内部統制

建設業の「下請法(取適法)」 2026年改正の要点と実務対応

更新日:2025.10.10

この記事は約 8 分で読めます。

建設業_下請法

建設業では、工事の再委託は主に「建設業法」で管理される一方、設計図の作成や資材の製造委託などは「下請法(2026年1月以降は『中小受託取引適正化法』=取適法)」の対象になる場合があります。

→ダウンロード:免税事業者との取引の注意点!下請法・独占禁止法を解説

この記事では、建設業における適用範囲の線引き、2026年施行の改正ポイント、元請・下請それぞれの実務で今すぐ見直すべき契約・支払・価格交渉の要点を整理し、今日から始めるスモールスタートの進め方まで、分かりやすく解説します。

建設業法と下請法(取適法)の違いを3分で整理

建設工事の請負は建設業法が基本、一方で設計・資材製造・BIMや測量データなどの成果物・役務の委託は、内容に応じて下請法(2026年1月以降は取適法)が関わります。まずは両者の守備範囲、典型的なNG、現場での判断ステップを短く押さえ、のちの改正点・実務対応の読み込みをスムーズにします。

「建設業法と下請法の違い」があいまいだと、適用判断や支払期日の設計で迷いが生じます。以下の比較表で対象・書面・支払・2026年変更点を先に整理してから、詳細へ進みましょう。

表:建設業法と下請法(取適法)の違いと実務の着眼点

論点建設業法(工事の請負)下請法(取適法)※2026年1月施行実務メモ
対象領域建設工事そのもの(施工・現場作業・出来形)製造・情報成果物・役務の委託(設計図面、BIMモデル、測量データ、資材製造、運送等)契約の「目的」が施工か成果物・役務かで切り分けます。
主な目的工事の適正な施工・品質確保・下請契約の公正受託側の取引の公正確保(書面の明確化、代金決定の透明性、支払の適正)現場運用(建設業法)と取引公正(取適法)で役割が異なります。
典型NG追加・変更契約の未締結、不当な指値、必要情報の未通知、やり直し費用の一方負担書面不備、受領拒否・減額・買いたたき、一方的な代金決定、支払遅延、手形払い(禁止)どのルールで注意されるかを先に把握し、契約様式で予防します。
書面・電磁交付仕様・工程・追加変更の合意を明確化。電子運用は記録性と権限管理が前提相手の承諾にかかわらず電磁的方法で交付可。必須記載事項・保存が実務の要電子で残す前提でテンプレ整備とアクセス権限の設計を行います。
支払期日・起算検収の定義と起算日の共有、期日の運用徹底原則60日以内の支払、遅延や相殺の濫用は不可検収の基準と記録を先に決め、期日計算を自動化すると遅延を防げます。
2026年の主な変更法律名の変更、従業員数基準の導入、特定運送委託の明確化、一方的決定の禁止強化、手形払いの禁止様式・規程・支払手段の見直しを「小さく試す」から始めます。
社内運用現場と調達・経理で情報共有、追加変更は追補契約で管理価格協議メモと承認ルート、支払サイトと方法を明文化迷ったときの「上の人への相談フロー」を必ず用意します。

定義と対象のちがい

建設業法は、建物や土木構造物を実際に作る工事そのものを扱い、現場での安全や品質、追加・変更の合意の仕方までを含めて管理する考え方です。これに対して下請法(2026年1月以降は取適法)は、製造や設計、データ作成、運送などの「成果物やサービスの委託」に目を向け、発注内容を記した書面の交付や、代金の決め方、支払のタイミングが公正であるかを見ています。

したがって、契約書の目的が「施工の完成」なのか「成果物・役務の納品」なのかを最初に確かめることが、誤解を避ける近道です。ひとつの案件に設計と施工が混在する場合は、契約を分けることで適用ルールが整理され、検収や支払の運用も明確になります。

典型NGのちがい(現場×取引)

現場の運用を中心にみる建設業法では、追加や変更が生じたのに合意文書を作らずに進めてしまうこと、相場や根拠を示さずに一方的な価格を押し付けること、地盤や周辺条件など重要な情報を十分に知らせないことが問題になりやすい傾向があります。これに対して取適法の観点では、注文書に必要な項目が載っていない、代金を一方的に決める、納品を受け取らない、理由なく減額する、支払いを先延ばしにする、といった行為が指摘されます。

