インボイス制度

インボイス制度のメリット・デメリットとは?免税事業者と課税事業者の立場別に解説

更新日:2026.08.10

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インボイス制度_メリットデメリット

インボイス制度のメリットとデメリットは、読む人の立場によって中身がまったく変わります。売り手として免税事業者のままでいるのか、課税事業者になって登録するのか。それとも請求書を受け取る買い手なのか。同じ制度でも、この立場の違いで損得は正反対になります。

制度が始まって3年近くが経ち、当初は先送りされていた判断も、いまは実績をもとに下せるようになりました。免税事業者からの仕入れでも一部を控除できる経過措置というルールも、令和8年度税制改正で期間と割合が見直されました。登録を一方的に迫られたときに関係する下請法の名前が変わったのも、2026年1月のことです。

この記事では、立場ごとの損得を整理したうえで、登録すべきかどうかを判断する材料と、デメリットを和らげる経過措置・特例までをまとめます。

→ダウンロード:請求書電子化で「ミスなく」月次決算を実現できる理由とは?3つのメリットをご紹介

インボイス制度のメリット・デメリットは立場によって正反対になる

インボイス制度で得をするか損をするかを分けるのは、事業者の立場です。売上1,000万円以下で消費税を納めてこなかった免税事業者は、登録すれば納税義務が生まれます。かといって登録しなければ、取引先との関係に影響が出ます。どちらを選んでも負担が残る構図です。一方、もともと消費税を納めている課税事業者や請求書を受け取る買い手には、別の変化が起きました。消費税額を正確に把握できる利点と、取引先の登録状況を管理する手間が同時に生まれたのです。

そもそもインボイス制度は、消費税を正しく計算するための仕組みです。軸になるのは仕入税額控除、つまり仕入れのときに支払った消費税を、自分が納める消費税から差し引ける仕組みです。買い手がこの控除を受けるには、売り手が発行した適格請求書を保存しておく必要があります。適格請求書を発行できるのは税務署に登録した適格請求書発行事業者だけで、登録できるのは課税事業者に限られます。免税事業者は、登録すると同時に消費税を納める立場になるということです。

インボイス制度の仕組みに関する記事はこちら

この前提を踏まえて、まず自分がどの立場にあたるかを確かめ、下の表で損得の方向を押さえてください。

▼ 免税事業者のまま/課税事業者になる場合のメリット・デメリット

比較する項目免税事業者のまま登録しない課税事業者になって登録する
消費税の納税義務発生しない発生する。申告と納付が必要になる
適格請求書の発行できないできる
取引先の仕入税額控除原則として受けられない。経過措置の期間中は一部のみ全額受けられる
取引継続への影響値引きや取引条件の見直しを打診されることがある制度を理由とした見直しは生じにくい
事務負担従来どおり消費税の区分経理と申告事務が増える
使える負担軽減策なし2割特例、3割特例、少額特例(いずれも要件と期間あり)

表の「課税事業者になって登録する」の列だけを見ると有利に見えますが、納税額そのものは確実に増えます。判断の分かれ目は、取引先が仕入税額控除を必要とする事業者かどうかです。取引の相手が一般消費者中心であれば、登録しないままでも支障が出にくくなります。

インボイス制度で免税事業者と課税事業者、買い手の間で仕入税額控除の可否がどう変わるかを示した関係図

免税事業者からの仕入れでも、経過措置により一定割合までは控除できます。ただし、この割合は段階的に下がっていくため、取引への影響は年を追って強まります。経過措置の中身と、登録した場合に使える特例は、後の章でまとめて解説します。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

インボイス制度のメリット

インボイス制度のメリットは、売り手と買い手で内容が異なります。売り手にとっては取引の継続と新規開拓に支障が出ないこと、買い手にとっては消費税額を正確に把握できることが中心です。

免税事業者が登録した場合のメリット

免税事業者が登録して適格請求書発行事業者になる最大のメリットは、取引先が仕入税額控除を受けられる状態を保てることです。登録番号を記載した適格請求書を発行できるようになるため、取引先から「控除できないぶん値引きしてほしい」と持ちかけられる余地がなくなります。

新規の取引でも同じことが起こります。買い手が課税事業者であれば、仕入先を選ぶときに登録の有無を確認するのが実務として定着しました。登録していれば、その時点で候補から外れることはありません。

もうひとつ、登録番号は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで誰でも確認できます。取引先から見れば、実在と登録状況を客観的に確かめられる情報が公開されている状態です。法人であれば本店の所在地も公表されるため、初めて取引する相手にとっては確認の手がかりになります。

登録には副次的な効果もあります。本則課税、つまり売上の消費税から仕入れの消費税を差し引く原則どおりの方法で申告する場合、売上と仕入れを税率ごとに区分して記帳することになります。手間ではありますが、その過程で自分の事業の原価構成が数字で見えるようになります。どの経費にいくらかかっているかを把握できていなかった個人事業主にとっては、価格の見直しや外注先の選定を考える材料が手元に残ります。ただし、後述する2割特例のように仕入れの集計が要らない方法で申告する場合、この効果は生じません。

