インボイス制度

【完全整理】インボイス制度とは?経理業務に与える影響をわかりやすく解説!

公開日:2019.03.22更新日:2022.09.13
【要点解説】インボイス制度(適格請求書等保存方式)をわかりやすく解説、制度のポイントと事業・経理業務に与える影響

本記事では、インボイス制度の概要説明に加え、インボイス制度が事業や経理業務に与える影響について詳しく解説していきます。

インボイス制度ガイド

インボイス制度とは

インボイス制度とは2023年(令和5年)10月1日から開始される適格請求書等保存方式のことです。
​現在の日本は8%と10%の複数税率ですが、この複数税率に対応した仕入税額控除の方式のことを「適格請求書等保存方式」と言います。インボイス制度において買手が仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿のほかに売手から交付を受けた「適格請求書等」の保存が必要となります。
消費税を納める多くの課税事業者だけでなく免税事業者に対しても、 企業や個人事業主としての経営や経理業務に大きな影響があるのではないかと言われています。
参考:国税庁「仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項

▶︎仕入税額控除についての解説記事を読む

インボイス制度の目的

インボイス制度の目的は、国内事業者の行う取引における消費税額や適用税率を国が正確な把握することにあります。2019年10月に8%の軽減税率が導入された結果、10%と8%の消費税が混在する状態となり、国が消費税が正確に把握しにくくなった事情があります。

適格請求書(インボイス)とは

適格請求書とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類です。

出典:適格請求書等保存方式が導入されます

2023年10月以降、全ての事業者は受領したこの適格請求書(インボイス)を保存して初めて、仕込税額控除が受けられるようになります。なお、「一定の事項」については次項にて解説します。

なお、「インボイス」は貿易の文脈では「貨物の送り状」を指して使われることがありますが、インボイス制度においては「適格請求書」(後述する指定内容の記載がある請求書)と同義です。

【一覧表】インボイス制度と現行制度(区分記載請求書等保存方式)の違い

仕入税額控除の手続きは、2022年5月現在、「区分記載請求書等保存方式」という方式で行われています。

区分記載請求書は、請求書に「軽減税率の対象品目」と「税率ごとの金額」を追加記載したものです。軽減税率導入にあわせて2019年10月に施行された過渡的な制度で、2023年10月のインボイス制度の開始と入れ替わりに終了します。

インボイス制度に切り替わることで、仕入税額控除で効力を持つ請求書は適格請求書だけとなります。従来方式からの大きな変更項目は以下のようなものです。

 項目別の変更点現行制度
(区分記載請求書等保存方式)
インボイス制度
(適格請求書等保存方式)
1.請求書等への記載事項・税率ごとの取引額の記載が必要
・登録番号不要
・税率ごとの取引額+税額の記載が必要
登録番号(Tプラス13桁の法人番号あるいは13桁の数字)が必要
2.発行できる人・どの事業者も請求書等を発行できる登録された課税事業者だけが適格請求書を発行できる
3.発行する人(登録事業者)の義務・実態としては義務がない・取引先の要求があった場合、適格請求書を発行する義務及び写しを保存する義務がある
4.仕入税額控除の要件・一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が要件・一定の事項を記載した帳簿及び適格請求書の保存が要件
5.税額計算・割戻し計算割戻し計算又は積上げ計算(売上・仕入両方)

【項目別に解説】インボイス制度への移行による変更内容

1.請求書への記載事項が追加される

インボイス(適格請求書)は「売り手が買い手に対して、適用税率や消費税額等を正確に伝える」ために導入されます。
適格請求書には以下の項目の記載が必要で、「登録番号(Tプラス13桁の法人番号あるいは13桁の数字)」と「適用税率」、「税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は税率ごとに1回ずつ)」が区分記載請求書の記載事項に追加されます。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(Tプラス13桁の法人番号あるいは13桁の数字)
  2. 取引年月日​
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)​
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は税率ごとに1回ずつ)
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

出典:国税庁|適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-(パンフレット)(令和2年6月)​

なお、適格請求書を発行するのが困難な取引については、交付義務が免除されます。具体的な対象は後述します。

​2.請求書を発行できるのは登録事業者のみ

インボイス制度において、適格請求書を発行できるのは国税庁に認められた事業者のみです。適格請求書発行事業者になるために、事前に税務署に登録申請をする必要があるので、注意しましょう。

