インボイス制度

インボイス制度で変わる建設業界|影響と元請・一人親方の対応を解説

更新日:2026.08.27

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インボイス制度が建設業界に与える影響

インボイス制度の影響は、建設業では特に広い範囲に及びました。元請から一次下請、二次下請、そして一人親方へと発注が階層状に連なり、その末端に免税事業者が多く存在するからです。

そのインボイス制度が、2026年10月1日に節目を迎えます。免税事業者などへ支払った消費税のうち、差し引ける割合が80%から70%へ引き下げられます。令和8年度税制改正で経過措置そのものが2年延長された結果、縮小のスケジュールも従来の3段階から4段階に組み替えられました。

本記事では、協力会社や一人親方へ発注する側である元請・工務店の経理担当者を主な読者に、インボイス制度が建設業に与えた影響と、元請・一人親方それぞれが取るべき対応を整理します。人工代や現場の立替経費といった、建設業でなければ出てこない実務論点にも踏み込みます。

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建設業界の人が知っておきたいインボイス制度

会社は、売上にかかった消費税から、仕入れや外注で支払った消費税を差し引いて納税します。この差し引きを仕入税額控除といいます。2023年10月にインボイス制度(正式名称は適格請求書等保存方式)が始まってからは、この差し引きをするために、支払先から受け取った請求書が適格請求書であることが条件になりました。

ここでいう免税事業者とは、消費税の納税義務が免除される事業者のことで、建設業では一人親方などが該当することがあります。ただし一人親方がすべて免税事業者というわけではなく、登録を受けて適格請求書を交付できる方もいます。確認すべきは職種や事業形態ではなく、登録の有無です。

建設業でこの制度の影響が広い範囲に及ぶのは、発注の連鎖が長いためです。元請から一次下請、二次下請へと工事が流れ、その先には年間の売上高が1,000万円以下の一人親方が数多くいます。そのうち登録を受けていない方は、適格請求書を交付できません。階層が深いほど、登録状況を確認する取引先の数も多くなります。

建設業では請求書の確認フローにも他業種と違う事情がありますが、これは次章で扱います。

インボイスとは何を指すのか

インボイスとは、売り手が買い手に対して、正確な適用税率と消費税額を伝えるための書類です。正式には適格請求書といいます。制度開始前の区分記載請求書等保存方式では、適用税率ごとに区分した請求書と、区分経理に対応した帳簿を保存すれば仕入税額控除を受けられました。

現在は記載事項が増えています。区分記載請求書の記載項目に加えて、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の3つが必要になりました。様式そのものは法令で定められていないため、必要な事項さえ記載されていれば、名称が請求書でも納品書でも、手書きであってもかまいません。

インボイス制度の全体像に関する記事はこちら

インボイスを交付できるのは登録を受けた事業者だけ

適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。免税事業者のままでは交付できませんが、課税事業者になる手続きを別途踏む必要はありません。経過措置により、免税事業者は登録申請書を提出するだけで登録を受けられ、登録日から課税事業者になります。消費税課税事業者選択届出書の提出は不要です。

裏を返すと、登録を受けていない事業者は、たとえ課税事業者であっても適格請求書を交付できません。一人親方だから交付できない、という単純な話ではありません

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インボイス制度による建設業への影響

建設業がインボイス制度から受けた影響は、登録を受けていない事業者への発注で仕入税額控除ができなくなること、経過措置で認められる控除割合が2026年10月に縮小すること、請求書の確認作業が増えること、そして契約形態と実態のずれを見直すきっかけになったことの4つです。あわせて、控除割合の縮小で自社の負担がどれだけ増えるのかも金額で確認します。

建設業の多重下請構造。元請から一次下請、二次下請、一人親方へと発注が連なり、各段階で適格請求書発行事業者の登録状況の確認が必要になることを示した図

免税事業者への発注で仕入税額控除ができなくなる

免税事業者や、登録を受けていない課税事業者へ発注した場合、買い手はその課税仕入れについて消費税額を控除できません。相手が適格請求書を交付できないためです。

控除できないぶんは、そのまま自社が納める消費税の増加につながります。免税事業者や登録を受けていない事業者への外注費が占める割合が大きいほど、影響は大きくなります。ただし後述する経過措置があるため、2026年8月現在、直ちに一切控除できなくなるわけではありません。

