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【中小企業向け】AIで経費申請はどう変わる?導入メリットと課題解決方法

更新日:2025.12.24

この記事は約 21 分で読めます。

中小企業_AI_経費_申請

中小企業でも、AIを活用した経費申請システムを導入すれば、申請〜承認〜仕訳までの手作業を大きく減らし、人手不足と法改正対応の両方を同時に進められます。ただし、現在のフローを整理せずにツールだけ入れると、現場に定着せず「操作がかえって複雑になった」という失敗につながりかねません。

→業務の自動運転を実現する経理AIエージェントとは?

本記事では、紙・エクセル中心の経費申請で起きがちな具体的な困りごとから、AIでどこまで自動化できるのか、導入ステップや補助金の活用方法まで、中小企業の経理担当者が明日から動けるレベルで整理して解説します。

Q&A:中小企業の経費申請にAIを入れると、何がどこまで変わりますか?

中小企業の経費申請にAIを導入すると、「領収書の入力・チェック」「承認フローの滞留」「紙書類の保管」といった負担が大きい作業を、自動化とオンライン化で一気に減らせます。一方で、導入コストや運用ルールの見直しなど、事前に考えておきたいポイントも存在します。ここでは、よくある疑問に先に答えてから、本編で詳しく解説します。

Q. AI経費申請システムを入れると、どれくらい業務が楽になりますか?

A. 領収書の読み取りや仕訳候補の提示、承認フローの自動ルーティングによって、経費申請にかかる入力・チェック時間を大きく減らすことができます。紙やエクセルでの二重入力が減るため、経理担当者だけでなく、申請者や承認者の残業時間削減にもつながります。

Q. 中小企業でもAI経費申請システムを使いこなせるでしょうか?

A. クラウド型でUIがシンプルな製品が増えており、専門的なIT知識がなくても運用しやすい環境が整っています。まずは既存の経費申請ルールを整理し、小さな範囲からスモールスタートすることで、社内の負担を抑えながら段階的に定着させることができます。

Q. 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応もAIに任せられますか?

A. 電子帳簿保存法やインボイス制度に対応した経費申請システムを選べば、スキャナ保存要件や保存期間、インボイスの必須記載事項チェックなどをシステム側で担保できます。ただし、最終的な運用ルールの決定と社内周知は企業側の役割であり、システム任せにせずガバナンスの仕組みも合わせて整えることが重要です。

Q. コストに見合う効果が出るかが不安です。

A. ランニングコストだけでなく、「経理担当者の工数削減」「紙・保管コストの削減」「差し戻し件数や承認リードタイムの減少」といった効果をセットで見て判断することがポイントです。本編では、導入前後のコストイメージや、補助金・助成金の活用方法も合わせて解説します。

AIエージェントは、生成AIの回答を“業務の実行”につなげ、24時間365日・並列で処理できる「デジタル労働力」として位置づけられます。以下のNewsPicks対談(YouTube)で語られる「生成AIからデジタル労働力へ」の要点を押さえると、申請の入力・証憑チェックを、デジタル労働力に任せる前提で“最小のルール整備”から始める説明が自然になります。

中小企業の経費申請にAIを取り入れると、そもそも何が変わるのでしょうか?

中小企業の経費申請にAIを取り入れると、領収書の読み取りや承認フロー管理といった定型作業をシステムが担い、限られた人員でも安定した運用と業務効率化を両立しやすくなります。

AIとは何か? 経費申請における役割

AI(人工知能)は、大量のデータからパターンを学習し、人の判断を支援する技術です。経費申請の領域では、領収書の文字情報を読み取るAI-OCRや、過去の申請データから勘定科目を自動提案する機能として活用されます。これまで人が目視で行ってきた確認・入力作業をAIが代替することで、作業時間とミスの双方を減らせる点が大きな役割です。

中小企業でAI導入が進む背景

中小企業では、人手不足の中で経理担当者が請求書処理や経費精算、仕訳入力など多くの業務を兼任しており、紙とエクセルに依存した運用が限界に近づいています。近年はクラウド型のAI経費申請システムが登場し、初期費用を抑えて利用できる環境が整ってきました。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も求められる中、AIとクラウドを組み合わせた自動化は、中小企業にとって現実的な選択肢になりつつあります。

AI経費申請システムの基本的な仕組み

AI経費申請システムは、領収書画像をAI-OCRで読み取り、日付・金額・店舗名といった情報を申請データとして自動入力します。さらに、過去の申請データを学習して適切な勘定科目を提案し、クラウド上で承認フローを管理することで、申請から承認、会計ソフトへの仕訳連携までを一気通貫でつなぎます。これにより、場所を問わず経費申請業務を進められるとともに、二重入力や確認漏れのリスクを抑えられます。

経理AIエージェント

中小企業の経費申請では、どのような課題が起きやすいですか?

中小企業の経費申請では、特定の人に仕事が集中する“属人化”や紙・手作業に依存した運用が続きやすく、その結果として承認の滞留や入力ミス、小口現金管理の負担増といった課題が慢性化しやすくなります。

中小企業の経費申請でよく見られる課題を、「どのような症状があり、業務にどの程度の影響を与えているのか」という視点で整理すると、次のようになります。

属人化による業務の停滞と承認の遅延

中小企業では経理業務を担当する人数が限られており、多くの場合、一人または二人の担当者に業務が集中しています。そのため、担当者が休暇を取得したり出張で不在になったりすると、経費申請の承認や処理が滞ってしまう状況が発生します。

また、承認者も兼務が多く、営業活動や外出が多い役職者の場合、紙の申請書を確認するタイミングが限られ、承認までに時間がかかることも少なくありません。申請者は承認待ちの状態が続き、立替金の精算が遅れることで不満を抱くケースもあります。

さらに、経費申請のルールや処理方法が特定の担当者の頭の中にしかなく、マニュアル化されていない場合、引き継ぎが困難になり、担当者の交代時に混乱が生じるリスクもあります。このような属人化は業務の継続性を損なう要因となり、組織全体の生産性低下につながります。

紙・手作業による入力ミスと時間ロス

紙ベースの経費申請では、申請者が手書きで申請書を作成し、領収書を糊付けして提出する作業が必要です。経理担当者はこれを受け取り、手作業で会計システムに入力していきますが、この過程で数字の読み間違いや入力ミスが発生しやすくなります。

また、申請書に記入漏れや計算ミスがあった場合、経理担当者は申請者に差し戻しを行い、修正後に再提出を求めることになります。このやり取りが複数回繰り返されると、承認までの期間が大幅に延びてしまいます。

