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契約書のAI-OCRとは、紙やPDFの契約書をAIが読み取り、取引先名や契約期間といった項目をデータとして取り出す仕組みです。取り出した項目で管理台帳を自動で作り、更新期限の通知まで広げた仕組みを、本記事ではAI契約管理と呼びます。契約書の条項をチェックする契約審査のAIとは、目的も使う場面も違います。
担当者が手を動かす量は減ります。ただしAIが読み取った値をそのまま確定値にする運用では、監査で説明できません。どこまでAIに任せ、どこを人が見るのか。その線引きを先に決めておかないと、台帳は作れても使えないものになります。
契約書をAIに読ませる目的は、長いあいだ「探しやすくすること」でした。そこに会計対応という動機が加わっています。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、新リース会計基準が適用されるためです。法務が探すためではなく、経理が会計処理のために契約書をAIに読ませる会社が出てきています。
契約書のAI-OCRとは
契約書のAI-OCRが担うのは、締結したあとの管理業務の入口です。PDFや、紙をスキャンしたデータをAIが読み、台帳に必要な項目を取り出します。そこから台帳づくりと期限の通知までつなげたものがAI契約管理で、契約書の内容そのものを評価するわけではありません。
読み取りから期限通知までAIが担う範囲
AIが引き受けるのは、読み取り・抽出・分類・要約・通知です。いずれも人がやると時間がかかるうえ、間違いが見つけにくい。ただしAIが担えるのはここまでで、判断が要る部分は人に残ります。
▼ 契約書のAI-OCRから期限通知までAIが担う範囲と人に残る作業
| AIが担う処理 | 具体的にやっていること | 人に残る作業 |
|---|---|---|
| 読み取り | スキャンしたPDFや画像の文字をデータに変換する | 読み取れなかった箇所の補正 |
| 項目抽出 | 取引先名・契約期間・自動更新の有無などを拾い出す | 取り違えが起きやすい項目の確認 |
| 分類 | 契約種別や管掌部署の区分を割り当てる | 分類が外れたときの修正 |
| 要約 | 条件の概要を短くまとめる | 要約だけで判断していないかの確認 |
| 期限通知 | 更新期限が近い契約を抽出して知らせる | 更新するかどうかの判断 |
TOKIUM契約管理では、取引先名や契約期間、自動更新の有無をAIが自動で読み取り、管理台帳を自動で作ります。更新期限が近づいた契約は、毎月1日に担当者へ一覧でメール通知されます。
従来のOCRとの違い
OCRは、画像になっている文字をデータに変換する技術です。従来型は「この位置にこの項目がある」という見当で読みます。請求書には決まった枠がありますが、契約書は1社1書式で、同じ項目が何ページ目のどこに書かれているか決まっていません。位置を頼りに読む従来型では、書式が変わるたびに読み取り設定を作り直すことになります。
AI-OCRは位置ではなく、前後の文脈から「これは契約期間だ」と判断します。そこに生成AIを組み合わせると、条文の言い回しが会社ごとに違っても同じ項目として拾えるようになります。

契約審査のAIとの違い
AI契約管理と契約審査のAIは、締結の前と後で分かれます。締結前に条項の抜け漏れや不利な文言を見るのが契約審査、締結後に中身を台帳にして期限と義務を追うのがAI契約管理です。
検索するとどちらも「契約書 AI」で出てくるため混ざりがちですが、使う部署も、導入して減る作業も別です。この記事が扱うのは締結後の管理。条項の判断までAIに任せてよいかは、のちほど弁護士法との関係で触れます。
●経理業務のAI活用に関する記事はこちら
契約書のAI-OCRはどこまで読み取れるのか
読み違いは、文字が読めないことよりも、どこを読むかを取り違えることで起きます。「自動更新」という語は拾えても、更新を止めるための通知期限が別の条にあれば、そちらは落ちる。精度を上げる工夫は、AIの側だけにあるわけではありません。読ませる原本の質と、どの項目を人が見るかの決め方で、結果は変わります。
読み取り精度が落ちる契約書
読みにくさの要因は、古い契約書ほど重なりやすくなります。英文契約書も、項目名が日本語と一致しないためそのままでは精度が落ちます。
▼ 読み取り精度が落ちる契約書と、読ませる前に決めておくこと
| 読みにくくなる要因 | そのときに起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 手書きの加筆・訂正 | 訂正前の条件を拾ってしまう | 加筆がある契約書は人の確認を必須にする |