仕入税額控除の仕組みに関する記事はこちら

経過措置の控除割合が2026年10月に80%から70%へ下がる

免税事業者などからの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。この経過措置は令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、あわせて控除できる割合の刻みも見直されました。改正後は、2031年9月30日までの計8年間にわたって割合が段階的に縮小していきます。

▼ 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(令和8年度税制改正後)

期間 控除できる割合
2023年10月1日〜2026年9月30日 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日〜2028年9月30日 70%
2028年10月1日〜2030年9月30日 50%
2030年10月1日〜2031年9月30日 30%
2031年10月1日以降 控除できない

注意したいのは、下げ幅が一定ではない点です。最初の刻みは10ポイントですが、2028年10月には一気に20ポイント下がります。負担の増え方が大きくなるのは2028年だと見込んで、資金計画を立てておくと余裕をもって備えられます。

さらに、この経過措置には金額の上限があります。一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、その年または事業年度で税込1億円を超える場合、超えた部分には経過措置を適用できません。この上限は令和8年度税制改正で10億円から1億円へ引き下げられ、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。大口の協力会社がある元請では、支払先ごとの年間累計額の管理が必要になります。

控除できる割合は、令和8年10月から2年間が70%、令和10年10月から2年間が50%、令和12年10月から1年間が30%と縮小し、令和13年10月以降は控除できなくなります。 出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」(最終確認日:2026年8月7日)

なお、「6年間の経過措置」「2029年9月末で終了」という説明は改正前のスケジュールに基づくものです。改正前は80%の次が50%で、2029年9月30日に終わる予定でした。改正内容が反映される時期は資料によって異なるため、社内資料や取引先向けの説明資料を作るときは、参照した資料の作成日を確認してください。

インボイス制度の経過措置スケジュール。2026年9月まで80%、以後70%・50%・30%と縮小し2031年10月以降は控除不可

インボイス制度の経過措置に関する記事はこちら

外注費にかかる消費税の自社負担が重くなる

控除割合が80%から70%へ下がると、自社の負担はどれだけ増えるのでしょうか。登録を受けていない一人親方1名への外注費が月額55万円(うち消費税5万円)の場合で比べてみます。

▼ 控除割合が80%から70%へ変わったときの負担の違い(登録を受けていない一人親方1名への外注費 月額55万円・うち消費税5万円の場合)

2026年9月30日まで(80%) 2026年10月1日以降(70%)
控除できる消費税額 4万円 3万5,000円
自社が負担する消費税額 1万円 1万5,000円
1名あたりの差額 月5,000円(年6万円)

1名あたりでは月5,000円の差ですが、同じ条件の取引先が10名いれば年間60万円の負担増になります。登録を受けていない支払先への外注費が年間いくらあるのかを把握しておくと、10月以降の資金計画を立てやすくなります。

把握の手順はシンプルです。支払マスタから登録番号欄が空欄の支払先を抽出し、当期の支払累計を集計します。この作業は、前述した税込1億円の上限に触れる支払先がないかの確認も兼ねられます。

なお、控除できなかった消費税相当額は原則として工事原価に算入され損金となるため、キャッシュベースの実質的な負担は表の差額より小さくなります。処理方法や実際の税額は、採用している経理方式や簡易課税制度の適用の有無によって変わります。上の試算はあくまで概算なので、自社への影響を正確に見積もりたい場合は顧問税理士に確認してください。

インボイス制度の経過措置で控除割合が80%から70%に変わったときの負担の比較。登録を受けていない一人親方1名への外注費が月額55万円の場合、自社負担は1万円から1万5,000円に増え、差額は年6万円になることを示した図

請求書の確認と経理事務の手間が増える

インボイス制度が始まってから、請求書を1枚受け取るたびに確認する項目が増えました。登録番号が記載されているか、その番号が有効か、税率ごとの消費税額が正しく区分されているか。免税事業者からの請求書であれば、経過措置を適用するための帳簿記載も必要になります。

建設業では、この確認が二段階になります。工事の出来高や内容を把握しているのは現場の担当者なので、請求書はまず現場で確認され、そのあと本社の経理へ回る。拠点や現場が分散していれば、書類が本社に届くまでに日数がかかります。月末に請求書が集中する時期は、確認と回覧に時間がかかり、締め処理の時間が圧迫されやすくなります