紙の領収書は紛失リスクも高く、申請者が領収書を失くしてしまったり、社内で書類が行方不明になったりすることもあります。さらに、保管スペースの確保や古い領収書の検索にも時間がかかり、税務調査の際に必要な書類をすぐに取り出せないという事態も起こりえます。こうした非効率な作業の積み重ねが、経理部門の大きな負担となっています。

小口現金管理の煩雑さとセキュリティリスク

中小企業では、少額の経費精算を小口現金で対応しているケースが多く見られます。小口現金を管理する担当者は、毎日の残高確認や出納帳への記録、不足時の銀行引き出しなど、細かな作業に時間を取られます。

また、現金を社内に保管することは盗難や紛失のリスクを伴います。金庫の鍵の管理や、誰がいつ現金を取り扱ったかの記録を残す必要もあり、セキュリティ面での配慮が欠かせません。さらに、残高が合わない場合には原因を特定するための調査が必要となり、担当者の精神的な負担も大きくなります。

小口現金での精算は申請者にとっても不便です。経理担当者が不在の時間帯には精算を受けられず、現金を受け取るために出社する必要が生じることもあります。リモートワークが普及する中、こうした現金中心の運用は時代に合わなくなってきており、キャッシュレス化への移行が求められています。

申請ルールの複雑化と統一性の欠如

中小企業では、経費申請のルールが明文化されていないケースや、部署ごとに異なる運用がなされているケースが少なくありません。創業時から使っているエクセル様式を各部署が独自にカスタマイズした結果、様式が複数存在し、経理担当者は部署ごとに異なる様式を確認する必要が生じます。

また、交際費の上限や出張時の日当、タクシー利用の基準など、社内規程があいまいな場合、申請のたびに経理担当者に問い合わせが発生し、その都度判断を求められることになります。このような状況では、同じような経費でも担当者によって承認基準が異なってしまい、公平性に欠ける運用となる恐れがあります。

さらに、ルールの複雑化は新入社員や中途入社者にとって理解が難しく、教育にも時間がかかります。統一されたルールとシステムがないことで、経費申請のハードルが高くなり、申請者の負担も増大します。

表1:中小企業の経費申請でよくある課題整理

課題カテゴリ具体的な症状業務への影響優先度
属人化・担当者不在経費申請ルールや承認フローが特定の担当者の頭の中にしかなく、マニュアルが整備されていない。担当者の不在時に承認・処理が止まり、経費計上や精算が遅延しやすい。    高
紙・手作業への依存紙の申請書・領収書を前提とした運用が続き、手書き・手入力・糊付けなどの作業が残っている。入力ミスや紛失リスクが高く、差し戻しや再提出が多発して全体のリードタイムが長くなる。    高
小口現金管理少額精算を小口現金で対応しており、残高確認や出納帳記録、現金保管などの業務が発生している。現金管理の負担とセキュリティリスクが大きく、担当者の精神的負担も増大する。    中
ルールの不明確さ・バラつき部署ごとに異なるエクセル様式や判断基準が存在し、社内規程が十分に浸透していない。同じ内容の経費でも担当者によって承認判断が変わり、公平性やガバナンスに課題が生じる。    高

AIを活用すると中小企業の経費申請業務は具体的にどこまで自動化できますか?

AI経費申請システムを導入すると、領収書の読み取りや交通費計算、承認フローの振り分け、不正・ミスの検知といったプロセスを一気通貫で自動化でき、経費申請にかかる時間とエラーの双方を大幅に減らせます。

AI経費申請システムの代表的な機能と、それぞれがどの作業をどのように効率化するのかを整理すると、次のようなイメージになります。

表2:AI機能別の効果整理(AIで実現する自動化ポイント)

機能主な内容削減できる作業・時間のイメージ追加メリット
AI-OCRによる領収書読み取り領収書やレシートの画像から日付・店舗名・金額・税区分などを自動抽出する。申請者による手入力作業を大幅に削減し、月末のまとめ申請でも短時間で処理できる。入力ミスや読み間違いを減らし、確認作業の負担も軽くなる。
交通費精算の自動化ICカード履歴や経路検索サービスと連携し、経路と運賃を自動計算する。往復経路や定期区間の確認にかかる時間を削減し、二重請求のチェックも自動化できる。営業担当者など外出の多い従業員の申請負担を減らし、生産的な業務に時間を回せる。
承認フローの可視化・自動ルーティング申請内容に応じて承認ルートを自動振り分けし、進捗状況をダッシュボードで可視化する。承認待ちのボトルネックを把握しやすくなり、催促や状況確認にかかる時間を減らせる。承認ルールの標準化により、属人化を防ぎつつガバナンスを強化できる。
不正・ミスの自動検知重複申請や上限超過、規程違反の可能性がある申請を自動的にフラグ表示する。全件目視チェックの負担を減らし、重点的に確認すべき申請に時間をかけられる。コンプライアンス強化と不正抑止につながり、監査対応もスムーズになる。

AI-OCRによる領収書の自動読み取りと入力

AI-OCRは、領収書やレシートの画像から文字情報を高精度で読み取る技術です。従来のOCRと異なり、AIが学習を重ねることで手書き文字や傾いた画像、感熱紙の劣化した文字なども認識できるようになります。

申請者はスマートフォンで領収書を撮影するだけで、日付、店舗名、金額、税区分などの情報が自動的に抽出され、申請画面に入力されます。複数枚の領収書を一度に撮影して一括処理することも可能で、月末にまとめて申請する場合でも短時間で作業を完了できます。

読み取り精度は製品によって差がありますが、近年の技術進歩により90%以上の精度を実現するシステムも登場しています。読み取り結果は申請者が確認・修正できる仕組みになっており、誤認識があった場合でも手動で訂正することで、そのデータがAIの学習に活用され、次回以降の精度向上につながります。手入力の負担が大幅に削減されることで、申請者のストレスが軽減され、経理担当者の確認作業も効率化されます。

交通費精算の自動化|ICカード連携と経路検索

交通費精算は経費申請の中でも特に頻度が高く、手入力による負担が大きい業務です。AI経費申請システムでは、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードと連携することで、利用履歴を自動的に取り込み、交通費申請を作成できます。

また、経路検索サービスとAPI連携している製品では、出発地と到着地を入力するだけで、最適な経路と運賃を自動計算してくれます。定期券区間がある場合には、その区間を自動で除外して計算するため、二重請求を防ぐことができます。

