オペレーティングリースの会計処理や資産運用方法などについて徹底解説!

更新日:2025.05.06

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「オペレーティングリースってよく聞くけど、ファイナンスリースと何が違うの?」「会計処理や節税効果って本当にあるの?」

そう思う方もいるのではないでしょうか。オペレーティングリースは、資産を所有せずに効率的に利用できる手段であり、会計処理や節税面でも多くのメリットがあります。

本記事では、オペレーティングリースの基本的な仕組みやファイナンスリースとの違い、会計処理の方法、節税効果、契約条件のポイントまでをわかりやすく解説していきます。

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オペレーティングリースとは?わかりやすい解説

オペレーティングリースとは、資産の所有者(リース会社)から利用者(借手)が一定期間、資産を借り受ける契約形態です。ファイナンスリースと異なり、契約期間が比較的短く、リース期間終了後は資産がリース会社に返却される特徴があります。

リース料は単純に費用として処理され、借手の貸借対照表に資産計上されないことが大きな特徴です。企業が設備投資を行う際に初期投資を抑えながら最新の設備を利用できる方法として、幅広い業種で活用されています。

オペレーティングリースの定義

オペレーティングリースは、資産の所有に伴うリスクと経済的利益の大部分がリース会社(貸手)に残る形態のリース契約です。具体的には、リース期間が資産の経済的耐用年数と比較して短い期間であり、資産の所有権が契約終了後もリース会社に残ります。

また、リース料総額の現在価値が資産の公正価値と比べて著しく低いことも特徴です。この形態では、借手はリース期間中のみ資産を使用する権利を得て、維持管理責任はリース会社が負うケースが多いため、資産の陳腐化リスクを軽減できる利点があります。

他のリース取引の種類として、ファイナンスリースがあります。オペレーティングリースとファイナンスリースの違いも含めたリース取引の会計処理について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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一般的な取引の流れ

オペレーティングリースの一般的な取引の流れは、まず借手が必要とする資産をリース会社に相談するところから始まります。リース会社は資産を購入し、その後借手との間でリース契約を締結します。契約期間中、借手は定期的にリース料を支払いながら資産を使用します。

この間の保守・メンテナンス費用の負担は契約内容によって異なりますが、多くの場合はリース料に含まれています。リース期間が終了すると、借手は資産をリース会社に返却し、必要に応じて契約の更新や新たな資産へのリース契約切り替えを検討します。

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オペレーティングリースの会計処理

オペレーティングリースの最大の特徴は、その会計処理の簡便さにあります。借手はリース料を支払った期間の費用として処理するだけで、資産や負債として貸借対照表に計上する必要がありません。これにより財務諸表上の負債比率が改善され、企業の財務状態を健全に見せることが可能になります。

ただし、国際会計基準(IFRS)や米国会計基準では近年、すべてのリースを原則としてオンバランス化する基準への移行が進んでおり、日本基準でもその影響が検討されています

会計基準と仕訳の方法

オペレーティングリースの会計処理は、日本の企業会計基準においては比較的シンプルです。借手側では、リース料の支払時に「支払リース料」などの科目で費用計上します。具体的な仕訳は、リース料支払時に「支払リース料(借方)」と「現金預金(貸方)」となります。

一方、貸手側では資産を所有し続けるため、取得した資産を貸借対照表に計上し、受け取ったリース料は「売上高」や「リース収益」として収益認識します。2019年に導入されたIFRS第16号では借手のリース契約オンバランス化が求められていますが、日本基準ではまだ完全導入には至っていない状況です。

リース料の計上と税務処理

オペレーティングリースにおけるリース料は、借手にとって支払った期間の費用として全額損金算入が可能です。通常、月々のリース料を「支払リース料」などの勘定科目で計上します。税務上も会計処理と同様に、支払ったリース料は全額が損金として認められるため、節税効果を得ることができます

また、消費税についても支払リース料に含まれる消費税分は仕入税額控除の対象となります。予算管理の観点からも、毎月定額のリース料として管理できるため、企業の資金繰り計画が立てやすくなる利点があります。

減価償却費との関係性

オペレーティングリースでは、資産の所有権はリース会社にあるため、借手側で減価償却を行う必要がありません。これはファイナンスリースとの大きな違いの一つです。借手は減価償却費を計上する代わりに、リース料をそのまま費用として計上します。

一方、リース会社(貸手)側では資産を所有しているため、通常の固定資産と同様に減価償却を行います。この仕組みにより、借手はリース期間中に減価償却計算や固定資産税の申告などの管理業務から解放され、事務負担を軽減できるメリットがあります。また、減価償却費とリース料の違いが企業の財務指標にも影響を与える点も理解しておく必要があります。

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契約とオフバランス処理

オペレーティングリースの大きな特徴の一つに、オフバランス処理があります。これは借手の貸借対照表に資産や負債として計上されないことを意味し、企業の財務諸表上のバランスを改善する効果があります。特に設備投資が多い業種では、固定資産や有利子負債の増加を抑制できるため、財務比率の改善に寄与します。

