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生成AIで経理業務を効率化!実務で使えるプロンプト活用の秘訣

更新日:2025.10.28

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生成AI_経理

経理業務は、企業の円滑な運営に不可欠な役割を担っています。しかし、日々のルーティンワークや複雑な法規制への対応など、多くの課題を抱えているのも事実です。近年、その課題解決の切り札として注目を集めているのが「生成AI」です。

→業務の自動運転を実現する経理AIエージェントとは?

本記事では、経理担当者の方々に向けて、生成AIの基礎知識から具体的な活用事例、導入の注意点までをわかりやすく解説します。生成AIを理解し、経理業務の効率化とコスト削減を実現するための第一歩を踏み出しましょう。

経理AIエージェント

生成AIとは?定義と経理業務における重要性

生成AIとは、テキスト、画像、音声など、さまざまな種類のコンテンツを自律的に生成できるAIのことです。従来のAI(RPAなど)が、あらかじめプログラムされたタスクを自動化することに特化しているのに対し、生成AIは、学習したデータに基づいて新しいコンテンツを生み出す能力を持っています。

経理業務においては、この生成能力が大きな変革をもたらす可能性を秘めています。例えば、請求書の自動作成、会計帳簿の自動生成、レポートの自動作成など、これまで人手で行っていた業務を大幅に効率化できる可能性があります。また、法改正への対応や、複雑な会計ルールの理解を深めるためのサポートとしても活用できます。

生成AIと従来のAI、RPAの違い

生成AIと従来のAI(RPAなど)の最大の違いは、その「創造性」にあります。RPA(Robotic Process Automation)は、定型的な業務を自動化することに特化しており、事前に設定されたルールに基づいて処理を行います。一方、生成AIは、大量のデータから学習し、新しい情報を生成することができます。

経理業務においては、RPAは請求書のデータ入力や、経費精算の承認プロセスなど、定型的な業務の自動化に有効です。一方、生成AIは、より高度な業務、例えば、会計帳簿の自動作成や、税務申告書の作成など、複雑な判断を伴う業務の効率化に貢献します。

ツール名得意業務料金体系企業向け権限制御
ChatGPT (OpenAI)自然言語全般・仕訳レビュー・決算注記ドラフトFree/Plus 20 USD/月/Team 30 USD/人・月/Enterpriseはカスタム見積もりSOC 2準拠・SAML SSO・ロール管理・監査ログ・Enterpriseは学習対象外
Gemini (Google)Sheets財務分析・Docs要約・Drive検索/翻訳Workspace Add-on 14 USD/人・月〜(2025年改定)Admin ConsoleでDLP設定・データは顧客テナント内処理・アクセス制御ポリシー
Copilot for Microsoft 365Excelモデリング・Word報告書・Outlook要約・Teams議事録Copilotライセンス 30 USD/人・月(年契約)Microsoft Purview準拠・テナント境界保持・役割別アクセス・eDiscovery対応
TOKIUM AI経理エージェント日本の経理業務特化:請求書OCR、仕訳自動起票、電子帳簿保存法対応個別見積もり(従量/月額)※PoC無料国内DC・ISMS取得・多段ロール権限・操作ログ・法規制対応

以下の記事では、RPAやAIによって自動化にされる経理業務について詳しく解説していますので参考にしてください。

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生成AIの進化と経理業務への影響

生成AIは、技術革新のスピードが非常に速く、日々進化を続けています。その進化は、経理業務にも大きな影響を与えています。例えば、自然言語処理技術の向上により、より高度な文章生成が可能になり、会計レポートの自動作成や、税務に関する問い合わせへの対応などが実現しつつあります。

また、画像認識技術の向上により、領収書の自動読み取りや、請求書の自動処理の精度が向上しています。これらの技術革新は、経理業務の効率化だけでなく、人的ミスの削減や、コンプライアンスの強化にも貢献します。生成AIの進化は、経理業務のあり方を大きく変え、より高度な専門性と、戦略的な思考を求められる時代へと導いています。

生成AIの具体的なメリットと効果

生成AIの導入は、経理業務に様々なメリットをもたらします。業務効率の大幅な向上、人的ミスの削減、コスト削減、データ分析の高度化、コンプライアンス対応の強化など、その効果は多岐にわたります。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

業務効率の大幅な向上

生成AIは、経理業務における多くのタスクを自動化し、業務効率を大幅に向上させます。例えば、請求書のデータ入力、経費精算、仕訳業務、会計レポートの作成など、これまで人手で行っていた作業を自動化することで、担当者はより高度な業務に集中できるようになります。

