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レシート整理を自動化して経理業務を効率化する方法を解説

更新日:2025.12.05

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レシート_整理_自動化

レシート整理は毎月必ず発生する定型業務ですが、紙のまま回収して手入力を続けていると、月末になるたびにレシートの山と残業だけが増えてしまいます。OCRやAI、経費精算システムを組み合わせれば、「撮影→自動読み取り→会計ソフト連携→電子保存」までを一気に自動化し、手作業を大きく減らすことができます。

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本記事では、経理担当者の方が最小限の準備でレシート整理を自動化し、電子帳簿保存法・インボイス制度にも対応しながら、業務負荷を着実に減らすための具体的なステップと注意点を解説します。

レシート整理はどこまで自動化できる?先に結論だけ知りたい方へ

レシートの収集から読み取り・会計連携・電子保存までの4工程はツールで大きく自動化できる一方、勘定科目の最終判断や例外対応など一部は人による確認が前提となります。ここでは、本編の詳細に入る前に、「自動化できる範囲」「向いている企業規模」「最初の一歩」の3点を結論ベースで整理します。

Q1:レシート整理はどこまで自動化できますか?

A:大きく「収集・受付」「読み取り・整形」「会計ソフト連携」「保管・検索」の4工程は、ツールや仕組みを整えればほぼ自動化できます。一方で、勘定科目の最終判断や例外的な支出の扱い、運用ルールの決定・見直しといった部分は、人によるチェックと判断が前提です。本記事では、「どこまでを機械に任せ、どこからを人が見るべきか」を具体的に切り分けていきます。

Q2:どのくらいの規模・件数から自動化を検討するべきでしょうか?

A:月末にレシートがまとまって届き、経理担当者が入力作業のために残業せざるを得ない状況なら、従業員数やレシート枚数にかかわらず自動化を検討する価値があります。特に、月に数百枚前後のレシートを扱う、もしくは経理担当者が他業務と兼務している中小企業では、入力と確認をツールに任せることで、締め作業の負荷を大きく減らせます。

Q3:レシート整理の自動化は、まず何から着手すればよいですか?

A:最初の一歩は、現在のレシート整理フローを「誰が・いつ・どのくらいの時間をかけているか」まで可視化することです。そのうえで、まずは対象部署や費目を絞ったスモールスタートでツールを試し、会計ソフト連携や電子帳簿保存法への対応状況を確認しながら、自社に合った運用ルールを固めていくのがおすすめです。本記事では、「現状把握→ツール選定→パイロット運用→全社展開」という流れで具体的な進め方を解説します。

レシート整理を自動化すると、どのような負担軽減とリスク低減につながるのか?

レシートは経費を裏づける証憑として欠かせませんが、紙のまま手作業で整理していると、入力やファイリングに多くの時間を取られ、紛失や入力ミスのリスクも高まります。自動化の仕組みを取り入れれば、情報の入力と保管の負担を減らしつつ、必要なときにすぐ取り出せる状態を保ちやすくなります。

手作業によるレシート整理の課題

従来の手作業によるレシート整理では、経理担当者が一枚一枚のレシートを目で確認しながら、日付や金額、支出内容をパソコンに入力していく必要があります。この作業は想像以上に時間がかかり、特に月末の締め処理や決算期には大量のレシートが一度に集まるため、残業時間が増加する原因となっています。また、長時間の入力作業は集中力の低下を招き、タイピングミスや計算ミス、同じレシートを二重に入力してしまうといった人為的なエラーが発生しやすくなります。

さらに、紙のレシートは適切に整理して保管しなければ紛失のリスクが高く、後から特定のレシートを探し出すのにも相当な時間を要します。こうした課題は経理部門の生産性を低下させるだけでなく、担当者の精神的な負担も大きくなり、離職の要因にもなりかねません。

なお、レシート整理そのものの基本的な進め方や、今日から実践できる整理術を知りたい方は、レシート整理の入門編としてまとめた以下の記事もあわせてご覧ください。

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自動化がもたらす業務効率化の効果

レシート整理の自動化を導入すると、これまで手作業で行っていた入力作業の大部分をシステムに任せることができます。スマートフォンでレシートを撮影するだけで、OCR技術が日付や金額、店舗名などの情報を自動的に読み取り、データとして取り込んでくれるため、手入力にかかる時間を大幅に削減できます。実際に、従来の方法と比較して作業時間が80%削減されたという事例も報告されています。

さらに、自動化によって人の手を介さずにデータが登録されるため、タイピングミスや計算ミスといった人為的なエラーを最小限に抑えることができます。経理担当者はシステムが読み取った内容を確認するだけで済むようになり、空いた時間をより重要な財務分析や予算管理といった付加価値の高い業務に充てることが可能になります。

保管期限と法的要件の基礎知識

レシートや領収書は、税法上一定期間の保管が義務付けられています。法人の場合は、確定申告の期限の翌日から数えて7年間の保管が必要です。ただし、事業の赤字を繰り越す場合には保管期間が10年間に延長されます。個人事業主については、青色申告を行っている場合は7年間、白色申告の場合は5年間の保管が求められます。また、消費税の仕入税額控除を適用する際には、申告区分にかかわらず7年間の保管義務があります。

