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経理の負担を大幅削減!交通費計算を効率化するデジタル化のステップ

更新日:2025.12.05

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交通費_計算_効率化

交通費計算を効率化するには、紙やエクセルによる手作業を前提に考えるのではなく、ICカードやカード明細の自動取り込みと、領収書・承認フローのデジタル化で「入力・チェック・仕訳」をまとめて減らすことが重要です。

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本記事では、交通費計算の非効率に悩む経理部長・経理担当者の方向けに、現状フローの見直し方から、ICカード連携・経費精算システム導入までの具体的なステップを整理します。月末の残業や差し戻しを減らしつつ、正確性とコンプライアンスを両立させるための考え方と実務上のポイントを、経理目線で解説します。

まず押さえたいQ&A:交通費計算を効率化するには?

交通費計算を効率化したいと考えても、「まず何から手を付けるべきか」「システム導入でどこまで楽になるのか」がイメージしづらいという声は少なくありません。ここでは、経理担当者からよく寄せられる3つの疑問に先にお答えし、本記事全体のポイントをコンパクトに整理します。

Q1. 交通費計算を効率化するには、まず何から始めるべきですか?

A. 最初の一歩は、現状の交通費精算フローを棚卸しし、「必要書類」と「申請・承認ルール」を整理することです。どのような証憑をどの場面で求めるかといった基本方針を決めたうえで、申請期限や承認ルートを明文化し、詳細な計算方法や通勤手当との線引きは別途「交通費計算ルール」の資料や規程に整理しておくと、実務がぶれにくくなります。

Q2. エクセルや紙のままでも、ある程度の効率化はできますか?

A. 一定の効率化は可能で、入力項目の削減・テンプレートの統一・申請期限の明確化だけでも差し戻しや確認の手間を減らせます。ただし、経路・金額の手入力や、領収書の紛失・判読といった課題は根本的には残るため、最終的にはICカードや経費精算システムとの連携を視野に入れた方が、中長期的な負担軽減につながります。

Q3. 経費精算システムを入れると、交通費計算の手間はどのくらい減りますか?

A. システムの機能にもよりますが、ICカードやカード明細、定期区間マスタとの自動連携によって「入力・チェック」にかかる作業の多くを自動化できるため、月末の処理時間や差し戻し件数を大幅に減らせます。さらに、会計ソフトとのデータ連携まで行えば、仕訳入力・支払処理の手作業も削減でき、交通費計算全体の工数を継続的に抑えやすくなります。

なぜ交通費計算は、ここまで経理担当者の負担を増やしてしまうのか?

リモートと出張が混在するなかで移動経路や運賃制度が複雑化し、小口現金・ICカード・法人カードなどの支払い手段も入り混じることで、経路チェックや集計・照合にかかる工数が膨らみ、経理担当者の負担が増大しています。

企業活動の多様化と移動の複雑化

リモートワークの普及後も、営業活動や特定の会議、出張など、対面での移動が必要な業務は残ります。しかし、その移動は以前のように画一的なものではなくなり、訪問先や利用する交通手段が多様化しています。例えば、地方拠点への出張が増えたり、複数の取引先を効率的に回るルートを選択したりする中で、経路検索や運賃の確認作業が複雑化します。

申請者側は都度正確な運賃を調べる必要が生じ、受け取る経理側も、その経路や金額が妥当であるかを細かくチェックしなければなりません。特に、複数の従業員が多様な移動手段を利用すると、精算書の数が増え、経理担当者が処理する手間が加速度的に増加し、業務負担の増大に直結しています。

運賃制度の多様化とチェック工数の増大

鉄道会社やバス会社が提供する運賃制度は、年々複雑になる傾向にあります。通勤経路の定期区間を避けた場合の運賃計算、時間帯や曜日による割引、さらには複数の交通手段を乗り継いだ場合の最安経路の特定など、考慮すべき要素は多岐にわたります。紙やエクセルで精算を行う場合、経理担当者は提出された申請書に記載された運賃が本当に正確であるかを、手間をかけて一つひとつ確認しなければなりません。

