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プレイングマネージャーは両立できる?役割分担と無理のない働き方

更新日:2025.11.17

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プレイングマネージャー_両立

経理の課長・部長クラスになると、多くの人が「プレイングマネージャー」として、月次決算や支払処理といった実務を続けながら、メンバー育成や経営への報告も担っています。その一方で、「自分のタスクで手一杯で、マネジメントの時間が取れない」「任せたいが、任せきれない」と悩む声も少なくありません。

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本記事では、経理・バックオフィスならではの事情を踏まえつつ、現場とマネジメントを無理なく両立させるための考え方と、業務の整理・自動化の進め方を整理します。

プレイングマネージャーとは?経理・バックオフィスで増えている背景

まずは、プレイングマネージャーという役割の全体像を整理します。経理・バックオフィスでは、決算や支払処理といった実務を続けながら、メンバー育成や経営報告も担うケースが増えています。その背景にある人手不足や組織のスリム化といった環境変化を押さえることで、自分の立ち位置と求められる役割を客観的に確認できます。

プレイングマネージャーの定義と役割

プレイングマネージャーとは、自らも実務を担当しながら、メンバーのマネジメントも担う管理職のことを指します。経理部門であれば、月次決算の仕訳や支払処理、経費精算のチェックなどを自分の手でこなしつつ、部下の育成や評価、経営層への報告も同時に行います。従来の「管理職=管理が中心」というイメージと異なり、担当者としての専門性と、マネジメントスキルの両方が求められる点が特徴です。そのため、役割の幅が広く、うまく設計しないと業務負荷が急激に高まりやすいポジションでもあります。

経理・管理部門でプレイングマネージャーが増える理由

経理や管理部門でプレイングマネージャーが増えている背景には、人員や予算に余裕がない企業が多いことがあります。組織をスリムに保つため、課長や部長であっても決算や支払いなどの重要な担当業務を持ち続けるケースが一般的です。また、法改正やシステム入れ替えなど変化が多い環境では、現場をよく知る人がプロジェクトの中心にならざるを得ません。その結果、マネジメント専任のポジションを設けるよりも、プレイングマネージャーに役割をまとめるほうが現実的と判断されることが多くなっています。

「プレイヤー」と「マネージャー」の仕事を整理する

プレイングマネージャーとして無理なく両立するには、「プレイヤーとしての仕事」と「マネージャーとしての仕事」を頭の中で分けて整理することが大切です。プレイヤーとしては、月次・年次決算、支払い処理、経費精算のチェックなど、期限が明確なタスクが中心になります。一方、マネージャーとしては、メンバーの育成や評価、業務プロセスの改善、経営層への報告といった、長期的な視点が求められる仕事が多く含まれます。この二つをあいまいにしたまま日々を過ごすと、緊急度の高いプレイング業務ばかりに時間を取られ、マネジメントが後回しになりがちです。

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経理のプレイングマネージャーが両立で悩みやすいポイント

経理のプレイングマネージャーが日々直面しやすい「両立の壁」を具体的に見ていきましょう。時間が足りない部下に任せきれない評価や育成が後回しになるなどの悩みは、多くの管理職に共通するものです。どこで負荷が高まっているのかを言語化することで、後半の章で紹介する解決の打ち手を選びやすくなります。まずは、いまのご自身の状態がどの程度「危険ゾーン」に近いのかを、簡単なセルフチェックで確認してみましょう。

表:プレイングマネージャー危険度セルフチェック

チェック項目チェック
月の残業時間が常に40時間前後、またはそれ以上になっている           □
メンバーとの1on1や面談の時間を、忙しさを理由に何度も延期している           □
「自分がやったほうが早い」と感じて、任せられていない業務が多い           □
休暇中や休日でも、経理関連の問い合わせや確認依頼が自分に集中する           □
評価・育成のフィードバックよりも、日々の処理対応で手一杯になっている           □
「この業務は本来、誰が担当すべきか」を考える時間がほとんどない           □
チームの改善活動よりも、自分のタスク処理を優先せざるを得ない           □

チェックが多いほど、プレイングとマネジメントの両立に無理がかかっている可能性があります。

マネジメントの時間が確保できない

経理のプレイングマネージャーが最も悩みやすいのが、「マネジメントの時間が確保できない」という問題です。月次決算や支払い締め切り、監査対応など、どうしても動かせない実務の予定がカレンダーを埋めてしまい、面談や育成の時間を確保しづらくなります。その結果、メンバーとの対話が最低限になり、業務の相談や振り返りが十分にできません。「気づけば自分だけ忙しく動き回っている」と感じる背景には、プレイングの時間がマネジメントの時間を押し出してしまう構造があります。まずは、この構造を自覚することが解決の第一歩です。