| 古い契約書のレイアウト崩れ | 項目そのものを見つけられない | 締結年で読み込みのロットを分ける |
| 別紙・付属書に条件がある | 本体だけ読んで条件を取りこぼす | 別紙を本体と同じ契約としてひも付ける |
| 覚書で条件が上書きされている | 古い条件が台帳に載ったままになる | 覚書と原契約の親子関係を登録できるようにする |
| 英文契約書 | 項目名が一致せず拾えない | 英文は別ロットにして確認の手を厚くする |
AIが取り違えやすい項目
項目の単位で見ると、間違いが集まる場所はだいたい決まっています。同じ「契約期間」でも、締結日から数えるのか発効日から数えるのかで台帳の値は変わります。ここをそろえないまま登録すると、期限通知が一斉にずれます。
▼ AIが取り違えやすい契約書の項目
| 取り違えが起きる項目 | なぜ起きるか | 人が確認するポイント |
|---|---|---|
| 契約期間の始期 | 締結日と発効日が別に書かれている | 台帳の始期をどちらに揃えるか社内で1つに決める |
| 自動更新の通知期限 | 更新条項と解約条項が別の条に分かれている | 何か月前までに通知が必要かを条文で確かめる |
| 契約金額 | 月額と総額、税込と税抜が混在する | 台帳に入れる金額の定義を先に決める |
| 契約当事者 | 本社名義と事業所名義が併記される | グループ内のどの法人の契約かを確認する |
| 別紙の条件 | 本体に「別紙による」とだけ書かれている | 別紙の有無を読み取り時のチェック項目に入れる |
精度を左右する原本の作り方
読ませるデータの質が悪ければ、どのAIを使っても結果は良くなりません。傾いたスキャン、影の入った撮影、ホチキスを外さずに撮った綴じ込み部分。こうした原本はAI以前の問題で読めません。
取り込む前に、スキャンの条件を社内で1つに決めておきます。取り込みはカラーにします。押印や朱書きの訂正が白黒だと消えるうえ、スキャナ保存では赤緑青それぞれ256階調以上が要件になるためです。袋とじや契印を落とさないよう、見開きではなくページ単位で取り込みます。ファイルは1契約1ファイルに分けます。ホチキスと付箋は外します。条件を決めずに部署ごとに取り込むと、読み取りがうまくいかなかったときに原因が原本側なのかAI側なのかを切り分けられなくなります。
この条件を社内の工数で満たせないなら、代行に出す判断を早い段階で下してください。TOKIUM契約管理は契約書のスキャンと原本管理を代行しており、スキャン代行は標準サービスに含まれ、別途の費用は発生しません。
スキャンしたあとの紙の原本をどう扱うかは、電子帳簿保存法の保存要件だけでは決まりません。判断の材料は記事末のよくある質問で整理しています。
●紙の契約書のPDF保管に関する記事はこちら
AI-OCRで抽出する項目と台帳の決め方
台帳の項目は、その値を誰が使うかで決まります。どの会社でも要る基本項目、経理が会計処理に使う項目、電子帳簿保存法の検索要件を満たす項目。この3つは大半が重なります。足りなくなるのは、経理が会計処理に使う解約条件と、電子帳簿保存法が求める範囲指定・組合せ検索への対応です。
どの会社でもそろえる基本項目
本記事では基本を8項目に絞ります。項目を増やすほど登録が止まり、使われない台帳になるからです。
▼ 契約書の管理台帳にそろえる基本項目
| 項目 | 何に使うか | AIに任せてよいか |
|---|---|---|
| 契約書名 | 検索と一覧の見出しにする | 任せてよい |
| 取引先名 | 取引先単位で契約を横断する | 任せてよい。ただし名義の確認は人が行う |
| 契約種別 | 分類とフォルダの振り分けに使う | 任せてよい。外れたら直せる形にする |
| 締結日と契約期間 | 期限管理の起点にする | 抽出は任せ、始期の定義は人が決める |
| 自動更新の有無 | 更新漏れを防ぐ | 抽出は任せ、通知期限は人が確かめる |
| 契約金額 | 会計処理と稟議の照合に使う | 抽出は任せ、単位の定義は人が決める |
| 管掌部署 | 問い合わせ先と権限設定に使う | 契約書に書かれていないことが多く人が入れる |
| 原本の保管場所 | 監査で原本を出せるようにする | 人が入れる |
経理が会計処理に使う項目
法務が作った台帳を、経理がそのまま使えないことがあります。会計処理に必要な条件が、基本項目に入っていないからです。途中解約したときの違約金、契約期間のうち解約できない期間(解約不能期間)、預ける敷金、賃料が無料になる期間(フリーレント)。いずれも契約書には書かれていますが、法務の台帳では「その他」に押し込まれがちな項目です。