新しい運賃体系やキャンペーンが導入されるたびに、チェックのルールも更新する必要があり、専門知識の習得と維持に労力が割かれます。この煩雑な運賃チェック作業が、経理担当者の業務工数を圧迫する大きな要因となっており、手作業によるチェックには限界がきています

小口現金管理と複数の管理手法が混在する手間

交通費の精算は、従業員による立替払いだけでなく、会社が用意した小口現金の利用や、法人カード、交通系ICカードなど、複数の支払い手段が混在しがちです。特に小口現金は、残高の管理、現金の出入金の記録、そして使途の確認といった手間が発生し、経理担当者にとって大きな負担となります。また、一部の従業員がICカードを利用し、別の従業員が現金で立替精算を行うといったように、管理手法が統一されていない場合、経理側はそれぞれの精算書を個別に集計・照合しなければなりません。

この異なるデータ形式や処理手順が混在することで、管理が煩雑になり、チェックに要する時間が増大し、ミスの温床にもなりやすいため、統一的な管理仕組みを早急に構築することが求められます。

交通費そのものの計算方法や、通勤手当との違い・非課税限度額といったルール面の整理については、以下の基礎編記事で詳しく解説しています。本記事では、それらの前提を踏まえたうえで、交通費計算プロセスをどうデジタル化し、経理の負担を減らすかに焦点を当てて解説します。

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紙やエクセルのままだと、なぜ時間もミスも減らないのか?

申請者が経路や金額を都度手入力し、紙の領収書を保管・提出する運用では、入力ミスや紛失が避けられず、差し戻しや確認のやり取りが何度も発生するため、処理時間と人の手作業によるミス(ヒューマンエラー)が慢性的に減らない構造になっているからです。

交通費計算が非効率になる原因は、「申請」「承認」「経理チェック」「会計処理」といった各工程に分散しています。どこでどのようなボトルネックが発生しやすいのかを整理したものが、次の表です。

表:交通費精算プロセス×ボトルネック×効率化策

工程主な作業よくあるボトルネック効率化のポイント
申請移動区間・日付・金額・目的などを精算書に入力する。同じ経路を毎回ゼロから入力しており、入力漏れや経路の誤りが頻発する。定型ルートのテンプレート化や、ICカード・カード明細の履歴取り込みを活用し、手入力を最小限にする。
承認申請内容の妥当性や社内規程への適合を確認し、承認・差し戻しを行う。領収書添付漏れや金額ルール違反に事後的に気づき、差し戻しが多発して承認が滞る。申請画面での必須項目チェックや、金額・区間ルールの事前判定を設定し、不備を申請前に防ぐ。
経理チェック経路・金額・定期区間などを確認し、勘定科目や部門を含めて内容を精査する。運賃検索サイトや紙の領収書を都度確認する必要があり、チェック工数がかさむ。路線検索APIや運賃マスタ、定期区間マスタと連携させ、妥当性チェックをシステム側で自動化する。
会計処理精算データをもとに仕訳を起票し、会計ソフトや給与システムへ入力する。精算書から会計ソフトへの二重入力が発生し、入力ミスや締め作業の遅延につながる。経費精算システムと会計・給与ソフトを連携させ、承認済み精算から仕訳データと支払データを自動で生成する。

エクセル・紙書類による入力ミスと精算金額への影響

エクセルや紙の精算書に頼る運用では、申請者自身が移動区間や運賃を手入力するため、入力ミスが避けられません。特に、複雑な路線図や複数の乗り換えがある場合、誤った経路を申告してしまったり、正確な運賃と異なる金額を記入してしまったりするケースが発生します。経理担当者がこれらのミスを見逃すと、不正確な精算金額がそのまま処理されてしまい、会社の経費が適正に計上されないリスクが生じます。

また、これらの誤りが決算期になってから発覚した場合、修正に多大な労力と時間を要することになり、経理業務全体に大きな影響を及ぼします。手作業による入力は、人為的なエラーを誘発し、正確な経費管理を阻害する最も大きな要因の一つと言えます。

従来の交通費精算フロー

領収書の紛失と手書き内容の判読による問題点

交通費精算では、タクシー代など領収書が必要なケースがありますが、紙の領収書は物理的に小さく、申請者が保管している間に紛失しやすいという問題があります。領収書がなければ、その支出が本当に発生したのかを証明するのが難しくなり、経理部門での処理が滞ります。

