インボイス制度

適格簡易請求書とは?インボイス制度でのレシートの取り扱いについても解説!【税理士監修】

公開日:2021.05.12更新日:2022.07.13

令和5年10月1日よりインボイス制度が導入されます。インボイス制度下では、課税事業者は一定の事項が記載された適格請求書を保存することで仕入税額控除を適用できます。なお、適格請求書を発行できるのは、国から登録を受けた課税事業者です。

しかし事業者によっては、事業の性質上、適格請求書を発行することが難しい場合が考えられます。そこで、特定の取引においては、適格請求書の代わりとなる「簡易適格請求書」を交付することが正式に認められています。

この記事では、インボイス制度における「適格簡易請求書」について、記載が必要な事項から発行が認められている取引、レシートとの関係など詳細に解説します。ぜひ最後までご覧ください。

インボイス制度ガイド

インボイス制度の概要について

はじめに、インボイス制度の概要を確認しておきましょう。

インボイス制度の正式名称は「適格請求書保存方式」といいます。インボイス制度を簡単に説明すると、「一定の記載事項を満たした適格請求書を保存し、それに基づいて消費税額を計算・納税しましょう」という制度です。

課税事業者が納税する必要のある消費税額は、以下の計算式で決まっています。

課税売上に係る消費税額ー課税仕入れ等に係る消費税額

消費税は、消費者が実質的に負担し、各取引段階の課税事業者が納税する税金です。そのため課税事業者は、このように課税売上に係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いた金額を納税します。この差引処理のことを仕入税額控除と言います。

仕入税額控除を行うための要件は、軽減税率が導入された令和元年10月1日以前は、「帳簿の保存」と「請求書の保存」でしたが、現在は「一定事項が記載の帳簿(※1)の保存」と「区分記載請求書(※2)の保存」が必要であり、インボイス制度が始まると「一定事項が記載の帳簿(※1)の保存」と「適格請求書(インボイス)の保存」が必要となります。

なお、区分記載請求書の発行に制約はありませんが、適格請求書の発行は「適格請求書発行事業者」の登録を受けた課税事業者に限られます

※1 ①課税仕入れの相手方の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④対価の額 の4つの記載が必要

※2 ①請求書発行者の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容 (軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分して合計した税込対価の額 ⑤請求書受領者の氏名又は名称 の5つの記載が必要

適格請求書記載事項

インボイス制度における適格請求書とは、次の事項が記載された書類のことです。請求書に限らず、納品書、領収書、レシートなども該当します。

  1. 発行事業者の名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 対価の額(税率ごとに区分し、合計した金額)及び適用税率
  5. 税率ごとの消費税額
  6. 買い手である事業者の名称

適格請求書が従来の請求書と大きく異なる点は、売り手(課税事業者)に請求書の交付義務と請求書控えの保存義務(7年間)が加わる点です。

買い手は売り手からさまざまな請求書を受領しますが、消費税法においては適格請求書について原則7年間の保存義務があります。(実際は、法人税の対応もあるためすべての請求書を保存することにはなります。)

そして、上記4.~6.の下線を付した部分について、「簡易」な表示方法としたものが適格簡易請求書です。

適格簡易請求書記載事項

インボイス制度においては、不特定かつ多数の者と取引を行う課税業者のうち一定の事業者は、「適格簡易請求書」を発行することができます。

いわゆる「レシート」のことであり、適格簡易請求書は、適格請求書のうち次の事項を省略して作成します。

  • 「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方
  • 買い手である事業者の名称

具体的に、領収書の例で見てみましょう。

このように適格簡易請求書のパターンは上の図のように相手先の名称を省略した上で3つ考えられます。

  • 適用税率のみ記載するパターン
  • 税率ごとに区分した消費税額等のみ記載するパターン
  • 適用税率も消費税額も記載するパターン

適格請求書にも適格簡易請求書にも、フォーマットの定めはありません。したがって、これらのうち業態やわかりやすさから選択して、フォーマットを決めていくことになります。

インボイス制度ガイド

適格簡易請求書が発行できる事業者とは?