2つ、字面のまま台帳に入れると値がずれる項目があります。ひとつは特定された資産。契約書に資産が明記されていても、貸し手側がその資産を他のものに代える実質的な権利を持っている場合は、特定された資産に当たりません。実質的な権利といえるのは、使用期間全体を通じて他の資産に代える能力があり、かつ代えることで経済的利益を得られると見込まれる場合の両方を満たすときです。契約書に代替条項があるだけでは該当しません。もうひとつは解約不能期間。貸手だけが解約する権利を持っている期間は、借手の解約不能期間に含まれます。解約条項の字面だけをAIに拾わせると期間が短く出て、使用権資産が過少になります。
▼ 経理が契約書から拾う項目と、書かれている条項
| 会計上の論点 | 必要になる契約書の項目 | どこに書かれているか |
|---|---|---|
| リースに該当するかの判定 | 特定された資産であること、その使用を支配する権利、一定期間にわたる対価との交換 | 目的物条項と使用条件の条項、賃料条項 |
| リース期間の見積り | 解約不能期間(貸手のみが解約権を持つ期間を含む)、延長オプション、解約オプション | 期間条項と更新条項、解約条項 |
| 支払額の把握 | 月額賃料、フリーレント期間、変動する部分 | 賃料条項と特約 |
| 中途解約したときの負担 | 違約金、原状回復の負担区分 | 解約条項と原状回復条項 |
| 敷金・保証金の扱い | 返還される部分と返還されない部分 | 敷金条項 |
ひとつ注意があります。延長オプションの有無は契約書から拾えますが、行使が合理的に確実かどうかの結論までは契約書に書いてありません。判断の材料になるのは、経済的インセンティブを生じさせる要因です。オプション期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)と行使条件は契約書から拾えますが、大幅な賃借設備の改良の有無、リースの解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性は契約書の外にあります。台帳にはオプションの有無と通知期限を持たせ、判断そのものは別に記録します。
TOKIUM契約管理は、違約金や解約不能期間、敷金、フリーレント期間もAIで自動的に読み取ります。読み取った内容は、固定資産管理システムや店舗管理システムへ直接インポートできる形式でCSV出力できます。
電子帳簿保存法の検索要件を満たす項目
スキャナ保存をするなら、検索の条件として取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を設定できる必要があります。あわせて、日付又は金額は範囲を指定して条件を設定できること、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できることも要件です。ただし税務職員によるダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、後ろの2つは不要になります。この2つを備えるか、ダウンロード対応で割り切るか。台帳の要件定義で最初に決まる分かれ目です。1
検索要件はスキャナ保存の要件の一部でしかありません。契約書は、国税庁告示で定められた一般書類には含まれないため、重要書類として扱われます(定型的な約款があらかじめ定められている契約申込書のように、一般書類に区分される書類もあります)。重要書類には入力期間の制限があります。あわせて、解像度200dpi以上・赤緑青それぞれ256階調以上での読み取り、タイムスタンプの付与、訂正または削除の事実と内容が確認できるシステムでの保存、帳簿の記録事項との相互関連性の確保も別途必要です。タイムスタンプは、時刻証明機能を備えたシステムで入力期限内に入力したことを確認できる場合に限り、その確認に代えられます。AI-OCRで項目を抽出して台帳を作れば保存要件を満たす、という理解で稟議を書くと足りません。
契約書で詰まるのが取引金額です。単価契約のように金額が定められていない契約書もあります。国税庁は「記載すべき金額がない書類については、『取引金額』を空欄又は0円と設定することで差し支えありません」としています。ただし空欄にする場合も、取引金額が空欄であることを対象として検索できる状態が要ります。1
●電子帳簿保存法における契約書の取り扱いに関する記事はこちら
契約書の分類と要約をAIにどこまで任せるか