例えば、経費精算では、領収書の画像から金額や日付などの情報を自動的に読み取り、仕訳を提案します。これらの自動化により、手作業による入力ミスや、確認作業にかかる時間を大幅に削減できます。

人的ミスの削減と品質向上

経理業務は、正確性が非常に重要です。しかし、手作業による入力ミスや、計算ミスは避けられないものです。生成AIの導入は、これらの人的ミスを削減し、業務の品質を向上させる効果があります。

例えば、AIが自動的に仕訳を行うことで、勘定科目の誤りや、金額の入力ミスを減らすことができます。また、AIが作成した会計レポートは、人間の目によるチェックを容易にし、誤りの早期発見に役立ちます。これにより、経理業務全体の品質が向上し、企業の信頼性向上にもつながります。

コスト削減効果

生成AIの導入は、人件費や、業務にかかる間接コストの削減にもつながります。業務の自動化により、人員を削減したり、他の業務に配置転換したりすることが可能になります。

例えば、請求書処理の自動化により、請求書処理担当者の人件費を削減できます。また、経費精算の自動化により、経費精算にかかる時間や、交通費などのコストを削減できます。さらに、AIがデータ分析を行うことで、無駄なコストを発見し、削減することも可能になります。

データ分析の高度化

生成AIは、大量のデータを分析し、これまで見過ごされていた傾向やパターンを発見することができます。これにより、経営判断に役立つ情報を迅速に提供し、企業の意思決定を支援します。

例えば、AIが過去の会計データを分析し、売上予測や、コスト削減の可能性を提示することができます。また、AIが顧客データを分析し、新たなビジネスチャンスを発見することも可能です。データ分析の高度化は、企業の競争力強化に不可欠な要素です。

経理業務ですぐに試せる!ChatGPTプロンプト集

生成AIを利用することで、経理業務は大きく変わります。請求書の読み取り・仕訳提案・経費精算の妥当性チェック・資金繰り予測まですべて自動化し、残業ゼロと意思決定の迅速化を目指す具体策を、以下のChatGPTプロンプト8選とともに紹介します。

1. 請求書の読み取りと仕訳提案

この請求書画像から以下を抽出し、仕訳を提案してください。

【抽出項目】

– 請求元/請求先

– 請求書番号と日付

– 品目と金額(税率別)

– インボイス登録番号

【仕訳提案】

– 勘定科目と税区分

– インボイス要件の充足確認

– 不足情報や要確認事項

前提:当社は原則課税・税抜経理

使用場面:請求書受領時の一次処理

2. 経費精算の妥当性チェック

以下の経費申請の妥当性を判定してください。

申請内容:

[日付、金額、用途、参加者を記載]

判定項目:

1. 勘定科目(交際費/会議費/他)

2. 税務上の損金算入可否

3. 一人5,000円基準での判定

4. 必要な追加証憑

判定は根拠を含めて回答してください。

使用場面:経費承認前のチェック

3. 月次残高の異常検知

以下の勘定科目残高推移から異常値を検出してください。

[過去12ヶ月の月次残高データを貼付]

検出基準:

– 前月比30%以上の変動

– 通常と異なる符号(売掛金のマイナス等)

– 季節性から外れた動き

優先度(高/中/低)を付けて、確認すべき内容を提示してください。

使用場面:月次決算の効率化

4. 取引内容からの仕訳生成

以下の取引を仕訳してください。

取引:[具体的な取引内容]

金額:¥[金額](税込/税抜を明記)

日付:[日付]

出力形式:

借方)科目 / 金額 / 税区分

貸方)科目 / 金額 / 税区分

※複数の処理方法がある場合は併記し、選択理由を説明

使用場面:日常の仕訳入力

5. 消費税区分の一括チェック

以下の取引の消費税区分が正しいか確認してください。

[取引内容と現在の税区分のリスト]

確認内容:

– 課税/非課税/不課税の判定

– 軽減税率8%の適用可否

– インボイス制度での仕入税額控除

– 修正による税額影響

誤りがあれば正しい処理を提案してください。

使用場面:消費税申告前の確認

6. 資金繰り予測

以下から3ヶ月後までの資金繰りを予測してください。

現状:

– 現預金:[金額]

– 月商:[金額]

– 売掛金:[金額・回収予定]

– 買掛金:[金額・支払予定]

– 固定費:[月額]

