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新リース会計基準への対応は、自社のリース契約を漏れなく洗い出すところから始まります。洗い出しは、次の3ステップで進めるのが定石です。①リースが紛れ込みやすい費用科目を選ぶ、②支払データと契約書から取引を抜き出す、③リースに該当するかを判定する、の順です。洗い出した契約は、借りて使う資産を表す使用権資産と、将来支払うリース料を表すリース負債として金額を計算し、貸借対照表に計上します。この記事では、リース契約の洗い出し方法を実務の手順どおりに整理し、リース期間の決め方から使用権資産の計算までを数値例つきで解説します。移行時に使える経過措置や、自社の決算月ではいつから適用が始まるかの早見表も用意しました。
新リース会計基準でリースの洗い出しが必要になる理由
リースの洗い出しが必要になる理由は、これまで費用として払うだけで済んでいた契約も、資産と負債として帳簿に載せる(オンバランスする)必要が出てくるからです。借手のリースは、新基準では原則すべて貸借対照表に計上されます。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は2024年9月に公表され、2027年4月1日以後開始する事業年度から強制適用されます。帳簿に載せるには、その前提として「自社のどの契約がリースに当たるのか」を全社の契約から特定しなければなりません。この特定作業が、移行実務の出発点になります。
現場の不安は大きいままです。TOKIUMが新リース会計基準の適用対象企業の経理・財務担当者1,048名に実施した実態調査では、80.4%が適用後の業務に不安を感じると回答しました。なかでも69.6%が該当契約書の正確な識別を不安要素に挙げており、洗い出しと識別が担当者の最大の悩みどころになっています。 出典:TOKIUM「新リース会計基準に関する実態調査」(2024年11月21日公表)(最終確認日:2026年8月4日)
オペレーティングリースも資産計上の対象になる
現行基準との最大の違いは、オペレーティングリース(これまで賃貸借として費用処理してきた借り方)の扱いです。従来は費用計上だけで済んでいた契約も、新基準では原則として使用権資産とリース負債を計上します。現行基準と新基準の違いを整理すると次のとおりです。
▼ 現行基準と新リース会計基準の主な違い
| 項目 | 現行のリース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | リース資産・リース債務を計上 | 使用権資産・リース負債を計上 |
| オペレーティング・リース | 賃貸借処理で費用計上のみ | 原則、使用権資産・リース負債を計上 |
| リースの判定 | 契約形態を起点に判定 | 契約の実態で判定し、賃貸借契約やサービス契約も対象になり得る |
| 短期・少額のリース | 簡便的な取扱いあり(ファイナンス・リース向け) | 簡便的な取扱いあり(要件は後述) |
使用権資産が従来のリース資産と何が違うのか、基準全体でどこが変わったのかは、別の記事で図解とともに整理しています。
●使用権資産とリース資産の違いに関する記事はこちら
●新リース会計基準への対応に関する記事はこちら
適用開始は決算月によって変わる
強制適用の「2027年4月1日以後開始する事業年度」がいつを指すかは、自社の決算月によって変わります。3月決算では2028年3月期、12月決算では2028年12月期が最初の適用事業年度です。決算月別に整理すると次のようになります。
▼ 決算月別の強制適用開始時期の早見表
| 決算月 | 強制適用が始まる事業年度 | その事業年度の開始日 |
|---|---|---|
| 3月決算 | 2028年3月期 | 2027年4月1日 |
| 6月決算 | 2028年6月期 | 2027年7月1日 |
| 9月決算 | 2028年9月期 | 2027年10月1日 |
| 12月決算 | 2028年12月期 | 2028年1月1日 |
3月決算の企業が最も早く、12月決算の企業には比較的余裕があります。ただし適用初年度には期首時点の使用権資産・リース負債を確定させておく必要があります。洗い出しから台帳整備、計算、システムや業務フローの準備までを逆算すると、どの決算月でも準備に使える時間は思うほど多くありません。なお、早期適用は2025年4月1日以後開始する事業年度から選択できます。
リース契約を洗い出す方法は3つのステップで進める