さらに、過去の訪問先データをAIが学習し、頻繁に訪れる取引先や出張先を候補として表示する機能もあります。申請者は候補から選択するだけで済むため、入力の手間がさらに削減されます。タクシー利用についても、領収書をAI-OCRで読み取ることで、出発地や到着地、金額を自動入力でき、利用理由のみを記入すれば申請が完了します。交通費精算の効率化は、営業担当者など外出の多い社員の業務負担を大きく軽減します。

承認フローの可視化と自動ルーティング

AI経費申請システムでは、申請から承認、経理確認、支払いまでの一連のフローをクラウド上で管理します。各申請の進捗状況がダッシュボードでリアルタイムに表示されるため、申請者は自分の申請が今どの段階にあるのかを一目で把握できます。

承認者は、申請が上がってきた際にメールやシステム内の通知で知らされ、スマートフォンからでも承認操作を行えます。外出先や移動中でも承認できるため、承認待ちで業務が滞ることが大幅に減少します。

また、申請金額や経費の種類に応じて承認ルートを自動で振り分ける機能もあります。例えば、一定金額以下の申請は直属の上長のみの承認で完結し、高額な申請は部長や経理部長の承認も必要とするといった設定が可能です。承認者が不在の場合には、代理承認者に自動的に回付される機能もあり、承認フローの停滞を防げます。進捗の可視化により、経理担当者も申請状況を把握しやすくなり、催促の手間も削減されます。

不正検知とコンプライアンス強化

AI経費申請システムには、不正や申請ミスを自動で検知する機能が搭載されています。重複申請のチェックでは、同じ日に同じ金額の経費が複数回申請されていないか、同じ領収書の画像が使い回されていないかをAIが判定し、該当する申請にアラートを表示します。

また、社内規程で定められた上限額を超える申請や、承認が必要な経費項目が適切なフローを経ていない申請についても自動でフラグが立ち、承認者や経理担当者に通知されます。例えば、交際費の一人当たり上限金額が設定されている場合、申請内容から自動計算して上限超過をチェックします。

過去の申請パターンと大きく異なる申請があった場合にも、AIが異常値として検知する機能を持つシステムもあります。これにより、意図的な不正だけでなく、申請者の単純なミスも早期に発見できます。不正検知機能はコンプライアンス強化につながるだけでなく、経理担当者のチェック業務の負担を軽減し、重点的に確認すべき申請に時間を割けるようになります。

クレジットカード・電子マネーとの自動連携

法人クレジットカードや電子マネーの利用明細をAI経費申請システムと連携させることで、決済データを自動的に取り込み、経費申請の下書きを作成できます。カード決済した時点でデータがシステムに反映されるため、申請者は領収書を撮影する手間も省けます。クレジットカード連携により、申請者は利用明細から該当する取引を選択し、用途や経費科目を追加するだけで申請が完了します。また、カード決済の場合は電子的な記録が残るため、領収書の紛失リスクもなくなります。

電子マネーについても、交通系ICカードだけでなく、QRコード決済などの利用履歴を取り込める製品が増えています。キャッシュレス決済の普及により、現金での立替が減り、小口現金管理の負担も軽減されます。ただし、カード連携を行う際には、個人利用と業務利用の区別を明確にする必要があります。法人カードを適切に運用し、私的利用を防ぐためのルール整備も合わせて行うことが重要です。

AI経費申請システムを導入すると、日々の業務フローや担当者の負担がどのように変わるのかを、導入前(Before)と導入後(After)で比較したものが次の表です。紙・エクセル中心の運用からAIを活用したクラウド運用へ切り替えた場合の違いをイメージしながら、自社の現状とのギャップや、導入によって得られそうな効果を確認する際の参考にしてください。

表3:AI導入前後の比較表(Before/After)

項目従来(Before)AI導入後(After)
領収書の処理手入力で1枚3〜5分撮影で1枚5秒 (▼大幅短縮)
月間処理時間約40時間約4時間 (▼90%削減)
承認期間平均5〜7日平均1〜2日 (▼約70%短縮)
エラー率約11%約2% (▼約80%削減)
小口現金管理毎日1時間キャッシュレスで不要 (▼100%削減)
年間コスト削減効果:約●●万円 ※算出例:(Before月間処理時間 − After月間処理時間)× 平均時給 × 12 + 紙・郵送・保管コストの削減見込み

以下の記事では、AI×経費申請の具体策・補助制度までを詳しく解説しているので参考にしてください。

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AI経費申請システムの導入で、どのようなコスト削減効果が期待できますか?

AI経費申請システムの導入により、経理担当者と申請者の工数削減に加えて、紙・保管スペース・郵送といった目に見えるコストも圧縮でき、トータルの支出削減と残業時間の抑制が期待できます。

中小企業がAI経費申請システムを導入した場合の、コスト・工数の変化イメージを整理すると、次のようになります(あくまで一般的なイメージであり、自社の状況に応じて試算が必要です)。

表4:導入前後のコスト・工数イメージ

項目導入前の状態導入後のイメージ削減・改善のポイント
経理担当者の経費処理工数紙の申請書の回収・チェック・再入力に多くの時間を取られている。申請データが自動で集約され、承認済みデータをそのまま会計ソフトに取り込める。入力作業や差し戻し対応が減り、決算・分析などの業務に時間を回せる。
申請者の入力・修正時間エクセルや紙の様式に手入力し、記入ミスがあると何度も修正が発生する。領収書撮影と候補表示で入力が簡素化され、修正も画面上で完結する。申請にかかる時間が短縮され、本来の業務に集中しやすくなる。
紙・保管スペース・郵送コスト申請書・領収書の印刷やファイリング、保管棚の確保、郵送費が発生している。証憑が電子保存されることで、印刷・郵送・保管スペースの多くが不要になる。オフィスコスト削減と、書類検索・取り出し時間の短縮につながる。
承認リードタイム紙の回覧やメール依頼に依存しており、承認者の不在時に申請が滞留しやすい。モバイル承認と通知機能により、場所を問わず承認できる体制が整う。立替金の早期精算や、月次締め作業の前倒しがしやすくなる。

直接コストの削減|紙・印刷・保管費用

AI経費申請システムの導入により、紙の申請書や領収書の印刷が不要になります。従来は申請者が申請書を印刷し、領収書を糊付けして提出していましたが、電子化により印刷用紙やインク代、糊などの消耗品費が削減されます。

また、紙の書類を保管するためのファイルや保管棚、保管スペースも不要になります。中小企業では事務所スペースが限られているケースが多く、書類保管のために倉庫を借りている場合もあります。電子データで保管することで、こうした保管コストを削減できます。

