電子帳簿保存法

電子帳簿保存法改正で領収書の保存方法はどうなる?要件や電子化のメリットを紹介!

更新日:2024.02.13

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電子帳保存法 領収書のアイキャッチ

2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。今回の改正では、電子保存要件の大幅な緩和だけでなく、義務化や罰則強化の項目が追加されており、領収書の保存業務にも大きく影響します。

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そこでこの記事では、電子帳簿保存法改正後における領収書の保存方法についてわかりやすく説明します。電子化のメリットやポイントについても解説しておりますので、業務効率化に興味のある方は最後までご覧ください。

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そもそも電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、原則紙での保存が義務付けられている帳簿や国税に係る書類について、一定の要件を満たした上でのデータ保存を可能とする法律です。データ保存の区分としては、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の大きく3つがあり、各区分ごとに詳細な要件が規定されています。1998年に施行され、経済社会のデジタル化に合わせて数度の改正を繰り返しています。

最新2022年の改正では、経済社会における電子データへの移行を促進する狙いの元、電子保存要件の大幅な緩和がなされています。それと同時に、適正課税という観点から一部罰則の強化も行われています。

電子帳簿保存法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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領収書の保存方法【電子帳簿保存法改正後】

電子帳簿保存法の改正によって、領収書の保存業務にはどのような影響があるのでしょうか。紙で受け取る場合と、電子で受け取る場合とでそれぞれ説明します。

紙で受け取った領収書の保存方法

紙の領収書の保存方法としては、1.紙のまま保存 2.電子データとして保存(スキャナ保存)の2種類があります。

領収書は、各税法で紙原本のまま保存する必要があるとされていますが、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件に則ってスキャンを行い、電子データとして保存することが可能です。スキャナ保存は、いわゆる複合機によるスキャニングだけでなく、スマホ撮影なども含まれます。なお、今回の改正によって税務署長による事前承認が不要になったり、スキャン後に紙原本の即時廃棄が可能になるなど、スキャナ保存がしやすくなっています。(詳細は後述します)

電子で受け取った領収書の保存方法

PDFなどの電子で受け取った領収書の場合、2022年現在では、紙に出力して保存しても、電子帳簿保存法の電子取引要件に沿って電子保存を行なってもどちらでも構いません。しかし、2024年1月1日以降は、電子で受け取った領収書は電子保存しか認められなくなります。

こちらは、2022年1月の電子帳簿保存法改正の「電子保存義務化」によるものです。本改正の一番の変更点であり、まだ未対応の企業は、2024年までに既存の業務フローや社内システムを整備する必要があります。

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※令和5年度税制改正大綱により、やむを得ない事情がある場合は、2024年1月以降も電子データを書面に出力して保存することが認められます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。

関連記事:電子保存義務化の猶予が恒久に?令和5年度税制改正大綱を解説

領収書の具体的な電子保存要件

ここでは、前項で触れた「スキャナ保存要件」と「電子取引要件」について説明します。

領収書のスキャナ保存要件

「スキャナ保存要件」とは、紙の領収書をスキャンし、電子上で保存する際に満たすべき項目のことで、電子帳簿保存法で規定されています。具体的な要件は以下の通りです。

入力期間の制限【早期入力方式】
国税関係書類に係る記録事項の入力を受領等後、速やか(おおむね7営業日以内)に行う

【業務処理サイクル方式】
国税関係書類に係る記録事項の入力、その業務処理に係る通常の期間(最長2ヵ月以内)経過後、速やか(おおむね7営業日以内)に行う

ただし、国税関係書類の受領等から入力までの事務処理に関する規定を定めている場合に限る
解像度200dpi相当以上
カラー画像赤・緑・青の階調が256以上(24ビットカラー)
タイムスタンプの付与入力期間内(おおむね7営業日以内)にタイムスタンプを1の入力単位ごとの電磁的記録に記録事項に付与する

ただし、国税関係書類に係る記録事項の入力が期間内に行われたのが確認できる場合は、タイムスタンプの付与に変えられる
大きさ情報大きさに関する情報を保存する

ただし、該当する書類の大きさがA4以下の場合は不要
バージョン管理電磁的記録について、訂正または削除を行った場合には、事実・内容を確認可能な電子計算機処理システム・訂正・削除を行うことができない電子計算処理システムを使用する
入力者等情報の確認記録事項の入力を行う者とその者を直接監督する者の情報を確認可能な状態にしておく
帳簿との相互関連性の確保電磁的記録と帳簿の記録事項の相互性を確認可能な状態にしておく
見読可能装置の備付け等14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンター、操作説明書を備付ける
電子計算機処理システムの概要書等の備付け電子計算機処理のシステム概要を記載した書類やシステム開発の書類、操作説明書、保存に関する事務手続きを明らかにした書類を備付ける
検索機能以下の検索要件を満たす

取引年月日などの日付、取引金額、取引先での検索
②日付・金額に係る記録項目の範囲指定検索
③2つ以上の任意の記録項目の組み合わせ検索

ただし、税務職員によるダウンロードの求めに応じる場合は②③不要
参照元:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】


電子帳簿保存法のスキャナ保存について詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。
▶︎電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度とは?改正後の変更点や要件をわかりやすく解説!