リース契約の洗い出しは、費用科目の選定、取引の抽出、リース該当性の判定という3つのステップで進めます。いきなり全社の契約書を1枚ずつ読むのではありません。会計データから候補を絞り込み、そのうえで契約の中身を確かめる順序にすると、漏れと手戻りを同時に減らせます。
▼ リース契約を洗い出す3つのステップ
| ステップ | やること | 主に使うもの |
|---|---|---|
| ステップ1 費用科目の選定 | リースが紛れ込みやすい勘定科目を決める | 勘定科目一覧 |
| ステップ2 取引の抽出 | 対象科目の支払データから取引を抜き出し、契約書を集める | 総勘定元帳・支払データ・固定資産台帳・既存のリース台帳・契約管理システム |
| ステップ3 該当性の判定 | 契約の実態がリースの定義を満たすか確かめる | 契約書・現場へのヒアリング |
各ステップの実務を順に見ていきます。

対象になる費用科目を選定する
最初のステップは、リース契約が紛れ込みやすい費用科目をリストアップすることです。「リース料」だけを見ても洗い出しは終わりません。賃借料や保守料、ソフトウェア利用料といった科目にこそ、リースに該当する契約が隠れています。次の科目を出発点にすると網羅しやすくなります。
▼ リースの洗い出しで対象にしたい費用科目のチェックリスト
| 勘定科目 | 紛れ込みやすい契約の例 |
|---|---|
| 賃借料・地代家賃 | オフィス・店舗・倉庫・社宅の賃貸借、駐車場 |
| リース料 | コピー機・PC・サーバー・車両・フォークリフト |
| 保守料・支払手数料 | 機器のメンテナンス契約に含まれる専用機器の利用 |
| ソフトウェア利用料・通信費 | サーバーやルーターなどハードウェアとセットの利用契約、専用回線 |
| 業務委託費・外注費 | 自社専用の製造ライン・金型・物流設備を使う委託契約 |
| 諸会費・保管料 | 倉庫の専用スペースや棚の割り当て |
支払データと契約書から取引を抽出する
科目を決めたら、総勘定元帳や支払データから該当科目の取引を抽出します。有効なのが、毎月や毎年など定期的に一定額を支払っている取引を抜き出す方法です。リースは継続利用の対価として定額を払う性質があるため、単発の支払いを除くだけで候補が絞り込めます。
ただし、この定額での絞り込みはあくまで一次スクリーニングです。保守料や業務委託費に紛れる契約のなかには、支払額が変動するもの、従量課金のものもあります。こうした契約は定額フィルタからこぼれるため、次の章で扱う契約類型からも別途拾い上げます。抽出した取引には、対応する契約書を突き合わせます。押印済みの紙の契約書だけでなく、電子契約やメールでの合意文書も対象です。契約書が部署や拠点ごとに分散して保管されている企業では、この収集がいちばんの難所になります。全部を同じ深さで精査する必要はありません。金額の大きい契約から優先すれば、限られた時間でも重要な契約を取りこぼさずに済みます。
リースに該当するかを判定する
最後のステップが、抽出した契約がリースに該当するかの判定です。企業会計基準第34号では、リースとは特定された資産を使用する権利を、一定期間にわたり対価と交換に移転する契約と定義されています。実務では、次の2点を確かめます。①シリアル番号のある機械や特定のフロアなど、使う資産が具体的に特定されているか。②その資産から生じる経済的利益をほぼ自社が得て、使い方も自社が決められるか。この2つを満たせば、契約書の名称にかかわらずリースとして扱います。

判定で大切なのは、契約書のタイトルにとらわれないことです。「賃貸借契約」や「業務委託契約」という名称でも、特定の資産を自社が支配して使っていれば、会計上はリースとして扱います。膨大な契約書の判定にAIを活用する方法は、別の記事で詳しく解説しています。
●リース識別へのAI活用に関する記事はこちら
リースの洗い出しで漏れやすい契約と対処法
洗い出しの精度を左右するのは、リースと名の付かない契約への目配りです。契約名に「リース」と書かれていないのに実質はリースとして扱うべき契約を、隠れリースと呼びます。見落とすと、適用後に資産・負債の計上漏れとして修正を迫られます。
契約の名称ではなく実態で判定する
漏れやすい契約には型があります。次の類型に当てはまる契約は、名称を問わず中身を確かめてください。
▼ リースの洗い出しで漏れやすい契約の類型
| 契約の類型 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 不動産の賃貸借 | オフィス・店舗・倉庫の契約。賃貸借処理してきた契約も新基準では判定対象 |
| IT関連の利用契約 | サーバー・専用回線・複合機など、ハードウェアの利用がセットになった契約 |
