注文書の保管期間は次の通りです。
注文書に限らず、請求書や領収書といった帳簿書類の保存期間は法律で定められています。
この記事では、注文書の保管期間や保管の方法について、法令根拠に基づいてわかりやすく解説します。
筆者は上場企業の経理担当として帳簿書類の管理に携わってきた経験があります。
ぜひ参考にしてみてください。
注文書とは?知っておきたい取引書類の流れ
注文書は取引の流れの中で発行される書類の一つです。
そもそも、注文書とは何か?という点について簡単におさらいします。
注文書とは?発注書との違いは?
注文書とは、依頼主が正式に注文をした際に発行する書類のこと。
注文書を受けた側が発行する「注文請書」とセットで、契約が成立したことになります。
注文書と発注書は同じ意味で使われていることも多いですが、会社によっては以下のように使い分けていることもあります。
社内で注文書と発注書が混在しているとわかりにくいので、ルールを整備しておくと良いでしょう。
知っておきたい取引書類の流れ
商慣習で使われる取引書類の流れについてここで整理しておきましょう。
- 見積依頼書*:発注者が見積もりを依頼する
- 見積書:金額・納期などを記した見積書
- 注文書*:正式な注文を依頼する書類
- 注文請書:注文を確かに受け取りましたと証明する書類
- 納品書:納品した商品の明細書
- 受領書*:商品を確かに受け取りましたと証明する書類
- 請求書:料金を請求する書類
- 領収書:料金を確かに受け取りましたと証明する書類
注文書・発注書は見積りを依頼した側が正式に注文を出すときに発行されます。見積りなしで、注文書・発注書が取引のはじめの書類のこともあります。
領収書以外の書類は発行義務がないので、上記のすべての書類が発行されるわけではありません。
注文書の保管期間は法律で決まっている【法人なら10年が確実】
注文書などの帳簿書類の保管期間は、税法や会社法など法律に定められていて、法人か個人事業主かによって異なります。
長いほうの期間を採用しておけば安心なので、法人なら10年・個人事業主なら7年の保管が確実といえます。
それぞれ解説していきます。
法人の注文書の保管期間|10年が確実
法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類(以下「書類」といい、帳簿と併せて「帳簿書類」といいます。)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。
法人は、注文書や領収書、請求書といった帳簿と紐づく書類は7年間保存すると税法で決められています。
ここでいう「7年」とは、注文書の発行日から10年ではなく事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から、という点に注意。確定申告書の提出期限は、事業年度の最終日から2か月です。
たとえば、3月決算の会社が2020年12月に受け取った注文書の保管期限についてみてましょう。
- 注文書の受け取り:2020年12月
- 決算:2021年3月末
- 確定申告の提出期限:2021年5月末
- 注文書の保管期限:2028年5月末
さらに、会社法では会計帳簿の保存期間を10年と定めています。注文書は会社法で定める会計帳簿にはあたりませんが、会計関連の書類は10年の保管、と決めて保存すると社内で管理がしやすいでしょう。
個人事業主の注文書の保管期間|7年が確実
個人事業主の場合、青色申告・白色申告を問わず注文書の保管期間は5年です。
法人と同様、書類の発行日から起算ではなく、確定申告の期限から5年です。ただし、会計帳簿の保管期間は7年です。
✅ 青色申告の場合の帳簿・書類の保存期間
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | 7年 |
現金預金取引等関係書類 | 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年(※) | |
その他の書類 | 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) | 5年 |
※※前々年分所得が300万円以下の方は、5年
✅ 白色申告の場合の帳簿・書類の保存期間
帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |
書類 | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 | 5年 |
個人事業主でも、課税売上1000万円以上の消費税納税事業者は帳簿書類の保管期間が7年です。
個人事業主の場合は会計に関する書類はまとめて7年保存しておく、と覚えておくと確実です。
注文書などの帳簿書類、保管してないとどうなる?
帳簿書類がきちんと保管されていないと、経費として処理していたものが認められずに追徴課税(追加で税金を支払うこと)を求められることがあります。
税務調査で提示が求められたときにすぐに出せるように、整理して保存しておくことが大切です。
注文書と下請法の関係は?【下請法の書類保管期間は2年】
下請事業者の保護のための「下請法」では、親事業者が業務を委託した内容を書面で交付することや支払の期日を60日以内にすることなどが義務付けられています。
注文書・発注書は、親事業者が発行を義務付けられた書類の中に含まれていると考えられ、保管期間は2年とされています。
くわしくは公正取引委員会「下請法とは」で確認してください。
注文書・発注書の保管期間は、下請法よりも税法の方が長いため、長いほうの期間で保管しておけば問題ありません。
注文書の保管方法は?【紙で保管しよう】
この章では、注文書の保管の方法について解説していきます。
帳簿書類は紙での保管が原則
帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則となります。したがって、電子計算機で作成した帳簿書類についても、原則として電子計算機からアウトプットした紙により保存する必要があります。
上記の通り、紙で受け取った注文書はもちろん、電子メールに添付されているPDFなどの注文書も印刷して保存しておくことが求められています。
なお、注文書を発行した側の控えについては、控えを発行したのであれば保管義務がありますが、控えがなければ特に保管は必要ありません。
受け取った注文書は、ただ保管しておくだけではなくきちんと納品まで完了しているのかまでを管理する必要があります。
納品処理済、未処理をきちんと分けて管理できるように業務フローを整備しておきましょう。
処理済みの注文書の保管方法は、一般的に次のような方法があります。
- 月別にファイリング
- 取引先別にファイリング
- ボックスに月別・年度別に入れておく
また、自社での保管スペース・管理にかかる人件費を考慮し、外部の業者に書類管理を委託したり、次に述べる電子化したりすることを検討してみるのもよいでしょう。
注文書を電子化・データ化して保管も可能?
注文書などの帳簿書類の電子化については、電子帳簿保存法を満たせば可能です。
電子帳簿保存法とは、これまで紙での保存が義務だった帳簿書類を電子化して保存してもOKとした法律。
帳簿書類を電子化するためには2つの手続きが必要です。
帳簿の電子化を始める3か月前までに、税務署に申請・承認を受ける必要があります。
たとえば、4月1日から帳簿書類の電子化をしたければ、12月31日までに税務署の承認を受けます。
また、電子化された書類が改ざんされることがないかを担保する「真実性の確保」や、誰でもデータを確認できるか「可視性の確保」を行うために、条件を満たしたシステムの導入や社内規定の整備が求められます。
帳簿書類の電子化はハードルが低いとは言えませんが、紙の書類がなくなればテレワークがしやすくなるなど、全社で見たときの恩恵も大きいはずです。
電子帳簿保存法の詳しい内容は国税庁の「はじめませんか、帳簿書類の電子化!」に掲載されています。
最新の電子帳簿保存法について知りたい方はこちらの記事も確認してください。
注文書の保管期間|まとめ
注文書は帳簿書類の一つとして、保管期間が法律で決まっています。紙での保管が原則です。
税務調査などで書類の提示が求められることがあるので、月別に分けておくなど工夫して保存しておきましょう。
「紙の書類が多くて管理に困っている」という場合には帳簿書類の電子化も選択肢としてみてはいかがでしょうか。