電子帳簿保存法

電帳法における契約書の取り扱いとは?大企業の対応要件と体制づくり

更新日:2026.07.17

この記事は約 5 分で読めます。

電帳法契約書_全社対応

契約書は電子帳簿保存法の対象です。電子契約やメールで受け取った契約書は電子取引としてデータ保存が必要で、紙の契約書もスキャナ保存の要件を満たせば電子データで残せます。ただ大企業では、法務・総務・事業部・経理と契約書を扱う部門が分かれ、拠点やグループ会社ごとに保存ルールがばらつきます。要件を満たすこと以上に、全社で統一した運用と内部統制を設計できるかが対応の成否を分けます。

→ダウンロード:マンガで分かる!油断が生んだ電子帳簿保存法の不完全対応

この記事では、契約書が電帳法の対象になる範囲と保存要件を簡潔に押さえたうえで、大企業が部門横断で対応を進めるための運用設計・内部統制・規程整備・過去契約の遡及対応までを順に整理します。紙をスキャンする手順やPDFの有効性といった個別実務は別記事に譲り、ここでは全社で回す仕組みづくりに絞ります。

契約書は電子帳簿保存法の対象になる(電子取引とスキャナ保存)

契約書は電子帳簿保存法の対象書類です。受け取り方や作り方によって、適用される保存区分が電子取引かスキャナ保存かに分かれます。まずは自社の契約書がどちらに当たるかを切り分けるところから始まります。

電子データで授受した契約書は「電子取引」になる

電子契約サービスで締結した契約書や、メール・クラウド経由でPDFを受け取った契約書は「電子取引」に当たります。電子取引のデータは紙に印刷して保存することが認められず、電子のまま保存することが義務づけられています。自社で作って送った契約書の控えも、電子でやり取りしたものは同じ扱いです。

紙で交わした契約書は「スキャナ保存」で電子化できる

紙で締結・受領した契約書は、スキャナ保存の要件を満たせば電子データとして保存できます。スキャナ保存は義務ではなく任意ですが、紙の保管コストを下げたい大企業ほど検討する価値があります。電子取引が「電子で残すしかない」のに対し、スキャナ保存は「紙のまま残してもよいが、要件を満たせば電子化できる」という違いを押さえておきます。

電子取引の電子保存制度対応チェックリスト

電子帳簿保存法で契約書に求められる保存要件

契約書を電子保存するときに満たす要件は、真実性の確保・可視性の確保・検索性の確保の3つに整理できます。大企業では検索要件の緩和に頼らず、標準で要件を満たす仕組みを前提に設計しておくほうが、後の監査や拠点展開でつまずきません。

▼ 契約書の電子保存で満たす3要件(2026年7月時点・国税庁の公表情報をもとに整理)

要件満たすこと主な手段
真実性の確保訂正・削除の履歴が残る、または訂正削除ができないようにするタイムスタンプ、履歴が残るシステム、または事務処理規程の整備・運用
可視性の確保契約内容をディスプレイやプリンタですぐ出力できる表示・出力環境の整備、システムの操作説明書等の備付け
検索性の確保「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる検索項目を備えた保存(売上高が一定以下の事業者は検索要件が免除される場合あり)

出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(最終確認日:2026年7月17日)

真実性は「履歴が残る仕組み」か「規程」で担保する

真実性は、タイムスタンプや訂正削除の履歴が残るシステムで担保するのが基本です。システムを使わない場合は、訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備して運用する方法も認められています。どちらを選ぶかは全社で統一しておかないと、部門ごとに担保方法が食い違い、監査で説明しづらくなります。規程整備については後半で詳しく扱います。

紙のスキャン手順・原本廃棄・PDFの有効性は別記事で

紙の契約書をスキャンするときの解像度やタイムスタンプ付与のタイミング、原本を廃棄してよいか、PDFで受け取った契約書に法的効力があるかといった個別の実務は、別の記事で詳しく解説しています。ここでは「要件を満たせば紙の原本に代えて電子データで保存できる」という前提だけ確認し、全社の運用設計に話を進めます。

関連記事
紙の契約書をPDF保管できる?電帳法の検索要件と原本の扱い
紙の契約書をPDF保管できる?電帳法の検索要件と原本の扱い

大企業で契約書の電子帳簿保存法対応がつまずく理由

大企業で対応が進まない理由は、保存要件が難しいからではなく、契約書を扱う部門が分かれているからです。要件そのものは中小企業と変わりませんが、誰がどの契約書をどう保存するかが社内で統一されていないと、全社では機能しません。