さらに手形払いは原則として認められないため、振込や電子的な支払方法に移す準備が欠かせません。どちらのルールでも共通して大切なのは、検収の基準と起算、価格の根拠、変更の記録をその都度残すことです。これらが整っていると、現場の判断と経理の処理が噛み合い、後の争点も減らせます。

実務判断のステップ

最初に行うのは契約目的の見取り図づくりです。施工の完成を目指すのか、図面やモデル、データ、資材といった成果物の納品を目指すのかをはっきりさせ、検収の方法と支払の起算を合わせます。次に、成果物や役務の委託に当たる場合は、注文書の必須項目、価格の決め方、支払手段と期日を電子運用前提で書き込み、価格交渉のやり取りをメモに残します。

最後に、2026年の変更点への対応として、従業員数の基準や特定運送の扱い、手形廃止の影響を確認し、支払サイトや承認ルートを小さく見直してから広げていきます。迷った場面では、過去の同種案件と照らし、判断メモと「上の人への相談フロー」に沿って合意形成を進めると、安全に前へ進めます。

建設業法と下請法(取適法)の違いと適用場面の線引き

建設工事そのものの再委託は「建設業法」で管理されるため、下請法の対象外です。一方、設計図面の作成や建設資材の製造などは、取引の内容によって下請法(取適法)の対象になり得ます。まずは自社の委託が「工事」か「製造・情報成果物」かを切り分け、適用法令を誤らないことがスタート地点です。

建設業界における適用法令の判定フローチャート

参考:よくある質問コーナー(下請法)|公正取引委員会

建設業法の守備範囲となる工事請負

建物や土木構造物を実際に作る作業は、基本的に建設業法が土台になります。元請が下請に工事の一部を任せる場合も、契約の内容や品質、現場で守るべきルールは建設業法に沿って管理されます。追加工事が発生したときは、口頭で進めずに、内容と金額、工期をわかるように書面や電子文書で残すことが、後のトラブル回避につながります。

現場の実態に合わせて工程表や仕様書を更新し、検収の基準も早めに共有しておくと、支払いの起算日があいまいにならず、支払遅延の火種を減らせます。

下請法の守備範囲である設計・資材製造・情報成果物作成

建物そのものを作るのではなく、図面を起こす、資材を製造する、写真測量データやBIMのモデルを納品する、といった“成果物”を受け渡す取引は、内容によって下請法(取適法)が関わります。ここで重視されるのは、注文書に必要な項目が載っているか、納期や検収の基準が明確か、代金の決め方や支払期日がわかるか、という点です。

発注側は「とりあえずやっておいて」と曖昧にせず、成果物の範囲と変更の手順、再作成が必要になった場合の扱いをあらかじめ示すことが重要です。受け手側は、納品条件やリスクの分担について記録を残し、価格の見直しが必要なときは、根拠となる材料や工数の情報を整理して話し合える状態にしておきます。

誤りやすいグレーゾーンの確認ポイント

測量や地盤調査のように工事に近い前段作業、現場での加工を伴う資材の納入、ソフトウェア設定やデータ変換など、工事と成果物の中間に見える取引は、判断を迷いやすい領域です。まずは契約書の目的を読み解き、最終的に「物やデータを納める契約」なのか、「工事の一部を請け負う契約」なのかを整理します。

次に、検収の方法と支払いの起算をどのように決めているかを確認し、合意の証拠が残る形に直します。社内では、迷ったときにすぐ参照できる「判断メモ」と「上の人への相談フロー」を用意し、同種の案件の扱いが部署や担当者でぶれないようにしておくと、安全性が高まります。

「建設業法 × 取適法」対照表

論点建設業法(下請契約)取適法(旧:下請法)実務メモ
対象領域工事の請負(施工)製造・情報成果物・役務等の委託契約目的で切り分ける
基本資料法令遵守ガイドライン(第11版)運用基準・明示規則 等(2026年改正)最新版リンクを社内ポータルに集約
典型NG追加変更契約の拒否/不当な指値 等書面不備/一方的な代金決定/手形使用毎月の自己点検チェックリスト化
2026年の影響用語変更・従業員基準・特定運送・手形禁止様式と規程を一括アップデート
免税事業者との取引における注意点、下請法・独占禁止法

2026年1月から下請法は「取適法」へ名称変更

2026年1月、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に改称され、対象の広がりや禁止行為の追加など実務影響が拡大します。従業員数基準の導入、特定運送委託の追加、手形払いの禁止、価格協議に応じない一方的な決定の禁止など、契約・支払・交渉の運用を見直す必要があります。