「自分がやったほうが早い」から抜け出せない

忙しいプレイングマネージャーほど、「自分がやったほうが早い」と感じる場面が増えていきます。たしかに短期的には、自分で入力やチェックをしてしまったほうが正確で早いかもしれません。しかし、その積み重ねが続くと、いつまでたってもメンバーのスキルが上がらず、自分だけが忙しい状態が固定化されます。

「自分がやったほうが早い」という考えは、短期的な効率を優先した結果として、長期的にはチームの成長を妨げてしまう危険性があります。任せるための準備や教育の時間も、将来の投資と捉える視点に切り替えることが重要です。

評価・育成が後回しになりチームが伸びない

プレイングマネージャーは、日々の実務に追われるあまり、評価や育成の時間を後回しにしてしまいがちです。目の前の締め切りに追われていると、評価シートの作成や面談の準備はどうしても「急ぎではない仕事」に見えてしまいます。しかし、評価や育成は、メンバーのモチベーションや定着、業務品質の向上に直結する重要な仕事です。ここが疎かになると、メンバーが「何を期待されているのか」「自分は成長できているのか」を実感しづらくなり、中長期的には離職やミスの増加につながるおそれがあります。

プレイングとマネジメントの両立に悩む背景には、多くの場合「そもそもの人手不足」や「自動化されていない定型業務の多さ」があります。経理の人手不足を、自動化でどこまで解消できるのかを整理したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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まずは現状把握:業務棚卸しと時間の使い方を見える化する

両立の改善は、感覚だけで判断せず、まず現状を数字と事実で把握することが重要です。この章では、1週間の時間ログの取り方や、担当業務を一覧にして「自分がやる・任せる・やめる」に仕分ける方法を紹介します。プレイングに使っている時間の割合や、経理として優先すべき業務がどこにあるのかを可視化し、次の打ち手につなげます。プレイング業務は全体の3割程度までに抑えるとマネジメント時間を確保しやすいという調査結果も参考になります。

1週間の時間ログで実態を把握する

両立の改善に着手する前に、まずは自分の時間の使い方を客観的に把握することが欠かせません。おすすめは、1週間だけでもよいので、30分単位くらいで「何の業務にどれくらい時間を使ったか」を記録することです。紙やエクセル、簡単なメモアプリでも構いません。実際に記録してみると、会議やメール対応に想像以上の時間を使っていることや、細かな問い合わせ対応が積み重なっていることに気づきます。「忙しい」と感じている理由を感覚ではなく事実で捉えることで、削れる時間とそうでない時間の見極めがしやすくなります。

時間ログは、シンプルなフォーマットでも構いませんが、「プレイヤー」「マネジメント」などの分類を付けておくと、後から集計しやすくなります。次のようなシートを使うと便利です。

表:時間の見える化シート

日付時間帯業務内容分類
(プレイヤー/マネジメント/その他)
4/19:00~9:30経費精算の内容チェックプレイヤー
4/19:30~10:00メンバーとの1on1マネジメント
4/110:00~10:30メール返信・問い合わせ対応その他
4/110:30~11:00月次決算の残高確認プレイヤー
(自由記入)  プレイヤー/マネジメント/その他
1日の集計:プレイヤー◯時間/マネジメント◯時間/その他◯時間

1週間分を記録して集計すると、プレイングとマネジメントの時間配分が数字で見えるようになります。時間の使い方を記録したら、あわせて経理業務を性質ごとに分類しておくと、どこに力をかけるべきかが見えやすくなります。以下に、経理業務を4つのCで整理するシートの一例を示します。

表:4C’sで経理業務を整理する棚卸しシート

業務名区分(4C)発生頻度所要時間の目安
月次決算(仕訳・残高確認)Core(中核業務)    月次  毎月◯時間
支払処理・資金繰り確認Control(統制・管理)   週次~月次  毎週◯時間
経費精算の内容チェックCheck(確認・検証)    随時  1件あたり◯分
経営会議向けレポート作成Communication(報告・対話)   月次~四半期  毎月◯時間
問い合わせ対応(他部署からの質問)Communication(報告・対話)    随時  1件あたり◯分
(自由記入)Core / Control / Check / Communication  