協力会社ごとに請求書の様式が異なる点も、確認に時間がかかる要因です。同じ工事の請求でも、様式が違えば見るべき場所が変わります。

契約形態と実態のずれを見直すきっかけになる

インボイス制度をきっかけに、契約形態と実態のずれが見直されるという指摘もあります。登録の有無や契約形態を取引ごとに確認する過程で、実態としては雇用に近い働き方が請負契約として処理されている場合に、それが表面化しやすくなるためです。

ただし制度そのものが契約形態を直接取り締まるわけではありません。登録状況の棚卸しをするときは、指揮命令の実態、用具の負担、代替性の有無といった契約実態もあわせて点検しておくと、後述する人工代の判断にもつながります。

インボイス制度における建設業者の対応

元請や工務店の側が進める対応は6つあります。協力会社の登録状況を確認して管理を続けること、登録を促すときに法令上の留意点を押さえること、適格請求書の記載項目を確認すること、建設業ならではの請求書を正しく扱うこと、2026年10月に向けて帳簿とシステムを見直すこと、そして現場と本社をつないで請求書処理を集約することです。

協力会社・一人親方の登録状況を確認して管理する

最初にすべきなのは、取引のある協力会社と一人親方が登録を受けているかどうかの確認です。登録番号はTから始まる13桁で、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで検索すれば有効性を確かめられます。

ただし取引先が100社を超える元請では、毎月1件ずつ画面で検索するのは現実的ではありません。公表サイトには全件データと月次の差分データのダウンロード機能、およびWeb-APIが用意されています。支払マスタと一括で突合する運用にしておくと、確認漏れを防げます。

確認は一度きりでは終わりません。登録は取りやめることもでき、失効した場合はその日以後の取引が経過措置の扱いに変わります。工事台帳や支払マスタに登録番号の欄を設け、月次で差分データと突合して失効を検知する。新規の協力会社と契約するときに登録状況を必ず聞き取る。この2つを運用に組み込んでおくと安全です。

適格請求書の確認業務の効率化に関する記事はこちら

登録を促す際は独占禁止法・建設業法に注意する

登録の要請そのものは、独占禁止法上の問題にはなりません。問題となるおそれがあるのは、登録しなければ価格を引き下げる、取引を打ち切るといった内容を一方的に通告する場合です。公正取引委員会は免税事業者との取引について、優越的地位の濫用にあたりうる行為類型を示しています。

その前に押さえておきたいのが、適用される法律の切り分けです。建設工事の請負の下請負には下請法(取適法)は適用されず、建設業法が規律します。取適法の対象になるのは、設計や工事図面の作成を委託する場合、建設資材の製造を委託する場合などです。工事の発注と、工事以外の委託とで、見るべき法律が変わる点に注意してください。

▼ 免税事業者との取引で優越的地位の濫用となりうる行為類型

行為類型 考え方
取引対価の引下げ 仕入税額控除できない分を考慮し、双方が協議のうえで価格を決めた場合は、直ちに問題とはならないとされている。再交渉が形式的なものにとどまり、買い手の都合だけで著しく低い価格を設定した場合は、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある
成果物の受領拒否・返品 契約後に、相手が登録を受けていないことを理由に受領を拒む、返品するといった行為は問題となるおそれがある
協賛金等の負担の要請等 取引価格の据置きと引き換えに別の名目で金銭の負担を求めること。負担額や算出根拠が明確でなく、相手があらかじめ計算できない不利益を受ける場合などに問題となるおそれがある
購入・利用強制 取引価格の据置きと引き換えに、関係のない商品やサービスの購入を求めることは問題となるおそれがある
取引の停止 取引先の選択は基本的に自由だが、消費税額も払えないような著しく低い価格を一方的に設定して不当に不利益を与え、応じない相手との取引を停止した場合は問題となるおそれがある
登録の強要(慫慂) 登録しなければ取引しないなど、一方的に通告して登録を迫ることは問題となるおそれがある

これらが問題となるのは、買い手の地位が相手方に優越しており、かつ免税事業者が今後の取引への影響を懸念して要請を受け入れざるを得ない状況にあることが前提です。6つのうち実務で最も判断に迷うのが取引対価の引下げですが、値下げそのものが禁じられているわけではありません。協議したかどうかが分かれ目になります。価格を見直す必要があるなら、書面で協議の経緯を残しながら進めるのが安全です。