ただし、近年の会計基準の国際的な流れとしては、リース取引の透明性向上のため、オフバランス処理の見直しが進められている点にも注意が必要です。

リース契約の主要条件

オペレーティングリース契約の主要条件には、リース期間、月額リース料、保守・メンテナンス条件、中途解約の可否などが含まれます。特にリース期間は、資産の経済的耐用年数よりも短く設定されるのが一般的です。

また、リース料の算定方法や支払条件、契約更新の選択権、資産価値の変動リスクの負担、保険の付保責任なども重要な契約条件となります。これらの条件は、会計上のオペレーティングリースとして認められるための要件に影響するだけでなく、借手の実質的な経済的負担にも大きく関わるため、契約締結前に十分な検討と交渉が必要です。

オフバランスの仕組みと影響

オペレーティングリースのオフバランス処理は、企業の財務指標に大きな影響を与えます。資産と負債が増加しないため、総資産利益率(ROA)や自己資本比率などの財務指標が改善されます。特に設備投資額が大きい業種や、財務制限条項を守る必要がある企業にとっては重要な意味を持ちます。

ただし、投資家や金融機関は財務諸表の注記情報を通じてリース取引の実態を把握できるため、完全に情報が隠れるわけではありません。近年のIFRS第16号や米国会計基準の改正では、オペレーティングリースも含めたほぼすべてのリース取引をオンバランス化する方向に変わりつつあり、この点は財務戦略を検討する上で注意が必要です。

契約満了後の物件の扱い

オペレーティングリース契約満了後の物件の扱いには、いくつかの選択肢があります。最も一般的なのは、リース会社への返却です。資産はリース会社の所有物であるため、契約期間終了後に借手は原則として返却義務を負います。

ただし、契約条件によっては再リース(契約延長)や買取りのオプションが設けられていることもあります。再リースの場合は通常、当初よりも低いリース料で継続利用が可能です。

また、市場価値が予想より高い場合には買取りオプションを行使することで経済的メリットを得られる場合もあります。いずれにせよ、契約満了時の選択肢と条件は当初契約時に明確にしておくことが重要です。

オペレーティングリースのメリットとデメリット

オペレーティングリースは企業の設備投資戦略において重要な選択肢となっています。最大のメリットは、初期投資額を抑えながら必要な資産を利用できることにあります。

また、オフバランス効果による財務指標の改善や、リース料の全額費用計上による税務上のメリットも見逃せません。一方で、長期的に見ると自社購入より総コストが高くなる可能性や、契約の柔軟性に制限があるなどのデメリットも存在します。企業はこれらのメリットとデメリットを総合的に判断し、自社の経営戦略に合った最適な選択をする必要があります。

企業の資産利用におけるメリット

オペレーティングリースの最大のメリットは、多額の初期投資なしに最新の設備や資産を利用できることです。設備投資に必要な資金調達の負担が軽減され、その分を本業や成長分野への投資に回せます。また、リース料は毎月定額で発生するため、キャッシュフローの予測が立てやすく、資金繰り計画が安定します。

特に急速な技術革新が進む分野では、資産の陳腐化リスクをリース会社に転嫁できる点も大きなメリットです。さらに、オフバランス処理により財務諸表上の総資産や負債が増加しないため、ROA(総資産利益率)や自己資本比率などの財務指標が改善され、企業価値評価にプラスの影響を与える可能性があります。

デメリットとリスクの考慮

オペレーティングリースのデメリットとして、まず長期的なコスト面の課題が挙げられます。リース料には資産の取得費に加え、リース会社の利益や管理費用も含まれるため、最終的な総支払額は自社購入よりも高くなることが一般的です。

また、契約期間中の解約が制限されたり、高額な違約金が発生したりするケースが多く、事業環境の変化に柔軟に対応しにくい面があります。資産のカスタマイズにも制限があり、自社の特殊なニーズに合わせた改造が難しいことも考慮すべき点です。

さらに、会計基準の変更によってオフバランス処理のメリットが将来的に失われる可能性や、契約条件によっては維持管理コストが予想以上に高くなるリスクもあります。

節税効果の具体例

オペレーティングリースの節税効果は、具体的な数字で見るとより分かりやすくなります。例えば、5,000万円の設備を自社購入した場合、法定耐用年数10年の定額法で減価償却すると年間500万円の費用計上となります。

一方、同じ設備を年間リース料600万円で5年間のオペレーティングリースで導入すると、年間600万円を全額費用計上できます。法人税率が30%と仮定すると、初年度だけで減価償却との差額100万円に対して30万円の節税効果が生まれます。

また、初期費用を抑えられる点も重要で、自社購入の場合は5,000万円の資金調達が必要ですが、リースなら頭金なしで開始できるケースも多く、その資金を他の事業投資に回せる効果も考慮すべきです。