さらに、手書きで作成された精算書や領収書の場合、文字が不鮮明であったり、数字の判読が難しかったりすることが頻繁に発生します。経理担当者は、その都度申請者に内容を確認する手間が発生し、コミュニケーションコストが増大します。これにより、処理時間が長引くだけでなく、判読ミスによる誤った仕訳計上のリスクも高まるため、紙の運用は経費精算のボトルネックとなりがちです。

差し戻しによる時間的負担と精算履歴の精度ばらつき

精算書に誤った経路や金額が記載されていたり、必要な領収書が添付されていなかったりすると、経理担当者から申請者へ書類の修正や追加情報の提出を求める差し戻しが発生します。この差し戻しのやり取りは、申請者、上長、経理担当者の間で何度も繰り返されることがあり、処理完了までの時間が大幅に延長されます。

特に月末や月初などの繁忙期には、差し戻しが積み重なることで、経理部門全体の業務が停滞する原因となります。また、紙やエクセルで管理された精算履歴は、修正履歴が明確に残りにくく、誰がいつ承認したかの履歴(トレーサビリティ)が追いにくくなり、精算履歴の信頼性にもばらつきが生じやすいという課題を抱えています。

交通費精算の一連の流れや、申請・承認・経理チェックそれぞれの注意点を基礎から確認したい場合は、交通費精算のやり方を整理した以下の記事も参考になります。

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交通費計算の効率化は、どのようなデジタル化ステップで進めればよいですか?

①必要書類と申請・承認ルールの整理、②ICカードやモバイル決済、カード明細などの履歴データの自動取り込み、③申請〜承認〜仕訳までを経費精算システム上で一元管理する、という3ステップで進めると、段階的に手作業を減らしやすくなります。

必要書類の厳選と手続きルールの整備

交通費精算の効率化の第一歩は、社内における「必要書類」の定義と手続きルールを明確にし、不要な手間を削減することです。特に、鉄道やバスなどの公共交通機関の利用については、一定額以下の支出であれば領収書の添付を不要とする、といった柔軟なルールを設けることで、紙の処理量を大幅に減らすことができます。

さらに、精算の申請期限や承認ルート、例外的なケースの処理方法などを文書化し、全従業員に周知徹底することも重要です。この手続きルールの整備は、精算処理の標準化につながり、経理担当者が個別の案件に割く確認時間を削減できます。明確なルールは、申請者側の迷いをなくし、差し戻しの回数を減らす効果ももたらします。

紙やエクセルでの運用と、経費精算システムでの運用では、同じ交通費計算でも負担のかかるポイントが大きく異なります。代表的な観点ごとに、両者の違いを整理したものが次の表です。

表:紙/エクセル管理 vs システム管理比較

観点紙・エクセル管理システム管理
入力手間経路・金額・目的などを申請者が都度手入力するため、重複入力や記入漏れが発生しやすい。ICカード/カード明細/定期区間などの履歴データを自動取り込みでき、入力回数と記入漏れを大幅に削減できる。
転記ミス手作業での転記により、数値・日付・金額の入力誤りや桁ずれが起こりやすい。マスタ連携や自動計算により、経路や金額の誤りを抑制し、人為的な転記ミスを減らせる。
差し戻し不備の発見が遅れ、月末などの繁忙期に差し戻しが集中しがちで、処理が滞りやすい。必須項目チェックやルール事前判定で不備を未然に防止し、差し戻し件数とやり取りの手間を抑えられる。
承認の流れ紙の回覧やメール依頼に依存し、承認者不在時に滞留しやすく、進捗の見える化も難しい。金額や部門に応じた承認ルートを自動切り替えでき、代理承認やリマインド機能で滞留を防ぎやすい。
証跡の保全紙原本の紛失や重ね貼りなどにより、誰がいつ承認したかを追跡しにくい。申請データ・領収書画像・承認ログを一元保管でき、証跡を簡単にさかのぼって確認できる。
検索・照会日付・金額・社員名などで横断的に検索しづらく、過去データの確認に時間がかかる。多条件検索やタグ付けにより、監査やスポット調査でも必要なデータをすばやく抽出できる。
月末ピーク集計・突合を手作業で行うため、月末に作業が集中し、残業や処理遅延が発生しやすい。データ取り込みと承認プロセスを自動化することで、処理を平準化し、月末ピークを緩和しやすい。
規程順守提出基準や締切の徹底が人に依存し、ルールのばらつきや例外処理が発生しがち。金額基準や申請期限をシステムで自動チェックし、アラートで周知することで規程順守を徹底しやすい。
監査対応証憑や精算書を個別に集める必要があり、突合や再確認に時間を要する。履歴・原本画像・承認ログが紐づいており、監査対応時にも必要な情報を短時間で提示できる。
導入・運用コスト初期コストは小さいものの、日々の手作業にかかる人的コストやミス対応コストが積み上がりやすい。システム費用は発生するが、継続的な人件費削減やミス防止の効果により、中長期的には回収しやすい。