電子帳簿保存法に対応したシステムであれば、法令要件を満たした状態でデータを保存できるため、税務調査の際にも必要な書類をすぐに検索・表示できます。紙の場合は古い書類を探すのに時間がかかりますが、電子データなら検索機能で瞬時に見つけられます。

さらに、郵送費の削減効果もあります。支店や営業所が複数ある企業では、各拠点から本社に申請書を郵送していましたが、クラウドシステムならインターネット経由で即座に提出できます。

人件費の最適化と残業時間の削減

経費申請の自動化により、経理担当者が手作業で行っていたデータ入力や確認作業の時間が大幅に削減されます。ある調査では、AI経費申請システムの導入により経理担当者の作業時間が最大90%削減されたという報告もあります。

月末や期末は経費申請が集中し、経理担当者の残業が増える傾向にありますが、AIによる自動処理により残業時間を削減できます。実際に、月末残業時間がゼロになった企業事例も報告されています。残業代の削減は直接的なコスト削減につながります。

また、経理業務の効率化により、少人数でも業務を回せるようになるため、新たな人員を採用する必要がなくなったり、既存の担当者を他の付加価値業務に配置転換したりすることが可能になります。中小企業では人材採用が難しい状況が続いており、限られた人員で業務を効率化できることは大きなメリットです。

申請者側でも、領収書の手入力や申請書作成にかかる時間が削減され、本来の業務に集中できるようになります。営業担当者が経費申請に費やす時間が減れば、その分を営業活動に充てられます。

経理担当者の作業時間短縮による生産性向上

AI経費申請システムの導入により、経理担当者の業務内容が大きく変化します。従来は領収書の内容を一つひとつ確認して手入力する作業に多くの時間を費やしていましたが、AIが自動でデータを抽出・入力することで、経理担当者は例外的なケースや高額な申請のチェックに集中できるようになります。

また、申請内容の不備による差し戻しや問い合わせ対応も減少します。AI-OCRが自動入力した時点でデータの形式が統一されており、社内規程チェック機能により規定違反の申請が事前に検知されるため、承認前に問題を解決できます。

時間的な余裕が生まれることで、経理担当者は月次決算の早期化や予算実績分析、経営層への報告資料作成など、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。単純な事務作業から分析業務へとシフトすることで、経理部門の付加価値が向上し、経営判断に貢献できる組織へと変化していきます。

作業時間の短縮は、担当者の精神的な負担軽減にもつながります。月末の繁忙期でも余裕を持って業務を進められるようになり、ワークライフバランスの改善にも寄与します。

時間短縮が生む戦略的な余力

経費申請業務の効率化で生まれた時間は、企業にとって「戦略的な余力」になります。経理担当者は、定型的な入力や差し戻し対応から解放され、資金繰りの見直しやコスト分析、経営層への報告資料作成など、意思決定に直結する業務に集中できるようになります。

また、経費データがリアルタイムで可視化されることで、部門別・費目別の支出状況を素早く把握し、無駄な支出の削減や予算配分の見直しにつなげられます。ノンコア業務を減らすことで、現場の従業員も本来の業務に時間を割けるようになり、組織全体の生産性向上に寄与します。

AI経費申請システムは電子帳簿保存法やインボイス制度への対応にどう役立ちますか?

電子帳簿保存法やインボイス制度に対応したAI経費申請システムを使うことで、証憑の電子保存要件やインボイスの必須記載事項チェックをシステム側で標準化でき、法令対応の抜け漏れや担当者依存のリスクを減らせます。

電子帳簿保存法の要件とAIシステムの対応機能

2024年1月に施行された電子帳簿保存法の改正により、電子取引で受け取った請求書や領収書は電子データのまま保存することが義務付けられました。紙に印刷して保管することは原則認められなくなったため、適切なシステムでの保存が必要です。

電子帳簿保存法では、改ざんされていないこと(真実性)を確保するため、タイムスタンプの付与や訂正削除の履歴が残る仕組み、検索機能の確保などが要件として定められています。AI経費申請システムの多くは、これらの要件に対応した機能を標準で備えています。

具体的には、領収書をアップロードした時点で自動的にタイムスタンプが付与され、改ざんができない状態で保存されます。また、取引日付や金額、取引先名などで検索できる機能があり、税務調査の際に求められた書類をすぐに提示できます。

ただし、電子帳簿保存法の要件は細かく定められているため、導入するシステムが法令要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。システムベンダーに対応状況を確認し、安心して利用できる製品を選定しましょう。

以下の記事では、電子保存の実務要件と運用ポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。

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インボイス制度における適格請求書の自動判定

2023年10月に開始されたインボイス制度では、仕入税額控除を受けるために適格請求書発行事業者が発行した請求書であることを確認する必要があります。適格請求書には登録番号が記載されており、この番号を国税庁のシステムで照合して事業者の登録状況を確認します。

AI経費申請システムの中には、領収書をAI-OCRで読み取る際に適格請求書発行事業者登録番号も自動で抽出し、国税庁のAPIと連携して自動照合する機能を持つものがあります。登録事業者でない場合や、登録番号の記載がない場合にアラートを表示することで、仕入税額控除を適切に処理できます。

この機能により、経理担当者が一つひとつの領収書について登録番号を手動で確認する手間が省けます。また、免税事業者との取引については経過措置により一定割合の控除が認められていますが、システムが自動で計算してくれるため、複雑な処理も正確に行えます。

インボイス制度への対応は中小企業にとって負担が大きい業務ですが、AIシステムの活用により対応を効率化し、ミスのリスクを低減できます。

以下の記事では、インボイス後の経費精算で何が変わるかを、運用・証憑管理まで詳しく解説しているので参考にしてください。

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法令改正への追随とシステムアップデート

税法や会計基準は定期的に改正されるため、経理システムもそれに合わせてアップデートする必要があります。クラウド型のAI経費申請システムの大きなメリットは、法令改正に対応したアップデートが自動的に適用される点です。

従来のオンプレミス型システムでは、法改正のたびにシステム改修を依頼し、費用と時間をかける必要がありました。しかし、クラウド型サービスではベンダー側が法令改正に対応したアップデートを実施し、すべてのユーザーに一斉に適用されるため、企業側で特別な対応を行う必要がありません。

例えば、消費税率の変更や軽減税率の導入、電子帳簿保存法の改正、インボイス制度の開始など、近年は大きな制度変更が続いていますが、クラウドシステムであればこれらの変更に自動で対応できます。

ただし、システムの自動アップデートに依存するだけでなく、自社でも法令改正の内容を理解し、社内ルールの見直しや従業員への周知を適切に行うことが重要です。システムベンダーから提供される法改正に関する情報や研修資料を活用し、常に最新の知識を保つよう心がけましょう。

電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック 電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック

中小企業がAI経費申請システムを選ぶとき、どのようなポイントを比較すべきでしょうか?

