インボイス制度

インボイス制度の経過措置とは?2026年10月から70%控除へ|新スケジュールと計算方法を解説

更新日:2026.08.06

この記事は約 14 分で読めます。

インボイス経過措置_新スケジュール

取引先に支払った消費税を、自社が納める消費税から差し引くことを仕入税額控除といいます。インボイス制度では、適格請求書(インボイス)がない仕入れは原則としてこの控除ができません。ただし、適格請求書を発行できない免税事業者などからの仕入れについては、一定割合だけ控除を認める経過措置が設けられています。

この控除割合は、令和8年度(2026年度)の税制改正によって見直され、2026年10月1日以後の仕入れから80%が70%へ引き下げられました。適用期間も2年延長されています。

改正で何がどう変わったのか、経過措置はいつまで使えるのか、控除額はどう計算し、帳簿には何を書けばよいのか。免税事業者と取引のある買い手の視点で、国税庁の情報をもとに整理します。

2026年10月1日という切替日をまたぐ取引の扱いや、経費精算で受け取った領収書の判断など、切替の前後で実際に迷いやすいところまで踏み込んで解説します。

→ダウンロード:請求書電子化で「ミスなく」月次決算を実現できる理由とは?3つのメリットをご紹介

インボイス制度の経過措置とは

経過措置とは、適格請求書を発行できない免税事業者などから仕入れた場合であっても、一定割合の仕入税額控除を認める時限的な緩和措置です。制度開始で免税事業者との取引にかかる負担が急に増えないよう、控除できる割合を段階的に下げながら移行するために設けられました。

インボイス制度は、2023年10月に導入された消費税の新しい仕入税額控除のルールで、正式名称を適格請求書等保存方式といいます。原則として、登録を受けた適格請求書発行事業者が交付するインボイスがなければ、買い手は仕入税額控除を受けられません。

ただし免税事業者は、登録を受けると課税事業者になるため、免税のままインボイスを発行することはできません。取引先が免税事業者のままだと、買い手の税負担がそのぶん重くなります。この急な負担増を和らげるのが経過措置です。

対象になるのは買い手(仕入れる側)です。売り手にも負担軽減の特例がありますが、それは別の制度なので後半で整理します。

経過措置の新スケジュールと控除割合【令和8年度改正対応】

令和8年度の税制改正によって、経過措置で控除できる割合は2026年10月1日以後の仕入れから80%が70%へ引き下げられ、適用の期限も2年延長されました。改正前は80%と50%の2段階でしたが、改正後は70%と30%が加わり、80%・70%・50%・30%の4段階になりました。経過措置が使えるのは2031年9月30日までの課税仕入れです。

▼ 経過措置の控除割合スケジュール(新旧比較)

期間 改正前(旧) 改正後(新)
2023年10月〜2026年9月 80%控除 80%控除
2026年10月〜2028年9月 50%控除 70%控除
2028年10月〜2029年9月 50%控除 50%控除
2029年10月〜2030年9月 0%(控除不可) 50%控除
2030年10月〜2031年9月 0%(控除不可) 30%控除
2031年10月〜 0%(控除不可) 0%(控除不可)

改正後のスケジュールと、改正前との比較は国税庁の資料に示されています。 出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(最終確認日:2026年8月6日)

インボイス制度の経過措置スケジュール。2026年9月まで80%、以後70%・50%・30%と縮小し2031年10月以降は控除不可

経過措置はいつまで使えるかの早見表

80%控除が使えるのは2026年9月30日までの課税仕入れです。控除割合は課税仕入れを行った日で判定するため、2026年10月1日以後の仕入れから70%控除に切り替わります。和暦と西暦を併記した早見表は次のとおりです。

▼ 経過措置の控除割合と適用期間の早見表

控除割合 適用期間(西暦) 適用期間(和暦)
80% 2023年10月1日〜2026年9月30日 令和5年10月1日〜令和8年9月30日
70% 2026年10月1日〜2028年9月30日 令和8年10月1日〜令和10年9月30日
50% 2028年10月1日〜2030年9月30日 令和10年10月1日〜令和12年9月30日
30% 2030年10月1日〜2031年9月30日 令和12年10月1日〜令和13年9月30日
0% 2031年10月1日〜 令和13年10月1日〜

令和8年度改正で変わった3つの点

今回の改正のポイントは3つです。1つ目は、適用期限が2年延長され、控除割合が70%・30%を加えた4段階に細分化されたこと。2つ目は、免税事業者など1者あたりの課税仕入れに上限が設けられたこと。3つ目は、個人事業者向けの3割特例が新たに設けられたことです。