とくに感熱紙のレシートは時間がたつと印字が薄くなるため、長期保管を前提とするなら、早い段階でスキャンや撮影によって電子データ化しておくほうが安全です。現状の手作業フローは、収集・入力・確認・保管のすべてで人の手が介在し、月末に処理が滞りがちです。以下の表では、同じ工程を“自動化後の姿”に置き換えた場合の運用イメージと効果を並べて示します。自社の実態と見比べ、どこからスモールスタートするかを検討する材料にしてください。

手作業フロー vs 自動化フロー:ひと目でわかる違い

工程手作業フロー自動化後フロー主な効果・リスク低減
① 収集紙レシートを各自で保管し、月末にまとめて提出スマホ撮影/メール転送で随時アップロード提出漏れ・紛失を抑制、月末集中を緩和
② 受付経理が紙を受領・仕分けアップロード時に自動受付、受付時刻を記録受付の属人化を解消、受付ログで追跡可能
③ 読み取り金額・日付・店舗を目視で入力OCR×AIが項目(店舗/日付/金額/番号)を自動抽出入力ミス削減、処理時間を短縮
④ 整形担当者がCSVを手作成、列並びが都度ばらつく取込テンプレに自動整形(列順・文字コードを固定)取込エラー減少、再作業コスト低減
⑤ 照合カード明細・申請内容と手作業で突合カード明細・申請のIDで自動ひも付け突合の抜け漏れを抑制、不正検知を強化
⑥ 申請紙フォームに記入して回覧Webフォームに自動入力済み、差分のみ確認申請作業を簡略化、提出スピード向上
⑦ 承認承認者不在で停滞、催促はメール/電話リマインド自動化、代行承認ルールを事前設定滞留の可視化、処理の止まりを解消
⑧ 記帳会計ソフトに手入力で転記CSV/APIで一括取込、勘定科目の候補を自動反映転記ミス削減、月次締めの前倒し
⑨ 保管紙をファイルに綴じて保管画像・メタ情報を電子保存(電帳法の要件に沿って)検索性・可視性が向上、保管スペース削減
⑩ 検索・監査紙束から該当伝票を探索日付・金額・相手先などで即検索、出力も容易監査対応時間を短縮、証跡提示が迅速
注:自動化の適用範囲は段階的に拡大します。まずは対象部署・費目を絞った スモールスタートでテンプレと運用ルールを確定してください。
領収書保管マニュアル

OCRとAIで、レシート情報はどこまで自動で読み取り・整理できるのか?

レシート自動化の中心となるのが、OCR(文字認識)とAIです。OCRがレシート画像から日付や金額、店舗名などの文字情報を取り出し、AIがその内容をもとに勘定科目や取引の種類を判断します。最近は多様なレイアウトにも対応できるようになり、読み取り精度も向上しています。ここでは、これらの技術がレシート整理をどのように支え、実務でどこまで任せられるのかを整理します。

OCR技術の仕組みと読み取り精度

OCR(光学文字認識)は、紙や画像の文字をコンピュータが扱えるデータに変換する技術です。レシート整理では、撮影した画像を解析し、印字された日付や金額、店舗名などを自動でテキスト化します。最近のOCRはフォントやレイアウトの違いにもある程度対応できますが、印字がかすれていたり、折れ目や汚れがあったり、暗い場所で撮影した場合には精度が落ちます。実務では、レシートをできるだけ平らにして明るい場所で撮影する、といった基本を徹底することで、誤認識を大きく減らせます。

AIによる自動分類と勘定科目の紐付け

OCRで文字が読み取られた後は、AIがその内容を分析し、勘定科目や税区分を自動で判定します。店舗名や品目のキーワードから、文房具なら「消耗品費」、取引先との飲食なら「接待交際費」といった形で候補を提示するイメージです。AIは過去の仕訳や修正履歴を学習するため、使い続けるほど自社のルールに近い判断ができるようになります。インボイス対応のシステムでは、登録番号なども自動で拾えるため、仕入税額控除に必要な情報も同時に整えることができます。

読み取りエラーへの対応と精度向上のポイント

とはいえ、現在の技術でもOCRがすべての文字を完全に読み取れるわけではありません。印字が薄いレシートや水濡れ・折れ目のあるレシート、手書きの領収書などは、どうしても誤認識や読み取り漏れが起こりやすくなります。そのため、レシート整理を完全自動化しようとするのではなく、「OCRとAIで一次入力を行い、人が最後にざっと確認する」運用を前提にしたほうが現実的です。専門オペレーターによる目視チェックを組み合わせるサービスも多く、撮影時の環境を整えることとあわせて活用すれば、実務上問題のない水準まで精度を高めることができます。

CSV変換と会計ソフト連携でレシート整理の自動化はどのように実現できるのか?