申請から登録までの流れを以下に示します。

  1. 消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となる(※免税事業者の場合)​
  2. 適格請求書発行事業者の登録申請書を納税地の税務署長に提出して審査を受ける
  3. 税務署が事業者登録簿に登録し国税庁サイトで、事業者名・登録番号・登録年月日・所在地などが公開される
  4. 許可がおりた会社に書面で登録番号を記載した通知が税務署から届く

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登録申請はいつまでにすれば間に合う?

適格請求書発行事業者の登録申請の受付は2021年10月に開始済みです。

インボイス制度が始まる2023年(令和5年)10月1日に登録を間に合わせるためには、2023年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。e-Taxによる提出も可能です。

また、免税事業者が課税事業者を選択する場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。この際、登録日が2023年10月1日の属する課税期間である場合は経過措置として、選択届出書の提出義務は免除されます。

3.登録事業者は「適格請求書」を発行する義務がある

インボイス制度が導入されると、登録事業者は取引先から求められた際に、適格請求書を発行する義務が生じます。​
区分記載請求書よりも登録番号や適用税率、税率ごとの消費税額など記載事項が増えるため、請求書発行業務の事務負担が増えてしまうことが予想されます。​
ただし、例外的に以下に挙げるようなバス・鉄道などの公共交通機関の3万円未満の利用料や卸売市場の受託販売、協同組合を通じた委託販売取引などは適格請求書を交付することが困難な取引として認められており、適格請求書の交付義務が免除されます

適格請求書の交付義務が免除される取引

  1. 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります)
  2. 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡​(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります)
  3. 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡​(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります)
  4. 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等​(3万円未満のものに限ります)
  5. 郵便切手を対価とする郵便サービス​(郵便ポストに差し出されたものに限ります)

​出典:国税庁|消費税のあらまし(令和3年6月)

その際は、適格請求書に代えて適格簡易請求書を交付することができます。以下の記事も合わせてご確認ください。

4.仕入税額控除の要件

インボイス制度の下では、一部の例外を除き、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。なお帳簿の記載事項は現行の区分記載請求書等保存方式と変更はありません。

なお、インボイス制度の開始から一定期間は、免税事業者からの課税仕入れであっても控除できる経過措置が設けられます区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合には、2023年10月から2026年9月までは仕入税相当額の80%、2026年10月から2029年9月までは50%の割合が適用されます。

保存が必要となる請求書等の範囲

登録事業者に保存が求められる請求書等の範囲は以下のとおりです。

  1. 適格請求書、又は適格簡易請求書
  2. 仕入明細書等(適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたもの)​
  3. 卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について受託者から交付を受ける一定の書類​
  4. 1.から3.の書類に係る電磁的記録

▶︎仕入税額控除とは?計算方法や要件をわかりやすく解説

5.​消費税の税額計算方法は2つ

インボイス制度では、消費税の税額計算を積上げ計算割戻し計算の2種類から選択できるようになります。

  • 積上げ計算:適格請求書に記載のある消費税額を積み上げて計算する方法
  • 割戻し計算:適用税率ごとの取引総額を割戻して計算する方法

売上税額計算で「積上げ計算」を選択した場合は、仕入税額の計算は「積上げ計算」のみ適用可能となります。

一方、売上税額計算で「割戻し計算」を選択した場合は、仕入税額の計算においては「積上げ計算」「割戻し計算」のいずれかより選択できます。
出典:国税庁|消費税のあらまし(令和3年6月)

インボイス制度ガイド

【課税事業者向け】インボイス制度導入による経理業務への影響

インボイス制度による経理業務への影響を解説していきます。なお、本項と次項に関しては課税事業者の視点で解説します。免税事業者向けの内容は、記事後半に記載しています。

課税事業者においては、適格請求書の発行(=自社が売り手)よりも適格請求書を保存する(=自社が買い手)文脈での負担の方が大きくなると当編集部は考えています。

適格請求書の発行(=自社が売り手)