中小企業がAI経費申請システムを選ぶ際は、必要な機能が過不足なく搭載されているかに加えて、料金体系、会計ソフトや電帳法対応の可否、サポート体制、セキュリティ・権限管理などを総合的に比較検討することが重要です。

中小企業がAI経費申請システムを比較検討する際は、次のような観点ごとに「何を確認し、どこに注意するか」を整理しておくと、検討漏れを防ぎやすくなります。

表5:システム選定チェックリスト(観点×確認ポイント)

観点具体的に確認したいポイント見落としやすい注意点
機能・操作性領収書読み取り、交通費精算、承認フロー設定、スマホアプリなど、必要な機能が揃っているか。機能が多すぎると設定が複雑になりがちなため、「使いこなせる範囲か」を確認する。
料金体系・コスト初期費用と月額費用、ユーザー数課金か従量課金か、オプション料金の有無。将来の利用拡大時に料金が急増しないか、数年単位での総コストも試算しておく。
会計ソフト連携・法令対応自社の会計ソフトとの連携可否、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応状況。連携方式(API/CSV)や、法令改正時のアップデート方針も確認しておく。
サポート・導入支援初期設定や承認フロー設計の支援有無、問い合わせ対応のチャネルと受付時間。導入後の運用相談や教育コンテンツの有無など、定着まで伴走してもらえるかを重視する。
セキュリティ・権限管理データの暗号化、アクセス権限設定、ログ管理、国内データセンターの利用状況など。自社の情報セキュリティポリシーや監査要件を満たせるか、事前に確認しておく。

AI経費申請システムといっても、AI-OCR特化型・会計連携型・ICカード連携型・オールインワン型など、得意分野やコスト感は大きく異なります。以下のマトリクスでは、読み取り精度や会計連携、交通費自動化、承認フロー、初期費用・月額費用といった観点から、4つのタイプを相対的に比較できるよう整理しました。自社の課題や優先したいポイントに照らし合わせながら、「どのタイプから検討を始めるべきか」を判断するための早見表としてご活用ください。

表6:システムタイプ別比較マトリクス

評価項目AI-OCR特化型会計連携型ICカード連携型オールインワン型
読取精度   ◎   ○   △   ○
会計連携   △   ◎   ○   ◎
交通費自動化   ○   △   ◎   ◎
承認フロー   △   ○   ○   ◎
初期費用   ◎   ○   ○   △
月額費用   ◎   ○   ○   △
向いている企業領収書が大量/紙中心運用の見直し仕訳精度と会計ソフト連携を最重視営業職多数・外出頻繁・交通費が多い全機能をワンストップで使いたい
※凡例:=強い/=標準/=弱い(相対比較)

AI-OCR特化型|読み取り精度重視

AI-OCR特化型のシステムは、領収書やレシートの読み取り精度に特化した製品です。手書きの領収書や感熱紙の劣化した文字、斜めに撮影された画像なども高精度で認識できる点が強みです。読み取り精度が95%以上の製品もあり、手入力の手間を最小限に抑えられます。

このタイプのシステムは、領収書の枚数が多い企業や、営業担当者が多く経費申請の頻度が高い企業に適しています。また、複数枚の領収書を一括でアップロードして同時処理できる機能を持つ製品もあり、月末にまとめて申請するケースでも短時間で処理が完了します。

ただし、AI-OCR特化型は読み取り機能に特化しているため、承認フローの管理や会計ソフトとの連携機能が限定的な場合があります。既に承認フローのシステムを導入している企業や、シンプルな経費申請フローで運用している企業であれば、読み取り機能だけを追加する形で導入できます。

選定の際は、自社でよく使う店舗やフォーマットの領収書を実際に読み取らせてみて、精度を確認することが重要です。無料トライアル期間を活用し、実際の運用に即した検証を行いましょう。

会計連携型|既存システムとのスムーズな連携

会計連携型のシステムは、既に導入している会計ソフトとのデータ連携に強みを持つ製品です。承認済みの経費データを自動的に会計ソフトに仕訳データとして取り込めるため、経理担当者の二重入力が不要になります。

主要な会計ソフトである弥生会計、勘定奉行、freee、マネーフォワードクラウド会計などとAPI連携しており、リアルタイムでデータを同期できます。勘定科目の自動提案機能も備えているため、申請時点で適切な勘定科目が設定され、経理担当者の確認作業も効率化されます。

このタイプは、既に会計ソフトを導入しており、そこへのデータ入力が負担になっている企業に最適です。会計ソフトとの親和性が高いため、導入後の運用もスムーズに進められます。

選定時には、自社で使用している会計ソフトと正式に連携できるかを必ず確認しましょう。また、仕訳データの形式や補助科目の設定など、細かな連携仕様についても事前に検証しておくことで、導入後のトラブルを防げます。同じ会計ソフトメーカーが提供する経費精算システムであれば、連携の確実性が高まります。

ICカード連携型|交通費精算の自動化

ICカード連携型のシステムは、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードの利用履歴を自動的に取り込み、交通費申請を作成する機能に特化した製品です。営業担当者や外勤の多い企業では、交通費精算の頻度が非常に高く、手入力の負担が大きいため、この機能による効率化効果は絶大です。

ICカードリーダーをパソコンに接続してカードをかざすだけで、利用履歴が取り込まれ、日付、区間、金額が自動的に申請データとして登録されます。定期券区間がある場合には、その区間を除外して計算する機能もあるため、正確な交通費申請が可能です。

また、モバイルSuicaやモバイルPASMOを利用している場合には、スマートフォンアプリから直接データを取り込める製品もあります。これにより、ICカードリーダーを用意する必要がなく、外出先からでも申請できます。

このタイプは交通費精算に特化しているため、その他の経費申請機能がシンプルな場合があります。交通費以外の経費申請も多い企業では、オールインワン型で交通費精算機能が充実した製品を選ぶとよいでしょう。

オールインワン型|申請から支払いまで一気通貫

オールインワン型のシステムは、経費申請から承認、経理確認、支払い、会計仕訳までの一連のプロセスを一つのシステムで完結できる製品です。AI-OCRによる領収書読み取り、交通費精算、クレジットカード連携、承認フローの管理、会計ソフト連携など、必要な機能がすべて揃っています。

このタイプの強みは、データが一元管理されるため、申請状況や経費の使用状況をリアルタイムで把握できる点です。経営層向けのダッシュボード機能により、部門別の経費推移や予算消化率などを可視化し、意思決定に活用できます。

また、機能が統合されているため、複数のシステムを導入するよりもコストを抑えられる場合があります。データの連携もシームレスに行えるため、システム間のデータ不整合や二重入力のリスクもありません。

ただし、多機能であるがゆえに、使わない機能も含まれている場合があり、コストパフォーマンスを慎重に検討する必要があります。自社の業務フローに本当に必要な機能を洗い出し、過不足のない製品を選定することが重要です。無料トライアルで実際に操作してみて、使いやすさを確認しましょう。

経理AIエージェント

AI経費申請システムを導入する場合、中小企業はどのようなステップで進めればよいですか?