自社の業務を当てはめていくことで、どのCに時間をかけるべきか、どこを任せる・仕組み化するかを検討しやすくなります。

業務を「自分がやる/任せる/やめる」に仕分ける

時間ログや業務の棚卸しができたら、次はそれぞれの業務を「自分がやる」「任せる」「やめる」の3つに分けて整理します。「自分がやる」に入るのは、経営判断に直結する業務や、機密性が高く、現時点では他者に任せにくい業務です。「任せる」は、手順が決まっており、教育さえ行えば他のメンバーでも対応できる業務が対象になります。「やめる」は、目的があいまいな報告資料や、重複しているチェックなど、本当に必要か見直しができる業務です。この仕分けを通じて、プレイングマネージャー自身が「どこに時間を投資すべきか」を明確にできます。

業務を見える化したら、「自分がやる」「任せる」「やめる」に具体的に仕分けていきます。次のようなシートを使うと、考えを整理しやすくなります。

表:任せる・任せない・やめる業務の仕分けテンプレート

業務名現担当重要度区分
(自分がやる/任せる/やめる)
メモ
経費精算の一次チェック   課長   中  任せる手順書整備後、担当者へ段階的に引き継ぐ
交通費精算の入力・経路確認   課長   低  任せるシステムやAIに任せる前提で見直し
月次決算の最終レビュー   課長   高 自分がやる今後も管理職が責任を持つ業務
細かな社内報告資料の二重作成   課長   低  やめる目的を見直し、必要な報告に一本化する
(自由記入) 高/中/低自分がやる/任せる/やめる 

「任せる」業務には、あらかじめ手順書やチェックリストを用意しておくと、引き継ぎがスムーズになります。

プレイング比率の目安と経理業務の優先順位

業務の仕分けができたら、「プレイングにどれだけ時間を使うか」という比率の目安を決めることも有効です。たとえば、管理職でもプレイング比率が7割を超えていると、マネジメントに割ける時間は自然と限られてしまいます。理想的な比率は会社の状況によって異なりますが、少なくとも中長期的にはプレイングを半分以下に抑え、残りをマネジメントや改善の時間に充てることを目標にするとよいでしょう。その際には、経営リスクの高い決算業務や、法令対応に関わる業務を優先的に自分が担い、それ以外の定型業務は任せていくといった考え方が役立ちます。

どの程度プレイングに時間を使うかによって、日々の感覚や起こりやすい問題も変わってきます。次のイメージ表を参考に、自部門の現状をざっくり当てはめてみてください。

表:プレイング/マネジメント時間配分のイメージ

時間配分のパターンプレイング比率マネジメント比率日々の感覚・起こりやすい問題
ほぼプレイヤー状態   70%以上   30%未満締め切り対応に追われ、面談や育成の時間がとりにくい。
属人化が進み、休暇取得や引き継ぎに不安が出やすい。
プレイングと管理が半々   50%前後   50%前後繁忙期はマネジメントが後回しになりがち。
業務標準化や改善は進むが、長期的な打ち手は手つかずになりやすい。
マネジメント重視の状態(理想イメージ)   30%前後   70%前後チーム全体の業務設計や改善に時間を投資できる。
メンバー育成が進み、長期的にはプレイング負荷も下がりやすい。

あくまで目安ですが、少しずつプレイング比率を下げていく方向性を持てると、無理のない両立に近づきます。

支出管理ペーパーレス化から始める経理DX

プレイングマネージャー両立のコツ① 任せるための業務設計とメンバー育成

業務の棚卸しができたら、プレイングマネージャーが一人で抱え込まないための「任せる設計」に踏み出します。ここでは、手順書やチェックリストを活用して属人化を減らし、任せやすい業務から段階的に引き継ぐポイントを整理します。あわせて、1on1やフィードバックの仕組みづくりを通じて、メンバーの成長と業務の質を両立させる考え方を解説します。

手順書・チェックリストで属人化を減らす

業務を任せるうえで大きな障害になるのが、「自分にしかやり方がわからない」という属人化です。これを解消するには、手順書やチェックリストを用意し、作業の流れや注意点を見える化することが効果的です。たとえば、支払い処理であれば、確認すべき帳票やチェックポイントを一覧にしておくことで、経験の浅いメンバーでも同じ品質で対応しやすくなります。最初から完璧な手順書を作ろうとする必要はありません。まずは自分がいつも確認しているポイントを書き出し、実際の運用のなかで少しずつ更新していくイメージで進めると、負担を抑えながら属人化を減らせます。

任せる業務の選び方と段階的な引き継ぎ

任せる業務は、「重要度は高くないが回数が多い」「手順がはっきりしている」といった特徴を持つものから選ぶとスムーズです。いきなり決算の中核を担う業務を丸ごと渡すのではなく、まずはサブタスクや一部のチェックを任せて、徐々に範囲を広げるほうが、メンバーも安心して取り組めます。