レシートから抽出したデータは、CSV形式に整えることで会計ソフトへ一括取り込みできます。店舗名・日付・金額・勘定科目などを共通フォーマットで管理しておけば、転記作業をほぼ自動化できます。一方で、列の並びや文字コード、項目名が会計ソフト側の仕様と合っていないとエラーが発生しやすいため、導入時にフォーマットを丁寧に設計しておくことが重要です。

CSV形式でのデータ出力方法

CSV(Comma-Separated Values)は、多くの会計ソフトが読み込める、ごくシンプルなテキスト形式のファイルです。レシートから抽出した日付、金額、勘定科目、税区分、摘要などを横一列に並べ、1行ずつ取引データとして保存します。多くのツールは、レシートをスキャンすればワンクリックでCSVを出力できるようになっており、担当者がExcelで項目を並べ替える手間を省けます。運用のポイントは、最初に列の構成と文字コードを決めておき、会計ソフト側の要件と揃えておくことです。

会計ソフトとの連携設定と注意点

CSVを会計ソフトに取り込む際は、ソフトごとに求められるフォーマットの違いに注意が必要です。日付の書き方や金額の桁区切りの有無、税区分や勘定科目の名称などが、ツール側の出力と会計ソフト側の設定で食い違っていると、取り込みエラーの原因になります。導入時にはテスト用のデータを少量用意し、実際に取り込んでみて問題がないかを確認しながら、列の順番や項目名のマッピングを調整していくのが安全です。一度安定したテンプレートが整えば、その後は同じ形式で出力し続けることで、日々の運用がぐっと楽になります。

取り込みエラーの原因と対処法

取り込みエラーの多くは、列数や列名のズレ、日付・金額の形式不一致、必須項目の欠落が原因です。エラーが出た際は、会計ソフトのエラーメッセージから問題の行と項目を特定し、フォーマットそのものに問題があるのか、個別データだけ修正すればよいのかを切り分けます。列の並びと文字コードを固定し、必須項目だけは空欄がないことを事前チェックする運用にしておくと、取り込みエラーは大きく減らせます。

会計ソフトへの取込エラーの多くは、列順・文字コード・項目名のズレが原因です。まずは下記の最小テンプレートで列構成を固定し、テスト取込で問題がない並びを全社共通ルールにします。カード明細や請求書も同じ設計に合わせると、月末の集計と照合が一気にスムーズになります。

表:会計取込が止まらない“最小列”の並び

列名必須入力例備考
取引日必須2025-03-15YYYY-MM-DDで統一
店舗名/相手先必須コンビニA 新宿三丁目店EC・オンラインはサイト名でも可
金額(税抜)必須1200半角数字。小数はピリオド
消費税額任意120税区分で自動計算する場合は空欄可
税区分任意課税10%会計ソフトの表記に合わせる
勘定科目任意消耗品費AI推定を上書きする場合に使用
部門/プロジェクト任意管理部/展示会2025管理会計のトラッキングに利用
支払方法任意社員立替法人カード/現金/社員立替など
インボイス番号任意T1234567890123記載がある場合のみ
メモ/品目任意備品(延長コード)監査時の判別用に簡潔に
文字コードはUTF-8推奨/列順は固定。テスト取込でエラーが無い並びに確定してから運用開始。

複数の経費データソースの統合管理

経費データはレシートだけでなく、交通系ICカードの利用履歴、法人カードの明細、QRコード決済の利用履歴、出張旅費精算システムなど、複数のソースに分散しています。これらを同じCSVフォーマットに揃え、共通の取込テンプレートで会計ソフトに連携すれば、現金払いとキャッシュレス決済をまとめて一元管理できます。データの入口は複数あっても、出口となる「会計取込フォーマット」は1つに統一する、という考え方が運用をシンプルにするポイントです。

レシート整理を自動化するには紙レシートをどのような要件で電子化すべきか?

スマートフォン撮影と専用スキャナという2つの電子化手段の特徴と、電子帳簿保存法に対応するための解像度・タイムスタンプ・改ざん防止などの保存要件を、実務の運用イメージとあわせて整理します。

レシート整理を自動化するには、紙の原本を電子データ化することが前提となります。電子帳簿保存法に対応した運用を確立すれば、紙のレシートを廃棄しても法的に問題のないデータ保存が可能です。保管期間は法人で7年、個人事業主で5年または7年と長期にわたるため、適切な電子化の仕組みを整えることが重要です。

スキャナやスマートフォンを活用した電子化の方法

紙のレシートを電子データ化する方法は大きく分けて二つあります。一つはスマートフォンのカメラで撮影する方法、もう一つは専用のスキャナ機器を使用する方法です。スマートフォンでの撮影は手軽で、外出先や移動中でもその場ですぐにデータ化できるメリットがあります。撮影する際は、レシート全体が画面に収まるように距離を調整し、文字がはっきりと読める明るさを確保することが重要です。

また、レシートを平らに広げて、斜めからではなく正面から撮影することで、OCRの読み取り精度が向上します。一方、オフィスで大量のレシートを処理する場合は、専用のスキャナ機器が効率的です。ドキュメントスキャナの中には、複数枚のレシートを連続してスキャンできる機能を備えたものもあり、月末の処理時など一度に多くのレシートを処理する場面で威力を発揮します。スキャン後は、画像が鮮明に保存されているか、文字がぼやけていないかを必ず確認し、問題があれば撮り直すことが大切です。

電子帳簿保存法に対応した保存要件

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。紙のレシートをスキャンして電子保存する場合、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、スキャンした画像は解像度200dpi以上、カラーでの保存が求められます。白黒やグレースケールではなく、カラーで保存することで、レシートの原本に近い状態を再現できます。