ICカード履歴の自動読み取りと精算システムとの連携活用

交通系ICカードの利用データを精算システムに自動で読み込ませる機能は、交通費計算を最も効率化する具体的な手段の一つです。従業員が利用した乗降駅、運賃、日付といった情報がICカードから直接システムに取り込まれるため、申請者による手入力の必要がなくなり、入力ミスが根本から解消されます。

経理担当者にとっても、申請内容とICカードの利用履歴を照合する手間が不要となり、チェック業務が大幅に軽減されます。さらに、システムが自動で経路検索を行い、運賃の妥当性を検証する機能を備えていれば、運賃制度の多様化に対応するチェック工数も削減可能です。ICカードデータの自動連携は、精算業務の正確性とスピードを同時に向上させます。

モバイルSuica連携で“選ぶだけ申請”を実現する具体手順はこちらの記事を参考にしてください。

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モバイル決済など新しい支払い手段への対応

近年、交通費の支払い手段はICカードだけでなく、スマートフォンを活用したモバイル決済や、各社が発行する法人向けプリペイドカードなど、多様化が進んでいます。これらの新しい支払い手段は、利用履歴が電子データとして残るという大きなメリットがあります。精算システムが、これらのモバイル決済や法人カードの利用データを自動で取り込む機能に対応していれば、交通費の精算プロセスはさらに簡素化されます。

例えば、モバイルアプリでの決済履歴が、精算システムの利用明細に自動的に反映される仕組みを構築することで、従業員は利用履歴を選択するだけで精算申請を完了できます。これにより、従業員の利便性が向上するだけでなく、経理担当者が処理すべき精算書の数を減らすことにもつながります。

なお、交通手段別の計算式や定期区間控除、通勤手当との関係など、そもそもの交通費計算ルールを整理したい場合は、以下の記事も併せてご覧ください。

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交通費計算の正確性を高めるには、領収書をどうデジタル管理すべきですか?

電子帳簿保存法に対応したシステムで紙の領収書を電子化し、ICカードやモバイル決済のデータとあわせて一元管理することで、紛失や二重計上のリスクを抑えつつ、必要なときにすぐ検索・照会できる正確な精算基盤を整えられます。

領収書の紛失リスクと電子帳簿保存法への対応

紙の領収書は、経費の裏付けとなる重要な書類ですが、紛失や破損のリスクが常に伴います。特に多忙な営業担当者や出張が多い社員にとって、全ての領収書を適切に保管・提出することは大きな負担です。この課題を解決するのが、電子帳簿保存法(電帳法)に対応したシステムによる領収書の電子保存です。

電帳法が定める要件を満たしたシステムを導入すれば、紙の領収書をスキャニングまたはスマートフォンで撮影した画像をもって原本とすることができるため、紙の現物を保管する手間やスペースが不要になります。これにより、領収書の紛失リスクを低減できるだけでなく、必要な時に電子データとしてすぐに検索・閲覧できるようになり、経理業務の効率化とコンプライアンスの強化に大きく貢献します。

