この記事は約 14 分で読めます。

人手不足や属人化、法改正対応に追われる経理にとって、DX導入は単なるITの置き換えではありません。紙や手入力を減らし、正確さと速さ、記録の残し方を同時に高める“進め方の道筋”を、やさしい表現で一から解説します。
本記事は、DXの意味、進める手順、効果の測り方、国の指針や認定制度、実例までを一気通貫で整理。小さく試して広げる安全な進め方と、失敗しないための注意点を今日から使える形で提示します。経理の現場で起きがちなつまずきも具体的に説明します。
DXとは何か:IT化との違いを経理の言葉で
DXは、デジタル技術を使って仕事のやり方と意思決定の進め方そのものを作り直すことを指します。IT化が「今ある作業を機械に任せる」置き換えであるのに対し、DXは「そもそもその作業は必要か」「順番は適切か」「誰がやるのが一番早く正確か」を見直す考え方です。
経理では、請求書の受け取りから仕訳の計上、支払、月次の締め、そして社内外への開示までをひと続きの流れとして眺め、紙や手入力、担当者に依存したやり方を減らし、スピードと正確さ、そして証拠が残る状態を同時に実現していくことがDXの狙いになります。
IT化とDXの違い:置き換えか、作り直しか
IT化は道具の変更に近い発想です。紙の経費申請書をExcelに変える、金額を会計ソフトへ手で入力する、といったように、作業の中身や順番はそのままにして、扱う媒体だけを変えます。一定の効果は得られますが、元の手順にムダが残っていれば、そのムダごと機械化してしまうことになります。
これに対してDXは、作業の組み立てをゼロから考え直します。申請者が最初から必要最小限の項目だけをフォームで入力できるようにして入力回数を減らしたり、過去の履歴をもとに勘定科目や税区分の候補を自動で提示して人は確認だけに集中したり、金額や部門に応じて承認の流れを自動で切り替えるなど、手戻りや待ち時間の原因を取り除く設計に変えます。単に「置き換える」のではなく、「やめる」「減らす」「並べ替える」を同時に行うのがDXです。
【表1】IT化とDXの違い
観点 | IT化(置き換え) | DX(作り直し) | 経理の具体例 |
---|---|---|---|
考え方 | 道具を新しくして同じ作業を続ける | 作業の必要性・順番・担当を見直す | 申請Excelを導入 ←→ 申請項目を最小化し承認経路を自動判定 |
ねらい | 手入力の負担を軽くする | ムダ・待ち時間・手戻りを減らす | 入力は選択式中心にし、確認に人の時間を使う |
成果の出方 | 部分的・一時的に早くなる | 流れ全体で継続的に早く正確になる | 「受領→計上→支払→締め→開示」を通しで改善 |
記録(証跡) | 残らないことがある | 誰が・いつ・何をしたかが常に残る | 承認履歴・数値変更理由がすぐ追える |
経理でDXが効く場所:受領→計上→支払→締め→開示
まず受領では、請求書や領収書が紙、メール、PDFとバラバラに届くと集めるだけで時間がかかります。入り口を一つにまとめ、同じ形式で受け取れるようにすると、後ろの工程が滑らかになります。専用の提出画面を用意しておけば、探す手間がなくなり、確認漏れも起きにくくなります。
次の計上では、金額や日付、取引先、勘定科目などを正しく記録します。ここは読み取りと候補提示が有効です。取引先名はあらかじめ整えた基礎データから選ぶ方式にし、過去と似た取引には同じ科目を自動で提案すれば、迷いと入力ミスが減ります。最終判断は人が行い、候補を見て確定する流れにすると安全です。
支払の場面では、支払条件を整理し、承認が済んだものだけが振込へ進むようにします。振込データの作成はできるだけ自動化し、二重支払や誤送金を避けるために承認段階でのチェックを明確にします。誰がどの支払をいつ承認したのかという記録を残しておくことが、後々の確認や説明に役立ちます。
月次の締めでは、紙の回収待ちやメールでの確認待ちが期間を長引かせる原因になります。申請・承認・計上の進み具合が画面で一目でわかれば、どこで滞っているかを早く見つけられます。未提出や差し戻しは自動で通知し、期限前に解消しておくと、翌月初の負荷が下がります。
最後の開示では、部門別の費用や予算との差などを意思決定に使える形で見えるようにします。このとき「数字の元にすぐ戻れること」、つまり証拠がいつでも確認できる状態が重要です。気になる数字があれば、数クリックで元の請求書や承認履歴にたどり着けるようにしておくと、説明や再発防止のための検討がスムーズに進みます。
【表2】経理の一連の流れと、つまずきやすい原因・効く対策
工程 | つまずきやすい状態 | 効く対策(初心者向け) | 残すべき記録 |
---|---|---|---|
受領 | 紙・メール・PDFがバラバラで集めにくい | 提出先を一つに統一し、同じ形式で受け取る | 提出日時・提出者・ファイル原本 |
