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ビジネスモデル図解は、「誰が・誰に・何を提供して・どうお金が動くか」を1枚の図にする技術です。文章で何行も説明していた事業のしくみが、登場人物と矢印だけで伝わるようになり、企画書や提案資料の説得力が大きく変わります。
とはいえ、いざ描こうとすると「どこから手を付ければいいのか」「矢印をどう引けばいいのか」で止まりがちです。ビジネスモデル図解の目的、代表的なフレームの使い分け、基本の書き方手順、無料テンプレートとツール、AIで下書きを作る時短ワザ、抜け漏れを防ぐコツまでを順に解説します。あわせて、収益構造やお金の流れを経理視点で図解する切り口も紹介します。
ビジネスモデル図解とは?目的とメリット
ビジネスモデル図解とは、事業に関わる登場人物(顧客・自社・パートナー)と、その間で動くモノ・サービス・お金の流れを図で表したものです。「この事業は誰からどう収益を得ているのか」という構造が、ひと目で分かる形になります。
▼ ビジネスモデル図解の主な使い場面とメリット
| 使う場面 | 図解のメリット |
|---|---|
| 新規事業の企画 | 収益の取り方の抜け漏れに、企画段階で気づける |
| 社内への説明・稟議 | 事業のしくみが一枚で伝わり、説明と承認が速くなる |
| 競合・他社の分析 | うまくいっている事業の「儲けのしくみ」を分解して学べる |
| チームの認識合わせ | 部門ごとに違う事業理解を、同じ1枚の図でそろえられる |
似た言葉に「事業計画」「収支計画」がありますが、役割が違います。事業計画は文章と数値で詳細を語るもの、ビジネスモデル図解はその前提となる「しくみ」を一目で共有するものです。図解で構造の合意を取ってから計画の数値を詰める、という順番にすると、後工程の手戻りが減ります。
図解の本質は、きれいな絵を描くことではなく構造の言語化です。図にしようとすると、「この登場人物は誰からお金をもらうのか」「この価値の対価は何か」と、曖昧だった部分に必ず突き当たります。その曖昧さを潰す過程こそが、図解の価値だと考えてください。
ビジネスモデル図解の種類と使い分け|相関図・キャンバス・ピクト図解
ビジネスモデルの図解には、広く使われている型がいくつかあります。代表的な3つと使い分けを押さえれば、ゼロから描き方に悩む必要はありません。なお、ここで扱う3つは事業のしくみを「描く型」です。稼ぎ方そのものを製造販売・小売・広告・マッチング・フリーミアムといった収益モデルの型で分類する見方もあり、図解にこの視点を重ねると「この事業はどの型で儲けるのか」が捉えやすくなります。
▼ ビジネスモデル図解の代表的なフレームと使い分け
| フレーム | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| シンプルな相関図 | 登場人物を丸や四角、関係を矢印で表す基本の図。多数の事業を同じ形式の図で解説する書籍(『ビジネスモデル2.0図鑑』など)でも用いられる | 事業のしくみを社内外に分かりやすく伝える |
| ビジネスモデルキャンバス(BMC) | 顧客・価値提案・収益の流れなど9つの要素を1枚のマスに整理 | 新規事業の設計・要素の抜け漏れチェック |
| ピクト図解 | お金とモノの流れを記号で表す手法。収益構造の分析に強い | 「どう儲けるか」の収益パターンを分析する |
ビジネスモデルキャンバスを構成する9要素
設計用途で使うことが多いビジネスモデルキャンバスは、次の9要素で事業を分解します。埋める順番は「顧客→価値」から始めるのが定石です。
▼ ビジネスモデルキャンバスの9要素(5グループに整理)
| 要素 | 問い |
|---|---|
| 顧客セグメント/価値提案 | 誰に、どんな価値を提供するか |
| チャネル/顧客との関係 | どう届け、どう関係を続けるか |
| 収益の流れ | 何に対して、どうお金をもらうか |
| 主要資源/主要活動/パートナー | 価値を生むのに必要なヒト・モノ・活動・協力者は何か |
| コスト構造 | 何にお金がかかるか |