次に、真実性を確保するためにタイムスタンプを付与する必要があります。タイムスタンプとは、そのデータがいつ作成されたかを証明する電子的な時刻証明のことで、最長で領収書等の受領後2ヶ月以内に付与することが求められます。また、データの訂正や削除を行った場合には、その履歴を残しておく必要があります。

さらに、保存したデータは日付や金額、取引先名で検索できる状態にしておくことも要件の一つです。これらの要件を満たすことで、紙のレシートを廃棄しても法的に問題のない電子保存が可能になります。

レシートの電子保存は、真実性・可視性・検索性の3点を押さえた運用が前提です。下表は現場で迷いやすいポイントを最小限に整理したチェックです。撮影の基準、命名ルール、関連書類との紐づけを“文書化して残す”ことで、監査・内部統制での問い合わせ対応がスピードアップします。

表:電子保存の要点をひと目で:真実性・可視性・検索性の“外さない”確認

要件最低限のポイント運用メモ(例)
真実性改ざん防止の仕組みを用意タイムスタンプ/変更履歴が残るストレージを使用
可視性いつでも画面表示・出力できる監査時に原本画像と記録情報を同時表示できること
検索性日付・金額・相手先で検索できるファイル名やメタ情報で「YYYY-MM-DD_店舗_金額」を統一
読取ルール一定の解像度・色調・傾き補正撮影基準(例:300dpi相当、影・反射NG、平置き)を周知
関連書類関連する明細・メモと紐づくカード明細・注文書・メモを同フォルダ/IDで管理
社内ルール(撮影・命名・保管・権限)を文書化し、定期点検の記録を残すと監査対応がスムーズです。

以下の記事では、電子保存の全体像と改正ポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。

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インボイス制度への対応ポイント

2023年10月から開始したインボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要となりました。レシートも適格簡易請求書として扱われるため、一定の要件を満たしている必要があります。具体的には、発行事業者の登録番号、税率ごとに区分された消費税額などが記載されていることが求められます。自動化ツールの中には、レシートに印字されている適格請求書発行事業者の登録番号を自動的に認識して抽出する機能を備えたものもあります。

これにより、インボイス対応のレシートとそうでないレシートを自動的に区分し、適切に管理することができます。また、免税事業者から仕入れを行った場合には、一定期間の経過措置が適用され、段階的に控除割合が縮小されていくため、こうした取引についても区別して記録しておく必要があります。インボイス制度に対応した管理を行うことで、将来の税務調査にも安心して対応できる体制を整えることができます。

以下の記事では、レシートの簡易インボイスとしての扱い方について詳しく解説しているので参考にしてください。

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長期保管におけるデータ管理とバックアップ体制

レシートのデータは法律で定められた期間、確実に保管しておく必要があります。クラウドストレージを利用する場合は、サービス提供会社のデータセンターで自動的にバックアップが取られていることが一般的ですが、万が一のサービス障害に備えて、自社でも別途バックアップを取っておくと安心です。たとえば、クラウド上のデータを定期的に社内のサーバやハードディスクにもコピーしておく多重バックアップの体制を構築することで、データ消失のリスクを最小限に抑えることができます。バックアップの頻度は、業務量に応じて決定しますが、少なくとも月に一度は実施することが望ましいです。

また、保管期間が満了したデータについては、適切な手順で廃棄することも重要です。法定保管期間を過ぎたデータをいつまでも保存し続けると、ストレージ容量を圧迫するだけでなく、情報漏洩のリスクも高まります。年度ごとに保管期間を確認し、期限が到来したデータは確実に削除する運用ルールを定めておくことが推奨されます。

電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック 電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイドブック

デジタルツールでレシートを自動整理しファイル管理を効率化するにはどうすればよいか?

電子化したレシートデータは、ファイル名とフォルダ構造、クラウドストレージの自動整理設定、適切な権限管理を組み合わせることで、日常的な検索や監査対応を大きく効率化できます。ここでは、現場で迷いやすい基本設計だけに絞って整理します。

ファイル名とフォルダ構造の設計方法

ファイル名には「日付+店舗名+金額」を一定ルールで含め、「20251017_コンビニA_1200.pdf」のように記載しておくと、日付順や金額での検索がしやすくなります。フォルダは「年度→月→勘定科目」といった階層に統一し、部署ごとに独自ルールを作らないことが重要です。ルールは1〜2枚のドキュメントにまとめ、サンプルも併記しておくと、異動や引き継ぎの際にも運用を維持しやすくなります。

クラウドストレージでの自動整理設定

クラウドストレージや自動整理ツールを使うと、ファイル名や拡張子に応じて保存先フォルダを自動振り分けできます。たとえば、ファイル名に「領収書」が含まれるものはレシート用フォルダへ、拡張子がPDFの明細は請求書フォルダへ、というようにルールを設定しておけば、ダウンロード後に手動で移動する作業がほとんど不要になります。タグ機能を併用し、「出張費」「プロジェクト名」など複数の切り口で検索できるようにしておくと、後からの確認がよりスムーズです。