計上 | 手入力が多く迷いが生じる | 読み取り+科目候補提示、取引先は選択式 | 誰が何を確定したかの履歴 |
支払 | 承認抜け・二重支払のリスク | 承認済みのみ支払へ進む条件付け、振込データ自動作成 | 承認者・承認日時・支払実行者 |
締め | 回収待ち・確認待ちで日数が延びる | 進捗の見える化と期限前の自動催促 | 未処理件数・遅延理由のメモ |
開示 | 数字の根拠にすぐ戻れない | 集計値から原本・履歴へ数クリックで遡及 | 集計→原本の参照リンク |
ねらう効果:ミス減、締め短縮、証拠の見える化
DXで得たい効果は、まず入力ミスの削減です。手入力を減らし、選択式や候補提示に置き換えるだけでも、桁の間違い、日付の打ち間違い、科目の選び違いが目に見えて減ります。次に、締めの短縮です。回収待ちや確認待ちを減らし、作業の進み具合を常に見えるようにしておけば、月次作業は短い日数で終えられます。短くなった時間は、分析や改善といった価値の高い仕事に振り向けられます。
さらに、証拠の見える化が進むことで、監査や内部の照会に対して根拠資料をすぐ示せるようになります。誰が、いつ、何をしたかという足跡が整っていれば、数字への信頼性が上がり、トラブルが起きても原因の特定と再発防止が素早く行えます。
【表3】効果の測り方(KPI)早見表:定義と計算式見本
指標名 | 意味(平易な定義) | 計算式(例) | 初期値(例) | 目標(例) | 測定頻度 |
---|---|---|---|---|---|
入力ミス率 | 登録後に直した件数の割合 | 修正件数 ÷ 登録件数 | 3.0% | 1.0%以下 | 月次 |
月次締め日数 | 月末から締め完了までの日数 | 締め完了日 − 月末 | 3.0日 | 2.0日 | 毎月 |
承認リードタイム | 申請から最終承認までの平均時間 | 承認所要時間の平均 | 36時間 | 18時間 | 月次 |
証跡到達率 | 集計値から原本にすぐ辿れる割合 | 参照リンク付き明細 ÷ 全明細 | 75% | 95% | 月次 |
DX導入の最近の動きと事例:学校・自治体・中小企業に広がる取り組み
学校や自治体では、まず住民や生徒とのやり取りをオンラインに置き換えるだけでなく、そもそもの申請や確認の手順を見直す動きが進んでいます。紙の書類をデータに変えるだけでは、集め方や確認の待ち時間といった“ボトルネック”は残ります。受付の入口をそろえ、入力項目を最小限にし、必要な情報は既存データから呼び出すように整えることで、担当者・申請者の双方の負担が着実に下がります。
民間企業でも同じ考え方が広がっており、会計や経費のクラウド化を軸に、業務の段取りを作り直す取り組みが増えています。小さなお試し運用で効果と安全性を確かめてから範囲を広げる進め方が、結果として長続きしやすいのが特徴です。
学校現場:端末整備だけに終わらせない運用の作り方
端末やネット環境を整えるだけでは、現場の負担は思ったほど軽くなりません。学校では、保護者への連絡、各種申請、校内の承認といった“紙が定着していた場面”を丁寧に置き換えることが鍵になります。たとえば、行事の同意書や出欠確認は、保護者がスマートフォンで回答できるようにし、未回答者には自動で催促が届くようにしておくと、集計の手作業がほぼなくなります。
備品の購入申請や旅費の清算は、入力欄に説明を添えて迷いを減らし、金額や所属に応じて承認の流れが自動で切り替わるようにすると、職員室での確認待ちが短くなります。入力した情報はそのまま会計の科目候補に反映されるため、あとで同じ内容を打ち直す必要もありません。機器の配備を起点に、日々の連絡・申請・承認まで一続きで設計することが、効果を実感する近道です。
参考:次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ取りまとめ(案)|文部科学省(PDF)
自治体:「書かない窓口」に学ぶ入力の削減
自治体の「書かない窓口」は、住民が最初から長い申請書を書かなくても済むよう、職員側で必要情報を呼び出して確認する仕組みです。来庁時に氏名や生年月日などの基本情報を確認すると、関連する情報が画面に並び、手続きに必要な項目だけを短時間で確定できます。
参考:自治体DXの鍵はアナログな業務改革にあり――北見市「書かないワンストップ窓口」 – 一般社団法人デジタル地方創生推進機構
経理に置き換えると、申請者にすべてを入力させるのではなく、取引先名やプロジェクト名などは基礎データから選ぶ方式にして、金額や日付のように人が判断すべき箇所だけを丁寧に確認するイメージです。入力の“削れる部分”を見つけて事前に埋めておくと、記入ミスが減るのはもちろん、待ち時間や差し戻しも起きにくくなります。さらに、誰がいつ何を確認したかが自動で記録に残るため、あとからの説明や監査にも強くなります。