| 業務委託・外注契約 | 自社専用の製造ライン・金型・専属稼働の設備が含まれる契約 |
| 物流・保管契約 | 倉庫の特定スペースや棚が自社専用に割り当てられている契約 |
| 広告・看板契約 | 特定の場所の看板・広告枠を継続使用する契約 |
個々の類型をどう見極めるか、具体例と判定の考え方は次の記事で掘り下げています。
●隠れリースの見極め方に関する記事はこちら
部門横断で契約を集める体制をつくる
隠れリースの多くは、経理部門の外にあります。たとえば総務が結んだ賃貸借、情報システム部門のIT契約、工場の設備の委託契約などです。経理だけで完結させず、各部門から契約情報を集める体制づくりが、洗い出しの成否を分けます。
体制づくりを妨げるのは、契約書の保管状態です。TOKIUMの実態調査では、契約書の管理が難しい要因として47.4%が紙と電子の混在で必要書類が見つけにくいことを挙げました。39.4%は管理ルールや手順の未整備を理由にしています。多拠点・多部門の企業ほど、収集そのものが最初の壁になりがちです。 出典:TOKIUM「新リース会計基準に関する実態調査」(2024年11月21日公表)(最終確認日:2026年8月4日)
現場に依頼するときは、会計用語を使わない工夫が有効です。「リースの識別をお願いします」ではなく、「自社専用で継続的に使っている設備や機材の契約を教えてください」と聞き方を変えるだけで、回答の精度が上がります。あわせて、各部門に配るヒアリング様式には、対象資産・自社専用で使っているか・契約期間・年間の支払額・更新や解約の条項といった項目を入れておきます。回収の期限と、最終的に誰がリース該当を判定するのかも先に決めておくと、部門が動きやすくなります。
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洗い出した契約の台帳化と判定記録の残し方
洗い出した契約は、一覧できる台帳にまとめて初めて次の計算工程につながります。台帳づくりを後回しにすると、判定の根拠が散らばり、監査対応で同じ契約書を何度も探すことになります。台帳には計算に使う項目と判定の根拠をセットで記録しておくのが鉄則です。
▼ リース台帳に必ず入れたい項目
| 台帳の項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 契約の基本情報 | 契約名称・契約相手・対象資産・保管場所 |
| 期間の情報 | 契約開始日・終了日・更新オプション・解約不能期間 |
| 金額の情報 | 月額または年額のリース料・支払サイクル・違約金 |
| 判定の結果と根拠 | リース該当の有無・判定理由・参照した契約条文 |
| 例外規定の該当 | 短期リース・少額リースの簡便的な取扱いの該当有無 |
上場企業や監査対象の会社では、判定に迷った契約の扱いが論点になります。グレーな契約は、判定の根拠と検討過程を文書に残し、監査法人と早めに協議しておくと安全です。判定根拠の記録があれば、担当者が代わっても説明がぶれません。口頭のやり取りだけで済ませると、適用初年度の監査で判定のやり直しを求められることもあります。
TOKIUM契約管理では、AIが契約書から取引先名や契約期間などを読み取って管理台帳を自動で作成します。リースを含む可能性のある契約は、判定根拠の条文をハイライトしたうえで自動判定できます。台帳をExcelで手作りする負担が大きい場合の選択肢として、検討する価値があります。
使用権資産の計算はリース期間の決定から始まる
使用権資産やリース負債の金額は、リース期間を何年とみるかで大きく変わります。だからこそ、計算に入る前にリース期間を確定させることが最初の作業になります。リース期間は、途中で解約できない解約不能期間に、更新して使い続けることが合理的に確実だと見込まれる期間を加えて決めます。
実務で判断に迷いやすいのが、オフィスの賃貸借です。たとえば2年ごとに更新する普通借家契約でも、そのまま長く使い続ける見込みが高ければ、更新後の期間も含めてリース期間とみます。契約書の年数だけを機械的に当てはめると、リース負債の金額が実態とずれてしまいます。更新の可能性、解約したときの違約金、移転にかかるコストなどを踏まえて、何年使う契約とみるかを契約ごとに判断します。この判断の根拠も、台帳に残しておきます。
使用権資産とリース負債の計算手順
リース期間が決まったら、金額の計算に進みます。使用権資産の計算は、先にリース負債を求め、それに前払リース料や付随費用を加減算して算定するという順序です。使用権資産から先に計算することはできません。全体の流れは次のとおりです。