任せられる度合いは作業によって違います。境目は間違えたと後から気づけるかどうかです。分類の誤りはすぐ目に付きます。一方、項目抽出の誤りは台帳に紛れ込むと気づけません。要約は落ちた情報が落ちたことすら見えず、条項の良し悪しの判断にいたっては、誤りが誤りとして表に出てきません。この4つの線引きを先に決めておくことが、運用を止めないための前提になります。
▼ 契約書の作業ごとに見たAIに任せる度合い
| 作業 | 任せてよい度合い | 人が必ず見るところ |
|---|---|---|
| 分類とタグ付け | ほぼ任せてよい | 分類が外れた契約を直せる仕組みがあるか |
| 項目抽出 | 任せたうえで確認する | 契約期間の始期、自動更新の通知期限、契約金額、契約当事者、別紙の条件 |
| 要約 | 下読みまで | 要約だけで判断していないか |
| 条項の良し悪しの判断 | 任せない | 判断そのものと、その記録 |
契約書の分類を自動化するときの分類軸
分類軸は後から変えにくいので、最初に決めます。候補は契約種別、管掌部署、取引先の3つ。部署は組織改編で変わる一方、契約種別は相対的に安定しています。契約種別でフォルダを分け、部署と取引先はタグで持つ形に落ち着くことが多いです。
分類が外れる契約は必ず出ます。表題が「業務委託契約書」でも中身は別の種類だった、ということは起きます。表題と中身が一致しないものは人が直し、その記録が残る仕組みかどうかを分類機能の確認ポイントにしてください。
契約書の要約が役に立つ場面
要約が効くのは、大量の契約書から当たりをつけるときと、担当者が替わって概要をつかむときです。逆に、要約だけを見て更新の可否を決めるのは危険。条件の例外は要約から落ちます。
要約を台帳に載せるなら、原本へのリンクと必ずセットにしてください。要約だけが独り歩きすると、数年後に「この契約はそういう条件だったはず」という誤った記憶だけが引き継がれます。
条項の判断をAIに任せてよいかの線引き
弁護士法第72条が禁じているのは、弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で、「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関して「鑑定…その他の法律事務」を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることです。条文は訴訟になっている事件だけでなく「その他一般の法律事件」まで対象にしています。この「一般の法律事件」にどこまで含まれるかの分かれ目は、いわゆる「事件性」です。
法務省のガイドラインは、事件性を「法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件」と整理しています。そのうえで、企業法務で扱う契約関係事務の一部については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意すべきとされました。対象として挙げられているのは、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討です。事件性は、契約の目的、当事者の関係、契約に至る経緯といった諸般の事情から、個別の事案ごとに判断されます。同条の解釈・適用は、最終的には法と証拠に基づく裁判所の判断に委ねられます。2
このガイドラインはサービスを提供する側に向けたものです。利用する企業の側で決めておきたいのは、紛争になっている契約や、なりそうな契約をAIの判断だけで進めないという一線。締結済み契約書を台帳にする作業とは、扱いを分けてください。個別の適法性が気になる場面では弁護士に相談するのが確実です。

汎用の生成AIに契約書を読ませる前の確認事項
手元のツールで試したくなりますが、その前に3つ確認してください。入力したデータが学習に使われない設定になっているか。取引先との秘密保持義務に反しないか。そして、誰が契約書を入力してよいのかを決めたか。3つ目を決めないまま使い始めると、後から範囲を絞り直せません。内部統制の対象になる会社では、これに加えて外部サービスの利用申請と委託先管理が要ります。データがどの国で処理されるかも別途確認します。
権限の設計は、社内の誰がどの契約書を見られるかという話でもあります。TOKIUM契約管理では、フォルダごとにユーザー単位で権限を設定できます。
AIの判定根拠を残して監査に説明できる状態にする
監査法人が聞いてくるのは、値そのものより「その値はどこから来たのか」と「それで全部なのか」です。AIに読ませた台帳で説明できる状態をつくるには、台帳の値に、どの条文から取ったかと、誰がいつ確認したかを紐づけておきます。そのうえで、集めた契約書の範囲が母集団として説明できるようにしておく。あわせて、その台帳を新リース会計基準の判定にそのまま使える形にしておきます。