親事業者→委託事業者などの名称・用語の変更点

呼び名が変わる背景には、取引の姿が多様化していることがあります。「親事業者/下請事業者」という上下の表現から、「委託する側/受託する側」という関係を表す言い方に改められ、工事以外の幅広い委託にも目配りする設計になります。

名称が変わっても、基本的な考え方は同じで、注文内容を明確にし、支払いと価格の決め方を透明にし、無理な要求で相手にしわ寄せをしない、という筋道は変わりません。社内の規程や様式で旧用語を使っている場合は、説明文と合わせて順次置き換え、誤解が生まれないように周知します。

適用範囲の拡大(従業員基準/運送委託の追加)

適用の判断では、取引の種類に加えて、受託側の規模を見る場面が増えます。とくに従業員数の基準が導入されると、これまで対象外だと思っていた先との取引が、対象になる可能性があります。さらに、運送に関わる委託の一部が明確に組み込まれることで、建設現場への資材配送や回収など、周辺業務の扱いも見直しが必要になります。

実務では、仕入先や協力会社のリストを棚卸しし、規模と取引内容を最新化したうえで、どの契約が新ルールの目配り対象かを洗い出しておくと、施行時の混乱を抑えられます。

追加された禁止行為と違反リスク

禁止行為が広がることで、発注側の「慣例」にあったやり方が見直しを迫られます。たとえば手形での支払いに依存している場合は、現金振込や電子的な決済へ早めに切り替える計画が必要です。価格についても、一方的に据え置いたり、協議の場を設けない運用は、説明責任を果たせずに問題化しやすくなります。

違反が指摘されたときに備えて、契約の作成過程や価格を決めた根拠、交渉のやり取りを残す仕組みを作り、担当者が異動しても追跡できる状態を保つことがリスクを下げます。

「注文書・契約書」必須記載チェックリスト

項目記載例確認
目的物/作業範囲図面No・モデル範囲・除外条件       □
納期/検収方法合否基準・再提出ルール       □
対価/決定根拠単価表・歩掛・見積添付       □
支払期日・方法検収月末締翌月末振込 等       □
変更手順追補契約・承認者・記録先       □
知財・再委託許諾条件・要承認       □

元請・下請が今すぐ整えるべき「契約・支払・交渉」の実務

注文書・契約書の電磁的交付、記載必須事項の欠落防止、支払期日の明確化、価格交渉の記録化は、最優先の見直しポイントです。とくに価格据置要求の抑制や、代金決定の過程を説明できる資料整備は、監督・指導への対応力を左右します。上の人への相談フローも明文化しましょう。

注文書・契約書の電磁交付と必須記載事項

紙でのやり取りから、メール添付やクラウドのワークフローに切り替えるだけでは十分ではありません。注文内容、数量、納期、検収方法、対価、支払期日、変更の扱いといった必須事項が、誰が見ても同じ意味に読める形で記載されているかが大切です。

様式は一度作って終わりではなく、実際の案件で起きた齟齬を踏まえ、文言や項目を小刻みに見直します。電子交付の場合は、改ざん防止とアクセス権限、時刻の記録が残る運用を合わせて整えると、後の証拠性が高まります。

以下の記事では、注文書・発注書の保管期間と方法について詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事
注文書・発注書の保管期間と方法は?【法人なら10年・個人事業主なら7年が安心】
注文書・発注書の保管期間と方法は?【法人なら10年・個人事業主なら7年が安心】

支払条件・期日の合意と手形以外の実務運用

支払期日は、検収の翌月末などの具体的な日付に落とし込み、何をもって検収とするのかを取引の最初にすり合わせます。合わせて、支払い方法を手形から振込やオンライン決済に移す設計を進めます。資金繰りへの影響が出る場合は、締日や分割払いの選択肢を用意し、双方が無理なく回る条件を探ります。経理側では、期日の自動リマインドと消込のルールを整え、支払遅延の兆しが出た時点で上の人に相談できる流れを明文化します。

以下の記事では、支払期日“60日以内”の決め方と実務のチェックポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事
請求書の支払期限は何日が適切?決め方と未払い時の対処法
請求書の支払期限は何日が適切?決め方と未払い時の対処法

価格交渉の進め方と記録テンプレ

価格の見直しは、その場しのぎの値切りや押し戻しでは続きません。材料費や人件費、外部環境の変化といった根拠を、双方が持ち寄れるように準備します。社内では、交渉の依頼から決裁までの流れを短くし、誰がどの段階で判断するかを図にして共有します。