社内規程の整備と申請ルールの徹底

システムを導入して交通費計算を効率化する際、その効果を最大化するためには、システムに合わせた社内規程の見直しと、申請ルールの徹底が不可欠です。例えば、ICカード利用時の精算フローや、領収書を電子保存する場合の具体的な手順など、新しいルールを明確に定義する必要があります。規程が曖昧だと、従業員によって精算方法が異なり、かえって経理担当者の確認作業が増えてしまいます。経理担当者は、新しい規程を全従業員にわかりやすく説明し、研修などを通じて浸透させる役割を担います。ルールが徹底されることで、システムの機能を最大限に活用できるようになり、差し戻しを防ぎ、経費精算の品質を均一に保つことが可能となります。

紙とデジタルデータを一元管理する仕組みの構築

デジタル化を進めても、タクシーの利用や一部の例外的な支払いなど、当面は紙の領収書がゼロになることはありません。そのため、交通費計算を真に効率化するには、紙のデータとICカードやモバイル決済によるデジタルデータを一元的に管理できる仕組みを構築することが重要です。理想的なシステムでは、紙の領収書をスマートフォンなどで撮影すると自動でデータ化され、ICカードの履歴も自動で取り込まれ、すべての精算情報が一つのプラットフォームに集約されます。

これにより、経理担当者は複数のツールやフォルダを横断して情報を確認する手間がなくなり、全ての精算を一貫した手順で処理できます。異なる形式のデータを一つの場所で管理できることは、ミスの防止と業務のスピードアップに大きく寄与します。

以下の記事では、領収書の電子保存の要件と運用について詳しく解説しているので参考にしてください。

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経費精算システムを導入すると、交通費計算のどのプロセスが自動化されますか?

経費精算システムを活用すると、ICカード履歴やカード明細の自動取り込み、運賃の自動計算、申請内容に応じた承認ルートの自動振り分け、会計・給与ソフトへの仕訳・支払データ連携までを一気通貫で自動化し、紙の回覧や手入力を大幅に減らせます。

自動計算機能と一元管理による業務スピードの向上

経費精算システムが提供する自動計算機能は、申請者が経路を入力するだけで運賃を正確に算出し、経理担当者のチェック工数を大幅に削減します。さらに、すべての精算情報(ICカード、領収書、法人カード)がシステム内で一元管理されるため、データの分散による照合の必要がなくなります。

これにより、精算書の作成、申請、承認、経理処理に至るまでの全てのステップがオンラインで完結し、紙の回覧による遅延リスクも解消されます。結果として、月次の精算業務にかかる時間が劇的に短縮され、経理担当者は決算準備や分析業務など、より戦略的な業務に時間を充てられるようになり、全体の業務スピードと生産性を向上させます。

会計・給与ソフトとのデータ連携による仕訳・支払処理の効率化

交通費精算システムを導入する最大のメリットの一つは、基幹となる会計ソフトや給与計算ソフトとのスムーズなデータ連携が可能になることです。手作業で精算データを会計ソフトに入力したり、仕訳を作成したりする作業は、ミスが発生しやすく、経理担当者の大きな負担となっていました。

しかし、システム連携が確立されていれば、精算が承認された時点で、勘定科目や摘要などの情報を含んだ正確な仕訳データが自動で作成され、会計ソフトへシームレスに取り込まれます。これにより、仕訳入力作業が完全に不要となり、月次の締め処理にかかる時間を大幅に短縮できます。また、立替金や仮払金の支払い処理についても、給与システムとの連携によって効率的に実行できます。

システムが可視化する移動コストの削減策

経費精算システムは、単に精算業務を自動化するだけでなく、従業員の移動コスト全体を可視化し、企業経営に役立つデータを提供する機能を持っています。システムが集約した利用データを分析することで、どの部署やどの社員の交通費が多いのか、また、頻繁に利用されている区間はどこなのか、といった傾向を正確に把握できるようになります。

この分析結果に基づき、利用回数の多い社員に定期券の購入を促したり、特定の区間について法人契約の回数券や割引サービスを導入したりといった、具体的なコスト削減策を検討できます。移動コストの傾向が明確になることで、経理部門は単なる「処理」係ではなく、経営層に対する「コスト最適化の提言」を行える戦略的な役割を担うことが可能になります。

経費精算システム選び方ガイド 経費精算システム選び方ガイド

交通費計算を効率化しながら、コンプライアンスも強化するには?