抽出した値の出どころをたどれる状態
台帳の値から原本の該当箇所へ、一手でたどれるかどうか。ここが分かれ目です。契約書が数千件ある会社で、PDFを開いて目視で探す運用は現実的ではありません。
経理AIエージェントTOKIUMの「TOKIUM AI新リース判定」では、AIが判定の根拠とした契約書の条文がハイライト表示されます。AIの判定理由と該当条文を同じ画面で照らし合わせられるため、複数ページにわたる契約書でも根拠の箇所をすぐに特定できます。3
判定結果と根拠条文はCSV形式でダウンロードできます(TOKIUM AI新リース判定)。出力したCSVに抽出の基準日と対象範囲(対象会社、対象部署、締結年の範囲)を添えて保管しておくと、漏れの確認を求められたときの往復が減ります。母集団そのものの網羅性は、購買データや支払データ、固定資産台帳と突き合わせて確かめます。
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
人が確認・修正した記録
AIが100%正しいことを前提にした運用では、監査で説明できません。残しておきたいのは、AIが出した値、修正後の値、修正した人と日時、そして承認した人と日時。修正した本人がそのまま確定できる仕組みは職務分離になっておらず、監査で指摘を受けやすい箇所です。
読み取り結果の確認を誰の仕事にするかも、同時に決めます。契約書を登録した部署が見るのか、経理がまとめて見るのか。決めないと、全員が「誰かが見ているはず」と思ったまま期が変わります。
新リース会計基準の判定に使える形
新リース会計基準は、借りている資産を使う権利(使用権資産)と、その支払義務(リース負債)を、借手が原則としてすべてのリースについて貸借対照表に載せるルールです。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。前倒しで使いたい会社は、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することもできます。4
この基準では、契約の締結時に、その契約がリースを含むかどうかを判断します。いったん判断したあとは、契約条件が変更されない限り見直しません。判定で最初に要るのは、契約書を集めて中身を読むこと。AI契約管理で台帳を作る作業と入口が同じです。いま契約書を集めるなら、リース判定に必要な項目も一緒に拾っておけば、同じ契約書を2回集めずに済みます。
この判定をシステムに求める動きは、実際に数字に出ています。TOKIUMが全国の経理・財務担当者1,100人に行った「新リース会計基準に関する実態調査」では、契約書管理システムを導入予定と回答した人は67.6%でした。選定の際に特に重視する機能として挙がったのが「リースの識別機能」(64.9%)で、次いで「リース資産管理システムとの連携」(52.0%)です。探しやすさではなく、会計処理に使えるかどうかで契約書管理システムが選ばれているということです。5
台帳に持たせておくのは、特定された資産と使用条件、解約不能期間、延長オプションと解約オプション、購入オプション、賃料とフリーレント期間、違約金です。この6つがそろえば、リースの識別とリース期間の見積りまで判定に回せます。短期リースや少額リースとして計上を省略できるかどうかは、これに加えて自社で決めた金額の基準が要ります。短期リースは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースを指します。
TOKIUM契約管理は、契約内容にリースを含む可能性をAIが自動で判定し、判定根拠となった条文を契約書PDFにハイライトします。各社の会計方針に沿ったカスタム判定にも対応しており、契約管理の台帳づくりとリース判定を1つの基盤で進められます。
●リース識別のAI活用に関する記事はこちら
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
契約書のAI読み取りを始める3つの手順
集める、決める、確かめる。この順で進めます。全件を一度に読ませないことだけ先に決めておけば、途中で止まってもやり直しが小さく済みます。

各部署に散った契約書を集める
契約書は1か所にありません。まず、どこに何件あるかの一覧を作るところから始めます。
▼ 契約書の所在と、集めるときに起きがちなこと
| 契約書のある場所 | 集めるときに起きがちなこと |
|---|---|
| 法務の書庫 | 原契約はあるが覚書が別管理になっている |
| 各事業部のキャビネット | 担当者が替わって在りかが分からない |
