経理DX促進

AIエージェントの仕組みとは?経理DXに役立つ導入方法【2025年版】

更新日:2025.08.26

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AIエージェント 仕組み

経理現場では仕訳入力や請求書処理などの定型業務が多く、人手不足や法改正対応に追われる担当者も少なくありません。こうした課題を解決する手段として注目されているのが「AIエージェント」です。AIエージェントは、人工知能が自律的に判断・行動する仕組みを持ち、定型業務の自動化から高度な分析まで幅広く支援します。

→業務の自動運転を実現する経理AIエージェントとは?

本記事ではその仕組みを分かりやすく解説し、経理業務に導入するメリットや最新トレンドを紹介します。

AIエージェントの仕組みとは?基礎から解説

AIエージェントは、人工知能が自律的に学習・判断・行動する仕組みを持ち、経理業務にも応用が進んでいます。この章では基本的な構造や特徴を整理し、なぜ今経理部門が注目すべきかを解説します。

AIエージェントの基本的な役割

AIエージェントとは、人工知能の技術を活用し、自律的に行動する仕組みを備えたシステムの総称です。具体的には、機械学習やディープラーニングなどのアルゴリズムを用いて状況を把握し、目的を設定して行動を選択し、最終的に目標達成をめざします。

AIエージェントは、あたかも人格を持つように振る舞い、多様なタスクに合わせて柔軟に動く点が大きな特徴です。大規模言語モデル(LLM)を活用することで、会話内容の理解や文脈把握、専門的な質問への回答など、高度な対話システムが実現しつつあります。

経理現場での導入ニーズ

経理現場では、仕訳入力や請求書処理といった繰り返し作業が多く発生します。AIエージェントを活用すれば、一定のルールや法令を学習させることで、定型業務を効率的に自動化できる可能性があります。特に人手不足や高齢化、業務の属人化が進む経理部門にとって、AIエージェントの導入は大きなメリットをもたらします。法改正対応やペーパーレス化なども視野に入れれば、その利便性はさらに広がるでしょう。

AI業務自動化全般との違いを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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経理AIエージェント

ディープラーニング・自然言語処理で広がる活用例

大規模言語モデルやディープラーニングを背景に、AIエージェントは急速に進化しています。経理業務にとどまらず、保険や医療分野での事例も含め、その応用可能性を紹介します。

経理以外の分野での事例

ウェブページから情報を集めるとき、AIは「効率的に情報を探す仕組み」「自分で答えの正しさを振り返る仕組み」を使って、人が行っていた検索や分析を自動でこなせるようになっています。これは、経理業務に例えると「大量の伝票や請求書の中から、必要な書類だけを素早く見つけ出すチェックリスト」と「仕訳が正しいかを自分で見直すダブルチェック機能」を持っているようなものです。これによって、単に質問に答えるだけでなく、状況に応じてより正確で戦略的な判断が可能になります。

こうした技術は経理業務だけでなく、保険業界や医療分野などさまざまな分野で活用が進んでいます。例えば、保険業務に特化した画像や動画などの複数のデータ形式を扱えるマルチモーダル大規模言語モデル(Large Multimodal Model)を開発し、複雑な図表が含まれる書類の読み取りや問い合わせ対応の自動化に取り組む事例もあります。また、汎用型AIエージェントが計画の立案から実行、調査の報告までウェブを活用して高度な指示遂行を実現するなど、AIエージェントの応用範囲は拡大しています。

国や研究機関での開発動向

国や研究機関レベルでも、AIエージェントと生成AIの社会実装に向けた開発支援が進んでいます。例えば、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する「GENIAC‑PRIZE」では、製造業やカスタマーサポート、特許審査における業務効率化などをテーマに、最大約8億円規模の懸賞金をかけた実証型コンテストが開催されています 。

また、AIエージェントに関する社会実装を議題とするカンファレンス「AI Agent Day 2025 Summer」にはNEDOが後援し、実運用を視野に入れた議論が展開されています。さらに、国内の高度なAI研究基盤としてはAISTの「ABCI 3.0」があり、生成AIの性能評価や開発加速に向けた研究環境が強化されています。

参考:懸賞金総額最大約8億円 「GENIAC-PRIZE」の募集を開始しました | ニュース | NEDO
参考:ABCI 3.0: Evolution of the leading AI infrastructure in Japan