中小企業:SaaS+手順見直しで“続く仕組み”に
中小企業で成果が出ているのは、クラウドの会計・経費サービスを入れるだけでなく、申請から承認、支払までの手順をシンプルに整えるやり方です。たとえば、旅費交通費から始めて、申請はスマートフォンで完結、領収書は写真で提出、取引先や勘定科目は選択式に統一します。承認は金額帯で自動振り分けにし、承認済みだけが支払に進むように条件を決めておくと、二重支払の不安が減ります。
最初は対象部門をしぼって1か月ほどお試し運用を行い、入力ミスの割合や承認までの時間、締めにかかった日数を“今まで”と比べます。効果が確認できたら、同じ設計を他部門にも広げていきます。ルールは覚えやすく、画面は迷わず使えること、そして「誰がいつ何をしたか」が自然に記録されること。この3点を満たすと、担当者が替わっても安定して回る“続く仕組み”になります。
参考:個人事業主のクラウド会計利用率は38.3%へ、拡大基調続く ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
DX導入でつまずきやすいポイントと解き方
DX導入のよくある壁は、担当者が足りないこと、今あるシステムとうまくつながらないこと、取引先名や勘定科目がバラバラなこと、そして社内で話がまとまりにくいことです。焦って全部を一度に解決しようとせず、まず「人」「仕組み」「データ」の順に整えると前へ進みます。
最初に、誰が何を決め、どの経路で申請して、どう記録を残すのかという最小限の決めごとだけを固めます。そのうえで、小さな範囲でお試し運用を行い、実際に動かしてみて安全性と効果を確かめながら、対象を広げていくのが安全です。
人の体制:決める人・作る人・使う人を明確に
はじめに役割をはっきり分けます。方針や最終判断を担う「決める人」、画面や手順を設計して設定を行う「作る人」、日々の申請や承認・記録を担当する「使う人」です。三者が混ざってしまうと、責任の所在が曖昧になり、確認待ちや差し戻しが増えます。たとえば、経費の承認ルールを変更する場合は「決める人」が期限と目的を示し、「作る人」が画面や権限を直し、「使う人」に周知して当日からの操作を変えます。
誰に相談すれば動くのかが一目でわかるよう、問い合わせ窓口を一つにまとめ、週に一度だけ短い振り返り時間を設けると、現場の困りごとが早く吸い上がります。異動や欠員が出ても回るように、手順書は最新の画面キャプチャつきで残し、承認権限は人ではなく「役割」で付与しておくと安定します。
データ:取引先名や勘定科目の“名寄せ”から
次に手を付けるのはデータの整え方です。ここで言う“名寄せ”は、同じものを同じ名前で呼ぶようにそろえる作業を指します。たとえば「ABC株式会社」「(株)ABC」「ABC(株)」のように表記が揺れている取引先名を一つに統一し、二重登録を解消します。勘定科目や税区分についても、似た用途の科目が乱立していないかを点検し、選択肢を絞ります。最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは「取引先名」「支払先口座」「勘定科目」「税区分」の4点だけに的を絞り、週に一度、重複や誤字を直すだけでも、入力ミスと計上の迷いは目に見えて減ります。申請側は選択式、経理側は候補の自動提案を前提にすると、手入力の回数が下がり、締めの集計も歪みにくくなります。名寄せの結果は基礎データ表(マスタ)として管理し、誰がいつ更新したかの記録を残すことで、後から理由を説明できる状態を保てます。
つなぎ方:API(自動連携)とファイル連携の使い分け
最後に、システム同士のつなぎ方を選びます。APIは「システム同士が自動で会話する仕組み」で、頻繁にやり取りするデータや、人手を介したくない工程に向いています。一方で、CSVなどのファイル連携は「決まったタイミングでまとめて受け渡す」方法で、月次や週次の処理など頻度が低い場面なら十分に実用的です。はじめからすべてをAPIにせず、まずはファイル連携で動かし、項目名の対応やエラー時の扱いを固めてから、自動連携へ段階的に移すと安全です。
どちらの方式でも重要なのは、失敗したときにすぐ気づけることです。取り込み結果を画面で確認できるようにし、エラー件数と原因を記録に残します。再実行の手順を決めておけば、担当者が替わっても短時間で復旧できます。やり取りするデータは最小限から始め、実務で必要なものだけを追加していくと、無理のない形で安定してつながります。
公的なDX導入の成功例から学べること
公的機関では、何をいつまでに誰が行うのかをあらかじめはっきり示し、進み具合を外部にも分かる形で公開する取り組みが進んでいます。数字と状況を定期的に示すことで、遅れや課題が見つかったときにすぐ手当てでき、改善の流れが止まりません。