オンライン決済明細やEC領収書の一元管理

ECサイトやオンライン決済サービスで発行される領収書・明細も、紙のレシートと同じ保管対象です。メール添付のPDFや、マイページからダウンロードしたファイルを、紙レシートと同じフォルダ構造で保存しておけば、「支払方法にかかわらずこのフォルダを見れば完結する」という状態をつくれます。電子レシートサービスのデータも同じルールに合わせて取り込み、紙とデジタルが混在していても、経理側は一つの仕組みで管理できるようにすることが理想です。

セキュリティ対策とアクセス管理

レシートデータには取引先や従業員の行動が含まれるため、アクセス制御が欠かせません。クラウドストレージでは二段階認証と暗号化を基本とし、経理部門と一般従業員で閲覧範囲を分けます。退職者や異動者の権限を速やかに変更する手順もマニュアル化し、誰がいつどのフォルダを閲覧したかを確認できる監査ログを活用すると、不正利用の抑止にもつながります。

以下の記事では、領収書の保管設計と保存期間の実務について詳しく解説しているので参考にしてください。

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レシート整理の自動化を、どのようなステップで段階的に導入すればよいか?

レシート整理の自動化は、いきなり全社に広げるのではなく、ボトルネックの把握→スモールスタート→段階的展開という流れで進めた方が定着しやすくなります。現状を定量的に掴み、小規模なテストで勝ちパターンを確認してから、全社展開に移すイメージです。

現状業務フローの可視化と課題の洗い出し

まずは、レシートを受け取ってから会計ソフトへの入力が終わるまでの流れを紙に描き出し、「誰が・どの工程に・どれくらい時間を使っているか」をざっくりでよいので数値化します。提出遅延が多いのか、入力に時間がかかっているのか、差し戻しが多いのかといったボトルネックを明らかにし、「自動化するとどこが何時間減りそうか」を見立てておくと、後の効果検証や社内説明がしやすくなります。

スモールスタートでのテスト運用

次に、レシート件数が一定以上あり、ITツールに抵抗感が少ない部署を選んで、1〜3か月ほどのテスト運用を行います。この期間に、撮影方法やOCR精度、会計ソフトとの連携で問題がないかを確認し、利用者からのフィードバックを集めます。従来フローと比べてどれだけ作業時間やエラーが減ったかを数値で把握しておくと、導入効果を説明しやすくなり、他部署への展開にも説得力を持たせられます。

全社展開に向けた準備と展開計画

テスト運用で得た知見をもとに、マニュアルやQ&Aを整備し、展開順とスケジュールを決めます。すべての部署を一度に切り替えるのではなく、月ごとに対象部署を増やしていくなど、段階的に移行した方がトラブル時のリスクを抑えられます。移行期間中は旧来のやり方も一定期間並行し、業務が止まらないようセーフティネットを用意しつつ、定期的に課題と改善点を振り返る場を設けるとスムーズです。

レシート整理の自動化を定着させるために、どのようなルール策定と教育が必要か?

ツールを導入しただけでは、自動化は定着しません。撮影ルールや期限、問い合わせ窓口、KPIの確認方法などをシンプルな形で決め、全社に浸透させていくことが重要です。

運用ルールの明文化と社内周知

運用ルールは「いつまでに撮影・アップロードするか」「どの程度の画質を最低条件とするか」「迷ったときは誰に相談するか」といった、現場が迷いやすいポイントに絞って整理します。レシートの保管期限や破棄タイミングも合わせて明記し、1〜2枚程度のガイドにまとめて社内ポータルに掲載しておくと、異動や新入社員への説明も簡単になります。ルールは細かくし過ぎず、「守るべき最低ライン」としてシンプルに保つことが定着のコツです。

従業員向けの研修と継続的なサポート体制

導入時には、全体説明会や短時間のオンライン研修で「なぜ自動化するのか」「どこが楽になるのか」を伝えたうえで、基本操作をデモします。そのうえで、録画動画や簡易マニュアルを社内に置き、必要なときに自分で確認できるようにしておくと、問い合わせ負荷を抑えながら習熟を促せます。メールやチャットによる問い合わせ窓口を一つ決めておき、困ったときにすぐ相談できる環境を用意すると、現場の不安も和らぎます。

運用状況のモニタリングと改善サイクル

運用開始後は、月次や四半期ごとに処理件数、平均処理時間、差し戻し件数といった指標を確認し、「導入前と比べてどれくらい変化したか」をざっくり把握します。エラーや不満が多い工程があれば、撮影ルールの見直しやシステム設定の調整を行い、その結果をまた次の期に確認する、というサイクルを回します。改善の成果は社内に共有し、「自動化でここまで効率化できた」という成功事例を可視化することで、継続利用へのモチベーションにつなげられます。

よくある失敗パターンと事前対策

よくあるつまずきは、目的やメリットが十分に伝わらず利用が進まないケース、OCRに過度な期待をしてエラーに不満が集中するケース、会計ソフトとの連携仕様を詰め切らずトラブルが多発するケースです。導入前に「何時間・何工程を減らしたいのか」を共有し、OCRはあくまで「人のチェックを前提とした自動入力支援」であることを説明しておくとギャップが小さくなります。会計ソフトとの連携についても、事前の仕様確認とテスト取り込みを必ず行い、問題が出た場合の連絡フローを決めてから本番運用に移ることが大切です。

レシート整理自動化ツールを選ぶとき、どの比較ポイントと評価基準を押さえるべきか?