なお、工事以外の委託を行っている場合は取適法の対象になります。下請法は2026年1月1日に取適法へ改称されました。従来の資本金基準に加えて従業員数の基準が加わり、協議に応じないまま一方的に代金を決める行為が新たに禁止行為に追加されています。社内規程や取引先向けの説明資料が旧法の呼称のままになっていないか、あわせて確認してください。

インボイス制度と独占禁止法に関する記事はこちら

建設業の取適法(旧・下請法)に関する記事はこちら

適格請求書の記載項目を確認する

受け取った請求書が適格請求書として有効かどうかは、記載事項で判断します。次の6項目がそろっている必要があります。

▼ 適格請求書の記載事項

記載事項 確認のポイント
発行者の氏名または名称と登録番号 登録番号がTから始まる13桁で、公表サイトで有効か
取引年月日 工事の完了日や締め日と整合しているか
取引内容 軽減税率の対象品目があればその旨がわかるか
税率ごとに区分した対価の額と適用税率 税率ごとに合計されているか
税率ごとに区分した消費税額等 端数処理が税率ごとに1回になっているか
交付を受ける事業者の氏名または名称 自社名が正しく記載されているか

見落としやすいのが端数処理です。消費税額の端数処理は、一つの適格請求書につき税率ごとに1回と決められています。明細行ごとに端数処理を積み上げる方式は認められません。表計算ソフトで請求書を作成している場合、明細行ごとに端数処理を行う従来の方式のままになっていることがあります。該当する協力会社があれば、様式の見直しを相談しておくと確認がスムーズです。

適格請求書の基本と発行の準備に関する記事はこちら

建設業ならではの請求書の論点を押さえる

建設業の請求書には、他業種では出てこない論点があります。ここでは経理の現場で判断に迷いやすい3つを取り上げます。

まず人工代です。職人1人を1日いくらで手配する、いわゆる常用の請求がこれにあたります。人工代は労働力の提供に対する対価であり、請負契約に基づく取引であれば課税取引です。適格請求書として交付してもらうなら、他の工事代金と同じく税率ごとに区分した消費税額の記載が必要になります。

注意したいのは、その支払いが給与と判断された場合です。給与は不課税取引なので仕入税額控除の対象外となり、経過措置による70%控除も使えません。給与か外注費かは、指揮命令の実態、材料や用具を誰が負担しているか、他人が代わりに業務を行えるか、引き渡し前の成果物が滅失した場合の危険負担といった点から個別に判断されます。請求書の様式より契約と実態が優先されるため、線引きに迷う場合は税理士に確認してください。

次に判断が難しいのが、現場での立替えです。高速道路料金や燃料代、ホームセンターでの資材購入などを一人親方や下請業者が立て替え、あとから請求してくるケースがあります。このとき、支払先が発行した請求書の宛名は立て替えた一人親方になっています。宛名が自社ではないため、そのままでは自社の控除には使えません。

処理の分かれ目は、立替金として扱うか外注費に含めるかです。次の表で整理します。

▼ 現場で立て替えられた経費の扱い

立替金として処理する場合 外注費に含めて請求される場合
控除できる額 実際の売り手との取引になるため全額 登録を受けていない事業者からの仕入れとして経過措置の割合(2026年10月以降は70%)
必要な書類 支払先が発行した適格請求書の写しと立替金精算書 請求書と経過措置の帳簿記載
注意点 誰の立替えか、実際の売り手は誰かがわかる状態にしておく 立替分と工事代金が混ざると判定できない

なお高速道路の通行料は、公共交通機関特例の対象ではありません。ETCを利用した場合は、クレジットカードの明細だけでなくETC利用照会サービスの利用証明書を保存しておく必要があります。現場と経理で認識が分かれやすい論点なので、社内ルールとして明文化しておくと安心です。

電車やバスの運賃で3万円未満のものは、請求書がなくても帳簿の保存だけで控除できます。また税込1万円未満の少額な課税仕入れには少額特例が使えます。こちらは2029年9月30日までの時限措置で、基準期間の課税売上高1億円以下などの要件があるため、元請の規模では対象外になることも少なくありません。前述の経過措置とは別の制度なので、期限を混同しないでください。