経理の現場でも同じ考え方が役立ちます。処理した件数、最終承認までにかかった時間、入力や計上の修正率といった基本の数値を、月次や週次で出し続けるだけでも、どこを直せばよいかが自然と見えてきます。
見える化のコツ:数字と画面を同時に共有
数字だけを報告しても、どの画面のどの操作が原因だったのかが伝わらないことがあります。逆に、画面だけを見ても、どれほど効果が出ているのかが分かりません。公的機関のやり方にならい、数値のグラフと、実際に使う画面の状態を並べて共有すると、改善点がすぐに一致します。
例えば、承認までの平均時間を示すグラフを出しながら、承認待ち一覧の画面を同時に見れば、どの部門で滞りがちか、どの金額帯で時間がかかっているかが一目で分かります。会議では、最新の数値を映し、該当する明細や原本にもその場で遡れるようにしておくと、議論が具体的になり、翌日からの修正が進みやすくなります。
参考:DXにより利便性向上・業務効率化をさらに推進【市長会見】(令和7年5月13日発表) – 奈良市ホームページ(秘書広報課)
住民接点=社内申請に置き換える視点
自治体では、住民が最初に触れる「窓口」や「オンライン申請」の負担を減らすことを重視します。経理に置き換えると、これは社内の申請フォームに当たります。申請者が迷う入力欄が多いと、内容の不備や差し戻しが増え、最終的には経理の負担に跳ね返ります。住民向け手続きと同様に、社内申請でも最初の入口を整えることが効果的です。
参考:自治体DXの鍵はアナログな業務改革にあり――北見市「書かないワンストップ窓口」 – 一般社団法人デジタル地方創生推進機構
参考:行政手続のオンライン化|デジタル庁
小さな成功を社内に広げる伝え方
頻出する費目は選択式にまとめ、取引先やプロジェクト名は既存データから選べるようにして、金額や日付のように人の判断が要る箇所だけを手入力にします。こうして入口を軽くすると、後ろの工程での確認や修正が減り、全体のスピードが確実に上がります。
公的機関は、取り組みの結果を外部に発信し、学び合うことで次の改善につなげています。社内でも同じように、まずは小さく始めて出た成果を分かりやすく共有すると、協力者が増えます。たとえば、「旅費精算の承認時間が平均36時間から24時間になった」「入力の修正率が3%から1.5%に下がった」といった事実を、元画面のキャプチャとセットで紹介します。
効果が出た理由や、つまずいた点とその解き方も添えておくと、他部門が同じやり方を取り入れやすくなります。数値・画面・手順の3点を1枚にまとめて共有し、次に試す範囲と時期を決める。この流れを繰り返せば、無理なく改善が広がり、仕組みとして定着していきます。
DX導入をうまく進めるための考え方
難しく考える必要はありません。まず目的をはっきり言葉にし、達成度の測り方を決め、現場で回せる手順に落とし込み、定期的にふり返る。この順番を守るだけです。経営からの後押しを早い段階で取りつけ、数値で説明し、いつまでに何をするのかを明確にします。足りない部分は社外の専門家の知恵を借りて補い、無理のない形で前に進めます。
目的とKPI:何をどれだけ良くするかを一文で
最初に「何を」「どれだけ」「いつまでに」良くするのかを一文で言えるようにします。たとえば「月次の締めにかかる日数を、今期末までに3日から2日に短縮する」「経費申請の入力ミス率を、来月から平均3%→1.5%に下げる」といった具合です。ここで使う数値がKPI(目標の数字)です。
現状の数値を必ず確認し、改善後の目安と並べておくと、取り組みの効果が誰にでも伝わります。KPIは多くても3つまでに絞ると、現場の負担が増えすぎず、進み具合も追いやすくなります。言い換えると、ゴール写真を先に用意してから走り出すイメージです。
手順の決め方:いつ・誰が・何をするか
目的が定まったら、日々の動きを「いつ・誰が・何をするか」に分けて、実務に合わせた段取りへ落とします。たとえば「申請はスマートフォンで当日中に」「承認は金額帯で自動振り分け」「承認済みだけが支払へ進む」「変更は担当ではなく“役割”に紐づける」といった決め方です。
週に一度、15分だけ状況を確認する時間を設け、滞っている箇所を画面で一緒に見ます。月末前の数日は大きな仕様変更を避け、締めが終わった直後に見直しを行うと、現場が混乱しません。もし想定外のエラーが起きたら、どうやって元に戻すか、誰が再実行するかまで事前に決めておくと、担当者が替わっても安定して回ります。
第三者の活用:監査・法対応・技術の外部知見
社内だけで解決しようとすると時間がかかる場面があります。監査の観点で必要な記録の残し方や、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応、システム同士のつなぎ方の最適解などは、社外の専門家に短時間で確認するほうが確実です。求めるのは高価な一式導入ではなく、「この運用で監査に耐えられるか」「この設定で法要件を満たせるか」「このデータ項目で連携は安定するか」といった要点のチェックです。