ツール選定では、機能や価格だけでなく、自社の業務フローとの相性や既存システムとの連携しやすさも含めて総合的に判断する必要があります。事前整理→比較観点の確認→トライアルでの検証→費用対効果の試算、という流れで検討すると抜け漏れが少なくなります。

以下の表では、代表的なレシート整理自動化の選択肢を、手段・向いている企業規模・主なメリット・注意点という観点で整理しました。

表:レシート整理自動化の主な選択肢と向いているケース

手段概要向いている企業規模・ケース主なメリット注意点
スマホ撮影+経費精算クラウド従業員がスマホアプリでレシートを撮影し、そのまま経費精算システムに取り込む方式。外出が多い営業・現場部門を抱える中小〜中堅企業、紙レシートが多いがペーパーレス化を進めたい企業。提出漏れや紛失を抑えつつ入力作業を大幅に削減でき、申請〜承認〜会計連携まで一気通貫で運用しやすい。従業員へのアプリ利用の浸透やルール周知が不可欠であり、電帳法・インボイス対応の有無も事前確認が必要。
専用スキャナ+OCRソフトレシート束をドキュメントスキャナでまとめて読み取り、PC上のOCRソフトでデータ化する方式。レシートを紙で受け取ることが多く、月末にレシートが集中しやすい中堅〜大企業の経理部門。大量のレシートを短時間で処理しやすく、既存の会計ソフトとCSV連携する前提なら柔軟に設計できる。スキャナ機器の導入・維持コストが発生し、現場から経理へレシートを集約する紙中心の運用が前提になる。
カード・交通系IC連携中心の経費精算システム法人カードや交通系ICの利用明細を自動取得し、レシート画像と紐付けて精算する方式。キャッシュレス決済比率が高く、出張や移動が多い企業、法人カードを積極的に活用したい企業。明細データの自動取得で入力負荷をさらに減らせるほか、不正利用や二重計上の検知にもつなげやすい。現金支払いのレシートとの運用ルールを整理しないと、二重登録や申請漏れが発生するリスクがある。
AI-OCR+ワークフロー一体型システムOCR・AI仕訳・承認ワークフロー・会計連携までを一つのクラウド基盤で提供するオールインワン型。レシート以外に請求書や稟議なども含め、バックオフィス全体のDXを中期的に進めたい中堅〜大企業。システム間連携の設計を最小限に抑えつつ、承認プロセスの可視化や統制強化も同時に進めやすい。要件定義や社内調整の負荷が高くなりがちで、導入・定着には一定のプロジェクト体制とリソースが必要。
BPO(入力代行)+クラウドツール外部事業者がレシート画像を目視入力し、クラウド経費精算システムにデータを反映する方式。経理人員が限られ、ピーク時の処理をさばききれない企業や、手書きレシートが多い業態の企業。自社の入力作業をほぼゼロにでき、OCRで読み取りづらいレシートにも対応しやすい。委託先とのSLAやセキュリティ要件、内部統制上の責任分解点を契約・運用で明確にしておく必要がある。
※具体的なサービス名ではなく、「方式」の違いを比較する表としてご活用ください。自社の処理件数や既存システムとの連携条件を整理したうえで、候補となるツールをこの表に当てはめて検討すると整理しやすくなります。

自社の業務要件と必要機能の整理

まず、月間のレシート件数、利用予定人数、既存の会計ソフトやワークフローの状況を整理し、「最低限必要な機能」と「あれば便利な機能」を分けておきます。外出が多い部署が中心ならモバイルアプリの使いやすさを重視する、承認経路が複雑なら柔軟なワークフロー設定が必須、といったように、自社の業務実態から優先順位を決めておくと、候補ツールを絞り込みやすくなります。

主要な比較ポイントと評価基準

比較の際は、OCR精度、会計ソフトとの連携方法(CSVかAPIか)、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応状況、画面のわかりやすさ、サポート体制、料金体系を中心に確認します。特に、既存の会計ソフトとどこまで自動連携できるかは、日々の工数に直結します。また、導入後にどの程度サポートしてもらえるか、問い合わせへのレスポンスがどのくらいのスピードかも、運用の安心感を左右するポイントです。

無料トライアルでの検証項目

無料トライアルでは、実際に自社のレシートや領収書を使って読み取り精度を確認し、会計ソフトへの連携を試してみます。申請から承認までの流れが現行フローと無理なく合うか、従業員が直感的に操作できるかも重要な観点です。複数のメンバーに試してもらい、操作性や画面の見やすさ、サポート窓口の対応について感想を集めておくと、本導入時の不満や「思っていたのと違う」というギャップを軽減できます。

費用対効果の算出方法と投資判断

費用対効果は、「現在レシート整理にかかっている時間×人件費」と「導入後に削減できる時間」から概算します。たとえば、月40時間をレシート入力に使っており、時給換算2,000円なら月8万円のコストです。自動化でこの8割が削減できれば月6.4万円、年間で約77万円の削減効果が見込めます。ここからシステムの初期費用と年間利用料を差し引き、何年で投資を回収できるかを示すことで、経営層にとって判断しやすい材料になります。

なお、OCRやレシートアプリ、経理AIエージェントなど、レシート処理の効率化トレンド全体を俯瞰したい場合は、以下ので最新の動向と事例をコンパクトに整理しています。本記事では、そのうえでレシート整理自動化をどのように設計・定着させるかに焦点を当てます。

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レシート整理の自動化は、経理部門だけでなく企業全体にどのような価値をもたらすか?