交渉の記録は、やり取りの概要、提示した根拠、合意した条件、次回の見直し時期までをテンプレに沿って残します。合意した内容が契約書や注文書に反映されるまでを一連の作業として扱うことで、言った・言わないの争いを減らせます。

参考:2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(PDF)|公正取引委員会

請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策

建設業法の「法令遵守ガイドライン」と下請法の関係

建設工事の下請契約は建設業法の規律が主役です。追加・変更契約の締結拒否や不当な指値発注、情報の未通知などは、ガイドライン上の問題行為とされます。取適法の考え方と矛盾しないよう、建設業法ガイドラインで求められる行為基準を現場の手順に落とし込みましょう。

追加・変更契約/やり直し負担の整理

現場では、設計変更や想定外の作業が避けられません。追加や変更が生じたら、まず原因と範囲を整理し、金額と工期への影響を見積もります。そのうえで、追加契約や追補契約として、内容を文書にして合意します。

仕上がりに不備があった場合のやり直しについては、どこまでを受け手が負担し、どこからは発注側の負担になるのかを契約で明確にします。現場の判断で先に進めると、後で費用負担の争点になりやすいため、決め事を先に整える姿勢が肝心です。

地盤・環境などの発注者からの事前情報通知

地盤の状況、周辺環境、既存図面の正確さなど、工事を左右する情報は、発注側が早い段階で提供するほど、手戻りが減ります。提供が遅れたり不十分だと、追加作業や安全対策が後追いになり、コストや工期の膨張につながります。

情報の受け渡しは、更新の履歴が残る方法で行い、現場と設計、調達の全員が同じ資料を見られる状態を保ちます。疑問点が出たときにすぐ問い合わせる窓口を一本化しておくと、判断が早まり、責任の所在も明確になります。

「しわ寄せ」防止と元請の管理責任

工程の遅れや追加コストを、下流の協力会社に押し付ける運用は、短期的には楽でも、品質と信頼を損ね、将来のコスト高を招きます。元請には、現場の事情を踏まえて計画を組み直し、価格や工期の見直しが必要なら交渉の場を設ける責任があります。社内の評価制度でも、無理を通して数字を作るやり方ではなく、情報共有と適切な合意形成ができた現場を評価する指標に切り替えると、行動が変わりやすくなります。

「建設業法ガイドライン」NG→是正の対応表

よくあるNG何が問題か是正の仕方
口頭で追加作業を指示契約不備/費用負担の不明確化追補契約で範囲・金額・工期を確定
不当な指値発注対等性欠如・品質低下の恐れ根拠開示のうえ協議・記録化
長期の支払保留下流へのしわ寄せ・資金繰り悪化検収基準の明確化と期日運用

参考:建設業法令遵守ガイドライン(第11版)|国土交通省

下請法の改正に備えて社内ルールと帳票を整える

全社一斉の大改革ではなく、まずは高頻度の委託から小さく始めます。①注文書の定型化、②価格協議メモの様式統一、③支払期日のカレンダー管理、④相談フローの明文化から着手し、実効性を検証しながら範囲を広げましょう。

注文書テンプレと承認ルートの軽量化

まずは、日々の発注に一番よく使うパターンから、注文書のテンプレートを一本化します。案件に応じて差し替える場所がすぐわかるようにし、承認の経路は最短でたどれる設計にします。金額やリスクが大きい案件だけ、追加の確認を入れる段階的な仕組みにすると、スピードと安全の両立がしやすくなります。作って終わりにせず、現場からのフィードバックで文言を磨き続けるのがコツです。

価格協議メモ/合意記録の作り方

価格のやり取りは、メールの断片だけに頼らず、専用のメモに要点をまとめます。背景、提示条件、根拠、双方の認識の差、最終合意の内容、次回の見直し予定を一枚に整理し、関係者が同じものを参照できるようにします。合意に至らなかった場合も、その理由を残しておくと、次の交渉で無駄が減ります。記録の保管場所と閲覧権限はあらかじめ定め、担当者の異動があっても追跡できるようにします。

支払期日・検収起算日の運用ルール

検収日が決まらないと、支払いの期日も定まりません。納品の単位と検収の手順を先に定め、検収の完了を誰が、どの記録で示すかを決めておきます。経理は、その日付から支払期日を自動計算できるようにし、締切前に相手へ確認の連絡が届く仕組みを整えます。検収が遅れた場合の扱いも取り決めておくと、不要な摩擦を避けられます。