ひな形の提供やサンプル画面をもらえれば、社内の合意形成も早まります。外部の知見で“正しい型”を先に押さえ、社内ではその型を自分たちの仕事に合うように微調整していく。この分担が、最短で安全に効果を出す近道です。
DX導入を進める手順と費用の考え方
まずは現場で起きている困りごとを具体的に書き出し、影響の大きい順に手を付ける対象を決めます。次に、解決に使えそうなツールの候補を比較し、いきなり全社ではなく小さな範囲でお試し運用を行います。実際に動かして得られた結果を数字で確かめ、問題がなければ対象部門や処理種別を少しずつ広げます。
費用については、削減できる人件費の見込みに、保守や教育などの運用コストを足して見積もり、毎月の効果が毎月の費用を上回るかどうかで判断します。結論を急がず、「困りごとの把握→優先順位→候補比較→お試し→拡大→効果確認」という順番を守ると、無理なく進みます。
お試し運用の設計:成功・中止の条件と測る数字
お試し運用(PoC)は、対象と期間を小さく区切り、成功と中止の条件を最初に決めてから始めます。たとえば、旅費交通費だけを一か月試し、入力ミス率を3パーセントから一・5パーセントに下げられるか、申請から最終承認までの平均時間を36時間から24時間に短縮できるか、といった具体的な目標を置きます。
測る数字は、処理件数、修正件数、承認に要した時間、未処理の残り、そして原本への到達性など、後工程の負担に直結するものが分かりやすく、あとで全社展開の説得材料にもなります。誰がいつ集計し、誰が判定するのかも事前に決め、月末直前の数日は仕様を動かさないなど、現場が混乱しない運用上の配慮も加えます。想定外の不具合が出たときに元に戻す手順と連絡先を用意しておけば、担当が替わっても安全に試せます。
お金の見方:月次締め時間×人件費で“時間の値段”を出す
費用対効果は、まず“時間の値段”を出すところから始めると腹落ちします。現在の月次締めに何時間かかっているか、その作業に何人が関わり、1時間あたりの人件費がいくらかを掛け合わせると、時間短縮の効果を金額で示せます。
例えば、4人がそれぞれ3時間ずつ関わっているなら合計12時間です。1時間あたり3000円で計算すると、締め1回につき3万6千円の人件費がかかっている計算になります。お試し運用で締めの時間が3分の2になれば、1回あたり約1万2000円が浮く見立てになります。これに、印刷や郵送の削減、誤支払の再処理コストの減少などを加えると、より現実に近づきます。
一方で、月額の利用料、初期設定の費用、社内研修の時間、問い合わせに対応する保守のコストなど、見落としがちな支出も必ず積み上げます。毎月の効果から毎月の費用を引いた値がプラスであれば前進してよく、初期費用がある場合は「投資回収期間=初期費用÷月次の純効果」で何か月で元が取れるかを示します。より丁寧に説明したいときは、「ROI=(効果−費用)÷費用」という形で割合も添えると、経営層にも伝わりやすくなります。
運用移管:手順書、権限、記録の残し方
お試し期間で手応えを得たら、日常運用へ引き継ぐ準備を進めます。まず、実際の画面に合わせた手順書を作成し、申請者、承認者、経理の確認者がそれぞれどの画面で何をするのかを、スクリーンショットつきで残します。承認や設定の権限は個人ではなく「役割」に紐づけると、異動や欠員が出ても手戻りが少なくて済みます。
さらに、だれが、いつ、どの明細に対して、どのような操作をしたのかが自動で記録される状態を標準にします。これは監査対応だけでなく、トラブル時の原因究明にも役立ちます。研修は一度きりで終わらせず、締めが落ち着いた直後に短い復習会を設けて疑問点を解消し、次回の改善点をその場で決めます。
問い合わせ窓口は一か所に集約し、よくある質問は手順書へすぐ反映します。月末前の変更は原則避け、必要な改修は月次の区切り後に適用する、といった変更加減のルールも合わせて明文化しておくと、運用は安定します。こうして手順、権限、記録の3点をそろえてから対象範囲を広げると、担当者が替わっても続けられる仕組みに育っていきます。
【表4】小さなお試し運用(PoC)の設計シート見本
項目 | 記入例 |
---|---|
目的 | 経費申請の入力ミス率を3.0%→1.5%に下げられるか確かめる |
期間 | 次の月次サイクルの1か月間 |
対象範囲 | 営業部の旅費交通費のみ(件数多く効果を測りやすい) |
成功のサイン | ミス率が1.5%以下、承認リードタイムが24時間以内 |
中止のサイン | ミス率が悪化、または承認が48時間超の案件が25%超 |
記録する項目 | 提出日時、修正理由、承認者、承認日時、原本リンク |
DX導入に対する国の指針や認定の使い方