最後は出来高請求と相殺です。建設業では、注文書と請書、出来高請求書、精算書といった書類が層をなします。材料支給分や協力会費を差し引いて請求してもらう相殺の慣行もあります。相殺後の金額だけが記載されていると、税率ごとの対価の額が正しく読み取れません。有償支給した材料代を相殺している場合は、課税仕入れを相殺前の総額で捉え、材料代を自社の課税売上として両建てで計上する必要があります。純額で処理すると課税売上が漏れます。

請求書は総額を表示したうえで、控除する項目を内訳で示してもらう。この様式について協力会社とあらかじめ相談しておくと、双方の確認が速くなります。

建設業でインボイスの判断に迷う3つの論点。人工代、現場の立替経費、出来高請求と相殺について、経理が確認すべきポイントを整理した表

帳簿の記載と会計システムを2026年10月までに見直す

経過措置を適用するには、帳簿に経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載し、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等を保存しておく必要があります。実務では摘要欄に「80%控除対象」や「免」と記載する運用が広く使われています。

ここで一度立ち止まってください。法令が求めているのは経過措置の対象である旨であって、控除割合の数字ではありません。「80%控除対象」のように割合を含む文言にしていると、2026年10月・2028年10月・2030年10月と3回書き換えが発生します。この機会に「経過措置対象」といった割合を含まない文言や、記号を付して別途凡例を保存する運用に切り替えておくと、以後の改定で帳簿の文言を触らずに済みます。

割合を含む文言を使い続ける場合は、10月1日以後の課税仕入れから「70%控除対象」へ切り替えます。9月中の取引と10月以降の取引で表記が混在するので、経理担当者だけでなく入力を担当する現場側にも周知が必要です。

▼ 2026年10月までに見直したい5つの箇所

見直す対象 確認すること
帳簿の摘要欄の文言 割合を含む文言になっていないか。含むなら10月1日以後は「70%控除対象」へ
会計システムの税区分マスタ 税区分の名称に割合が入っていないか。経過措置用の区分を70%に切り替えられるか
社内規程・マニュアル 控除割合を80%と明記している箇所が残っていないか
現場・協力会社への周知文 10月以降の取扱いを説明する文面を用意できているか
10月をまたぐ取引の判定 課税仕入れを行った日で判定する。締め日が月をまたぐ常用や出来高請求に注意

特に注意したいのが最後の項目です。控除割合は課税仕入れを行った日で判定します。建設業では、常用は役務の提供を受けた日、出来高は出来高の確認や引渡しを受けた日、材料は引渡しを受けた日が目安になります。

9月21日から10月20日といった締め期間で請求を受けている場合、同じ請求書の中に80%の取引と70%の取引が混在します。対応は2通りです。協力会社に9月末で区切って2枚に分けてもらうか、1枚のまま自社で9月分と10月分に分けて起票するか。締め日を動かせない協力会社が多いなら後者が現実的で、出来高明細や作業日報を日付の根拠にします。日別の内訳がない一式請求は按分の根拠が作れないため、扱いを税理士に確認しておいてください。

現場と本社をつないで請求書処理を集約する

ここまで見てきた確認作業は、いずれも請求書が手元に集まっていることが前提です。現場で確認した紙の請求書が本社に届くまで時間がかかる状態のままでは、登録番号の確認も帳簿の記載も、締め間際にまとめて処理することになります。

紙が現場から本社へ移動し終わるまで確認を始められない。この制約は、受領そのものを電子化するとなくなります。請求書がデータで共有されていれば、現場の担当者は会社まで取りに戻らなくても内容を確認でき、経理は届いた順に処理を進められます。

大分県竹田市で土木・建築・舗装・営繕工事を手掛ける総合建設業の株式会社松井組では、現場担当者が請求書を受け取るために会社まで戻る必要があり、車で片道1時間程かかる場合もありました。TOKIUMインボイスの導入後、請求書の開封からファイリングまで関係者全体で約200〜250時間を要していた作業は約40〜45時間となり、約200時間の削減につながっています。 出典:TOKIUM導入事例 株式会社松井組(最終確認日:2026年8月7日)