3割特例は、適格請求書発行事業者の登録を受けたことで免税事業者から課税事業者になった個人事業者が対象で、法人は使えません。令和9年分・令和10年分の申告について、納税額を売上税額の3割に抑えられます。基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどの要件もあります。

改正前の予定(2026年10月から50%)と比べると、控除できる割合は高くなり、期間も延びます。免税事業者と取引を続ける買い手にとっては負担がゆるやかになる改正です。一方で、控除の上限のように新しく気をつける点も加わりました。

1者あたり1億円の控除上限

経過措置には、取引先1者あたりの上限額があります。一の免税事業者等から行う課税仕入れの合計額(税込)が、その年またはその事業年度で一定の金額を超えると、超えた部分については経過措置を適用できません。上限に達していない部分は、これまでどおり経過措置の対象です。全取引先の合算ではなく、取引先ごとに判定します。

▼ 経過措置を適用できる課税仕入れの上限額(一の免税事業者等あたり・税込)

課税期間の開始時期 上限額
令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間 10億円
令和8年10月1日以後に開始する課税期間 1億円

注意したいのは、1億円が効き始める時期です。控除割合が70%に下がるのは2026年10月1日の仕入れからですが、1億円の上限は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。たとえば3月決算の法人であれば、2026年4月1日に始まる課税期間は上限が10億円のままで、1億円が初めて効くのは2027年4月1日に始まる課税期間からです。12月決算・個人事業者と、それ以外の決算期でタイミングがずれる点に注意してください。

上限額と適用開始時期は国税庁のQ&Aに示されています。 出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置(最終確認日:2026年8月6日)

2年延長と段階の細分化で何が変わったのか

改正前のスケジュールでは、2026年10月に控除割合が80%から50%へ一度に30ポイント下がる設計でした。免税事業者との取引が多い事業者ほど、この段差で負担が一気に増えます。

改正後は70%と30%が加わり、控除が続く間の下げ幅は1段あたり10〜20ポイントに抑えられました。ただし最後の30%から0%になる段差は30ポイントで、ここが最大である点は変わりません。終了時期も2029年9月30日から2031年9月30日へ2年延び、取引先の見直しや価格の話し合いに使える時間は長くなっています。

負担が軽くなる方向の改正ですが、最終的に控除がなくなる点は変わりません。段階的に自己負担が増えていく前提で、資金繰りや取引条件を考えておく必要があります。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

インボイス経過措置の適用を受けるための要件

経過措置による控除を受けるには、一定の事項を記載した請求書などの保存と、経過措置の適用を受ける旨を記した帳簿の保存の両方が必要です。どちらか一方でも欠けると、その仕入れは経過措置の対象になりません。

なお、経過措置を使うために税務署への事前の申請や届出は必要ありません。要件を満たしていれば適用されます。

請求書などの保存要件

保存する請求書などには、インボイス制度が始まる前に使われていた「区分記載請求書」と同じ5つの記載事項が求められます。登録番号は必要ありません。

▼ 経過措置の対象になる請求書等の記載事項

# 記載事項
1 書類の作成者(発行者)の氏名または名称
2 取引年月日
3 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
4 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
5 書類の交付を受ける事業者(自社)の氏名または名称 ※小売業・飲食店業・タクシー業・駐車場業など不特定多数を相手にする取引では省略できます

5番目の宛名は、小売業や飲食店業のように不特定多数を相手にする取引では省略できます。コンビニや飲食店で受け取った宛名のないレシートも、ほかの事項がそろっていれば経過措置の対象です。

記載事項の一部が請求書に足りない場合でも、複数の書類を合わせて必要な事項を満たしていれば要件を満たします。たとえば口座振替の家賃のように、請求書が交付されない取引もあります。この場合は、取引年月日以外の事項が記載された契約書と、取引した事実を客観的に示す通帳や振込金受取書をあわせて保存する方法があります。

複数の書類による記載事項の充足については、国税庁のQ&Aに具体例があります。 出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問95 口座振替・口座振込による家賃の支払(最終確認日:2026年8月6日)

なお、受け取った側で書き足せるのは、「軽減税率の対象である旨」と「税率ごとに区分した税込合計額」の2つが抜けている場合に限られます。発行者名や取引年月日など、それ以外の事項が足りない場合は取引先に再発行や追記を依頼してください。

帳簿への記載要件と70%控除対象への切り替え

帳簿には、通常の記載事項に加えて、その仕入れが「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記す必要があります。控除の割合が変わる2026年10月以降は、記載する割合も切り替わります。