デジタルガバナンス・コード(DGC)は、会社としてデジタルを安全かつ効果的に使うための「守り方・進め方」を確認する枠組みです。DX推進指標は、自社の現在地を短時間で自己診断するための道具です。DX認定は、取り組みが一定の基準を満たしていることを国が評価する制度で、社内外への説得材料になります。経理の現場では、DGCで体制とルールを整え、DX推進指標で現状を測り、必要に応じてDX認定で対外的な信頼性を補強する。この順番を意識すると無理がありません。
2024年12月から、国の運用基準は「デジタルガバナンス・コード3.0」に移行しています。指針の柱は変わりませんが、経営としての示し方と開示の丁寧さが一段と重視されます。さらに、2025年08月27日からDX認定の申請はウェブフォーム方式へ切り替わりました。入力ガイドつきで迷いにくく、送信までオンラインで完結します。
自己診断については、IPAのガイダンスが示す「キークエスチョン」と「サブクエスチョン」を関係部門で議論しながら回答する前提が保たれており、初回は“現在地の写真”を正直に撮ることが次の一歩につながります。これらの変更点を押さえておくと、社内説明がスムーズになり、準備作業のやり直しも減らせます。
参考:DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度) (METI/経済産業省)
参考:デジタルガバナンス・コード (METI/経済産業省)
DGCの要点:責任者・方針・点検・公開
DGCを経理の文脈で使うときは、まずデジタル活用の責任者を明確にし、意思決定の流れを社内で共有します。次に、何を優先し、どの範囲から始め、どの基準で安全性を担保するのかという方針を短い文書にまとめます。運用が始まったら、権限設計や記録の残し方、障害や誤処理が起きた際の対応を定期的に点検し、改善を記録に残します。
最後に、社内ポータルや取締役会報告などの場で、進み具合と改善内容を分かる形で公開します。責任者が見える、方針が読める、点検が回る、結果が共有される。この4点がそろうと、経理のデジタル化は安定して前に進みます。
参考:デジタルガバナンス・コード2.0|経済産業省(PDF)
DX推進指標:7~10分でできる簡易自己診断
DX推進指標は、設問に答えるだけで自社の成熟度を素早く把握できる自己診断です。経理、情報システム、現場部門の小さなチームで同じタイミングに実施し、結果の差が出た設問をその場で擦り合わせます。初回は「現在地の写真」を撮るつもりで等身大に答え、次回の目標との差をKPIに落とし込みます。
診断は四半期ごと、もしくは半期ごとに繰り返すと、改善の積み上げが可視化されます。回答根拠として、承認フロー図、権限表、監査ログの取得方法などを簡単にメモしておくと、あとから説明が必要になったときにも役立ちます。短時間で終わるからこそ、定期運用に組み込みやすいのが利点です。
参考:「DX 推進指標」とそのガイダンス|IPA(PDF)
自己診断を提出すると、業種や規模感で分解されたベンチマークレポートが取得できます。ここで示される同業の傾向と自社の位置付けを、本文で扱っているKPI(承認リードタイム、入力ミス率、証跡到達率など)と一体で見直すと、次の四半期に向けた“数字で語れる改善案”にすぐ変換できます。毎回の定例で提出→ベンチマーク確認→KPI更新という流れを固定化すると、関係者の納得感が上がり、意思決定のスピードも揃っていきます。
参考:DX推進指標のご案内 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
以下の記事では、DX推進指標の読み解き方と活用手順について詳しく解説していますので参考にしてください。
DX認定:取得の流れと“つまずきポイント”
DX認定は、経営の関与、体制と方針、情報開示、継続的な見直しなどが一定水準に達している企業を公式に評価する制度です。実務では、要件と自社の状態を照らし合わせ、足りない項目を補うところから始めます。方針の文書化、責任者と役割の明確化、KPIと見直しサイクルの定着、外部への開示内容の整備が主な準備項目です。
参考:DX認定制度概要~認定基準改訂及び申請のポイント~|経済産業省(PDF)
つまずきがちな点は、目標の言い回しが曖昧で数値が無い、運用実績を示す証跡(承認履歴や改善記録)が不足している、担当と期限の書き分けが甘く実行度が示せない、の3点に集約されます。これらは、KPIを2~3個に絞って期限付きで掲げる、会議体での決定と実施結果を同じ台帳に残す、役割に紐づく権限管理へ切り替える、といった基本の徹底で解消できます。
認定そのものが目的ではありませんが、取得に向けた準備を進める過程で、経理の“守り”と“進め方”が自然に整い、社内の合意形成も進みやすくなります。