インボイス制度において適格簡易請求書が発行できる事業者は次のとおりです。

  • 小売業
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)
  • その他これらの事業に準ずる事業で、不特定かつ多数の者と取引をする事業

なお、適格簡易請求書は、電子データによる発行も可とされています。これまでも仕入税額控除の要件として「不特定かつ多数の者と取引する一定の事業」である場合には、請求書等の相手先の名称の記載は不要となっています。

気をつけたい3万円未満の領収書について

請求書に関する注意点として、令和5年9月30日までは税込3万円未満の課税仕入れについては、レシートや領収書がなくても帳簿への記載だけで仕入税額控除が認められます。

また、領収書の交付を受けなかったことについて、やむを得ない理由があった場合にも帳簿への記載だけで仕入税額控除が認められます。

しかし、これらの領収書がないことを許す規定は、インボイス制度では廃止されてしまいます。たとえ3万円未満であっても「適格請求書」や「適格簡易請求書」がなければ仕入税額控除はできません。
領収書がもらえない場合も、やむを得ない理由とはなりません。

したがって、役員等がクレジットカードで決済した経費も、現行のように3万円未満であればクレジットカードの利用明細などで済ませるといったことはできず、領収書(適格請求書や適格簡易請求書)が必要となります。

その一方で、インボイス制度において適格請求書の交付義務がない取引があります。事業の性質上、適格請求書や適格簡易請求書を作成するのが困難なため、交付義務を免除されるものがあり、次の5項目となっています。

  • 3万円未満の公共交通機関(船舶・バス・鉄道)の運賃
  • 卸売市場における生鮮食料品等の販売
  • 農業協同組合、漁業協同組合、森林組合などに委託する農林水産物の販売
  • 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機*により行われる商品の販売
    *コインロッカーやコインランドリーなど
  • 郵便切手のみを対価とする郵便・貨物サービス

適格請求書、適格簡易請求書の誤りについて

さらにもう1点、注意したいこととしては、請求書に誤りがあった時の対応です。

売り手が交付した適格請求書や適格簡易請求書の記載事項に誤りがあったときは、相手先に対し、修正後の適格(簡易)請求書を発行する義務があります。

しかし、適格簡易請求書の発行となれば、相手先は不特定多数の消費者がほとんどであり、現実的には個々の相手先が修正を求めない限り、発行し直して渡すことは困難となります。

その一方で、インボイス制度では売り手も一旦発行した請求書控えが保存されているため、取引内容等の確認はしやすくなります。したがって修正後の適格(簡易)請求書の再発行は、従来よりも対応しやすくなるのではないかと予想されます。

TOKIUMインボイス資料ダウンロード TOKIUMインボイス資料ダウンロード

まとめ

いかがでしたでしょうか?インボイス制度導入後は、登録事業者は国税庁のホームページで公表され、検索するとすぐ見つかるようになるそうです。新規の仕入先から請求書等が届いたら、新たな手順としてその仕入先が登録事業者かどうかを国税庁のホームページでチェックすることが必要となります。

紙の請求書を入手し、人が目視により確認するのはだんだんと難しくなりつつあるのが現状のようです。

インボイス制度の導入で経理業務はより煩雑化し、上述した国税庁のホームページでのチェック作業が必要になるなど、インターネットやオンラインでの情報やサービスを使わずして請求書業務に対応することは難しくなります。

これを機に請求書業務(受領・データ化・保管など)をオンラインで行える仕組みの構築を進めていくことをおすすめします。

インボイス制度ガイド

参考URL

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf
国税庁:適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_01.htm
国税庁: 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm
国税庁:No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存 (現行の取り扱いを解説)

TOKIUMインボイス資料ダウンロード TOKIUMインボイス資料ダウンロード

この記事を監修した人

税理士岡さま_プロフィール写真

税理士・CFP岡 和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。図解などを多用したわかりやすい記事を心掛けています。
岡和恵税理士事務所:https://oka07.work/

DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
請求書受領クラウドの選び方ガイド
インボイス制度の導入で経理の現場では何が起こる?

関連記事