▼ 帳簿の摘要欄の記載例(2026年10月の切替前後)

時期 摘要欄の記載例
2026年9月30日までの課税仕入れ ◯◯商店 消耗品費 80%控除対象
2026年10月1日以後の課税仕入れ ◯◯商店 消耗品費 70%控除対象

記載の方法は摘要欄への記入だけではありません。「※」などの記号を付けて帳簿の欄外に「※は経過措置(70%控除)の対象」とまとめて注記する方法も認められています。会計ソフトで経過措置用の税区分を使って入力し、帳簿上でその仕入れが経過措置の対象だと判別できる状態になっていれば要件を満たします。記載も区分もない状態だと経過措置が適用されず、控除額がゼロになる点に注意してください。

税区分の見直しは切替前の準備の中心になります。具体的な進め方は後述の「会計ソフト・経費精算システムの税区分をどう変えるか」で解説します。ここでは、80%の区分を消さずに残すことと、日付による自動判定が効くかを必ずテストすること、の2点を先に押さえておいてください。

インボイス経過措置の仕入税額控除の計算方法

経過措置期間中の控除額は、課税仕入れにかかる消費税額に、その時点の控除割合を掛けて求めます。消費税額の求め方には、請求書ごとの税額を足し上げる積上げ計算と、税込の合計額から割り戻す割戻し計算がありますが、どちらでも考え方は同じです。本来の消費税額のうち一定割合だけが控除できます。

税率10%の場合の計算例

免税事業者から税込110,000円(税率10%)の商品を仕入れた場合で考えます。この取引にかかる消費税額は110,000円 × 10 ÷ 110 = 10,000円です。ここに控除割合を掛けた額が控除できます。

▼ 税込110,000円(税率10%・消費税10,000円)を仕入れた場合の控除額

控除割合 控除できる消費税額 控除できない金額(自己負担)
80%(〜2026年9月) 8,000円 2,000円
70%(2026年10月〜) 7,000円 3,000円
50% 5,000円 5,000円
30% 3,000円 7,000円

実際の請求書は端数の出る金額がほとんどです。たとえば税込10,780円なら消費税は980円、70%控除で686円が控除できます。1円未満の端数が出る場合は切り捨てて差し支えありませんが、端数処理を取引ごとに行うのか集計後に行うのかは社内で統一しておいてください。

軽減税率8%が混在する場合の計算

控除割合は税率によって変わりません。10%でも8%でも、同じ時期なら同じ割合です。ただし消費税額は税率ごとに区分して計算する必要があるため、混在する取引では先に税率ごとに分けてから控除割合を掛けます。

免税事業者から、標準税率10%の消耗品を税込110,000円、軽減税率8%の飲食料品を税込108,000円で仕入れた場合を、70%控除の期間で計算してみます。

▼ 税率が混在する場合の計算例(70%控除の期間)

税率 税込金額 消費税額 控除できる額(70%) 自己負担
10% 110,000円 10,000円 7,000円 3,000円
8%(軽減) 108,000円 8,000円 5,600円 2,400円
合計 218,000円 18,000円 12,600円 5,400円

受け取った請求書に税率ごとの区分がないと、この計算ができません。税率ごとに区分した合計額は、自社で書き足すことが認められている2項目のひとつです。区分がない場合は、取引先に追記してもらうか、自社で内容を確認して補記します。

控除できない分の会計処理と仕訳

控除できない金額は、仕入れそのもののコストとして処理します。方法は2つあり、仕入れた資産や費用の金額に上乗せする方法と、いったん全額を仮払消費税として計上し、期末などに控除できない分を雑損失へ振り替える方法です。税込110,000円・70%控除(控除できない3,000円)で消耗品費として処理する例を挙げます。控除できない3,000円を本体価格100,000円に足すため、上乗せする方法では消耗品費が103,000円になります。

▼ 控除できない分の仕訳例(税込110,000円・70%控除・消耗品費の場合)

方法 時期 借方 貸方
費用に上乗せ 取引時 消耗品費 103,000仮払消費税 7,000 現金預金 110,000
雑損失で処理 取引時 消耗品費 100,000仮払消費税 10,000 現金預金 110,000
雑損失で処理 期末 雑損失 3,000 仮払消費税 3,000

どちらの方法でも、納める消費税額は変わりません。違いは手間と見え方です。費用に上乗せする方法は取引ごとの実際のコストが損益計算書に表れ、雑損失でまとめる方法は期中の入力が簡単になります。どちらを選ぶかは社内で統一し、期の途中で切り替えないようにします。