使い分けの目安は、伝えるなら相関図、設計するならキャンバス、収益を分析するならピクト図解です。迷ったら、まず相関図から始めてください。登場人物と矢印だけで描けるため習得が速く、次章の基本手順がそのまま使えます。キャンバスは要素が9つあるぶん網羅的ですが、埋めること自体が目的化しやすいため、相関図で全体像をつかんでから使うと効果的です。
【手順】ビジネスモデル図解の書き方
基本の書き方は、登場人物を置き、価値と対価の矢印でつなぐだけです。5つの手順に分けて整理します。
▼ ビジネスモデル図解の基本手順
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 登場人物を洗い出す | 顧客・自社・仕入先・パートナーなど、事業に関わる主体をすべて挙げる |
| 2. 登場人物を配置する | 顧客を右、自社を中央、パートナーを左など、流れが追える位置に置く |
| 3. 価値の矢印を引く | 誰が誰に何(商品・サービス・情報)を提供するかを矢印で結ぶ |
| 4. 対価の矢印を引く | その価値の見返り(お金・データ・労働力)を逆向きの矢印で結ぶ |
| 5. 流れを検証する | 矢印が一方通行の登場人物(もらうだけ・払うだけ)がいないか確かめる |
「登場人物→提供価値→対価」を矢印で表すのが基本
図解の最小単位は「AがBに価値を渡し、BがAに対価を返す」という往復の矢印1組です。たとえば飲食店なら「店→顧客:食事」「顧客→店:代金」の1組で完結します。サブスクリプションなら対価の矢印に「月額」、広告モデルなら「店→顧客:無料サービス」「広告主→店:広告費」と登場人物が3者に増えます。どんな複雑な事業も、この往復矢印の組み合わせに分解できます。
描くときは、矢印に必ずラベルを付けることを徹底してください。「何が」流れているのかを書かない矢印は、読み手によって解釈が分かれ、図解の意味がなくなります。お金の矢印は色を変える(たとえば緑や赤)と、収益の流れが一目で追えるようになります。
作業時間の目安は、初めてでも30分〜1時間程度です。最初から清書しようとせず、紙やホワイトボードに手書きでラフを描き、流れが固まってからツールで清書する2段階にすると、配置のやり直しに時間を取られません。

ビジネスモデル図解の無料テンプレートと作成ツール
図解はパワーポイントでも描けますが、オンラインの作図ツールのテンプレートを使うほうが速くきれいに仕上がります。代表的なツールは無料プランでも使え、ビジネスモデルキャンバスなどのテンプレートが公開されています。
▼ ビジネスモデル図解の作成ツールの選択肢
| ツールの種類 | 特徴と使いどころ |
|---|---|
| オンラインホワイトボード(Miro・FigJamなど) | テンプレートが豊富で、チームで同時編集しながら議論できる |
| デザインツール(Canvaなど) | 見た目の整ったテンプレートが多く、提案資料への流用がしやすい |
| プレゼンソフト(パワーポイント・Googleスライド) | 新たなツール導入が不要。図形と矢印で十分描ける |
選び方の軸は、誰と使うかです。1人で考えを整理するならどのツールでも差はなく、チームでワークショップ的に作るなら同時編集できるホワイトボード型、社外向け資料に載せるならデザイン調整のしやすいツールが向きます。まずは普段の環境(社内で許可されているツール)のテンプレートを探すところから始めると、導入の手間がありません。
AIでビジネスモデル図解の下書きを作る|ChatGPTで構造整理→ツールで作図
図解づくりでいちばん時間がかかるのは、描く作業ではなく「登場人物と流れを漏れなく洗い出す」段階です。ここはChatGPTなどのAIに任せると一気に短縮できます。AIに構造を整理させ、人がツールで図にする分担です。
▼ AIで図解の下書きを作る手順
| 手順 | プロンプトと操作 |
|---|---|
| 1. 構造を出させる | 「◯◯という事業のビジネスモデルを、登場人物・提供価値・対価の一覧表で整理して」 |
| 2. 抜けを確認する | 「見落としている登場人物や収益の流れがあれば指摘して」と検証させる |
| 3. 矢印リストにする | 「図解用に『誰→誰:何(価値/対価)』の形式で箇条書きにして」 |
| 4. ツールで作図する | 矢印リストを見ながら、テンプレートに登場人物と矢印を配置する |
自社の事業を図解する場合は、手順1のプロンプトに事業の概要を2〜3行で書き添えます。「当社は◯◯を△△向けに提供し、収益は□□から得ている。この事業を登場人物・提供価値・対価の一覧で整理して」という形です。社外秘の数値や取引先名まで書く必要はなく、構造の整理に必要な範囲にとどめれば、機密面の心配も減らせます。
このやり方の利点は、自分の頭にない視点をAIが補ってくれることです。たとえば競合他社の事業を図解するとき、公開情報から想定される収益の流れをAIに挙げさせると、見落としていた登場人物(広告主・代理店・データ提供先など)に気づけます。ただしAIの整理は一般論ベースのため、実際の取引関係と合っているかの確認は人の仕事です。