オペレーティングリース活用の方法

オペレーティングリースは単なる資金調達手段ではなく、戦略的な資産運用・管理の手法として活用できます。特に技術革新の速い設備や、専門的な保守管理が必要な資産には適しています。また、事業の拡大期や変革期には、柔軟な設備投資計画を可能にするツールとなります。

さらに、企業の成長ステージや業種特性に応じた活用法を検討することで、最大限のメリットを引き出せます。リース会社との交渉力を高めるためにも、自社のニーズを明確にし、複数の提案を比較検討することが重要です。

資産運用としてのリースの利点

オペレーティングリースは、企業の資産運用戦略において重要な選択肢となります。特に設備投資の効率化と資本の有効活用という観点で大きな利点があります。まず、自社の中核事業に直接関わらない資産はリースを活用することで、本業への投資に集中できます。

また、減価償却費と異なり、リース料は期間に応じて平準化されるため、業績変動の激しい業種では収益と費用のバランスが取りやすくなります。さらに、金利変動リスクも固定リース料で回避できるため、長期的な経営計画が立てやすくなります。企業価値を高めるためには、「所有」ではなく「利用」に重点を置く資産戦略が有効であり、オペレーティングリースはそれを実現する手段として機能します

設備投資の効率化

オペレーティングリースを活用した設備投資の効率化は、特に成長企業や変化の激しい業界で重要な戦略となります。設備投資の意思決定プロセスを簡素化し、導入までのリードタイムを短縮できる点が大きなメリットです。

例えば、IT機器のリースでは、技術の陳腐化リスクを回避しながら、常に最新設備を利用できます。また、季節変動や需要変動の大きい業種では、繁忙期に合わせた一時的な設備増強にも柔軟に対応可能です。

設備投資計画の策定時には、自社購入とリース活用のコスト比較だけでなく、設備の更新サイクルや技術革新のスピード、保守管理の手間なども含めた総合的な判断が必要です。これにより、限られた経営資源を最適配分し、企業の成長戦略を支える効率的な設備投資が実現できます。

将来のリスク軽減対策

オペレーティングリースは、企業が直面する様々な将来リスクを軽減する効果的な手段となります。まず、技術革新による陳腐化リスクについては、リース期間終了時に最新設備への入れ替えが容易に行えるため、常に競争力を維持できます。また、事業環境の変化に応じて設備規模を柔軟に調整できる点も重要です。

特に新規事業や海外展開など不確実性の高いプロジェクトでは、初期投資を抑えることでリスクヘッジが可能になります。さらに、災害や事故による資産毀損リスクも、リース会社との契約条件によっては軽減できます。長期的な経営戦略の観点からは、固定資産の保有比率を適正化し、経営の機動性を高めることで、予測困難な経済環境の変化にも柔軟に対応できる体制を構築することが可能です。

オペレーティングリースに関する具体的な事例

オペレーティングリースは様々な業界で活用されており、その具体的な事例を知ることで、自社での適用可能性を検討する参考になります。航空業界では航空機のリースが一般的であり、巨額の初期投資を避けながら機材の最新化を図っています

また、製造業における高額工作機械のリースや、IT業界でのサーバーやネットワーク機器のリースなど、多様な活用事例があります。それぞれの業界特性に応じたリース活用の工夫や、成功のポイントを理解することで、より効果的なリース戦略の構築が可能になります。

航空機リースの成功事例

航空業界におけるオペレーティングリースの活用は、最も成功した事例の一つです。大手航空会社のA社は、機材調達コストの最適化のため、保有機材の30%をオペレーティングリースで導入しています。

航空機1機あたり数十億円から百億円を超える購入費用を初期投資せずに済み、財務の柔軟性を維持しながら路線拡大を実現しました。特に需要の変動が大きい国際線では、リース期間を需要予測に合わせて調整し、稼働率の最適化にも成功しています。

また、燃費性能の良い最新鋭機への更新も計画的に進められ、運航コストの削減と環境負荷の軽減を同時に達成しました。航空機リースは単なる資金調達手段ではなく、機材計画と経営戦略を結びつける重要なツールとして機能している好例です。

まとめ

オペレーティングリースは、企業の資産管理と財務戦略において重要なツールです。初期投資の抑制、オフバランス効果による財務諸表の改善、税務上のメリット、資産の陳腐化リスク回避など、多くのメリットがあります。一方で、長期的なコスト増加や契約の柔軟性制限などのデメリットも存在します。

また、国際会計基準の変更により、オフバランス処理の優位性が今後変わる可能性もあります。企業は自社の事業特性や経営戦略に合わせて、オペレーティングリースの適切な活用法を検討し、メリットを最大化しながらデメリットを最小化する工夫が求められます。資産の「所有」から「利用」への発想転換により、企業の競争力強化と持続的成長につながる可能性を秘めています。

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