レシート整理の自動化は、入力作業の削減だけでなく、リアルタイムな経費把握や働き方改革、他のバックオフィス業務のDX推進にも波及していきます。ここでは、その主な効果をコンパクトに整理します。

経理担当者の業務の質的転換

定型的な入力やチェックが自動化されると、経理担当者は空いた時間を予算策定や部門別の経費分析など、より付加価値の高い業務に振り向けられるようになります。経営層への報告資料作成やシミュレーション業務に時間を使えることで、経理部門が「数字をまとめる部門」から「経営判断を支える部門」へと役割を広げていくきっかけにもなります。

リアルタイムな経費可視化と経営判断への活用

自動化システムを通じてデータが集約されると、部門別・プロジェクト別の経費状況を日次・週次の粒度で確認できるようになります。予算超過の兆候を早期に把握して対策を打ったり、異常な支出にアラートを設定して不正利用や入力ミスを素早く検知したりと、経営判断に使える情報の鮮度と精度が高まります。

組織全体の生産性向上への波及効果

営業や現場の従業員は、レシートを撮影するだけで申請が完了し、承認者もスマートフォンから承認できるようになるため、移動時間や待ち時間が減ります。ペーパーレス化が進むことで、テレワークやフレックス勤務との相性も良くなり、働きやすさの向上にもつながります。経理で自動化の成功体験を積むことで、他のバックオフィス業務にも同様のアプローチを広げやすくなり、結果として組織全体のDXを前進させる効果が期待できます。

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レシート整理の自動化で、事前によく聞かれる疑問にはどう答えればよいか?

費用感や導入期間、小規模企業でのメリット、インボイス制度やセキュリティ対応など、導入検討時に経営層や現場から上がりやすい質問に対して、判断の目安と注意点を整理して回答します。

Q1: レシート整理の自動化にどれくらい費用がかかりますか?

レシート整理の自動化にかかる費用は、導入するシステムの種類や企業の規模によって大きく異なります。クラウド型の経費精算システムを利用する場合、初期費用が無料から数十万円、月額利用料が数万円から数十万円の範囲が一般的です。従業員数が少ない小規模企業向けには、月額1万円前後から利用できるサービスも提供されています。料金体系は、ユーザー数に応じた従量課金制や、処理件数による課金制など、サービスによって様々です。初期費用を抑えたい場合は、クラウド型のサービスを選ぶことで、サーバー構築や専用機器の購入が不要になります。

多くのサービスが無料トライアル期間を設けているため、実際に使用感を確かめてから本格導入を判断することができます。費用対効果を考える際には、削減できる作業時間や人件費、紙の保管コストなども含めて総合的に評価することが重要です。

Q2: 導入までにどのくらいの期間が必要ですか?

自動化システムの導入にかかる期間は、導入の規模や準備状況によって異なりますが、スモールスタートの場合は準備から試験運用開始まで1〜2ヶ月程度が目安となります。この期間には、業務要件の整理、ツールの選定、初期設定、テストデータでの動作確認、従業員向けの研修準備などが含まれます。特定の部署での試験運用を経て、全社展開まで含めると、トータルで3〜6ヶ月程度を見込むとよいでしょう。

既存の会計ソフトとの連携設定に時間がかかる場合や、複雑な承認フローをシステムに組み込む必要がある場合は、さらに期間が延びることもあります。スムーズな導入のためには、事前の準備を丁寧に行い、関係部署との調整を早めに進めることが重要です。導入スケジュールは余裕を持って設定し、予期せぬトラブルにも対応できるようにしておくことをおすすめします。

Q3: 既存の会計ソフトと連携できますか?

多くの自動化ツールは、主要な会計ソフトとの連携機能を備えています。弥生会計、freee、マネーフォワード、勘定奉行といった国内で広く使用されている会計ソフトには、ほとんどの経費精算システムが対応しています。連携方法は、CSV形式でのデータ出力とインポート、あるいはAPI連携による自動同期など、サービスによって異なります。CSV連携の場合は、経費精算システムからデータを出力し、会計ソフト側で取り込む手順が必要ですが、API連携に対応している場合は、承認完了と同時に自動的に会計ソフトへデータが反映されます。

導入を検討する際には、必ず現在使用している会計ソフトとの連携可否を確認し、可能であれば無料トライアル期間中に実際のデータ連携をテストすることをおすすめします。万が一、直接連携ができない場合でも、CSV形式での出力に対応していれば、多くの会計ソフトで取り込みが可能です。

Q4: 紙のレシートはすぐに廃棄できますか?