中小企業がAI経費申請システムを導入する際は、現状課題と申請ルールの棚卸しから始め、トライアルでの検証、対象範囲を絞ったスモールスタート、本番展開後の定着支援と振り返りという流れで段階的に進めることが成功の鍵となります。

ステップ1 申請ルールの整理と様式統一

AI経費申請システムを導入する前に、まず自社の経費申請ルールを整理することが重要です。現状で部署ごとに異なる申請方法や様式が存在する場合、それらを統一する必要があります。経費の種類ごとに承認者を誰にするか、金額による承認ルートの違い、領収書の添付が必要なケースなどを明文化します。

また、社内規程を見直し、曖昧な部分を明確にします。例えば、交際費の上限金額、タクシー利用が認められる条件、出張時の日当や宿泊費の基準などを具体的に定めます。これらのルールがシステム上で自動チェックできるよう、設定可能な形に整理しておくことが大切です。

現在使用しているエクセルの申請様式が複数ある場合には、それらを一つの標準様式に統合します。システム導入後は、システムが提供する申請フォームを使用することになるため、この機会に項目を見直し、本当に必要な情報だけを入力する形に簡素化することも検討しましょう。

ルールの整理には、経理担当者だけでなく、各部署の責任者や実際に申請を行う従業員の意見も聞くことが重要です。現場の実態に即したルールを設定することで、導入後のスムーズな運用につながります。

ステップ2 ツール選定と無料トライアルの活用

申請ルールの整理ができたら、次は自社に合ったシステムを選定します。まず、複数の製品を比較検討し、機能、価格、サポート体制などを評価します。製品の公式サイトや資料請求で基本情報を集め、候補を3~5製品程度に絞り込みます。

多くのAI経費申請システムは無料トライアル期間を設けているため、これを積極的に活用しましょう。トライアル期間は通常30日程度で、実際の業務フローに沿って使用感を確認できます。経理担当者だけでなく、申請者となる従業員にも触ってもらい、操作性や使いやすさを評価してもらいます。

トライアル時には、自社でよく使う領収書の形式でAI-OCRの読み取り精度を検証します。手書きの領収書やレシート、異なる店舗のフォーマットなど、様々なパターンで試してみましょう。また、既存の会計ソフトとの連携機能も実際にテストし、データが正しく取り込まれるかを確認します。

トライアル期間中は、システムベンダーのサポート担当者に積極的に質問し、不明点を解消します。導入後の運用イメージを具体的に描けるよう、細かな機能や設定方法についても確認しておきましょう。

ステップ3 スモールスタートによる試験導入

いきなり全社一斉にシステムを導入するのではなく、特定の部署や少人数のグループで試験導入を行うスモールスタートのアプローチが推奨されます。例えば、経理部門と一つの営業部門だけで先行導入し、1~3か月程度運用してみます。

試験導入の期間中は、実際の業務での使用感や課題を洗い出します。AI-OCRの読み取り精度は実用に耐えるか、承認フローは適切に設定されているか、申請者や承認者から不満の声が上がっていないかなどを確認します。

また、この期間を利用して、従来の紙ベースの申請とシステムでの申請を並行運用し、データの整合性を確認することも有効です。システムで申請したデータが正しく会計ソフトに連携されているか、月次決算に必要なデータが適切に集計されているかを検証します。

試験導入で見つかった課題については、システムの設定変更や運用ルールの見直しで対応します。重大な問題が発覚した場合には、システムベンダーと相談し、改善策を講じます。試験導入の結果を踏まえ、全社展開に問題がないと判断できてから、段階的に他の部署にも展開していきます。

ステップ4 社内周知と運用定着の取り組み

全社展開にあたっては、「なぜこのシステムを導入するのか」「誰にどのようなメリットがあるのか」を最初に丁寧に伝え、納得感をつくることが重要です。そのうえで、画面キャプチャ付きの操作マニュアルや簡単な動画マニュアルを用意し、社内ポータルなどで共有します。

導入初期は、説明会やハンズオン研修で実際に操作してもらい、よくある質問はFAQとしてまとめておくと定着がスムーズです。運用開始後も、経理部門に問い合わせ窓口を設置し、つまずきやすいポイントを随時FAQに反映させることで、サポート負荷を抑えながら利用定着を促進できます。

ステップ5 運用開始後のモニタリングと改善

運用開始後は、「経費申請の処理時間」「承認にかかる日数」「経理担当者の作業時間」「AI-OCRの誤認識率」など、あらかじめ決めた指標で定期的に効果を確認します。月次や四半期ごとに振り返りの場を設け、経理担当者・申請者・承認者それぞれの立場から課題を挙げ、設定や運用ルールの改善につなげると効果的です。

また、法令改正やシステムのアップデートがあった際には、変更点を簡潔に整理して社内に共有し、必要に応じて追加研修を行います。こうした小さな見直しを継続することで、AI経費申請システムの効果を長期的に最大化できます。

中小企業は、どのような補助金・助成金を活用してAI経費申請システムの導入コストを抑えられますか?