自社においても適格請求書発行事業者の登録手続や自社発行の請求書に、適格請求書発行事業者の登録番号を印字し、税額を記載する必要がありますが、主に請求書発行システムで対応できる内容ですので社内調整をして進められます。​

適格請求書の保存(=自社が買い手)

インボイス制度は発行側が注目されがちですが、当編集部としてはこの保存側の負担が大きくなると考えています。具体的には以下のような負担が挙げられます。

  1. そもそも適格請求書が保存されることで初めて仕入税額控除が適用されるのが前提であるため、電子帳簿保存法へ対応しておく必要がある(▶︎【参考】2024年1月以降、電子取引の紙保存がNGに
  2. 仕入先の適格請求書発行事業者登録番号を仕入先コードに連動させるなどが想定され、登録番号を管理できるようにシステムの仕様変更をしたり、掛買いの仕入先に登録番号の届出を依頼する必要が生じる
  3. 特に仕入先が免税事業者の場合は、控除額の適正な管理(国税庁が作成する名簿で登録番号の有無を確認、そのうえで免税事業者であることをデータベース等で管理、経過措置期間中の80%控除、50%控除の管理等)が課題となる
  4. 何より、請求書が届く度に登録番号と税額記載の確認をする必要が生じる

管理負担の重さから場合によっては「課税事業者としか取引をしない」という方針をとる事業者も出てくるかもしれません。

【課税事業者向け】インボイス制度対応のためにすべき対策

課税事業者が、インボイス制度に向けて対応すべきことは以下の4つです。適格請求書の保存/適格請求書の発行に分けて、解説していきます。

①【保存】電子帳簿保存法に対応する

2024年1月以降に施行される電子帳簿保存法により、電子的に受け取った国税関係書類の電子保存が義務化されます。すなわち、紙に印刷して保存することが認められなくなります。
厳密な話をすると、消費税法の観点では、適格請求書として適切な内容が記載されていれば紙保存であっても仕入税額控除は受けられる国税庁:電子帳簿保存法一問一答の問4,25より)ので、仕入税額控除を受けるためだけならば電帳法対応は不要です。しかし企業側にとってみれば、法制度ごとに電子取引データの保存方法を分ける運用は現実的ではないので、大前提として電子帳簿保存法への対応は必須といえるでしょう。(▶︎【参考】2024年1月以降、電子取引の紙保存がNGに

②【保存】人的ミスが起こる業務を自動化する

インボイス制度の導入後、請求書を受け取るごとに適用税率や税額、登録番号などの確認及びデータ化が必要となります。現行の業務負担がさらに増えると想定され、結果として経理業務におけるケアレスミスが発生する可能性が高まると予想されます。したがって、請求書受領サービス等を活用することにより、ミスが起こり得る業務箇所はあらかじめ自動化・効率化しておくことは重要です。

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③【保存】免税事業者に対して確認する

取引相手が免税事業者であった場合は、適格請求書発行事業者になる予定があるか、また簡易課税制度を利用するかなどを確認しておくことも重要です。

④【発行】適格請求書が発行できるシステムを導入する

インボイス制度では、経理事務に従来にない対応が必要になります。現行の区分記載請求書から、適格請求書の要件を満たすフォーマットへの変更です。

適用税率や税額、登録番号などを請求書に規定どおりに記載できるかなど、インボイス制度の要件を満たせるかの確認から始めましょう。

結局インボイス制度に対応する上でどのようなシステム導入を検討する必要があるのか?について以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください!

まとめ

インボイス制度の説明と制度導入によって経理業務へ生じる影響について解説しました。​
制度に対応するため、請求書や納品書に記載される明細事項が細かくなり帳簿への転記や確認作業が増大したり、請求書等受領時に適格請求書発行事業者かどうかの確認が必要になったりと、経理部の事務処理が一層煩雑化することが予想されます。​​
煩雑な事務処理に対応するためにシステム導入を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。​
その際おすすめする選定ポイントとして 「人力での確実なデータ入力に対応しているか」という点を挙げておきます。人力でデータ入力を行っている請求書受領サービスや経費精算システムであれば、フォーマットが変わったとしても大きな追加投資なく、柔軟に変更に対応することができます。​
また、令和4年(2024年)1月からの電子帳簿保存法の改正もあるためPDF等の電子データで請求書等を受領する機会が増えることも考えられます。電子帳簿保存法は改正により罰則規定も追加されるなど、より厳格な運用を求めています。​
システムを選定する際には、「改正電子帳簿保存法に則った請求書等の受領方法が確立できるのか」という点も合わせて確認していくとよいでしょう。