対話システムと自動化がもたらす経理業務の効率化

自然言語処理を活用した対話型エージェントは、経理担当者の確認作業や問い合わせ対応を支援します。仕訳や不正検知などの実務で期待できる効率化効果を解説します。

問い合わせ・仕訳処理の自動化

対話システムが高度化することで、経理業務は大きく変わりつつあります。自然言語処理を活用したAIエージェントが経理担当者と会話しながら問い合わせや確認を行い、書類の仕訳や請求書処理などを自動化できるようになります。書類がデジタル化されていれば、クラウドAIを使った画像認識や音声認識と組み合わせて処理を効率化することも可能です。経理担当者が見るべき情報だけを自動で抽出し、確認作業を減らせる仕組みが現実的になってきました。

経費精算領域での具体的な活用については、以下の記事を参考にしてください。

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法改正対応と不正検知への応用

さらに、ビッグデータを用いたデータ解析と連携すれば、一元的に仕訳パターンや不正検知を行うこともできます。AIエージェントの活用は、専門人材の採用が難しい企業にとって大きな助けとなります。電子帳簿保存法やインボイス制度など、法改正への対応にも高度なアルゴリズムと最新データを組み合わせることで迅速なアップデートが可能です。

また、行政機関が次世代の働き方や技能を若い世代に広める取り組みも進んでいます。将来的には、対話システムを活用した自動化がさらに進み、経理担当者は若い世代の知識と組織内のノウハウを組み合わせることで、従来の属人的な業務も含めた大幅な負担軽減を実現できるでしょう。

以下の記事では、電子帳簿保存法対応について詳しく解説していますので参考にしてください。

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エージェントシステム導入効果とAIプラットフォーム連携

AIエージェント導入は単なる効率化にとどまらず、他システムやAIプラットフォームと連携することで精度向上や決算業務の負担軽減にもつながります。

単純作業の削減とスピード化

AIエージェントを導入することで期待できる効果として、単純作業の自動化とスピードアップが挙げられます。複数のツールを連携させる仕組みを採用すれば、医療分野のように多角的な観点からデータを照合し、精度の高い業務支援が可能となります。

医療分野では、知識グラフと大規模言語モデルを組み合わせたAIエージェントが開発され、複雑なデータを照合して誤りを最小限に抑えつつ回答精度を高める研究が進んでいます。これは経理業務にも応用できる可能性があり、会計基準や税法上のルールを知識グラフ化し、大規模言語モデルで自然言語質問に対応することで、グレーゾーンの処理をサポートできるかもしれません。

AIプラットフォーム連携の重要性

また、AIプラットフォームとの連携も重要です。クラウド型AI環境を導入すれば、地域を問わずネットワーク上で最新のアルゴリズムや機械学習モデルを利用できます。自律型エージェントが外部のデータ解析やニューラルネットワークを取り込み、特定期間に集計したデータをリアルタイムで統合すれば、決算期末の手作業を大幅に削減することも可能です。ただし、運用面ではAI倫理やセキュリティ、責任所在などの課題に注意が必要です。導入時にはヒューマンチェックを挟みながら、慎重に運用することが求められます。

導入時のリスクと注意点

AIエージェントの導入は大きな効果をもたらす一方で、いくつかのリスクや注意点を軽視すると思わぬ失敗につながる可能性があります。まず、AIが自律的に判断する特性上、仕訳や請求書処理の誤判定に対する最終責任がどこにあるのかを明確にしておく必要があります。特に経理分野では法令遵守が必須であり、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を怠ると重大なコンプライアンス違反となる恐れがあります。

また、セキュリティの観点からは、外部システムやクラウドAIと連携する際のデータ保護とアクセス権限管理が欠かせません。機密性の高い経理データを扱うため、導入前に社内規程やガイドラインを整備し、運用後も定期的に監査を行う体制が求められます。さらに、導入目的を明確にせずにツール選定を進めてしまうと、「効率化につながらない」「現場が使いこなせない」といった課題が発生しやすくなります。

そのため、AIエージェントの導入を検討する際には、スモールスタートでの試験導入や社内教育の徹底を行い、段階的に適用範囲を広げることが重要です。こうした観点を踏まえて、次に示す「経理担当者が導入検討時に失敗しないためのチェックリスト」を活用すれば、リスクを抑えながら着実に導入を進めることができます。