引き継ぎの際には、一度説明して終わりにするのではなく、初回は一緒に作業し、その後数回分は結果を一緒に振り返るなど、段階を踏むことが大切です。こうしたステップを踏むことで、ミスのリスクを抑えながら、任せられる業務の幅を広げていけます。

1on1とフィードバックでメンバーを育てる

業務を任せっぱなしにせず、定期的な1on1やフィードバックの場を設けることも重要です。経理の現場では、どうしても「ミスを指摘する場」になりがちですが、それだけではメンバーは委縮してしまいます。うまくできた点や工夫してくれた点もきちんと言葉にして伝え、「なぜ良かったのか」を一緒に振り返ることで、メンバーは自信を持って次の業務に取り組めるようになります。

また、1on1は、業務上の悩みや負荷感を聞き取る場としても有効です。プレイングマネージャー自身の負担を軽くするためにも、メンバーの成長を支える対話の時間を意識的に確保したいところです。

プレイングマネージャー両立のコツ② 時間を生み出す仕組みづくり(AI・自動化・BPO)

任せてもなお残る定型業務については、仕組みやテクノロジーの力を借りて時間を生み出す視点が欠かせません。この章では、経理AIエージェント経費精算システムなどを例に、「人が判断すべき仕事」と「自動化できる仕事」を分ける考え方を紹介します。また、小さな単位から始めるスモールスタートで、負担を増やさずに自動化を進めるステップも整理します。

人が担うべき判断と自動化できる定型業務を分ける

プレイングマネージャーの時間を生み出すためには、「人がやるべき仕事」と「仕組みに任せられる仕事」を切り分ける視点が不可欠です。例えば、経費精算の内容が社内ルールに沿っているか最終判断するのは、人の経験や判断が必要な領域です。

一方で、領収書の金額や日付を読み取る作業、交通費の経路検索などは、ルールに沿っていればシステムやAIに任せやすい業務といえます。すべてを自動化しようとするのではなく、「判断は人」「繰り返し作業は仕組み」と役割を分けることで、自分が本当に価値を出せる判断業務に集中しやすくなります。

経理AIエージェント・経費精算システム活用のイメージ

経理AIエージェントや経費精算システムを活用することで、プレイングマネージャーが抱えている定型業務の一部を仕組みに置き換えることができます。例えば、領収書画像から金額や日付、支払先を自動で読み取り、申請内容と突き合わせる処理は、人が一件ずつ確認するよりもシステムのほうが得意な領域です。

また、社内ルールに違反している申請を自動で抽出し、担当者に差し戻しを促すことも可能です。こうした機能を活用すれば、管理職はすべての申請に目を通す必要がなくなり、「ルールの設計」と「例外対応」に時間を使えるようになります。

経理AIエージェントや経費精算システムは、「どこまで任せられるのか」「本当に負担軽減につながるのか」というイメージが持てると、検討が進めやすくなります。実際の導入効果やスモールスタートの事例を知りたい方は、以下の記事も参考になります。

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スモールスタートで進める業務自動化のステップ

業務自動化は、一度に大掛かりな仕組みを導入しようとすると、現場の負担や抵抗感が大きくなりがちです。そこで有効なのが、小さな範囲から始めるスモールスタートの考え方です。まずは、申請件数が多く手作業が多い業務を一つ選び、現在の手順を整理します。

次に、その中で自動化できそうな工程を洗い出し、限定された部署や期間で試してみます。結果としてどれくらい時間削減できたか、ミスが減ったかを確認し、うまくいったら対象範囲を少しずつ広げていきます。このように段階を踏むことで、リスクを抑えながら自動化の成果を積み上げることができます。

大がかりな導入ではなく、小さな単位から始めるスモールスタートであれば、現場の負担を抑えながら自動化を進めやすくなります。次の3ステップで考えると整理しやすくなります。

表:AI活用のスモールスタート3ステップ

ステップ内容ポイント
ステップ1
対象業務を決める
申請件数が多く、手作業が中心になっている業務を1つ選ぶ。
例:経費精算の一次チェック、交通費計算、領収書の入力など。
「頻度が高く、ルールが決まっている業務」ほど自動化の効果が出やすい。
ステップ2
小さな範囲で試す
特定の部署や期間に絞って、自動化ツールや経理AIエージェントを試す。
従来の手順と並行運用しながら、問題点を洗い出す。
最初から全社展開を目指さず、「うまくいけば広げる」前提で進める。
ステップ3
効果を測り、範囲を広げる
削減できた時間やミス件数の変化を確認し、効果が見込める場合は対象部署や業務を広げる。
あわせてルールやマニュアルも更新する。
「どれくらい楽になったか」を数字で示すと、社内の合意形成がしやすくなる。