| 店舗・工場の事務室 | 賃貸借契約が現地にしかない |
| グループ会社の管理部門 | 様式も保管ルールも会社ごとに違う |
| 担当者のPC・メール | 締結版と交渉中の版が混ざっている |
集めるのは自社の仕事ですが、紙で残っている分の電子化は外に出せます。TOKIUM契約管理は契約書のスキャンと原本管理を代行するため、集めた紙の契約書を送れば電子化まで任せられます。電子化された契約書は、TOKIUM契約管理の台帳でそのまま一元管理できます。なお、原本を社外に出すには社内の承認が要る会社が多く、機密区分の高い契約書を対象から外す判断もあります。
最初に読ませる範囲を決める
全件ではなく、契約種別ごとに数件ずつ、種別を一巡させる形で始めます。多様な契約書を混ぜて読ませ、どこで読み違いが起きるかを先に見つけるほうが早いからです。各種別のなかでどれを選ぶかは、いま有効な契約であることを必須の条件にしたうえで、更新期限が近いもの、次に金額が大きいものの順で拾います。期限切れの契約を混ぜると、読み違いの傾向は分かっても、それを直す動機が生まれません。
条件をもう1つ足すなら、賃貸借のようにリース判定の対象になりうる契約であることです。最初のロットに混ぜておくと、判定に必要な項目が足りているかを早い段階で確かめられます。
システムに登録しない契約を決めるときは、保存期間と社内規程を先に確認してください。契約書の保存期間は根拠となる法律で異なり、法人税法では原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)、会社法第432条第2項では、会計帳簿および事業に関する重要な資料として10年とされています。短いほうに合わせて捨てると、別の法律で必要な期間に足りなくなります。
●契約書の保管期間に関する記事はこちら
読み取り結果を原本と突き合わせる
読み込んだら、原本と照らし合わせます。見るのは、前に挙げた取り違えが起きやすい5項目です。契約期間の始期、自動更新の通知期限、契約金額、契約当事者、別紙の条件。覚書で条件が上書きされている契約は、原契約とひも付いているかもここで一緒に確認します。初回のロットは全件、以降は金額の大きい契約と読み違いが出たパターンを全件、残りはサンプルで見る形に落とします。
ここで見つかった読み違いのパターンを、次のロットの確認項目に足していきます。回を重ねるほど確認の手が軽くなり、最後は例外だけを見る運用に落ち着きます。
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▶マンガでわかる!新リース会計基準とは
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まとめ AIに読ませたあと誰が台帳を回し続けるか
AI契約管理は、契約書を読み取って台帳を自動で作るところまでを引き受けます。ただし台帳は作った瞬間から古くなる。新しく締結した契約書を誰がいつ登録するかを決めないと、3か月後には手入力していた頃と同じ状態に戻ります。締結が完了した時点で登録が走る流れを、運用ルールとして先に決めてください。
TOKIUMの実態調査でも、新リース会計基準の適用開始後の業務に不安を感じる経理・財務担当者は75.5%にのぼりました。不安の中身は社内ルール構築が59.8%、業務量増加が47.8%。どちらもシステムそのものではなく、入れたあとの運用に関する不安です。5
契約書を集めてAIに読ませる作業は、新リース会計基準の判定で必要になる作業と入口が同じです。TOKIUM契約管理なら、契約書の一元管理と、契約内容にリースを含む可能性のAI判定を1つの基盤で進められます。判定根拠となった条文は契約書PDFにハイライトされるため、なぜその判定になったかを後から示せます。新リース会計基準への対応と契約書管理の進め方は、資料にまとめています。契約書のAI活用を検討されているなら、こちらもあわせてご覧ください。
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
契約書のAI活用に関するよくある質問
子会社やグループ会社の契約書も同じ台帳に入れるべきですか
連結で新リース会計基準に対応するなら、同じ台帳に集めたほうが後が楽です。会社ごとに台帳が分かれていると、判定の基準も様式もそろわず、親会社で突き合わせる工数がそのまま残ります。ただし集めるには依頼が要ります。対象にする契約の範囲、提出の形式、期限、出てこなかったときにどうするかを決めて、監査対応であることを明示して依頼してください。
電子契約で締結した契約書もAIで読み取る必要がありますか