シナリオ別(楽観/標準/悲観)で

資金ショートリスクの有無を判定してください。

使用場面:資金管理・銀行説明

7. 契約書の会計処理確認

この契約内容から会計処理を確認させてください。

契約概要:[内容を記載]

対価:[金額と支払条件]

期間:[契約期間]

確認事項:

1. 収益認識のタイミング

2. 前受金/売掛金の処理

3. 履行義務の識別

4. 必要な注記事項

収益認識基準と中小企業の会計指針の両方で回答してください。

使用場面:新規契約の会計処理判断

8. 決算チェックリスト作成

[会社の業種]の3月決算に向けた確認事項をリスト化してください。

特に確認したい項目:

– 税制改正の影響

– 引当金の計上

– 棚卸資産の評価

– 固定資産の減損

– [その他個別事項]

各項目に確認方法と期限の目安を付けてください。

使用場面:監査法人・税理士との事前打ち合わせ

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経理実務で活かせるプロンプト作成 3つのコツ

生成AIは、プロンプトの出し方次第で、その回答の精度が劇的に変わります。正確性が求められる経理業務でAIを活用するためには、AIを「優秀な新人アシスタント」と捉え、的確に業務を指示する技術が求められます。ここでは、すぐに実践できるプロンプト作成の3つのコツをご紹介します。

役割(ペルソナ)を与え、専門家の視点を設定する

まず、AIに「どのような立場の専門家として回答してほしいか」という役割を与えることが非常に有効です。これにより、AIは特定の視点や知識体系に基づいて回答を生成しようとします。

例えば、プロンプトの冒頭に「あなたは日本の会計基準に精通したベテランの経理担当者です」「あなたは税法の専門家です」といった一文を加えるだけで、回答に経理特有の専門用語や考え方が反映されやすくなり、精度が向上します。漠然と質問するのではなく、AIに経理のプロフェッショナルとしての役割を演じさせるのが第一歩です。

背景・文脈(コンテキスト)を具体的に提供する

経理業務の判断は、取引の背景や社内ルールといった前提条件に大きく依存します。AIに正確なアウトプットを求めるには、人間が業務を遂行する際にも確認するであろう、具体的で十分な情報を提供する必要があります。

例えば、仕訳を質問する際には、単に「備品を買った」ではなく、「いつ(取引日)」「誰が」「何を」「いくらで」「どのように(支払手段)」といった5W1Hの情報は必須です。さらに、「当社の固定資産計上基準は取得価額10万円以上です」「この取引はAプロジェクトに関する費用です」といった社内ルールや背景情報を加えることで、AIはより実務に即した回答を生成できます。情報が具体的であるほど、AIの思考のブレは少なくなります。

希望する出力形式(フォーマット)を明確に指定する

最後に、どのような形式で回答が欲しいのかを明確に指定することも重要なポイントです。これを怠ると、AIは長々とした文章で回答してきたり、求めていない情報を含んだりすることがあり、後工程での加工に手間がかかります。

「借方・貸方に分けた仕訳形式で出力してください」「箇条書きで3つのパターンを提案してください」「比較検討ができるように、メリットとデメリットを表形式でまとめてください」のように、アウトプットのゴールを具体的に指示しましょう。これにより、AIが生成した回答をコピー&ペーストするだけで、報告書やマニュアルに活用できるなど、業務のスピードを格段に向上させることができます。

生成AI導入前に知っておくべき注意点と課題

生成AIの導入は、経理業務に大きなメリットをもたらしますが、導入前に考慮すべき注意点や課題も存在します。導入を成功させるためには、これらの注意点を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

セキュリティリスクと情報漏洩対策

生成AIは大量の機密データを扱うため、セキュリティリスクや情報漏洩のリスクが伴います。アクセス権限を厳格に管理し、データを暗号化することはもちろん、不正アクセスを常に監視する体制を整え、万が一の情報漏洩に備えた対策を徹底しなければなりません。導入するAIツールのセキュリティ評価も不可欠です。

従業員への教育とトレーニング

どれほど優れたAIツールを導入しても、従業員がその機能を理解し、使いこなせなければ効果は発揮されません。生成AIの基礎知識から具体的なツールの操作方法、データ入力のルール、エラー発生時の対応方法まで、体系的な教育とトレーニングを計画的に実施する必要があります。

AIの精度と限界

生成AIは万能ではなく、その精度には限界があり、時には誤った情報を生成する可能性も秘めています。AIの出力結果を鵜呑みにせず、必ず人間の目によるチェックプロセスを業務フローに組み込むことが不可欠です。また、AIの学習データに偏りがないかを確認し、AIが誤りを犯した場合の対応策をあらかじめ準備しておくことも大切です。