この3ステップを繰り返すことで、プレイングマネージャーの時間を少しずつ仕組みに置き換えていくことができます。

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無理なく続けるための組織づくりと評価の工夫

最後に、プレイングマネージャーが無理を重ねず、組織として両立を続けていくための仕組みを考えます。管理職自身のKPIをチーム成果や育成に寄せることや、経営層と役割・期待値を明確にすり合わせることは、長期的な負荷を左右します。あわせて、メンバーとの対話を通じて「無理のない働き方」を定期的に見直すことで、属人化に陥らないチームづくりを目指します。

管理職自身の目標設定を見直す

プレイングマネージャーが両立を続けるには、管理職自身の目標設定を見直すことも重要です。自分の評価が「どれだけ自分でこなしたか」だけで決まっていると、どうしてもプレイングに偏りやすくなります。そうではなく、「チーム全体の業務量削減」「メンバーのスキル向上」「ミスの減少」といった指標も目標に組み込むことで、任せることや仕組みづくりにも時間を使いやすくなります。評価の物差しを変えることは、プレイングマネージャー自身の行動を変える強いきっかけになります。

両立の取り組みがうまくいっているかどうかは、感覚だけでなく、いくつかの指標で確認しておくと安心です。次のようなKPIを「ミニダッシュボード」として持っておくと、改善の進み具合を追いやすくなります。

表:プレイングマネージャー向けKPIミニダッシュボード(例)

指標内容目安・コメント
プレイング比率総勤務時間のうち、実務(プレイヤー業務)に使っている時間の割合中長期的に50%以下を目指し、徐々にマネジメント比率を高めていく。
月あたりの残業時間管理職本人の残業時間大きく増減していないかを確認し、業務量や役割分担の見直しのきっかけにする。
任せた業務の割合仕分けた業務のうち、「任せる」に移行できた業務の数や時間四半期ごとに増加しているかを確認し、属人化の解消度合いをチェックする。
自動化・システムに任せた処理件数経理AIエージェントやシステムで処理した経費精算・伝票などの件数件数や割合が増えていれば、プレイング負荷の軽減につながっているサイン。
1on1・面談の実施回数メンバーとの1on1や面談を行った回数目標回数を決めておき、忙しさで後回しになっていないかを定期的に確認する。

これらの指標を月次や四半期で振り返ることで、プレイングとマネジメントのバランスが改善しているかどうかを確認できます。

経営層との役割・期待値のすり合わせ

プレイングマネージャーの負荷を適切にコントロールするには、経営層との対話も欠かせません。経営側が「実務もマネジメントもすべてこなしてほしい」と期待しているのか、「一定期間は実務中心で、その後マネジメント比率を高めたい」と考えているのかによって、必要な支援や人員計画は変わってきます。日常の報告のなかで、現在の業務量や課題、今後の理想的な役割の姿を共有し、現実的な落としどころを一緒に探ることが大切です。このすり合わせができていないと、がんばり過ぎてしまう管理職を生みやすくなります。

チームで「無理のない働き方」を定期的に話し合う

最後に、プレイングマネージャー一人で抱え込まず、チーム全体で「無理のない働き方」を考える場を持つことも大切です。たとえば、四半期に一度でもよいので、業務量や残業状況、負荷が偏っている業務の有無を共有し、「どこを効率化できそうか」「どの仕事はやめてもよいか」を一緒に話し合います。メンバー側からも改善のアイデアが出てくることで、プレイングマネージャーが「改善の中心人物」になり過ぎずに済みます。また、チームで合意した方針であれば、業務の見直しや役割変更も受け入れられやすくなり、無理のない両立を続けやすくなります。

プレイングマネージャーの負担を軽くしつつ、経理部門全体の生産性を高めていくには、個人の工夫だけでなく、組織としてのDXの方向性も重要になります。完全リモートワークが可能な経理体制など、より踏み込んだ経理DXの姿を知りたい方は、以下の記事もぜひチェックしてみてください。

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まとめ

人手不足が続くなか、経理のプレイングマネージャーは「プレイヤー」と「管理職」の両方を求められがちです。しかし、すべてを自分で抱え込んだままでは、残業の増加やチームの停滞を招きかねません。まずは時間の使い方を見える化し、業務を「自分が担うべきこと」「任せられること」「やめてもよいこと」に仕分けることが出発点です。そのうえで、業務標準化や権限移譲、経理AIエージェントや経費精算システムなどの活用で、定型業務を仕組みに任せていきます。プレイングマネージャーは何でも屋ではなく、チームが成果を出し続けるための「仕組みの設計者」と位置づけ直すことが、無理のない両立への近道です。

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