リース負債を算定する
将来5年分のリース料でも、今まとめて評価すると額は小さくなります。将来支払うお金を今の価値に直すことを現在価値といい、その割り引きに使う率が割引率です。リース負債は、未払いのリース料総額をこの方法で割り引いた金額になります。将来にわたって支払う1年ごとのリース料を、それぞれ今の価値に引き直して合計する、というイメージです。
リース料には、固定のリース料のほか、行使が合理的に確実な購入オプションの行使価額や、残価保証による支払見込額などを含めます。反対に、資産の使用と関係なく変動する費用や、保守などのサービス部分の対価は、リースの構成部分と分けて扱うのが原則です。ただし、リース部分とサービス部分の区分が難しい場合は、両者を分けずに結合して1つのリースとして処理する簡便的な方法も認められています。
割引率を決める
割引率には、貸手の計算利子率(貸す側が設定している利率)を知り得る場合はその利率を、知り得ない場合は借手の追加借入利子率を使います。実務では貸手の計算利子率がわからないことが多く、多くの企業は追加借入利子率を使うことになります。
追加借入利子率は、同じような期間や担保の条件で、その使用権資産と同程度の価値の資産を得るための資金を借りたと仮定したときの利率です。自社の借入実績や金融機関への照会をもとに見積もります。契約ごとに厳密な利率を積み上げるのは現実的でないため、リース期間の長さでいくつかの区分を設けて適用する運用が一般的です。どの利率をどう決めたかは、台帳の判定根拠と同じように文書で残しておくと監査対応がスムーズになります。
使用権資産の当初計上額を求める
リース負債が決まれば、使用権資産はその金額を土台に算定できます。計算式は使用権資産=リース負債+リース開始日までに支払ったリース料+付随費用+資産除去債務に対応する除去費用-受け取ったリースインセンティブです。聞き慣れない「資産除去債務に対応する除去費用」とは、退去時の原状回復費用の見積りのことです。リースインセンティブは、貸手から受け取ったフリーレントや一時金を指し、この分は差し引きます。前払いや付随費用、インセンティブがなければ、使用権資産とリース負債は同額になります。構成要素は次のとおりです。
▼ 使用権資産の当初計上額の構成要素
| 構成要素 | 内容の例 | 加算・減算 |
|---|---|---|
| リース負債の計上額 | 未払リース料総額の割引現在価値 | 土台 |
| 開始日までに支払ったリース料 | 前払賃料など | 加算 |
| 付随費用 | 仲介手数料・契約締結に直接かかった費用 | 加算 |
| 資産除去債務に対応する除去費用 | 退去時の原状回復費用の見積り | 加算 |
| 受け取ったリースインセンティブ | 貸手から受け取ったフリーレント・一時金 | 減算 |
数値例で計算の流れを確認する
オフィスの賃貸借契約を新たに結んだ場合を例に、計算の流れを確かめます。年間リース料100万円を毎年末に支払う5年契約で、割引率を3%、契約時の仲介手数料が50万円、リースインセンティブはなしとします。
▼ 使用権資産の計算例。オフィス賃貸借を新規に結んだ5年・年100万円・割引率3%の場合
| 計算の手順 | 計算内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| リース負債 | 毎年100万円×5年分を割引率3%で現在価値に割引 | 約458万円 |
| 使用権資産 | リース負債 約458万円+仲介手数料50万円 | 約508万円 |
| 開始日の仕訳 | 借方 使用権資産508万円/貸方 リース負債458万円・現金預金50万円 | ― |
単純に合計すれば100万円×5年で500万円ですが、将来の支払いを現在価値に割り引くため、リース負債はそれより小さい約458万円になります。これに仲介手数料50万円を加えて、使用権資産は約508万円です。
計上した後の使用権資産は、原則として定額法で減価償却します。この例なら約508万円を5年で割った約102万円が毎年の減価償却費の目安です。あわせてリース負債には利息が発生します。新基準では、初年度は減価償却費と利息を合わせた費用が、旧基準の年間リース料100万円を上回る点に注意が必要です。費用が契約の前半に厚くなる動きになります。減価償却や利息法による仕訳の詳細、消費税の扱いは、それぞれ別の記事で解説しています。
●リース資産の減価償却に関する記事はこちら
●リースの消費税に関する記事はこちら
既存のリースを移行するときの経過措置