なお、控除できなかった消費税額(控除対象外消費税額等)は、法人税の計算では扱いが分かれます。交際費に係るものは交際費等の額に加算され、資産に係るもので一定の要件に当たるものは繰延消費税額等として複数年で償却するなど、損金算入の時期が変わることがあります。金額が大きい場合や固定資産の取得に関わる場合は、顧問税理士に確認してください。

簡易課税を選んでいる場合は経過措置の計算が不要

基準期間(法人は前々事業年度、個人事業者は前々年)の課税売上高が5,000万円を超える事業者は、この節は読み飛ばして構いません。

簡易課税制度を選んでいる場合、経過措置の計算は関係ありません。簡易課税では、実際の仕入れにかかった消費税ではなく、売上にかかる消費税に業種ごとに決められた一定の率(みなし仕入率)を掛けて納税額を求めるためです。仕入先が適格請求書発行事業者かどうかにかかわらず、納税額は変わりません。

簡易課税を選べるのは基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者で、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出が必要です。ただし2割特例または3割特例を適用した翌課税期間には例外があります。令和8年度税制改正で設けられた円滑な移行措置により、その課税期間の申告期限までに届出書を提出すれば簡易課税で申告できます。

簡易課税を選ばず、実際の仕入れをもとに計算する方法(本則課税)で申告している場合は、これまでどおり経過措置の区分と計算が必要です。免税事業者との取引が多く、控除割合の低下による負担が大きい場合は、簡易課税と本則課税のどちらが有利かを試算しておくと判断材料になります。

簡易課税制度への円滑な移行措置は令和8年度税制改正で創設されたものです。 出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」(最終確認日:2026年8月6日)

2026年10月の80%から70%への切替で経理がやること

2026年10月1日は、控除割合が80%から70%へ切り替わる区切りです。割合の切替そのものに手続きは要りませんが、帳簿の書き方やシステムの設定を直しておかないと、記帳ミスや控除漏れにつながります。切替前に確認しておきたい項目を整理しました。

▼ 2026年10月の切替前チェックリスト

# 確認すること いつまでに
1 免税事業者(登録番号のない取引先)を洗い出し、年間取引額を把握する 2026年8〜9月
2 会計ソフト・経費精算システムの税区分に「70%控除対象」の区分があるか確認し、設定を追加する 2026年9月中
3 帳簿の摘要欄または税区分の運用ルールを「80%控除対象」から「70%控除対象」へ切り替える手順を決める 2026年9月中
4 2026年9月と10月をまたぐ取引(保守契約・家賃など)の処理ルールを決める 2026年9月中
5 1者あたりの年間仕入額が1億円に近い免税事業者がないか、前期実績で洗い出す(1億円の上限は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から。期中は月次で累計を確認) 期首に洗い出し/以後は月次
6 経理以外の部署(購買・営業・立替精算をする従業員)へ変更点を周知する 2026年9月中

免税事業者との取引がどれくらいあるかで、切替の影響は大きく変わります。次のような取引が多い場合は、早めに影響額を試算しておくと安心です。試算では、免税事業者への年間支払額(税込)から消費税相当額を割り出し、控除割合が10ポイント下がる分を掛けるとおおよその増加額がつかめます。

▼ 影響が出やすい取引の例

取引の例 なぜ影響が出やすいか
個人事業主・フリーランスへの業務委託 小規模な事業者は免税のまま登録していない場合がある
一人親方など個人の職人への外注 取引件数・金額ともに大きくなりやすい
個人商店・小規模な生産者からの仕入れ 軽減税率対象の飲食料品が絡むと計算も複雑になる
個人オーナーからの事務所・駐車場の賃借 毎月発生し、請求書が出ない口座振替が多い

会計ソフト・経費精算システムの税区分をどう変えるか

経過措置に対応したシステムでは、課税仕入れの税区分として「経過措置80%」に相当する区分が用意されています。2026年10月からは、これに加えて70%に相当する区分を使えるようにしておく必要があります。名称はシステムによって異なるため、設定画面で控除割合の数字を確認するのが確実です。

このとき、80%の区分は消さずに残しておきます。10月以降も、9月以前の取引について修正や追加の入力が発生することがあるためです。切替のタイミングを日付で自動判定してくれるシステムもありますが、手入力の伝票では判定されないこともあります。実際に9月末と10月初めの取引を1件ずつ入力して、正しい割合が適用されるかを確認しておくと安全です。