電帳法 契約書_部門横断の責任分散

保存責任が法務・総務・事業部・経理に分散する

契約書は、締結する法務、取引先とやり取りする事業部、紙を受け取る総務、税務で保存する経理と、複数の部門にまたがって流れます。経理だけで全社の契約書を管理しようとすると必ず回らなくなるため、部門ごとに「誰が何を保存するか」を決めた責任分担が出発点になります。電子取引の保存義務は経理以外の部門が受け取った契約書にもかかるため、「うちの部署は関係ない」では済みません。

拠点・グループ会社ごとに保存ルールがばらつく

拠点やグループ会社が多いほど、契約書の保存方法は現場ごとに分かれていきます。共有フォルダの使い方やファイル名の付け方が統一されず、いざ検索しようとしても見つからない状態に陥りがちです。全社・グループで足並みをそろえる取り組みは要件定義から周辺システムの連携まで含めて長期のプロジェクトになりやすく、どこから手を付けるかで止まってしまう企業も少なくありません。

マンガで分かる!油断が生んだ電子帳簿保存法の不完全対応

契約書の電子帳簿保存法対応を全社で統一する運用設計

全社で契約書の保存をそろえるには、入口統一・分類・保存・点検の4ステップで設計すると整理しやすくなります。紙を残すかどうかではなく、どの入口から来た契約書をどの保存ルートに乗せるかを統一することが出発点です。

電帳法 契約書_4ステップ運用設計

契約書の入口を統一する

最初に、契約書がどこから入ってくるかを電子契約・メール・紙の3経路に整理し、それぞれの受け口を一本化します。電子契約は指定したシステムに集約し、個人のメールや共有フォルダへの直保存は例外扱いにすると、保存漏れと二重管理を防げます。入口がばらばらのまま保存ルールだけ決めても、現場では守られません。

保存ルートと検索キーを全社でそろえる

分類では、契約書を電子取引・紙原本・スキャン保存対象に仕分け、保存期間と保管責任部署、検索キーを共通化します。検索キーは法令が求める取引年月日・取引金額・取引先で統一し、ファイル名の付け方やフォルダの分け方を全社共通のルールにします。現場で命名規則が守られないという悩みは、ルールを各部門に任せず全社テンプレートとして配ることで減らせます。

月次で保存状況を点検する

運用は作って終わりではなく、月次で点検する仕組みまで含めて設計します。保存漏れ、命名規則の違反、権限を超えた操作がないかを定期的にチェックし、ずれを早めに直します。点検項目をチェックリストにして担当を決めておくと、拠点が増えても品質が落ちにくくなります。

契約書管理を内部統制として設計する

大企業では、契約書の電帳法対応をシステムの要件としてだけでなく、内部統制の要件として設計するのが実務的です。紙の契約書をスキャンして保存する場合、現在は税務署長の事前承認を受けてから始める仕組みではありません。そのため、保存要件を満たしていることを、社内規程・運用ルール・操作ログなどで説明できる体制づくりが重要になります。契約書は証拠性が高いため、保存できているかだけでなく、誰がいつどの版を確定させたかをたどれるかが問われます。

起票・承認・保存の責任を分ける

職務分掌として、契約書を起票する人、承認する人、保存を管理する人の役割を分けて定めます。同じ担当者が作成から保存まで一人で完結できる状態は、改ざんを疑われやすく内部統制上の弱点になります。例外的に承認を飛ばすケースのルールや、保存業務を外部に委託する場合の委託先管理も、あわせて決めておきます。

いつ・誰が・どの版を確定したかの証跡を残す

監査や税務調査では、契約書がいつ・誰によって・どの版で確定したかを証跡で示せることが重要になります。承認履歴や変更履歴が残る形で保存し、版が複数あるときはどれが正本かを明確にしておきます。保存しているだけでなく、確定までの経緯を後から再現できる状態を整えることが、内部統制としての契約書管理の要です。

契約書の電子保存に向けた事務処理規程の整備

事務処理規程は、システムで訂正削除の履歴を残さない場合に真実性を担保する手段であり、全社運用のルールを文章として固定する役割も持ちます。国税庁がサンプルを公開していますが、そのまま使うだけでは自社の実態に合わず、要件を満たしたと評価されないおそれがあります。

規程に最低限盛り込む項目

規程には、対象となる書類の範囲、訂正・削除を行う場合の手続きと承認者、保存の方法と期間、責任者を盛り込みます。サンプルの空欄を埋めるだけで終わらせず、自社の部門構成や承認フローに合わせて手続きを具体化することが、実効性のある規程の条件です。規程は作った後に運用されているかが問われるため、現場が守れる粒度で書くことも欠かせません。