建設業の下請法対応でよくある典型的NGと是正例

「口頭発注の恒常化」「追加作業の契約未締結」「据置要請の慣行」「手形を前提にした資金繰り」が典型的なNGです。是正は、書面(電子含む)化の徹底、追加・変更時の合意記録、価格協議の定例化、支払手段と期日管理の見直しから始めます。根拠と運用をセットで改善しましょう。

口頭発注→電子注文書への一本化

いつもの感じでお願い」というやり取りは、双方の記憶に頼るため、内容の食い違いが起きやすくなります。簡単でもよいので、電子注文書に一本化し、内容と期日、対価をその都度確定させます。急ぎの案件でも、後追いで合意文書を残すことを徹底すると、支払いと品質の基準がはっきりし、現場の不安が減ります。

追加・変更の事前合意と追補契約

作業の途中で仕様が変わるのは珍しくありません。ポイントは、着手の前に範囲と金額、工期の影響をすり合わせ、追補契約として残すことです。口頭で先に動くほど、後の価格調整が難しくなります。定例の打合せに「変更点の確認」と「記録の更新」を必ず入れ、合意が紙や電子の書面に反映されるところまでを一つの作業にします。

期日・支払手段の見直しと通知

支払手段は、相手の資金繰りを直撃します。振込やオンライン決済に移る際は、締日と支払日、振込先の確認といった実務の段取りも合わせて整理します。変更が決まったら、早めに通知し、初回の運用でつまずきやすい点(名義の相違や消込の方法など)を事前に説明します。内部では、期限を守れなかった場合の対応手順も決めておくと、現場の判断がぶれません。

以下の記事では、下請法・独禁法の“やってはいけない”を事例について詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事
【インボイス制度】下請法・独占禁止法に違反するケースとは?免税事業者との取引を解説
【インボイス制度】下請法・独占禁止法に違反するケースとは?免税事業者との取引を解説

建設業の下請法FAQ:よくある誤解の整理

建設業には下請法が全く効かない」「設計や製造もすべて建設業法で見る」といった誤解が残りがちです。工事請負は建設業法、設計や資材製造は内容によって取適法が関わることがあります。まずは自社の委託を正しく分類し、根拠リンクを社内で共有しましょう。

自社ケースはどの法律を優先?

まず、契約の目的をはっきりさせます。工事の一部を請け負うなら建設業法が中心、成果物を納めるなら取適法が関わる可能性があります。設計から施工まで一体の案件でも、契約を分ければ適用が分かれることがあります。迷う場合は、契約書の条項と実際の運用を突き合わせ、社内の判断メモと相談フローに沿って確認します。

以下の記事では、建設業で注意すべき“下請法×インボイス”の実務について詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事
インボイス制度で変わる建設業界!3つの注意点と準備をわかりやすく解説
インボイス制度で変わる建設業界!3つの注意点と準備をわかりやすく解説

2026年施行までの実務タイムライン

最初に、現行の様式と契約フローを洗い出し、新しい呼称や禁止行為に合わない箇所を見つけます。次に、影響が大きい取引から順に、注文書や支払条件、価格交渉の運用を整えます。施行前に試行期間を設け、小さく回して改善点を洗い出す「スモールスタート」を繰り返すと、本番移行が滑らかになります。

行政の解説・説明会情報の探し方

最新の解説は、所管官庁のサイトや説明会資料にまとまっています。キーワードで探す際は、法律名の旧称と新称の両方を使い、更新日の新しいページを優先して確認します。社内ポータルに重要リンクをまとめ、定期的に更新状況を点検すると、担当が代わっても情報が途切れません。

参考:2026年1月施行!~下請法は取適法へ~改正ポイント説明会の実施について|公正取引委員会

まとめ

建設業の実務では、「工事」は建設業法「設計・資材製造・情報成果物」は内容によって取適法(旧:下請法)の対象となる可能性があり、まずはこの線引きを誤らないことが重要です。2026年1月の施行により、対象や禁止行為が広がるため、注文書・契約書の電磁交付、価格協議の記録、期日と支払手段の見直しを前倒しで進めましょう。小さく始めて検証し、社内ルールと帳票を更新し続けることが、指摘やトラブルを減らし、現場の生産性を守る近道です。

請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策
DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
支出管理プラットフォーム「TOKIUM」がすぐわかる 3点セット
経理AIエージェントのサービス資料

関連記事