TOKIUMインボイスは、紙で届く請求書も、メールに添付されたPDFも、取引先のシステムからダウンロードする請求書も、受領の窓口をまとめて引き受けます。届いた請求書はデータ化され、登録番号は国税庁のAPIと連携して有効性が確認されるため、経理が1件ずつ公表サイトで検索し直す必要がなくなります。協力会社ごとに様式が異なっていても、確認する場所は同じになります。

電子帳簿保存法にも同時に対応できます。TOKIUMインボイスはスキャナ保存ソフト法的要件認証(JIIMA認証)を取得しており、タイムスタンプ機能を標準で備えています。インボイス対応と電帳法対応を別々に進める必要がありません。

2026年10月の切替を前に、請求書がどこで滞っているのかを先に解消しておくと、自社の会計システム側で必要になる帳簿の記載変更や税区分の設定変更にも、余裕をもって取りかかれます。建設業の請求書受領の効率化にご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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建設業の電子帳簿保存法対応に関する記事はこちら

インボイス制度における一人親方の対応

元請の立場でも、取引先である一人親方がどのような判断を迫られているかを知っておくと、価格や取引条件について双方が納得できる着地点を探しやすくなります。一人親方が向き合うことになる論点は、課税事業者になるかどうかの判断、登録する場合の手続きと請求書の変更、納税負担を抑える特例、そして登録しない場合の取引先との話し合いの4つです。

登録するかどうかを取引先の構成から判断する

一人親方にとって、登録するかどうかは取引先の構成によって答えが変わります。取引先が課税事業者中心であれば、登録しないことで取引条件の見直しを求められる可能性があります。一方で取引先が一般消費者や免税事業者中心であれば、相手は仕入税額控除を必要としないため、登録しなくても影響は限定的です。

▼ 一人親方が登録する場合としない場合

登録して課税事業者になる 免税事業者のままでいる
取引先との関係 適格請求書を交付できるため、取引条件を維持しやすい 相手が仕入税額控除を受けられず、価格の協議を求められることがある
納税義務 消費税の申告と納税が必要になる 従来どおり免除される
事務負担 請求書の様式変更、帳簿の整備、申告作業が発生する 変化は小さい
判断の目安 取引先に課税事業者が多い場合 取引先が一般消費者や免税事業者中心の場合

登録する場合の手続きと請求書を確認する

登録するには、納税地を所轄する税務署長へ登録申請書を提出します。申請はe-Taxからでも書面でも可能。免税事業者であっても、経過措置により登録申請書の提出だけで登録を受けられます。登録が完了すると登録番号が通知され、国税庁の公表サイトに氏名または名称と登録番号が掲載されます。

免税事業者がこの経過措置で課税期間の途中から登録する場合は、登録希望日の記載に注意が必要です。提出日から15日以降の日を登録希望日として記載する決まりになっており、申請日がそのまま登録日になるわけではありません。

登録後は、交付する請求書の様式を変える必要があります。登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等を記載しなければなりません。人工代を請求する場合も同様です。手書きの請求書でも、必要な事項がそろっていれば適格請求書として認められます。

インボイスの登録申請書の書き方に関する記事はこちら

2割特例・3割特例・簡易課税で納税負担を抑える

免税事業者から課税事業者になった場合、納税負担を抑える仕組みがあります。個人事業者が中心の一人親方に特に関係するのは2割特例と3割特例ですが、売上規模によっては簡易課税制度も選択肢になります。

▼ 納税負担を抑える3つの仕組み

制度 対象と期間 内容
2割特例 登録により免税事業者から課税事業者になった事業者/令和8年9月30日が属する課税期間まで 納付税額を売上税額の2割にできる
3割特例 登録により免税事業者から課税事業者になった個人事業者/令和9年分・令和10年分の確定申告 納付税額を売上税額の3割にできる。基準期間の課税売上高1,000万円以下などの要件がある
簡易課税制度 基準期間の課税売上高5,000万円以下/事前の届出が必要 業種ごとに定められたみなし仕入率で控除税額を計算する。建設業は事業区分により率が異なる

3割特例が使えるのは、次の3つをすべて満たす人です。個人事業者であること。基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること。適格請求書発行事業者の登録を受けていること。対象となるのは令和9年分と令和10年分の確定申告です。