経理以外の部署への周知

経過措置の判断材料になる情報の多くは、経理の外で発生します。購買部門が新しい仕入先と取引を始めるとき、営業が接待の領収書を持ち帰るとき、従業員が立て替え払いをするときなどです。これらの場面で登録番号の有無が確認されていないと、経理側で一件ずつ調べ直すことになります。

周知しておきたいのは次の3点です。

▼ 経理以外の部署へ伝えておきたいこと

# 伝える内容
1 登録番号のない請求書や領収書も、経費として認められる
2 ただし控除できる割合が下がるため、経理側で区分が必要になる
3 新しい取引先と契約する前に、インボイス登録の有無を確認してほしい

「登録番号がないと精算できない」と誤解されると現場が混乱します。「登録番号がなくても精算できる」と明示しておくことが大切です。

2026年10月をまたぐ取引の判定と按分

控除割合は、請求書の日付や支払日ではなく課税仕入れを行った日で判定します。何がその日にあたるかは取引の種類で変わります。

▼ 課税仕入れを行った日の判定

取引の種類 判定の基準となる日
商品・原材料などの仕入れ 引渡しを受けた日
外注・業務委託などの役務提供 役務の提供が完了した日
事務所・駐車場などの賃借 契約または慣習によりその支払を受けるべき日
保守契約など継続的な役務提供 一般に月ごとなど契約上の区分に応じた日

課税仕入れを行った日の考え方は消費税法基本通達に定められています。 出典:国税庁「消費税法基本通達」第9章第1節第5款(9-1-20 賃貸借契約に基づく使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期)(最終確認日:2026年8月6日)

保守契約のように継続して役務の提供を受ける取引では、2026年9月分と10月分で控除割合が変わります。半年分・1年分をまとめて支払っている場合は、2026年9月30日までの期間に対応する部分と、10月1日以後の期間に対応する部分に分けて、それぞれ80%と70%で計算します。

たとえば免税事業者へ支払う月額の保守料が税込11,000円(消費税1,000円)で、2026年4月から2027年3月までの1年分を前払いしている場合、次のように分かれます。

▼ 1年分を前払いした保守料の按分例(月額税込11,000円・消費税1,000円)

対応期間 月数 消費税額 控除割合 控除できる額
2026年4月〜9月 6か月 6,000円 80% 4,800円
2026年10月〜2027年3月 6か月 6,000円 70% 4,200円
合計 12か月 12,000円 9,000円

ただし、この前払いを短期前払費用として損金算入している場合は扱いが変わります。短期前払費用とは、1年以内に提供を受ける役務への前払いを、支払った期の費用として処理できる取扱いです。これを適用している場合、消費税でも支払った日の属する課税期間の課税仕入れとして扱われます。上の例で2026年4月に1年分を支払い、短期前払費用として処理しているなら、按分せず全額を80%控除で計算します。自社がどちらの処理をしているかで結論が変わるため、9月までに確認しておいてください。

短期前払費用の取扱いを受けている場合の課税仕入れの時期は通達に明記されています。 出典:国税庁「消費税法基本通達」第11章第3節(11-3-8 前払費用)(最終確認日:2026年8月6日)

9月に仕入れた商品を10月に返品したときの扱い

切替をまたいで返品や値引きが発生した場合、仕入対価の返還等は元の課税仕入れを行った日の控除割合で調整します。2026年9月に仕入れた商品を10月に返品したのであれば、80%で計上した控除を80%で戻します。返品した日が10月だからといって70%で戻すわけではありません。

会計ソフトによっては、返品伝票を10月の日付で入力すると税区分が自動で70%になることがあります。切替直後の10月から11月は、返品・値引きの伝票の税区分が元の取引と一致しているかを確認しておくと安心です。

経費精算・立替経費で受け取った領収書はどう扱うか

経過措置は、仕入先から直接請求書を受け取る取引だけの話ではありません。従業員が立て替えて支払い、あとから経費精算する取引も会社の課税仕入れです。個人商店や小規模な事業者から受け取った領収書には登録番号がないことがあり、その場合は経過措置の対象として区分する必要があります。

金額によっては区分をしなくてよいケースもありますが、その前に自社が少額特例の対象事業者かどうかを確認してください。対象になるのは、基準期間(法人は前々事業年度、個人事業者は前々年)の課税売上高が1億円以下の事業者です。特定期間(前事業年度の前半6か月)の課税売上高が5,000万円以下であれば、こちらでも対象になります。この規模を超える会社では、金額にかかわらず全件を区分することになります。