電子帳簿保存法の要件を満たす方法でレシートを電子化していれば、法律上は紙のレシートを廃棄することが認められています。具体的には、解像度200dpi以上でカラーでスキャンし、タイムスタンプを付与し、検索機能を確保するといった要件を満たす必要があります。ただし、導入初期の段階では、システムの運用が安定するまで紙のレシートも並行して保管しておくことが推奨されます。

一般的には、導入後3〜6ヶ月程度は紙も保管し、システムが問題なく稼働していることを確認してから、完全なペーパーレスに移行するケースが多いです。また、税務調査などの際に税務署から原本の提示を求められる可能性もゼロではないため、重要な取引や高額な支出については、念のため紙も保管しておく企業もあります。廃棄のタイミングや方法については、顧問税理士に相談しながら決定すると安心です。

Q5: OCRの読み取り精度はどの程度ですか?

現在の自動化ツールで使用されているOCR技術は、レシートの状態が良好であれば90〜95%程度の精度で読み取りが可能です。ただし、これはあくまで目安であり、レシートの印字が薄い、折れ目や汚れがある、照明が不十分な環境で撮影されたといった場合には、精度が低下します。特に、感熱紙のレシートで時間が経過して変色しているものや、水濡れで文字がにじんでいるものは、読み取りが困難になることがあります。

また、手書きの領収書については、印刷されたレシートと比較して認識精度が低くなる傾向があります。このため、OCRによる自動入力を100%信頼するのではなく、人の目による最終確認の工程を組み込むことが現実的な運用方法です。多くの経費精算サービスでは、OCRで読み取った内容を専門のオペレーターが確認する二重チェック体制を採用しており、高い精度を実現しています。

Q6: 小規模企業でも導入するメリットはありますか?

従業員数が少ない小規模企業であっても、レシート整理の自動化を導入するメリットは十分にあります。むしろ、人手が限られている小規模企業だからこそ、定型業務の自動化によって得られる効果は大きいと言えます。経理担当者がレシート入力に費やしていた時間を、本業である営業活動や顧客対応に充てることができれば、売上や顧客満足度の向上につながります。

また、小規模企業の経営者自身が経理業務を兼務しているケースも多く、その負担を軽減できることは大きなメリットです。近年は、小規模企業向けの低価格プランを提供するサービスも増えており、月額数千円から利用できるものもあります。初期費用が無料のクラウド型サービスを選べば、導入のハードルも低くなります。経理業務に割く時間を減らし、その分を事業成長に向けた活動に振り向けることで、小規模企業であっても競争力を高めることができます。

Q7: インボイス制度への対応は必要ですか?

2023年10月から開始したインボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるためには適格請求書の保存が必要となりました。レシートも適格簡易請求書として扱われるため、適格請求書発行事業者の登録番号が記載されているかどうかを確認し、適切に管理する必要があります。自動化ツールの中には、レシートに印字されている登録番号を自動的に認識して抽出する機能を備えたものもあり、インボイス対応のレシートとそうでないレシートを自動的に区分できます。

今後、税務調査の際にはインボイス制度に準拠した記録保存が求められる可能性が高いため、対応機能を備えたシステムを選ぶことをおすすめします。免税事業者から仕入れを行っている場合は、経過措置として一定期間は段階的に控除が認められていますが、こうした取引についても区別して記録しておく必要があります。インボイス制度への対応を怠ると、将来的に仕入税額控除が認められないリスクがあります。

Q8: セキュリティ面は大丈夫ですか?

クラウド型の自動化ツールは、データセンターでの厳重な管理体制のもと、高度なセキュリティ対策が施されています。データは暗号化された状態で保存され、通信経路も暗号化されているため、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクは最小限に抑えられています。多くのサービスでは、二段階認証を設定することで、パスワードが漏洩した場合でも不正ログインを防ぐことができます。

また、アクセス権限を細かく設定できる機能により、従業員ごとに閲覧や編集できる範囲を制限することが可能です。システムへのアクセス履歴は監査ログとして記録されるため、万が一不正な操作があった場合でも追跡できます。導入を検討する際には、サービス提供会社のセキュリティポリシーやプライバシーマークの取得状況、ISO27001などの認証取得状況を確認することをおすすめします。また、社内でもセキュリティ研修を実施し、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持つことも重要です。

レシート整理自動化を成功させるために、最後に押さえておきたいポイントは?

「電帳法・インボイスの要件を押さえる」「スモールスタートで検証する」「自社要件に合うツールを選び、運用ルールと教育・サポート体制をセットで設計する」という3つの視点から、導入成功のチェックポイントを再確認します。

レシート整理の自動化は、OCRやAI技術の進展により、多くの企業で実現可能な環境が整っています。手作業での入力や仕分けにかかる時間を大幅に削減できるだけでなく、入力精度の向上や電子帳簿保存法への対応も同時に実現できます。導入を成功させるポイントは、段階的なアプローチです。まずは特定部署でのスモールスタートから始め、運用上の課題を洗い出しながら改善を重ねることで、無理なく全社展開へとつなげることができます。また、運用ルールの明文化と従業員教育を丁寧に行うことで、システムの定着率を高めることができます。

自動化ツールの選定にあたっては、自社の業務要件を整理したうえで、OCR精度、会計ソフトとの連携性、サポート体制などを総合的に評価しましょう。無料トライアルを活用し、実際の使用感を確認することをおすすめします。レシート整理の自動化により、経理担当者はより戦略的な業務に時間を割くことができるようになり、組織全体の生産性向上にも貢献します

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