IT導入補助金やものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などを活用すれば、AI経費申請システムの導入費用の一部を公的支援で賄うことができ、自己負担を抑えながらデジタル化を進められます。

中小企業がAI経費申請システムを導入する際は、国や自治体の補助金・助成金を活用することで、初期投資の負担を大きく抑えられます。代表的な制度として、ITツール導入を支援する「IT導入補助金」、生産性向上や業務改革を支援する「ものづくり補助金」、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する「小規模事業者持続化補助金」などがあります。いずれも公募要領や枠ごとの条件が毎年度見直されるため、最新情報を確認しながら検討することが重要です。

IT導入補助金は、クラウド型の経費精算システムなど、業務効率化に資するITツール導入を対象とした制度です。あらかじめ登録されたIT導入支援事業者と一緒に事業計画を作成し、導入するツールと期待される効果を整理したうえで申請します。採択されれば、導入費用の一部が補助されるため、自己負担を抑えてAI経費申請システムを導入できます。

参考:1月16日更新 【IT導入補助金2025】IT導入補助金2025の概要について | IT導入補助金2025
参考:IT導入補助金 概要資料(PDF)

ものづくり補助金は、主に製造業向けと思われがちですが、サービス業や小売業でも、業務プロセスの革新や生産性向上につながるプロジェクトであれば対象となる場合があります。AI経費申請システムの導入が、経費精算の自動化だけでなく、全社的な業務改革や分析基盤の整備と一体になっている場合には、検討の余地がある制度です。

参考:ものづくり補助金(経産省/公募関連資料)

小規模事業者持続化補助金は、従業員数の少ない事業者を対象に、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度です。AI経費申請システムの導入により、少人数でも経理業務を効率的に回せる体制を整え、その分の時間を営業活動や新サービス開発に振り向けるといったストーリーが描ければ、申請候補となり得ます。

参考:小規模事業者持続化補助金について | 中小企業庁

補助金申請はいずれも、情報収集 → 自社が対象かの確認 → 事業計画書の作成 → 申請・審査 → 採択後の導入・実績報告という流れが基本です。申請に一定の手間はかかりますが、補助金の活用によりAI導入のハードルを下げられるため、自社だけで判断が難しい場合は、中小企業診断士や認定支援機関などの専門家に相談しながら検討することをおすすめします。

モバイル対応のAI経費申請システムは、リモートワーク時代の働き方にどう貢献しますか?

モバイル対応のAI経費申請システムを活用すれば、外出先や自宅から領収書撮影・申請・承認まで完結できるようになり、リモートワーク環境でも経費処理を滞らせない柔軟な働き方を実現できます。

クラウド型AI経費申請システムの大きな強みは、スマートフォンアプリを通じて場所を問わず経費申請・承認を行える点です。領収書を受け取ったその場で撮影し、AI-OCRで自動入力された内容を確認して申請できるため、「紙を持ち帰ってまとめて申請する」という手間や紛失リスクを減らせます。交通費精算も、経路入力やICカード連携により、外出先から短時間で申請可能です。

承認者もアプリから内容を確認して承認・差し戻しができ、プッシュ通知によって承認待ちの申請を見落としにくくなります。移動中や出張中のすきま時間に処理を進められるため、紙の回覧に比べて承認リードタイムを短縮しやすくなります。

リモートワーク環境においても、クラウド上で申請データと証憑が一元管理されていれば、経理担当者はオフィスに出社せずに経費申請の確認・承認や会計ソフトへの連携を行えます。電子帳簿保存法に対応したシステムであれば、紙原本の保管や持ち出しも不要です。あわせて、VPNや二段階認証、社外アクセスルールの徹底など、基本的なセキュリティ対策を組み合わせることで、場所に依存しない安全な経費処理体制を構築できます。

今後、中小企業の経費申請はAIの進化によってどのように変化していくのでしょうか?

今後は、自律学習型のAIや高度なデータ分析機能が普及することで、経費申請の入力作業を限りなくゼロに近づけるだけでなく、費用の使い方を自動分析して経営判断に活かす「戦略的な支出管理」へと発展していくことが期待されます。

今後は、AI技術とクラウド・モバイル環境の進化により、経費申請の入力作業はさらに簡素化されていくと考えられます。スマートフォンで領収書を撮影した瞬間にAIが内容を解析し、勘定科目やプロジェクトコードまで自動提案する機能が一般的になれば、「経費申請のための作業」は限りなくゼロに近づいていきます。音声入力やチャット形式での申請も組み合わさることで、移動中でも自然な操作で申請を完了できるようになるでしょう。

一方で、AI-OCRをはじめとする認識技術は、自律学習の仕組みによって企業ごとの利用状況に応じて精度を高めていく方向に進んでいます。よく利用する店舗や手書きの癖を学習し、使い込むほど認識精度が高まることで、「導入初期は手直しが多いが、次第に修正が減っていく」という体験が一般的になると考えられます。

さらに、AI経費申請システムに蓄積されたデータを分析することで、単なる経費精算にとどまらない「戦略的な費用管理」への活用も進みます。部門別・プロジェクト別の経費推移や予算消化率の可視化、不自然な経費の自動検知などを通じて、早期のコストコントロールや営業投資の見直しにつなげることができます。経費申請のデータは、将来的に経営判断を支える重要な情報源となり、AIはその分析と改善提案を担う存在へと進化していくでしょう。

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中小企業がAI経費申請システムを検討するとき、どのような疑問や不安が多いですか?

AI経費申請システムの検討時には、「導入期間」「会計ソフト連携」「手書き領収書の対応」「小規模企業での費用対効果」「セキュリティやサポート体制」といった現場目線の疑問が多く挙がります。

Q:導入にどのくらいの期間がかかりますか?

AI経費申請システムの導入期間は、企業の規模や既存システムとの連携状況によって異なりますが、一般的な中小企業であれば1か月から3か月程度が目安です。クラウド型サービスで既存の会計ソフトとの連携が不要な場合には、最短で2週間程度での運用開始も可能です。

導入のステップとしては、まずシステムの選定に12週間、無料トライアルでの検証に24週間、正式契約後の初期設定に12週間、従業員への研修と試験運用に24週間という流れが一般的です。複雑なカスタマイズや大量の既存データ移行が必要な場合には、さらに時間がかかることもあります。

スムーズな導入のためには、事前準備が重要です。申請ルールの整理や既存の会計ソフトとの連携仕様の確認を早めに済ませておくことで、導入期間を短縮できます。また、システムベンダーの導入支援サービスを活用することで、設定作業を効率化できます。

急いで導入を進めるよりも、十分な検証期間を設けて従業員が使いこなせる状態にしてから本格運用を開始する方が、結果的に成功率が高まります。

Q:既存の会計ソフトと連携できますか?