システム上で運賃や定期区間、利用上限額などのルールを自動チェックし、不自然な申請にアラートを出す仕組みを整えるとともに、スモールスタートと社員教育を通じて新しい規程と運用ルールを定着させることで、効率化とガバナンスを両立できます。

不正申請を防止する自動チェック機能の仕組み

経費精算システムが提供する自動チェック機能は、会社のコンプライアンスを維持する上で非常に重要な役割を果たします。この仕組みは、申請された経路が、過去の履歴や公開されている運賃情報と異なっていないかを自動的に照合し、不自然な申請があればシステムがアラートを発するものです。例えば、ICカードの利用履歴と申請された経路が一致しない場合や、定期券区間が含まれているにも関わらず、その区間分の運賃が申請されている場合などに自動で検知できます。

これにより、意図的な不正だけでなく、申請者の誤入力による過剰請求も未然に防ぐことが可能です。経理担当者は、システムが抽出した例外的な案件のみを重点的に確認すればよくなるため、チェック業務の負担が軽減され、ガバナンスの強化にもつながります。

特に、交通費の消費税計算やインボイス制度への対応は、効率化と同じくらい重要なコンプライアンス上のテーマです。交通費に含まれる消費税の計算方法や、インボイス対応の請求・仕訳のポイントを整理したい場合は、以下の記事も併せてご確認ください。

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導入成功のためのスモールスタートと社員教育のポイント

経費精算システムの導入を成功させるための鍵は、業務の流れを段階的に見直し、スモールスタートで進めることです。いきなり全社的に大規模なシステムを導入しようとすると、業務フローの変更に対する現場の抵抗が大きくなったり、システム側の設定ミスによる混乱が生じたりするリスクがあります。まずは、交通費精算など、比較的シンプルなプロセスからデジタル化を始め、徐々に領収書管理や他の経費精算へと適用範囲を広げていくのが賢明です。

また、新しいシステムを社員が使いこなせるよう、丁寧な社員教育は欠かせません。システムの操作方法だけでなく、「なぜこのシステムを導入するのか」「効率化でどんなメリットがあるのか」という目的を共有することで、従業員全体が前向きに新しい仕組みへ移行できるようになります。

交通費精算効率化について、実務担当者からよく寄せられる疑問は何ですか?

「少額交通費の領収書はどこまで必要か」「システム導入の費用対効果はどう考えるか」「紙の領収書とICカード履歴が混在する場合の処理方法」「タクシーや出張時の特有ルールをどうシステムに落とし込むか」といった実務的な疑問が多く寄せられます。

3万円未満の交通費で領収書は本当に不要か?

少額な交通費については、税法上の取扱いにより、領収書がなくても精算できるケースがあります。一方で、社内の不正防止や説明責任の観点から、企業独自の基準を設定し、「どの金額・どの交通手段で証憑を求めるか」をあらかじめ決めておくことが重要です。

領収書の要否判断フローチャート

交通費精算システムの費用対効果はどれくらいか?

交通費精算システムの費用対効果は、主に「人件費の削減」と「リスクの低減」という二つの側面から評価できます。人件費の削減効果としては、経理担当者が手作業で行っていた入力チェック、領収書の整理、仕訳入力といった作業時間が大幅に短縮されることで実現します。

例えば、1件あたりにかかっていた処理時間が5分短縮されれば、従業員数が多いほど、年間で見ると膨大な工数削減につながります。また、リスク低減の効果は、システムによる自動チェックで不正請求や入力ミスが防止され、コンプライアンス違反による損失を未然に防げる点にあります。

さらに、電子帳簿保存法に対応することで、紙の保管コストや管理工数が削減されることも大きなメリットです。導入コストはかかりますが、これらの効果を総合的に見れば、多くの場合で高い費用対効果が期待できます。

紙の領収書とICカード履歴が混在する場合の最適な処理方法

ICカードの利用が一般化しているとはいえ、タクシー利用や特急券の購入など、紙の領収書が依然として必要なケースは残ります。紙とICカード履歴が混在する場合の最適な処理方法は、これらを一つのシステムで一元管理することです。具体的には、ICカードの利用履歴はシステムに自動で取り込ませ、紙の領収書はスマートフォンなどで撮影・スキャンすることで電子データ化し、同じシステム内で紐づけて保存します。

これにより、経理担当者は、申請内容がICカード由来なのか紙の領収書由来なのかに関わらず、同じインターフェースで全ての精算情報を確認できます。この一元管理により、二重請求や精算漏れを防ぎ、データ形式の違いによる処理の煩雑さを解消し、統一的なプロセスで処理を完結させることが可能となります。

タクシー利用や出張時の特有のルールをシステムでどう管理するか?