ここまでの数値例は、新しくリース契約を結んだ場合の計算です。一方、移行実務で多いのは、すでにあるオフィスの賃貸借などを、適用初年度の期首に一括で帳簿に載せ替える場面です。この移行時には、過去にさかのぼって計算し直す原則的な方法のほかに、負担を軽くする簡便的な経過措置が認められています。
代表的なのは、適用初年度の期首時点で残っているリース料を割り引いてリース負債を計上し、使用権資産をリース負債と同じ金額に置く方法です。この方法では、過去に支払った仲介手数料などを上乗せしないため、先ほどの数値例のように使用権資産が508万円になるとは限りません。どの経過措置を選ぶかによって、洗い出しでさかのぼって集めるべき情報の細かさも変わります。選択できる経過措置の全体像は、別の記事で整理しています。
●新リース会計基準の経過措置に関する記事はこちら
短期リースと少額リースは簡便的な取扱いを選べる
すべてのリースに使用権資産の計算が必要なわけではありません。短期リースと少額リースには、資産計上せずに費用処理を続けられる簡便的な取扱いが用意されています。該当すれば計算対象から外せるため、洗い出しの段階で台帳に区分を記録しておくと、後工程が軽くなります。
短期リースの要件
短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースです。この要件を満たせば、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を期間にわたって費用処理できます。
少額リースの判定
少額リースは、リースの金額に重要性が乏しい場合に、費用処理を認めるものです。適用指針では、次のいずれかを自社の会計方針として選んで適用します。
▼ 少額リースの判定の考え方
| 判定の考え方 | 内容 |
|---|---|
| 重要性が乏しい減価償却資産の基準による | 重要性が乏しい減価償却資産を購入時に費用処理する方法を採用している場合に、その基準額以下のリースを対象とする |
| 原資産の価額が少額である | 原資産が新品だったときの価額が少額であるリースを対象とする |
| 1件当たりの金額に重要性が乏しい | 企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースを対象とする |
実務では、金額の目安としてリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下、あるいは原資産が新品時におおむね5,000米ドル(1米ドル150円換算で約75万円)以下といった水準が挙げられます。ただし、これらの金額は適用指針が明確な基準額として定めたものではなく、重要性が乏しいかを判断するための目安として広く用いられているものです。どの考え方を採るかは会計方針として一つ選び、監査法人と目線を合わせたうえで運用します。なお、現行基準にも300万円以下という少額リースの基準がありますが、これはファイナンス・リースを対象としたもので、新基準の少額リースとは別の取扱いです。混同しないよう注意してください。
新リース会計基準の移行スケジュールを決算月から逆算する
適用開始日から逆算すると、やるべきことの順番と締切が見えてきます。適用初年度には期首時点の使用権資産とリース負債を確定させておく必要があるためです。標準的な進め方を目安として整理します。
▼ 新リース会計基準への移行スケジュールの目安
| フェーズ | やること | 完了の目安 |
|---|---|---|
| 1 契約の洗い出し・判定 | 費用科目の選定から該当性判定まで。部門横断で契約を収集 | 適用開始の12〜18か月前 |
| 2 台帳化・会計方針の決定 | リース台帳の整備、簡便的な取扱い・経過措置の選択、監査法人との協議 | 適用開始の12か月前 |
| 3 計算・システムと業務フローの整備 | リース期間の確定、割引率の決定、使用権資産・リース負債の試算、管理システムや業務フローの構築とテスト | 適用開始の6か月前 |
| 4 期首残高の確定・適用開始 | 適用事業年度の期首時点の残高を確定し、運用開始 | 適用事業年度の期首 |
どの経過措置を選ぶかは、実はフェーズ1の洗い出しにも影響します。過去にさかのぼって計算する方法を採るなら、その分だけ古い契約情報まで集める必要があるからです。会計方針の方向性は、早い段階で監査法人と相談しておくと手戻りが減ります。
たとえば6月決算の会社なら、強制適用は2028年6月期で、その期首は2027年7月1日です。逆算すると、契約の洗い出しは2026年中に着手しておきたい計算になります。契約件数が多い会社や多拠点の会社は、収集と判定に想定以上の時間がかかります。前倒しできるなら、それに越したことはありません。