電子契約は多くの場合テキストのデータなので、文字を読み取る工程は要りません(画像として保存されたPDFはこの限りではありません)。ただし台帳に載せる項目の抽出は紙と同じように必要です。紙と電子で台帳が分かれていると、更新期限の管理も検索も二重になります。保存要件は紙のスキャナ保存と電子取引で分かれるため、そこは別に確認してください。
スキャンしたあとの紙の原本は廃棄してよいですか
電子帳簿保存法の保存要件を満たしていても、それだけで廃棄してよいとは決まりません。判断に関わる要素が別にあります。収入印紙を貼った原本は、過誤納の還付を請求するときに原本の提示を求められるため残す実務が一般的です。このほか、争いになったときの証拠としての扱いと、社内規程での保存義務も見ておく必要があります。廃棄する前提でスキャンすると後から戻せないため、範囲を決めてから進めてください。
AIが読み取った内容が間違っていたら誰の責任になりますか
AIの出力をそのまま確定値にしない運用にしておくのが前提です。読み取り結果を誰が確認して誰が承認するかを役割として決め、その記録が残る形にしておけば、誤りが見つかったときにどこで止まったかをたどれます。利用するシステムの契約書で、読み取り結果の正確性について責任範囲がどう定められているかも、導入前に確認してください。
契約書管理システムを入れないとAIでの読み取りはできませんか
生成AIのAPIと、iPaaSと呼ばれる、コードをほとんど書かずに使える連携サービスを組み合わせる方法もあります。抽出した値をスプレッドシートに書き込むところまでなら、プログラムを書かずに自作できます。ただし続けるには、読み違いが出たときの例外処理を誰かが直し続ける必要があり、API側の仕様変更にも追随しなければなりません。内部統制の対象になる会社では、スプレッドシートに変更の記録とアクセス権限の証跡が残らない点も踏まえて判断してください。
●契約書管理システムの比較に関する記事はこちら
AIに契約書をチェックさせるのは違法ですか
締結済みの契約書を読み取って台帳にする用途であれば、直ちに違法となるものではありません。分かれ目になるのは、弁護士法第72条の「その他一般の法律事件」に当たるかどうかの解釈上の基準とされる、いわゆる「事件性」です。法務省のガイドラインは、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意すべきとしています。
ただし事件性は、契約の目的、当事者の関係、契約に至る経緯といった諸般の事情から個別の事案ごとに判断されるもので、同条の解釈・適用は最終的には法と証拠に基づく裁判所の判断に委ねられます。
分けて考えたいのは、すでに紛争になっている契約や、なりそうな契約です。これらをAIの判断だけで進めない一線を社内で決めてください。条文と事件性の整理は、本文の「条項の判断をAIに任せてよいかの線引き」で扱っています。
AIで契約書そのものを作成できますか
できます。ただしそれを担うのは契約書の作成・審査を支援するサービスで、この記事で扱うAI-OCRとは別の領域です。作成や審査は締結の前、AI-OCRによる読み取りは締結の後。使う部署も、減る作業も違います。締結後の契約書を台帳にして期限と義務を追うことが目的なら、作成機能の有無で選ぶ必要はありません。先に決めるのは、どの契約書を、どの項目で、誰が確認して台帳に載せるかのほうです。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)問41・問44(最終確認日:2026年9月17日) ↩︎
- 法務省大臣官房司法法制部「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」(令和8年8月21日)注14(同注が引用する令和5年8月「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」)(最終確認日:2026年9月17日) ↩︎
- TOKIUM「TOKIUM AI新リース判定、AI判定の根拠条文をハイライトする機能を追加」(2026年7月30日)(最終確認日:2026年9月17日) ↩︎
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項(最終確認日:2026年9月17日) ↩︎
- TOKIUM「経理AIエージェントTOKIUM、新リース会計基準に関する実態調査を実施」(2025年7月24日公開/調査期間2025年7月16日〜17日・全国の経理・財務担当者1,100人・インターネット調査)(最終確認日:2026年9月17日) ↩︎