交通費精算においては、通常の電車移動とは異なり、タクシー利用や出張時に適用される特有のルール(利用上限金額、利用可能時間帯、事前申請の要否など)が存在します。これらの複雑なルールも、経費精算システムによって効果的に管理できます。システムでは、従業員の役職や所属部署、利用目的などに応じて、個別の精算ルールを詳細に設定することが可能です。

例えば、「部長以上の役職者は深夜に限りタクシー利用可」「日帰り出張時の特急料金は事前申請必須」といったルールをシステムにあらかじめ組み込んでおけば、申請時にルール違反がないかを自動でチェックできます。これにより、経理担当者が一つひとつ規程を確認する手間がなくなり、例外的なケースであっても迅速かつ正確に処理できるようになります。

交通費計算の効率化をやりっぱなしにせず効果を確認するには、事前に「どの指標をどのように改善したいか」を決めておくことが重要です。最低限押さえておきたい代表的なKPIを、次の表に整理します。

表:交通費計算効率化のKPI早見表

指標定義改善の目安・ポイント
1件あたり処理時間申請受付から最終承認完了までに要する平均時間。システム導入前後で定期的に比較し、処理時間が着実に短縮しているかを確認する。繁忙期と通常期での差もあわせて把握する。
一次差し戻し率提出された交通費精算書のうち、最初の承認段階で差し戻しとなった件数の割合。差し戻しの主な理由を分類し、入力チェックやガイドメッセージの改善につなげる。ルール変更後に差し戻し率が下がっているかを指標とする。
月次の精算工数月内の交通費精算にかかった経理・承認者・申請者の合計作業時間(人時)。対象者の作業時間をあらかじめ見積もり、導入前後での増減を確認する。削減できた工数を別業務にどの程度振り向けられたかもあわせて整理する。
締切遅延件数会社が定めた申請締切日を過ぎて提出された交通費精算書の件数。締切前後のリマインド方法や申請画面の分かりやすさを見直し、遅延件数の推移を追う。部署別の傾向を把握し、必要に応じて個別フォローを行う。
規程違反検知件数定期区間二重申請など、社内規程に反しているとしてシステムの自動チェックで抽出された件数。検知件数の推移をモニタリングし、ルール・教育・システム設定のいずれに課題があるかを分析する。単に件数を減らすだけでなく、重大な違反を取り逃していないかも確認する。

交通費計算の効率化で、経理業務と会社全体はどう変わるのか?

交通費計算をICカード連携やデジタル領収書、経費精算システムで効率化することで、経理部門は入力・チェック中心の業務から解放され、移動コストの可視化によるコスト最適化の提案や、全社的なコンプライアンス強化を担う戦略的な役割へシフトしていけます。

本記事では、経理部門の大きな課題である交通費計算の非効率性を解消するための具体的なステップと秘訣を解説しました。リモートと出張が混在する現代において、手作業や紙の運用は、運賃の複雑化や入力ミス、差し戻しといった形で、時間的・金銭的な負担を増大させます。この課題を解決するためには、交通系ICカードの履歴自動読み取り機能や、電子帳簿保存法に対応したデジタル領収書管理による一元化が不可欠です。

経費精算システムを導入し、仕訳・支払処理を自動連携させれば、正確性が向上するだけでなく、移動コストの可視化による戦略的な経営判断も可能になります。導入を成功させるには、いきなり全てを変えずにスモールスタートで進め、社員教育を徹底することが重要です。ぜひ本手引きを参考に、経理業務の生産性向上とコンプライアンス強化を実現してください。

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