以下が、上記プロンプトを利用した、ChatGPTによるビジネスモデル図解作成例となります。

ビジネスモデル図解のコツと注意点
図解は描き慣れるほど速くなりますが、最初に知っておくと失敗を減らせるコツがあります。
▼ ビジネスモデル図解のコツと注意点
| コツ・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 1枚に詰め込みすぎない | 登場人物は5〜7程度まで。複雑な事業は複数の図に分ける |
| お金の流れを必ず入れる | 価値の矢印だけの図は「良い話」で終わる。収益の線を省かない |
| 矢印の根拠を確かめる | 「本当にこの対価は発生しているか」を事実で検証する |
| 時点を明記する | 事業は変わる。図に「いつ時点のモデルか」を書き添える |
| 他人に見せて確かめる | 事業を知らない人に見せ、口頭の補足なしで伝わるかを試す |
とくに効くのが最後の「他人に見せる」です。図解は描いた本人の頭の中を補完して読めてしまうため、自分では完成に見えても、初見の人には矢印の意味が伝わらないことがよくあります。説明なしで伝わって初めて完成、と考えてください。
経理視点でビジネスモデルを図解する|収益構造・コスト・お金の流れ
経理・財務の視点が入ると、ビジネスモデル図解は一段と実用的になります。一般的な図解は「価値と収益の流れ」で止まりますが、経理視点ではコストの流れと入金のタイミングまで描き込みます。事業のしくみだけでなく、「この事業は資金繰り的に成立するか」まで見える図になります。
▼ 経理視点でビジネスモデル図解に描き足す要素
| 描き足す要素 | 見えるようになること |
|---|---|
| コストの矢印(仕入・外注・人件費) | 儲けの線だけでなく、出ていくお金の構造が分かる |
| 入金・支払いのタイミング | 「売上は立つが入金は2か月後」のような資金繰りのズレが見える |
| 固定費と変動費の区別 | 売上が増えたときに利益がどう伸びるかの構造が分かる |
描き方は簡単で、基本の図解に「お金の矢印の逆側」、つまり自社から出ていく支払いの矢印を加え、主要な矢印に入金・支払いサイト(月末締め翌月末払いなど)を書き添えるだけです。新規事業の稟議にこの1枚があると、収益性と資金繰りの議論が同じ図の上でできるため、経営側と経理側の話が噛み合いやすくなります。

なお、お金の流れを図にする前提となる日々の経費・請求書データの整備は、経理AIで自動化できます。詳しくは関連記事をご覧ください。
ビジネスモデル図解に関するよくある質問
ビジネスモデル図解はどう書けばいいですか?
登場人物を洗い出して配置し、「誰が誰に何を提供するか(価値)」と「その見返り(対価)」を往復の矢印で結ぶのが基本です。矢印には必ずラベルを付け、お金の流れは色を変えると分かりやすくなります。
ビジネスモデルキャンバスとは何ですか?
顧客セグメント・価値提案・収益の流れなど9つの要素で事業を1枚に整理するフレームワークです。要素の抜け漏れチェックに強く、新規事業の設計段階に向いています。
無料のテンプレートはありますか?
オンラインホワイトボードやデザインツールの無料プランで、ビジネスモデルキャンバスなどのテンプレートが公開されています。社内で利用が認められているツールから探すのが早道です。
ピクト図解とは何ですか?
お金とモノの流れを記号で表す図解手法で、収益パターンの分析に強いのが特徴です。「どう儲けるか」を分解して考えたいときに向いています。
AIでビジネスモデル図解を作れますか?
構造の整理はAIが得意です。登場人物・価値・対価の一覧をChatGPTなどに出させ、その矢印リストをもとに作図ツールで仕上げる分担が現実的です。実際の取引関係と合っているかは人が確認してください。
まとめ|ビジネスモデル図解は「往復の矢印」と「お金の流れ」が肝
ビジネスモデル図解は、登場人物を置いて価値と対価の往復矢印でつなぐだけで描き始められます。フレームは伝える=相関図、設計する=キャンバス、収益分析=ピクト図解と使い分け、洗い出しはAIに任せて時短する。そしてお金の流れを省かないこと。これだけ守れば、事業のしくみは誰にでも伝わる1枚になります。
図解を企画書やプレゼン資料に仕上げる工程は、スライド作成のAI活用と地続きです。あわせて関連記事をご覧ください。