※令和5年度税制改正大綱により、2024年1月以降、スキャナ保存の要件が一部緩和されます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
関連記事:電子保存義務化の猶予が恒久に?令和5年度税制改正大綱を解説

領収書の電子取引要件

こちらの電子取引要件は、PDFなどの電子上で受け取った領収書を、電子データのまま保存する際に満たすべき項目のことで、電子帳簿保存法で規定されています。具体的な要件は以下の通りです。

真実性の要件次の1.〜4.の要件のいずれかを満たす

1.タイムスタンプが付された後に取引情報の授受を行う
2.取引情報の授受後速やかにタイムスタンプを付し、保存を行う者または監督者に関する情報を確認できるようにしておく
3.記録事項の訂正や削除を行った場合にその事実が確認できるシステムか、記録事項の訂正や削除ができないシステムを使用する。
4.記録事項の訂正や削除に関して事務処理規程を定め、それに沿った運用を行う
可視性の要件保存場所に、電子機器(パソコンなど)・プログラム・ディスプレイ・プリンタ及びこれらの操作マニュアルが備え付けられており、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
以下の検索機能を確保すること※

1.取引年月日、取引金額、取引先により検索できる
2.日付または金額の範囲指定により検索できる
3.二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
参照元:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

※税務職員によるダウンロードの求めに応じることができる場合は2.3.が不要。なおかつ保存義務者が小規模な事業者である場合は検索機能が不要。

電子帳簿保存法の電子取引について詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。

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※令和5年度税制改正大綱により、2024年1月以降、電子取引の保存要件が一部緩和されます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
関連記事:電子保存義務化の猶予が恒久に?令和5年度税制改正大綱を解説

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電子帳簿保存法の主な変更点

改正による変更点は、要件の緩和や猶予期間の導入など数多くあります。具体的にどう改正されたのかについて、大きく6つに分けて説明します。

1.タイムスタンプ要件の緩和

タイムスタンプの付与期限が、3営業日から2ヵ月と7営業日以内へ変更されました。タイムスタンプは、電子データの改ざんがないことを証明する技術です。特定の日時にデータが存在し、その時刻以降改ざんされていないことを証明します。

また、スキャナ保存の際、電子データのログが残るシステムを利用した場合はタイムスタンプの付与が必要なくなりました。クラウド上でデータが保存できるようになり、大幅に条件が緩和されたと言って良いでしょう。

さらに、スキャナで読み取った場合に、署名が不要となった点も変更点です。変更前は、受領者の署名が必要でした。

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2.適正事務処理要件の廃止

法改正により、スキャナ保存における社内規定の整備や2人以上の相互確認が必要なくなりました。改正前は他にも紙での原本保存と定期検査が必要でしたが、改正後はともに必要がなくなっています。そのため、スキャン後に紙原本を即時廃棄することが可能になりました。適正事務処理案件がなくなったことで、人員や手間を削減する狙いがあります。

3.検索要件の緩和

検索要件も大幅に緩和され、改正後は「年月日」「金額」「取引先」の3つのみへ変更されました。改正前は取引年月日や勘定科目など主要項目すべてに検査項目を設置する必要がありましたが、改正後は必要ありません。

また、改正前は2項目以上の組み合わせ検索も設定しないといけませんでした。改正後はダウンロード要請に対応していれば、組み合わせ設定は不要です。

4.税務署長への事前承認制度の廃止

電子保存の導入前に行っていた税務署長の事前承認も必要なくなり、電子保存しやすい環境が整えられつつあると言えます。以前は管轄地域の税務署へ届出が必要で、事務負担が大きいものでした。

手続きや業務面での負担を考慮して、事前承認制度が廃止され、電子保存を導入する負担が少なくなっています。

5.電子取引の電子保存義務化

先ほど触れた通り、今までは電子データでやり取りした国税関係書類を紙に出力して保存することができましたが、改正によって電子での保存が義務付けられました。

なお、電子帳簿保存の変更に対応しきれていない事業者のために、特例として2年間の移行準備期間が設けられています。具体的には、2023年12月31日までの電子取引に限り、税務調査のときに提出できる形式であれば、電子データの紙媒体での保存が認められています。

6.罰則規定の強化

保存した電磁的記録に不正があった時は、重加算税の加重措置がなされます隠蔽や改ざんがあった場合は重加算税が加算されますが、さらに10%が加重される措置が設けられました。

電子保存しやすくなった一方、罰則を強化することで不正や改ざんを防ぐ狙いがあります。

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領収書を電子データで保存するメリット4つ

上述の通り、電子帳簿保存法の改正によって電子上で受け取った領主書は電子データとして保存することが義務になります。義務化に対して消極的な印象を持つ方が多いと思いますが、領収書を電子データで保存することには多くのメリットがあることも事実です。