経理担当者が導入検討時に失敗しないためのチェックリスト

チェック項目確認内容実務での注意点
導入目的の明確化自社の課題(人手不足、法改正対応、業務効率化など)と導入目的を整理したか「何を解決したいか」を数値や事例で明示することが重要
対応法令の確認電子帳簿保存法やインボイス制度に準拠できるか導入後の法改正にも迅速に対応できる仕組みかを事前に確認
既存システムとの連携会計ソフトや経費精算システムとスムーズに連携できるか連携テストやデータ移行のシミュレーションを推奨
セキュリティと責任所在アクセス権限やデータ管理のルールが明確化されているか情報漏洩や責任の所在が曖昧にならないようにガイドラインを設ける
スモールスタートの実施小規模な業務で試験導入し、成果を検証できるか全社展開前にリスクを抑え、段階的に拡張する
社内周知と教育経理担当者や関係部署への周知・研修を行ったか属人化を防ぎ、運用ルールを組織全体で共有する

以下の記事では、インボイス制度対応チェックについて詳しく解説していますので参考にしてください。

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経理AIエージェント

これからのAIトレンドと知能エージェントの未来

今後は強化学習やロボティクスとの融合により、AIエージェントは経理業務だけでなく生産現場まで広がっていくと予測されます。未来像と経理部門への示唆を解説します。

業界ごとの特化型エージェント

今後、多くの業界で業界特化型のAIエージェントや大規模言語モデル(LLM)の開発・活用が進むと期待されます。実際、LLMを活用したエージェントが、顧客対応、製造、教育、金融、医療など多岐にわたる分野で応用されていることが研究で確認されています。また、NEDOをはじめとする研究機関でも、生成AIやエージェントの社会実装に向けた技術開発が進行中です。

参考:Domain-Specific Agents: AI Tailored for Your Industry
参考:Technology Development Project on Next-Generation Artificial Intelligence Evolving Together With Humans | NEDO

一方で、完全な自律型エージェントには明確にすべき課題が残っています。判断ミスや責任の所在、プライバシーやセキュリティの懸念などが挙げられており、完全に人の介入なしに任せるのは現在なお慎重な姿勢が求められます。

参考:What are the risks and benefits of ‘AI agents’? | World Economic Forum

こうした背景から、経理部長や現場の意思決定者がAIの仕組みを正しく理解し、導入と運用を主体的に進めることが、AIエージェントを業務課題解決に活かす鍵となります。特に、AIのオートメーションに対する目的や責任体制を明確に設計することが不可欠です。

参考:Seizing the agentic AI advantage | McKinsey

中小企業におけるスモールスタート

中堅・中小企業の場合、AI導入は大掛かりな投資というイメージがあるかもしれませんが、クラウド環境やAI開発ツールの進化により、小規模から試しに導入する「スモールスタート」がしやすくなっています。経理のDX化を進め、定型作業を自動化し、残業削減を実現すれば、人手不足や法改正対応への不安が軽減されるだけでなく、ペーパーレス化による書類管理の効率化にもつながります。最終的には、AI運用のノウハウを組織全体で共有することで、競争力を高めることが期待できます。

将来の発展と残る課題

今後のAIトレンドとしては、強化学習や最新のニューラルネットワークをベースに、データ解析精度を向上させる動きが続くでしょう。ロボティクス分野とも組み合わせ、バックオフィスだけでなく生産現場でもAIエージェントが活躍する未来が現実的になりつつあります。経理現場でも、ツール選定から導入後の運用を通じて、持続的な成長と生産性向上を目指す企業が増えていくはずです。業務効率化に悩む経理担当者こそ、一歩踏み出してAI技術の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

AIエージェントは、単純作業の自動化から法改正対応まで、経理部門が直面する課題を幅広く支援できる仕組みです。大規模言語モデルや自然言語処理を組み合わせることで、仕訳や請求書処理といったルーチン業務を効率化し、担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

また、クラウド環境を活用すれば、中小企業でも小規模から導入可能です。ただし、責任所在やセキュリティリスクといった課題もあるため、ヒューマンチェックを組み合わせた慎重な運用が欠かせません。経理DXを加速させるためには、AIエージェントの仕組みを正しく理解し、自社の業務フローに即した形で導入を検討することが重要です。

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