取得後の効用:社外説明と施策の選択肢を広げる
DX認定には有効期間があり、原則2年ごとの更新が必要です。更新を前提に、会議体の決定と実施結果を同じ台帳で運用しておくと、証跡準備の負担を最小にできます。認定後は、公式ロゴの利用と認定事業者一覧への掲載で対外説明がしやすくなり、上場企業ならDX銘柄の選定対象、非上場を含む中堅・中小ならDXセレクションへ自薦応募が可能になります。
さらに、金融や人材育成の公的支援、補助金での加点など「制度面の追い風」が用意されています。社内向けには“認定=終点”ではなく“改善の定常運転に入る通行証”と位置づけると、継続的な投資判断が通りやすくなります。
DX導入の際に経理AIエージェントを上手に使う
経理AIエージェントは、請求書や領収書の内容を読み取り、仕訳の候補を示し、規程から外れた動きを見つけ、やり取りの記録を自動で残す“賢い補助役”です。あらかじめ決まった手順を正確に繰り返すRPAと組み合わせ、想定外のケースは人が判断する形にしておくと、安全に効率化が進みます。
何ができる?:読み取り・提案・異常検知・記録
まず、紙やPDFの請求書から日付、金額、取引先名、明細などを機械が読み取り、会計に必要な情報へ整理します。次に、過去の登録履歴や社内ルールをもとに勘定科目や税区分の候補を提示し、人は候補を確認して確定するだけで済みます。
さらに、社内の上限額を超える支出や、同じ請求書の二重計上、相場から外れた金額、締め切り直前の駆け込み申請といった“気になりやすい動き”を自動で拾い上げ、注意が必要な明細だけに目を向けられるようにします。
誰がどの明細を確認し、どの項目を修正したのかといった操作履歴は、エージェント側で自動的に残るため、あとから経緯を追うことも簡単です。使い始めは候補提示やアラートの感度を控えめに設定し、現場のフィードバックを反映しながら少しずつ精度を上げていくと、ムリなく浸透します。
法対応:電帳法・インボイスの証拠を自動で残す
電子帳簿保存法やインボイス制度に備えるうえでも、エージェントの記録機能は役立ちます。受け取った原本データを改ざんできない形で保管し、受領日時や提出者、承認者、承認日時といった基本情報を自動でひも付けておくと、根拠の確認に時間を取られません。検索に使う取引先名や金額、日付などの項目も合わせて保存されるため、必要な証憑に素早くたどり着けます。
以下の記事では、電子帳簿保存法の要件と対象書類を図解していますので参考にしてください。
以下の記事では、インボイス制度の基本と経理への影響を整理していますので参考にしてください。
金額の修正や科目の変更があった場合は、誰が何の理由で変更したかをメモごと残しておくと、後日の説明や監査の場面でも落ち着いて対応できます。重要なのは、紙とデータが混在しても、最終的に「集計値から原本へ戻れる」状態を保つことです。エージェントを“証拠の通り道”として使えば、この道筋が自然に整います。
監査ログの最小要件:数クリックで原本へ戻れる状態を基準に
監査や社内説明で必要になるのは、「集計された数字から、いつでも短い手順で原本に戻れること」です。最低限そろえるのは、原本ファイルと受領日時、提出者、承認者、承認日時、金額・日付・取引先名といった検索に使う基本項目、そして修正や差し戻しの理由を含む操作履歴です。
運用では、数字のグラフと実際の画面を同時に共有できる会議の型を決め、該当明細へ2クリック程度で遡及できるリンク構造を揃えておくと、問合せ対応と再発防止の議論が短時間で進みます。これは、最新のガバナンス指針が重視する「方針・体制・開示」を実務の画面に落とし込む具体策でもあります。
RPAとの違い:決まり切った作業か、文脈理解が要るか
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、決められた手順を間違えずに繰り返すことが得意です。毎月同じ形式のレポートを出力する、同じファイルを同じ場所へ取り込む、といった定型の処理では大きな力を発揮します。一方、経理AIエージェントは、書類の中身を読み取り、文脈に合わせて「おそらくこの科目」「この承認ルートが合っている」といった提案ができます。レイアウトや書きぶりがバラつく請求書の処理や、金額や部門によって承認者が変わるような場面では、エージェントの“理解して提案する力”が生きます。
実務では、RPAが決まった時刻にデータを集め、エージェントが読み取りと候補提示を行い、人が注意喚起された明細だけをチェックする、といった分担が相性のよい組み合わせです。これなら、作業の抜けや誤りを抑えつつ、判断が必要なところにだけ人の時間を配分できます。
DX導入の今後の見通しと気をつける点
クラウドの普及で、申請や承認、計上までの流れはますます扱いやすくなります。その一方で、権限の決め方や記録の残し方、データの正しさを後回しにすると、あとで説明ができなかったり、集計が歪んだりして困ります。最初に“守り”を決め、定期的に見直す習慣を入れておくことが、失敗しない近道です。