▼ 立替経費の領収書に登録番号がない場合の扱い

自社の規模 1回の取引金額(税込) 扱い
少額特例の対象事業者 1万円未満 少額特例で全額を控除できる(インボイスの保存は不要・帳簿の保存のみ)
少額特例の対象事業者 1万円以上 経過措置の対象として区分する(70%控除)
少額特例の対象外事業者 金額にかかわらず 経過措置の対象として区分する(70%控除)

少額特例は2029年9月30日までの時限措置で、経過措置の期限(2031年9月30日)とは別物です。年が近いため混同しやすい点に注意してください。

1万円かどうかの判定は、1回の取引(納品書や請求書1件など、請求・精算の単位)で行います。1つの領収書に複数の品目が並んでいても、商品ごとに分けて判定することはできません。同じ取引先でも、別々に請求・精算された取引であればそれぞれで判定します。一方、月まとめ請求書のように複数の取引をまとめた金額で判定することはありません。

1万円未満の判定単位は国税庁のQ&Aに例示があります。 出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問112 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置における1万円未満の判定単位(最終確認日:2026年8月6日)

実務では、立替精算の申請時点で領収書に登録番号があるかどうかを確認し、金額で仕分けるのが基本です。申請する従業員に「登録番号の有無まで見る」運用を求めるのは負担が大きいため、精算システム側で判別できるようにしておくと、経理の確認作業を減らせます。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

経過措置と2割特例・3割特例・少額特例の違い

経過措置と混同されやすいのが2割特例と少額特例です。経過措置は買い手の仕入税額控除の話、2割特例は売り手(インボイス登録のために課税事業者となった元免税事業者)が納める消費税の話で、立場も対象も異なります。少額特例は、税込1万円未満の仕入れであればインボイスの保存がなくても、帳簿を残すだけで控除を受けられる制度です。

2割特例はもともと令和8年9月30日を含む課税期間で終了する制度でした。令和8年度税制改正では、その後継として個人事業者向けの3割特例が創設されています。制度ごとに使える期限が違うため、まとめて確認しておきます。

▼ 経過措置・2割特例・3割特例・少額特例の違い

制度 対象者 内容 いつまで
経過措置 買い手(課税事業者) 免税事業者などからの仕入れでも一定割合を控除できる 2031年9月30日まで(80→70→50→30%)
2割特例 売り手(登録を機に免税→課税になった事業者) 納税額を売上税額の2割に抑えられる 令和8年9月30日を含む課税期間まで(個人事業者は令和8年分の申告まで)
3割特例 売り手(登録を機に免税→課税になった個人事業者のみ。法人は対象外) 納税額を売上税額の3割に抑えられる 令和9年分・令和10年分の申告
少額特例 買い手(基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間5,000万円以下) 税込1万円未満はインボイスなしでも帳簿保存で控除できる 2029年9月30日まで

買い手として押さえておきたいのは、経過措置と少額特例の2つです。どちらも自社の仕入税額控除に直接影響します。2割特例と3割特例は取引先である免税事業者側の制度ですが、取引先が登録するかどうかの判断に関わるため、価格交渉の場面では知っておくと話が早くなります。

各特例の改正内容は国税庁の特集ページにまとめられています。 出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」(最終確認日:2026年8月6日)

インボイス制度の全体像を確認したい方はこちら

関連記事
適格簡易請求書(簡易インボイス)とは?レシートの取り扱いについても解説!
適格簡易請求書(簡易インボイス)とは?レシートの取り扱いについても解説!
関連記事
仕入税額控除とは?インボイス制度における適用要件と計算方法を解説
仕入税額控除とは?インボイス制度における適用要件と計算方法を解説

インボイス経過措置の期間中に経理が対応すべきこと

ここまでの切替準備は2026年10月に向けた一度きりの作業ですが、ここからは経過措置の期間を通じて続く運用の話です。

経過措置の期間中は、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを把握し、控除割合ごとに区分して記帳することが実務の中心になります。控除割合が下がるタイミングで自己負担が増えるため、早めの準備がコスト管理につながります。

取引先の登録状況の確認と区分経理

まず、継続して取引のある仕入先が適格請求書発行事業者かどうかを確認します。登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照合できます。免税事業者との取引は、経過措置の対象として区分して記帳します。

取引先が数百社を超える規模では、1件ずつ番号を入力していくのは現実的ではありません。公表サイトでは全件データのダウンロードやWeb-APIの提供もあります。取引先マスタと突き合わせて一括で照合し、以後は新規取引先と変更分だけを月次で再確認する運用にすると回しやすくなります。取引先が登録を取りやめた場合も、影響するのは取消日以後の取引です。過去の取引まで遡って洗い替える必要はありません。