ここでは、領収書を電子データで保存するメリット4つを紹介します。

1.管理のためのコストや場所を削減できる

電子データで管理することで、保存場所やコストを削減できる点がメリットです。膨大な量の領収書を管理するにはスペースが必要で、場合によっては場所を借りる必要もあります。

また、膨大なファイルから領収書を探す必要がなくなったり、保存に必要なファイルなどの備品コストがかからなくなったりと業務面でのプラスも大きいでしょう。

紙の領収書は紛失や劣化のリスクもあり、劣化してしまうと領収書の内容が確認できません。このような手間やリスクを防ぐメリットが、データ保存にはあります。

2.検索や保管がしやすい

検索や保管がしやすいのもデータ保存のメリットです。ファイルやキャビネットから紙の領収書を探すとなると、膨大な時間がかかります。

ファイルの中から1枚の領収書を探すのは、そう簡単なことではありません。場合によっては、その作業に数時間取られたり、最後まで見つからなかったりするケースもあるでしょう。

領収書をデータ化した場合は、発行日や金額を指定することで簡単に検索できます。ファイルの中を1ページずつ探す手間がかかりません。検索項目が定められたので、税務調査などで領収書の調査が必要な時でも、すぐに書類を見つけられます。

3.データのバックアップを取ることが可能

電子データは、バックアップできる点もメリットとして挙げられます。紙の領収書では、その1枚がなくなってしまうと対応できません。また、破れてしまうなどして破損した場合も対応が難しくなります。

一方、データはクラウド上に保管したり、別のパソコンにデータを移しておいたりするなどの対処ができ、紙の保存より紛失のリスクが低くなります。また、データを紛失しても復旧が可能です。

4.経費精算などの会計処理が効率化できる

会計処理の効率化もメリットです。紙の領収書の場合は、原本を経理に提出するなど手間がかかります。一方で電子データの提出は、データを送信するだけで完了します。

確かに一定の条件を満たしたり、手続きに必要な手順を踏んだりする必要があります。しかし、紙の領収書を届けるよりは、手間がかかりません。また、最近はテレワークや会社に戻らない業務もありますので、多様化した業務体系にも対応しやすいです。

電帳法改正により、領収書を電子データで保存しやすくなった

2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法により、税務署長への事前承認が廃止されたり、タイムスタンプ要件が緩和されました。そのため、やり取りしたデータの電子保存がこれまでに比べ容易になっています。また、電子取引による電子データ保存が義務化されたため、紙保存ができなくなります。

そのため、領収書の電子保存を導入している企業は、今までより業務がしやすくなるかもしれません。一方で紙のまま保存する習慣がある企業は、紙と電子データ両方で保存する必要があり、管理の手間が増えてしまいます。

領収書を紙で保存している企業は、管理の手間を減らすために電子保存の導入を検討するのが良いでしょう。2021年12月に制定された令和4年度税制改正大綱では、電子データへの移行に即対応できない企業に対して、電子保存義務化における2年間の猶予が与えられました。紙の保存からデータに移行するには時間が必要だと判断して、移行期間が設けられています。

そのため、企業は余裕を持って準備を進められます。設備や予算の問題ですぐに導入できない企業も問題なく電子化に対応できるでしょう。

※令和5年度税制改正大綱により、やむを得ない事情がある場合は、2024年1月以降も電子データを書面に出力して保存することが認められます。詳しくはこちらの記事をご確認ください。

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領収書の電子保存におすすめの経費精算システム

経理部の方は、あらゆる場面で誤りが起きないように注意を払いながら日々の業務に取り組まれているかと思います。例えば経費精算業務においても、従業員からの渡された申請書の内容と領主書原本の内容に乖離がないか、1枚1枚厳密に確認するなど、非常に手間だが避けられない場面は多くあります。

そのため、電子帳簿保存法に対応した経費精算システムを導入することで、経理業務を楽にする企業が増加しています。電子帳簿保存法対応システムの認証(JIIMA認証)を受けたシステムであれば確実に電子帳簿保存法に対応できるので、システム検討の際に必ず確認しましょう。

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まとめ

領収書の保存はスキャナ保存と電子取引保存に分類され、紙で受領した場合はスキャナ保存が必要です。また、電子データで受領した場合は電子取引の保存要件を満たす必要があり、受け取る領収書の種類によって区別しなければなりません。

電子帳簿保存法の改正で条件が緩和され、電子データを利用しやすい環境が整いつつあります。しかし、既存の業務フローを変えるには手間がかかります。

そこで、複雑な経理業務を簡単にするためのシステム導入も選択肢の1つです。TOKIUM経費精算」など、領収書の処理を効率化してくれるシステムがあります。

領収書をデータで保存するメリットは多くあるので、法改正をきっかけに領収書管理の電子データ移行を進めてみてはいかがでしょうか。

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