権限と職務分担:二重チェックをどこに入れるか
権限設計の基本は、入力・承認・支払を同じ人が同時に行えないように分けることです。まず「だれが入力し、だれが承認し、だれが支払を実行するのか」を役割で分け、承認は金額帯やリスクの高い取引だけでも良いので、2段階の確認(ダブルチェック)を入れます。これにより、うっかりミスや不正の早期発見が期待できます。
権限は個人名ではなく“役割”にひもづけると、異動や欠員が出ても設定を変えやすくなります。あわせて「誰が・いつ・どの明細に・どんな操作をしたか」の履歴が自動で残る状態を標準にし、月末前は設定変更を原則凍結、変更は月次締めの直後に適用するなど、運用上のルールも最初に決めて周知します。
データ品質:重複・抜け・誤りを週次で点検
正しい集計や検索の前提は、基礎データの整い具合です。取引先名や勘定科目の表記がバラバラだと、同じ相手への支払が別々に集計され、判断を誤らせます。まずは「取引先名」「支払先口座」「勘定科目」「税区分」の4項目に的を絞り、重複・抜け・誤りの3つの観点で週ごとに点検します。
申請側は選択式を基本にして手入力を減らし、経理側は過去履歴からの候補提示を活用すれば、迷いと修正回数が下がります。点検の結果は簡単なメモで残し、次回は前回の未解消点から手を付けると、短い時間でも品質が着実に上がります。
乗り換えにくさを避ける:標準形式で出し入れ可能に
便利さだけでツールを選ぶと、あとで他社製品に乗り換えたいときにデータが出せず、時間も費用も余計にかかることがあります。避ける方法はシンプルで、データの出し入れが標準的な形式で行えるかを最初に確認することです。
具体的には、明細やマスタをCSVなどでエクスポート/インポートできるか、APIで主要な項目を取得・登録できるか、添付ファイルや承認履歴まで一括で持ち出せるか、といった点をチェックします。契約面では、解約時のデータ提供方法や費用、提供までの期間を文書で取り決めておくと安心です。
万一に備え、四半期に1回はバックアップを取得し、別の環境で復元できるかを試しておけば、将来の選択肢を確保しながら日々の改善に集中できます。
【表5】“守りの先出し”チェック(権限・記録・データ品質)
項目 | 最低限の決め方 | できている状態 | よくある落とし穴 |
---|---|---|---|
権限 | 入力・承認・支払の役割を分ける | 二重チェックの場所が図示され周知されている | 同一人物が入力と最終承認を兼ねてしまう |
記録(証跡) | 誰が・いつ・何をしたか自動で残す | 履歴から原本へ数クリックで到達できる | 口頭・チャット依頼が記録に残らない |
データ品質 | 取引先・科目を基礎データ表で統一 | 重複・誤字が週次で直される | 似た名前が乱立して集計が歪む |
データの“出し入れ保証”を契約前に文書化する
将来の選択肢を残すには、主要マスタ(取引先、勘定科目、税区分、口座)と明細をCSVで出し入れできること、APIで主要項目の取得と登録ができること、添付ファイルと承認履歴をまとめてエクスポートできることを、契約前に文書で確認します。解約時の提供方式、費用、提供にかかる期間も同じ文書に明記し、四半期ごとにバックアップを取得して別環境で復元検証を行うと、乗り換え時のリスクが大きく下がります。上記の「守りを先に決める」という方針と一体で運用すると、日常改善と将来の自由度を両立できます。
失敗を防ぐQ&A
Q:原本リンクが散らばって説明に時間がかかります。
A:集計画面から明細、明細から原本へ、2クリック以内で遡れる導線を“運用基準”として固定します。会議ではグラフと該当画面を同時に映し、疑問点はその場で原本へ到達して解消します。
Q:名寄せが長続きしません。
A:週次で「重複・抜け・誤り」の3観点だけを点検します。点検メモは次回の起点にし、申請側は選択式、経理側は過去履歴の候補提示を前提にして手入力を減らします。
Q:申請方式の変更はいつ反映すべきですか。
A:月末前は原則凍結し、月初に反映します。あわせて“元に戻す手順”と連絡先を決めておくと、担当が替わっても短時間で復旧できます。
まとめ
DX導入は「新しいツールを入れること」ではなく、「仕事の進め方を作り直すこと」です。まず困りごとを数字で把握し、いつまでに何をどれだけ良くするかという目標(KPI)を決めます。次に、小さなお試し運用で成功条件・測り方・中止条件を明確にし、範囲を広げます。権限の決め方、行動の記録(監査ログ)、データの正しさといった“守り”を最初から組み込みましょう。国の指針(デジタルガバナンス・コード、DX推進指標、DX認定)を道しるべに、定期的に見直せば、手作業中心から価値ある業務へ時間を振り向けられます。