過去の契約書を電子帳簿保存法に対応させる進め方

すでに保有している大量の紙の契約書を電子化する場合は、過去分重要書類として扱う必要があるかを確認したうえで進めます。現在はスキャナ保存を始める際の事前承認は不要ですが、過去に作成・受領した重要書類をまとめて電子化する場合は、適用届出書の提出が必要になるケースがあります。全件を一度に電子化しようとすると負担が大きいため、契約金額、保存期限、閲覧頻度、訴訟・監査リスクなどを基準に優先順位をつけ、段階的に取り組むのが現実的です。

適用届出から優先順位づけ、外部活用まで

まず過去分重要書類の適用届出を行い、次に契約金額の大きさや契約種別で優先順位を決めて電子化する範囲を絞ります。スキャンとデータ化の作業量が膨大になる場合は、外部のデータ化・保管サービスを使って自社の負担を抑える選択肢もあります。過去契約と新規契約が紙と電子で分かれて管理されると検索性が落ちるため、最終的にはひとつの保存ルートに集約することを目指します。

契約書の電帳法対応を全社で効率化するならTOKIUM

契約書が電子帳簿保存法の対象であることと保存要件は、中小企業でも大企業でも変わりません。大企業で対応の成否を分けるのは、部門横断で保存ルールを統一し、内部統制と規程として設計し、過去契約まで含めて全社で回せるかどうかです。ここまで整理した全社運用・内部統制・規程・遡及対応は、契約書を含むあらゆる書類を一元管理できる文書管理クラウドを使うと、仕組みとして回しやすくなります。部門や拠点ごとにツールが分かれていると統一が難しいため、入口から保存・検索までを一本化できるかが効率化の分かれ目です。

TOKIUM電子帳簿保存は、契約書・見積書・納品書などあらゆる国税関係書類を電子帳簿保存法に準拠した形で一元管理できる文書管理クラウドです。紙・メール・PDFなどどの形式の書類もシステム上で受領・電子化でき、取引関係書類の原本はそのままTOKIUMで代理保管し、必要なときに取り出せます(保管期間は10年間)。JIIMA認証を取得し、タイムスタンプ機能や検索・閲覧機能を備えているため、契約書を電子帳簿保存法の要件(真実性・可視性)に沿って保存・確認しやすく、アカウント数とデータ容量に上限がないため、部門や拠点をまたいだ全社・グループ展開にも向いています。 出典:TOKIUM電子帳簿保存(公式)(最終確認日:2026年7月17日)

電帳法の要件を満たせているかを点検したい場合は、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の各制度について自社の対応状況を確認できる、TOKIUMの39項目のチェックリストも活用できます。 出典:株式会社TOKIUM ニュース(2023年7月20日公表)(最終確認日:2026年7月17日)

全社での契約書の電帳法対応をどう仕組み化するか検討している場合は、対応できる範囲や機能を資料で確認してみてください。

電帳法と契約書に関するよくある質問

契約書は電子帳簿保存法の対象外にできますか

電子でやり取りした契約書を対象外にすることはできません。電子取引のデータは電子のまま保存することが義務づけられており、印刷して紙で保存する方法は認められていません。紙で受け取った契約書は紙のまま保存してもかまいませんが、その場合も保存期間のルールは適用されます。

紙で受け取った契約書は紙のまま保存し続けてよいですか

紙で受け取った契約書は、紙のまま保存しても問題ありません。スキャナ保存は任意のため、電子化するかどうかは各社の判断です。紙の保管コストや検索性を考えてスキャナ保存に切り替える場合は、要件を満たす必要があります。

秘密保持契約書なども電帳法の対象ですか

秘密保持契約書を含め、取引に関して作成・受領した契約書は幅広く対象になります。契約の種類ではなく、電子でやり取りしたか紙で受領したかという授受の形で保存区分が決まると考えると整理しやすくなります。

スキャンした後に紙の原本は捨ててよいですか

スキャナ保存の要件を満たせば、税法上は紙の原本を廃棄できます。ただし民事訴訟での証拠力や印紙税の観点から原本を残す判断もあるため、廃棄の可否やPDFの有効性などの実務は、別の記事で詳しく解説しています。

DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
TOKIUM電子帳簿保存資料
「TOKIUM電子帳簿保存」サービス紹介資料
TOKIUM電子帳簿保存料金表
「TOKIUM電子帳簿保存」料金表

関連記事