以下の記事では、AIと人の協調によって業務効率化を実現する「ヒューマンインザループ(HITL)」について詳しく解説していますので参考にしてください。

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法規制への対応

生成AIの利用には、個人情報保護法や著作権法など、様々な法規制が関連します。個人情報の適切な取り扱いや、意図しない著作権侵害の防止に努めるとともに、関連法の改正にも常に注意を払い、必要に応じて専門家に相談するなど、コンプライアンスを遵守する体制を構築しなければなりません。

生成AI導入のステップ

生成AIの導入を成功させるためには、計画的なステップを踏むことが重要です。ここでは、生成AI導入の6ステップを紹介します。

経理業務向け生成AI導入の6ステップ

現状分析と課題の明確化

自社の経理業務が現在どのような状況にあるのかを詳細に分析し、潜んでいる課題を浮き彫りにします。分析にあたっては、具体的な業務プロセス、各業務にかかる量や人件費、発生している人的ミスの頻度、そしてコンプライアンス上のリスクといった項目を精査します。

この分析結果をもとに、「どの業務を自動化したいのか」「それによってどのような効果を期待するのか」といった導入の目的を具体的に設定し、明確化することが重要です。

生成AIツールの選定と評価

市場には多種多様な生成AIツールが存在するため、自社の目的に合致したものを見極める必要があります。選定の際には、機能の充足度はもちろん、費用対効果、現場の従業員にとっての使いやすさ、企業の機密情報を守るためのセキュリティ、そして導入後のサポート体制などを総合的に比較検討します。

評価方法としては、実際にツールを試用するトライアル利用や、提供元によるデモンストレーションの確認が有効です。また、同様の課題を抱えていた他社の導入事例を参考にしたり、専門家の助言を求めたりすることも、適切なツール選定につながります。

スモールスタートでの実施

小規模な範囲でAIツールを試験的に導入し、その効果を具体的に検証するプロセスです。この段階を経ることで、選定したAIツールが本当に自社の課題解決に有効かを確認し、導入によって見込める効果を具体的に測定できます。

同時に、本格導入に向けた課題や、実際の導入プロセスの妥当性を事前に洗い出すこともスモールスタートで実施する場合の重要な目的です。スモールスタートで進める際は、対象となる業務を限定し、必要なデータを準備した上でAIツールを設定し、その結果を客観的に評価します。

本格導入と運用

結果を踏まえ、本格的にAIツールを導入し、運用を開始します。実際に行って得られた知見や課題への対策を反映させながら、全社的または部署全体への展開を進めます。導入にあたっては、既存の業務システムとのスムーズな連携や、従業員が新しいツールを使いこなすための教育、そして誰でも参照できるマニュアルの作成が欠かせません。

また、トラブル発生時や運用上の疑問に対応するための運用体制を構築することも重要です。運用開始後は、定期的に導入効果を測定し、改善点を見つけ出す努力を怠らないようにしましょう。AIの学習データを継続的に更新し、関連する法改正など外部環境の変化に迅速に対応することも、長期的な成功の鍵となります。

効果測定と改善

AI導入は一度きりのプロジェクトではなく、継続的な改善サイクルを回していくことが求められます。業務効率がどの程度向上したか、人的ミスはどれだけ削減できたか、コスト削減効果はあったか、コンプライアンスは強化されたか、といった項目を定期的に測定します。

そして、その測定結果に基づいて、AIツールの設定を見直したり、業務プロセスそのものを改善したり、従業員への追加教育を実施したりといった、さらなる改善策を講じていきます。必要に応じてAIの学習データを追加することも有効です。

経理AIエージェント

まとめ

本記事では、生成AIの仕組みと最新トレンドを押さえたうえで、請求書の読み取り・仕訳提案・経費精算の妥当性チェック・資金繰り予測など経理の主要タスクで実践できる活用法を紹介しました。また、学習データの機密保持、ガバナンス体制整備といった導入時の注意点に加え、プロンプト集など実務を後押しするツールも提示しています。

生成AIは担当者の単純作業を最大60%削減し、月次決算を平均2日短縮するなど、効率化・コスト削減・コンプライアンス強化を同時に実現できるポテンシャルを持ちます。まずは小規模な検証から始め、効果を数値で可視化しつつ全社展開を進めることで、未来志向の経理部門へと進化させましょう。

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