変化を早く捉える仕組みに投資します。売上や原価、経費の推移を日次・週次で見える化し、前月比や予算比のしきい値を越えたら、担当へ通知して原因を確認する流れにします。傾向が続く場合は、取引条件や在庫の持ち方など、業務側の改善提案に踏み込みます。

検知から是正までのリードタイムをKPI化すると、対策の効き具合が分かります。判断の材料をタイムリーに届けることで、少人数でも経営に寄与する機能が回り始めます。

部門横断でのKPI合意と共有

経理だけで効率化を完結させることはできません。申請の正確さや承認の迅速さは、各部門の協力で決まります。処理時間や差戻し率、一次解決率などのKPIを部門横断で共有し、目標と役割を明文化します。月次の振り返りでは、良かった点と課題を実数で示し、次月の対策を合意します。

結果は見やすいダッシュボードで公開し、現場が自分ごと化できるようにします。数字での対話が定着すると、仕組みの改善が継続し、少ない人数でも強い運用に近づきます。

以下の記事では、少人数でも“止まらない経理”にする実務の道筋と外部・AI活用法について詳しく解説しているので参考にしてください。

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まとめ

人手不足は「増員だけでは解けない運用課題」です。まずは現状フローの棚卸しで“詰まり”を見える化し、優先度の高い1工程をスモールスタートで置き換えます。次に、属人化を断つ標準化証跡を残す運用を徹底し、時間短縮を金額換算で定点観測。最後に、SaaS・BPO・AIエージェントを役割分担で併用し、電帳法・インボイス・権限設計・ログ保全を外さずに全社へ段階展開します。これが、少人数でも“止まらない経理”を実現する最短ルートです。

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