3割特例は法人には適用されません。一人親方であっても法人化していれば対象外です。また2割特例の期限が令和8年9月30日の属する課税期間までであるため、個人事業者は2割特例から3割特例へと切り替わる流れになります。どの制度を使うのが有利かは売上と経費の構成によって変わるので、申告前に税理士へ相談してください。

インボイス制度と簡易課税制度に関する記事はこちら

登録しない場合は元請と協議して記録を残す

登録しないという判断をした場合でも、取引が自動的に打ち切られるわけではありません。元請は控除できない分の負担が増えるため、価格の見直しを申し入れてくることがあります。このとき一方的に著しく低い価格を提示されたり、登録しなければ取引しないと通告されたりした場合は、独占禁止法上の問題となるおそれがあります。工事以外の委託であれば取適法の問題にもなりえます。

協議に臨むときは、やり取りを書面で残しておくことが大切です。口頭での合意は後から確認できません。単価の根拠や、いつからその価格を適用するのかを文書で取り交わしておけば、双方にとって安全です。

2026年10月に控除割合が70%へ下がると、元請側の負担がまた増えます。価格の協議が再燃しやすい時期にあたるため、経過措置のスケジュールを把握したうえで話し合いに臨んでください。

建設業のインボイス対応ならTOKIUM

インボイス制度が建設業に与えた影響は、発注が階層状に連なる構造と、その末端に免税事業者が多いという業界特有の事情から、確認すべき取引先の多さという形で広い範囲に及びました。元請は協力会社の登録状況を確認し続け、一人親方は登録の可否と納税負担の見通しを立てる必要があります。

2026年10月1日には、免税事業者からの仕入れに係る控除割合が80%から70%へ下がります。帳簿の摘要欄も会計システムの税区分も、この日を境に切り替わります。経過措置そのものは2031年9月30日まで続きますが、締め日が月をまたぐ常用や出来高請求では、同じ請求書に80%と70%の取引が混在する点にも注意が必要です。

切替の作業に集中するためにも、請求書がいつ手元に届くのかという足元を先に固めておく。その選択肢のひとつがTOKIUMインボイスです。受領の窓口を一本化してデータ化し、登録番号の有効性は国税庁のAPIと連携して確認されます。建設業の請求書受領とインボイス対応にお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

TOKIUMは、TOKIUM経費精算・TOKIUMインボイス・TOKIUM電子帳簿保存・TOKIUM契約管理・TOKIUM請求書発行のシリーズ全体で、累計導入社数3,000社を突破しています(2025年11月末時点)。 出典:株式会社TOKIUM プレスリリース(2025年12月4日)(最終確認日:2026年8月7日)

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建設業のインボイス制度でよくある質問

建設業のインボイス制度について、検索でよく調べられている疑問に答えます。

インボイス制度が建設業に与えた影響は何ですか?

免税事業者への発注で仕入税額控除ができなくなることが最大の影響です。建設業では一人親方に免税事業者が多く、影響を受ける取引が広い範囲に及びました。多重下請構造のため確認すべき取引先が多く、請求書の確認作業も増えました。経過措置により当面は一定割合を控除できますが、その割合は段階的に縮小していきます。

2026年10月からインボイス制度はどうなりますか?

控除できる割合が80%から70%へ下がります。以降は2028年10月に50%、2030年10月に30%と縮小し、経過措置は2031年9月末で終了します。帳簿の摘要欄に控除割合を書いている場合は、10月1日以後の課税仕入れから「70%控除対象」へ切り替えてください。

建設業の一人親方でも適格請求書発行事業者になれますか?

なれます。免税事業者であっても、登録申請書を提出すれば適格請求書発行事業者として登録を受けられ、登録日から課税事業者になります。消費税課税事業者選択届出書の提出は不要です。登録後は消費税の申告と納税が必要になりますが、2割特例や3割特例で負担を抑えられる場合があります。

人工代の請求書もインボイスにする必要がありますか?

元請が仕入税額控除を受けるのであれば必要です。人工代は労働力の提供に対する対価で、請負契約に基づく取引であれば課税取引にあたります。登録番号と、税率ごとに区分した消費税額等を記載します。ただしその支払いが給与と判断された場合は不課税取引となり、経過措置による控除も使えません。線引きに迷う場合は税理士に確認してください。

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