月次で回す区分経理の流れ

経過措置の期間中は、毎月おおむね次の流れで処理していくことになります。特別な作業を足すというより、受領から保存までの各段階に確認を1つずつ挟むイメージです。

▼ 経過措置期間中の月次の処理フロー

# 作業 確認するポイント
1 請求書・領収書を受領する 紙・PDF・メールなど形式を問わず取りこぼさない
2 登録番号の有無を確認する 番号があれば公表サイトで実在と有効性を照合する
3 適格/非適格に区分する 非適格は経過措置の対象候補として分ける
4 金額で少額特例の判定をする 自社が対象事業者の場合のみ。税込1万円未満なら区分不要(2029年9月30日まで)
5 税区分を選んで記帳する 取引日に応じて80%か70%かを選ぶ
6 帳簿に適用の旨を記載する 摘要欄への記載、または経過措置用の税区分で判別できる状態にする
7 請求書等を保存する 電子帳簿保存法の要件に沿って保存する

確認漏れが起きやすいポイント

経過措置の適用漏れは、金額の大きい取引よりも、日常的に繰り返される小さな取引で起きがちです。次のようなケースは特に注意しておきたいところです。

▼ 経過措置で見落としやすいケース

ケース 見落としの内容
取引先が期中に登録した/取りやめた 登録前後で扱いが変わるのに、以前の区分のまま処理してしまう
請求書が発行されない口座振替の家賃 契約書と通帳をあわせて保存する必要があることに気づかない
従業員の立替経費 登録番号の確認がされないまま精算が通ってしまう
クレジットカードの利用明細だけで処理 カード会社が作成した利用明細書は、商品やサービスを提供した相手が作成した書類ではないため、原則として保存要件を満たさない。店舗が発行したレシート等を別途保存する必要がある
帳簿の記載も税区分もない 請求書は保存しているのに帳簿側で経過措置の対象と判別できず、要件を満たさない

いずれも、受領した書類を確認する段階で気づければ手戻りが起きません。逆に、決算のタイミングでまとめて見直すと、書類の再取得や取引先への問い合わせが必要になり、負担が一気に増えます。

受け取った請求書の処理と受領業務の負担

経過措置の期間は、受け取った請求書ごとに適格か非適格かを見極め、登録番号を確認し、控除割合を区分して保存する作業が積み重なります。紙やPDF、メール添付など受領の形式もばらばらで、枚数が増えるほど確認と入力の負担は重くなります。

しかもこの負担は一度で終わりません。2028年10月、2030年10月と控除割合が下がるたびに区分の付け替えが必要になり、経過措置が終わる2031年9月30日まで続きます。1回きりの対応ではなく、5年かけて続く運用だという前提で仕組みを整えておくと、担当者が変わっても回せる体制になります。

こうした受領業務は、請求書受領AIエージェント(請求書受領クラウド)で負担を軽くできます。TOKIUMインボイスは、紙の郵送・メール添付のPDF・Webサイトからのダウンロードなど形式を問わず請求書の受領を代行し、データ化まで引き受けるサービスです。受け取った請求書の登録番号は国税庁のAPIと連携して有効性が確認でき、電子帳簿保存法にも対応しています(JIIMA認証取得)。

受領・データ化・登録番号の確認といった手前の作業を任せられるため、経理は控除割合の区分と記帳の判断に集中できます。

経理AIエージェントTOKIUMの累計導入社数は3,000社を突破しています(2025年11月末時点)。 出典:株式会社TOKIUM「経理AIエージェントTOKIUM、累計導入社数が3,000社を突破」(2025年12月4日)(最終確認日:2026年8月6日)

代表的な請求書受領サービス 「TOKIUMインボイス」は、紙やメール・ウェブシステム経由で届くあらゆる形式の請求書を受領代行し、請求書の確認・処理を電子化するサービスです。

請求書の受け取り・スキャン・データ化・原本管理まですべて代行され、システム上で一元管理できるため、ペーパーレス化と同時に請求書支払いにかける時間を約1/5にまで削減できます。さらに、受け取った請求書はインボイス制度・電子帳簿保存法に対応する形で保管されるため、法対応に関する追加の手間をなくせる点も魅力です。

TOKIUMインボイス
出典:TOKIUMインボイス公式

TOKIUMインボイスは、電子帳簿保存法に対応したシステムの証であるJIIMA認証を受けるだけでなく、認証機関である日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が実際に導入し、利用しているサービスです。