多くのAI経費申請システムは、主要な会計ソフトとのAPI連携機能を提供しています。弥生会計、勘定奉行、freee、マネーフォワードクラウド会計、PCA会計などの国内で広く利用されている会計ソフトとは、標準で連携できる製品が多く見られます。

API連携により、承認済みの経費データを自動的に会計ソフトの仕訳データとして取り込めるため、経理担当者の二重入力が不要になります。勘定科目のマッピング設定を事前に行うことで、経費申請システムの科目が会計ソフトの勘定科目に自動変換されます。

ただし、会計ソフトのバージョンや契約プランによっては連携できない場合もあります。また、自社で独自開発した会計システムを使用している場合には、API連携ができず、CSVファイルでのデータエクスポート・インポートが必要になることがあります。

システム選定の際には、現在使用している会計ソフトとの連携実績があるかをベンダーに確認し、可能であれば無料トライアル期間中に実際に連携テストを行うことをお勧めします。連携がうまくいかない場合には、ベンダーのサポートを受けて設定を調整しましょう。

Q:手書きの領収書も読み取れますか?

AI-OCRの技術は近年大きく進歩しており、手書きの領収書も読み取れる製品が増えています。ただし、読み取り精度は手書きの文字の読みやすさや書き方の癖によって大きく左右されます。楷書で丁寧に書かれた文字であれば高い精度で認識できますが、崩し字や極端に小さな文字は認識が難しい場合があります。

多くのシステムでは、AI-OCRが自動認識した結果を申請者が確認・修正できる画面が用意されています。誤認識があった場合には手動で修正することで、正確なデータを申請できます。また、修正内容がAIの学習に反映される機能を持つ製品では、使い込むほど手書き文字の認識精度が向上していきます。

手書きの領収書が多い業種や企業では、システム選定時に手書き文字の認識精度を重点的にチェックすることが重要です。無料トライアル期間中に、実際に自社でよく使う手書き領収書を読み取らせてみて、精度を確認しましょう。

また、可能であれば、取引先に対してレシートプリンターで印字された領収書の発行を依頼することで、読み取り精度を高めることができます。手書き領収書の利用を減らす運用面での工夫も効果的です。

Q:小規模企業(従業員10名以下)でも導入メリットはありますか?

従業員10名以下の小規模企業でも、AI経費申請システムの導入メリットは十分にあります。むしろ、人数が少ないからこそ、一人ひとりの業務負担が大きく、効率化の必要性が高いとも言えます。

小規模企業では、経理専任の担当者がおらず、社長や事務スタッフが経理業務を兼任しているケースが多く見られます。こうした状況では、経費申請の処理に時間を取られることで、本来の業務に支障が出ることもあります。AIシステムの導入により、領収書の入力作業や承認管理が自動化されれば、経理業務にかける時間を大幅に削減できます。

また、小規模企業向けには、少人数から利用できる料金プランを提供している製品があります。月額3,000円~10,000円程度で利用できるサービスもあり、費用負担を抑えながら導入できます。クラウド型サービスは初期費用も低く抑えられるため、スモールスタートに適しています。

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、小規模企業にとって負担の大きい課題です。AIシステムを導入することで、法令要件を満たしたデータ保存が自動的に行われ、対応の手間を削減できます。

Q:セキュリティ対策は十分ですか?

クラウド型AI経費申請システムのセキュリティ対策は、近年大きく強化されています。多くの製品は、データの暗号化通信(SSL/TLS)、アクセス権限の階層管理、ログの記録と監視、定期的なバックアップといった基本的なセキュリティ機能を標準で備えています。

信頼性の高いシステムベンダーは、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やSOC2などの国際的なセキュリティ認証を取得しています。これらの認証は、第三者機関による厳格な審査をクリアした証であり、一定のセキュリティ水準が保たれていることを示します。

また、二段階認証やシングルサインオン(SSO)などの機能により、不正アクセスを防止できます。IPアドレス制限を設定すれば、社内ネットワークや特定の場所からのみアクセスを許可することも可能です。

データの保管場所も重要な要素です。多くのクラウドサービスは、国内のデータセンターにデータを保管しており、日本の法律に準拠した運用が行われています。海外のデータセンターに保管される場合には、データの越境移転に関する法的な取り扱いを確認しておく必要があります。

ただし、システム側のセキュリティがしっかりしていても、利用者側の管理が甘いと情報漏洩のリスクが高まります。パスワードの適切な管理、社外からのアクセスルールの徹底、従業員へのセキュリティ教育など、企業側での対策も合わせて行うことが重要です。

Q:導入後のサポート体制はどうなっていますか?

AI経費申請システムの導入後も、継続的なサポートが受けられるかは重要な選定ポイントです。多くのシステムベンダーは、電話やメール、チャットでの問い合わせ対応を提供しています。サポート時間は平日の営業時間内が一般的ですが、製品によっては夜間や休日のサポートに対応しているものもあります。

初期導入支援として、システムの初期設定や承認フローの設定、会計ソフトとの連携設定などをベンダーのスタッフがサポートしてくれるサービスも提供されています。リモートでの設定支援や、オンサイトでの訪問サポートが受けられる場合もあります。

運用開始後は、操作方法に関する問い合わせや、エラーが発生した際のトラブルシューティングをサポートしてもらえます。ヘルプサイトやFAQページが充実している製品では、自己解決できるケースも多く、スムーズに運用を続けられます。

また、法令改正やシステムのバージョンアップがあった際には、変更内容を説明するウェビナーや資料が提供されることがあります。これらを活用することで、常に最新の情報をキャッチアップできます。

サポート品質は製品やベンダーによって差があるため、契約前にサポート内容を確認し、無料トライアル期間中に実際に問い合わせをしてみて対応の質を確かめることをお勧めします。

まとめ

中小企業がAI経費申請を成功させるには、現状課題の明確化とスモールスタートによる検証、法令対応や補助金の活用、モバイル・クラウド前提の運用設計をバランスよく組み合わせ、単なる業務効率化にとどまらない「戦略的な支出管理」につなげていくことが重要です。

中小企業の課題は、限られた人員での多様な業務対応、紙や手作業による遅延とミス、属人化による業務の停滞、小口現金管理の煩雑さなど多岐にわたります。AI技術を活用した経費申請システムの導入により、領収書の自動読み取り、交通費精算の自動化、承認フローの可視化、不正検知の強化といったメリットを享受でき、業務時間を最大80~90%削減した事例も報告されています。

導入にあたっては、IT導入補助金などの支援制度を活用することで、初期投資の負担を最大50%程度軽減できます。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も、AIシステムの標準機能として組み込まれており、法令対応の負担も軽減されます。AIによる経費申請の効率化は、単なる業務改善にとどまらず、戦略的な費用管理や事業拡大への時間創出を可能にする重要な経営基盤となります。

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