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【免税事業者向け】インボイス制度による影響

本項以降は、免税事業者視点で解説していきます。

免税事業者の多くは売上が1,000万円以下の個人事業主・フリーランス

事業開始から2年未満の事業者や、売上高が1,000万円以下の零細事業者は、消費税の納税を免除されます。この免税事業者は、従来「益税」(消費者が事業者に支払った消費税の一部が、納税されずに事業者の利益となってしまうこと)の恩恵を受けてきましたが、インボイス制度でこれは無くなる可能性が高いです。前述したとおりインボイス制度開始後は免税事業者とは取引しない方針の課税事業者もいると思われるため、今までの取引先を守れるかという死活問題になる可能性があります。​

免税事業者であるために大口の取引先を失うくらいなら課税事業者になった方がよいかもしれませんが、課税事業者で消費税を納めれば赤字になるという免税事業者もいると思います。​

適格請求書を発行できない個人事業主・フリーランスは取引が難しくなる

免税事業者と取引を行った場合、受領する請求書は適格請求書では無いため仕入れ税額控除ができず、適格請求書発行事業者と取引をするよりも利益が減少する恐れがあります。

したがって、取引先としては自社と同じ適格請求書発行事業者を選択するのが利益を守るためによいと考えます。これは同時に個人事業主・フリーランスとの取引を打ち切る理由になります。

あるいは、最初から消費税分の値引きを免税事業者に求められるかもしれません。零細な事業者は、それでも取引を続けたいので、泣く泣く了承するということも起こりそうです。このように、免税事業者が取引先に消費税を請求することが実質的に困難になることが想定されます

また、免税事業者は仕入にかかった消費税額を控除することもできないので、仕入にかかった消費税額が売上にかかった消費税額よりも多いと、損することになります。

【免税事業者向け】納税負担を軽減するアイデア

①簡易課税制度を利用する

消費税の納税額をおさえるために簡易課税制度を利用するということも、一つの対策として考えられます。中小企業を対象とする制度で、支払い金額ではなく割合で計算するため仕入れが少ない事業者ほどメリットがあります。

ただし、簡易課税制度は一度を選択すると2年間継続した後でなければ取りやめることができません。
大きな設備投資を予定している場合は消費税の還付が受けられない可能性がありますので注意しましょう。

▶︎簡易課税制度についての記事を読む

②課税事業者になった上で、適格請求書発行事業者の登録申請をする

免税事業者も、登録申請することで適格請求書発行事業者になれます免税されなくなることと、登録事業者になることのメリット、デメリットをよく考えて決めるべきでしょう。

手続きとしては、①納税地の税務署に「消費課税事業者選択届出書」を提出します。これで課税事業者となれます。その上で、②適格請求書登録事業者の申請を行ってください。

しかし、免税事業者からの移行については特例措置が設けられており、消費課税事業者選択届出書の提出を省略可能です。登録申請書だけでよいというもので、インボイス制度の開始日を含む課税期間中に登録を受けるのが条件です。なお、インボイス制度が始まる2023年10月に間に合わせるには、2023年3月31日までに登録申請をする必要があります2023年4月1日以降は特例措置が受けられず、選択届出書が必要となります。

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税理士コメント

インボイス制度の下では経理業務が煩雑なものとなるため、電子インボイスの導入など、国内事業者の電子化が加速するものと予想されます。
社内体制の変更には大きな労力を要しますが、請求業務だけでなく、労務や会計、営業などを連携させ、組織全体のデジタルトランスフォーメーションに取り組む契機とすることができれば、その後の業務効率化や労働環境の改善にも役立てることができるでしょう。
なおインボイス制度への対応については、請求システムの見直しや免税事業者を含む取引先との調整など、時間を要する工程も多いため、直前になって対応策を検討するのではなく、スケジュールに余裕を持って準備を進めるようにしてください。

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