【関連する無料マンガ】
▶マンガでわかる!新リース会計基準とは
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
リースの洗い出しと計算のポイントまとめ
新リース会計基準への移行は、リース契約の洗い出しから始まります。費用科目の選定、取引の抽出、該当性の判定という3ステップで契約を特定し、台帳に判定根拠まで残します。金額は、リース期間を決めてからリース負債を割引現在価値で求め、それを土台に使用権資産を計算します。既存のリースを移行するときは経過措置を選べること、短期リースや少額リースには簡便的な取扱いがあることも押さえておきましょう。自社の決算月から逆算し、早めに動き出すことが移行を乗り切る鍵になります。
リース契約の洗い出しと管理ならTOKIUM契約管理
リース契約の洗い出しから台帳化、そして継続的な契約管理までを手作業でやり切るのは、契約件数が多い会社ほど現実的ではありません。契約書が部署や拠点に散らばったままでは、洗い出しをやり直すたびに同じ苦労を繰り返すことになります。
TOKIUM契約管理は、新リース会計基準に対応したクラウド契約管理システムです。紙の契約書はスキャンを追加費用なしで代行し、スキャン後の原本の保管もあわせて代行します。全社の契約書を1つのデータベースに集約できます。AIが取引先名や契約期間、解約不能期間や違約金といった契約内容を自動で読み取り、管理台帳を作成します。さらに、契約にリースを含む可能性を判定根拠の条文ハイライトつきで自動判定できます。判定結果はCSVで出力でき、固定資産管理システムへの取り込みにもつながります。契約更新が必要な契約は毎月メールで通知されるため、洗い出しの後の管理も漏れません。
TOKIUMのサービスは累計3,000社に導入され、上場企業でも300社以上に利用されています。冒頭の実態調査では、経理・財務担当者の90.6%が新リース会計基準への対応には契約書の管理が重要だと回答しました。一方で、約6社に1社にあたる16.7%は契約書を適切に管理できていないのが実情です。洗い出しを一度きりの作業で終わらせず、契約管理の仕組みごと整えることが、新基準対応の近道になります。 出典:TOKIUM契約管理 製品ページ/TOKIUM「新リース会計基準に関する実態調査」(2024年11月21日公表)(最終確認日:2026年8月4日)
TOKIUM契約管理の詳しい機能や新リース会計基準対応の進め方は、無料の製品資料でご確認いただけます。ぜひダウンロードしてご覧ください。
リースの洗い出しと使用権資産の計算でよくある質問
リースの洗い出しと使用権資産の計算について、実務でよく聞かれる質問に答えます。
リースの洗い出しは何から始めればよいですか?
賃借料やリース料など、リースが紛れ込みやすい費用科目の選定から始めます。対象科目を決めて総勘定元帳から取引を抽出し、契約書と突き合わせてリース該当性を判定する、という3ステップが定石です。契約書を1枚ずつ読むより先に、会計データで候補を絞ると効率的です。
賃貸借契約やクラウドサービスの契約もリースに該当しますか?
実態次第で該当します。契約書の名称ではなく、特定された資産があるか、その使用を自社が支配しているかで判定するためです。オフィスの賃貸借や、サーバーなどハードウェアの利用がセットになった契約は、判定対象として確認が必要です。
使用権資産の計算式を教えてください
使用権資産は、リース負債にリース開始日までに支払ったリース料と付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加え、受け取ったリースインセンティブを差し引いて計算します。リース負債は、未払いのリース料総額を割引率で現在価値に割り引いた金額です。前払いや付随費用、インセンティブがなければ、使用権資産とリース負債は同額になります。
割引率には何を使いますか?
貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率、知り得ない場合は借手の追加借入利子率を使います。実務では追加借入利子率を使うことが多く、自社の借入実績などをもとに見積もります。
短期リースや少額リースにも計算は必要ですか?
簡便的な取扱いを選べば、使用権資産・リース負債の計上は不要で、費用処理を続けられます。リース期間が12か月以内で購入オプションを含まない短期リースと、金額の重要性が乏しい少額リースが対象です。該当するかは洗い出しの段階で台帳に記録しておくと、計算工程を減らせます。