月額費用は、基本利用料(1万円〜)+請求書の件数に基づく従量制で決まります。また、利用できるアカウント数が無制限のため、利用者数が多い場合も追加料金が一切かかりません。したがって、企業規模に関わらず、最小限のコストで請求書業務を効率化できます。

「料金表や機能を詳しく知りたい」という方は、下記より資料をご覧ください。
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

▶︎ 機能やメリットがわかる!TOKIUMインボイスの資料をダウンロード

▶︎ 料金表をダウンロード【請求書受領サービス6社の比較表付き】

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

請求書の受領・電子化ならTOKIUMインボイス

インボイス制度の経過措置は、令和8年度税制改正で2026年10月以後の仕入れから控除の割合が70%に下がり、期間も2年延長されました。経過措置が使えるのは2031年9月30日までで、それまでは70%・50%・30%と段階的に割合が下がります。買い手は、取引先の登録状況の確認と、控除割合ごとの区分記帳・保存を続けていく必要があります。

2026年10月の切替では、帳簿の記載や税区分を「70%控除対象」へ改めることが欠かせません。9月と10月をまたぐ取引の判定、1者あたり1億円の上限、返品・値引きの調整にも注意が必要です。

割合が下がるほど、受領した請求書の確認と仕分けは重くなります。受領からデータ化、登録番号の確認、電子保存までをTOKIUMインボイスにまとめれば、制度の判断に使える時間を確保できます。

経過措置への対応で手が止まりやすいのは、制度の理解そのものより、受け取った書類を一件ずつ確認して区分していく作業のほうです。自社の受領件数や体制に照らしてどこまで任せられるかは、資料や個別のご相談で確認いただけます。

インボイス経過措置のよくある質問

80%控除はいつまでで、70%控除はいつからですか?

80%控除が使えるのは2026年9月30日までの課税仕入れで、2026年10月1日以後の課税仕入れからは70%控除になります。控除割合は仕入れを行った日で判定します。

2026年10月をまたぐ取引はどちらの割合になりますか?

請求書の日付や支払日ではなく、実際に課税仕入れを行った日で判定します。商品なら引渡しを受けた日、外注なら役務の提供が完了した日、事務所の賃借なら契約で支払うべき日が基準です。

経過措置を受けるには帳簿に何を書けばよいですか?

通常の記載事項に加えて、その仕入れが経過措置の対象である旨を記します。取引の摘要に「70%控除対象」などと控除割合を書き添えるか、記号を付けて欄外にまとめて注記する方法が一般的です。

経過措置と2割特例は何が違いますか?

経過措置は買い手が免税事業者などからの仕入れで一定割合を控除できる制度、2割特例は登録を機に課税事業者へ転換した売り手が納税額を売上税額の2割に抑えられる制度です。立場も対象も異なります。

インボイスの経過措置は2029年までですか?

いいえ、2029年で終わりではありません。改正前は2029年9月30日までの2段階(80%・50%)でしたが、令和8年度税制改正で2031年9月30日まで2年延長され、80%・70%・50%・30%の4段階になりました。2029年で終了と書かれた情報は、改正前の内容です。

少額特例の2029年9月30日までとは何が違いますか?

別の制度で、期限も別です。少額特例は税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存を不要とする制度で、期限は2029年9月30日。経過措置は免税事業者などからの仕入れで一定割合を控除できる制度で、期限は2031年9月30日です。年が近いため取り違えやすいので、金額の条件(1万円未満かどうか)で見分けてください。

免税事業者との取引はやめたほうがよいですか?

控除できない分だけコストは増えますが、取引をやめるかどうかは金額や品質、代替のしやすさを含めた総合的な判断になります。

価格については、双方が納得のうえで決めるかぎり、結果的に引き下げになっても独占禁止法上の問題にはならないとされています。問題になるのは、取引上の地位が優越する買い手が、再交渉を形式的に済ませたうえで一方的に著しく低い価格を設定した場合です。それに応じない相手との取引を停止した場合も、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。これが公正取引委員会の示している考え方です。取引条件を見直す場合は、双方で協議したうえで進めてください。

免税事業者との取引に関する考え方は公正取引委員会が公表しています。 出典:公正取引委員会「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る独占禁止法及び取適法(旧・下請法)の考え方」(最終確認日:2026年8月6日)

DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
TOKIUMインボイス資料
「TOKIUMインボイス」サービス紹介資料
請求書受領クラウドの選び方ガイド

関連記事