買い手である課税事業者のメリット

買い手にとってのメリットは、税率ごとの消費税額が請求書の上で分かれて記載されることです。軽減税率の8%と標準税率の10%が混在する取引でも、どちらがいくらなのかを請求書だけで判断できます。集計のときに税率を推定する必要がなくなり、消費税の計算根拠がそろいます。

記載事項が法令で決まっている点も効いています。登録番号、取引年月日、税率ごとに区分した対価の額と消費税額など、確認すべき項目が明確になりました。受け取った請求書が要件を満たしているかどうかを、一定の基準でチェックできます。

取引先の実在確認がしやすくなった点も、規模の大きい会社ほど恩恵があります。新規の仕入先が増えたときに、登録番号から公表情報を照合できるためです。登録番号は請求書に必ず記載されるので、確認のために別の資料を取り寄せる必要がありません。

ただし、これは裏を返せば確認作業が増えたということでもあります。メリットとデメリットは、同じ場所から生まれています。

インボイス制度のデメリット

デメリットは立場によって中身がまったく違います。免税事業者のままなら取引条件への影響、登録するなら納税と事務の負担、買い手なら管理の手間が生じます。

免税事業者のまま登録しない場合のデメリット

登録しない場合のデメリットは、取引先が仕入税額控除を受けられなくなることです。ここで負担するのは免税事業者自身ではなく、請求書を受け取る買い手のほうです。買い手は控除できなかった消費税額を自社で負担することになるため、その分の値引きを求められたり、取引条件の見直しを打診されたりすることがあります。

ただし、制度の開始と同時に全額が控除できなくなったわけではありません。経過措置の期間中は、一定割合まで控除が認められています。

影響の出方は取引先の構成で変わります。買い手が課税事業者ばかりであれば、控除できない金額がそのまま相手の負担になるため、条件の見直しを求められる可能性は高くなります。反対に、買い手が一般消費者や免税事業者であれば、そもそも仕入税額控除が関係しないため影響は生じません。

見落とされやすいのが、取引先が簡易課税制度を選んでいるケースです。簡易課税では売上にかかる消費税額にみなし仕入率という割合を掛けて控除額を計算するため、受け取った請求書が適格請求書かどうかは納税額に影響しません。取引先が小規模な事業者であれば、簡易課税を選んでいる可能性を確認する価値があります。

なお、取引先が値引きや取引停止を一方的に通告してきた場合は、法律上の問題になることがあります。

課税事業者になる場合のデメリット

登録して課税事業者になると、消費税の申告と納付の義務が新たに発生します。売上が1,000万円以下であっても、登録した時点で免税事業者ではなくなるためです。手元に残る金額は、預かった消費税を納める分だけ確実に減ります。

事務の負担も増えます。売上と仕入れを税率ごとに区分して記帳し、確定申告で消費税額を計算する作業が加わります。これまで所得税の申告だけで済んでいた個人事業主にとっては、年間の作業量が変わる部分です。

いったん登録すると、やめるときにも手続きが必要です。登録の取消しを求める届出書を提出し、効力が生じるのは原則として翌課税期間、個人事業主であれば翌年からです。届出には提出期限があり、登録した時期によっては一定の期間、免税事業者に戻れないこともあります。取引先の要請で急いで登録すると、あとから戻すのに時間がかかる点は先に知っておいてください。

請求書の書式も変わります。登録番号、税率ごとに区分した対価の額、税率ごとの消費税額を記載しなければなりません。テンプレートを直すだけで済む場合もあれば、請求書を発行しているシステムの設定変更が必要になる場合もあります。

この納税負担については、期間限定の軽減措置が用意されています。実際にいくら増えるのかは、その措置を含めて計算しないと見えてきません。試算は後の章で行います。

買い手である課税事業者のデメリット

買い手側で増えるのは、受け取った請求書が適格請求書の要件を満たしているかどうかの確認作業です。登録番号の有無、税率ごとの区分記載、消費税額の記載といった項目を1枚ずつ見る必要があります。

取引先が登録事業者かどうかで処理も分かれます。適格請求書であれば全額を控除できますが、そうでない請求書は経過措置の控除率で計算し直さなければなりません。同じ月の請求書のなかに2種類の処理が混在する状態です。

▼ 受け取った請求書の種類ごとの処理の違い

受け取った請求書仕入税額控除の扱い経理側で必要になる処理
適格請求書全額を控除できる登録番号と記載事項を確認して保存する
適格請求書ではない請求書経過措置の控除率までしか控除できない経過措置用の税区分で入力して控除額を計算する。帳簿に経過措置の適用である旨を記載する

経過措置を適用して控除する場合は、帳簿の書き方にも決まりがあります。通常の記載事項に加えて、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を残さなければなりません。「80%控除対象」といった記号を付し、その意味を欄外に示す方法でも差し支えないとされています。

取引先の数が多いほど、この仕分けは重くなります。請求書が月に数百枚を超える規模になれば、確認そのものが独立した業務になっていくでしょう。しかも控除率は途中で切り替わる仕組みです。切り替わりをまたぐ時期は、同じ取引先の請求書でも仕入れの日によって適用する割合が分かれることがあります。枚数だけでなく日付の管理も必要になる点は見落とされやすいため、処理の基準は国税庁の資料で確認してください。

インボイス制度に登録すべきか判断する基準

登録すべきかどうかは、取引先が仕入税額控除を必要としているかを起点に、登録した場合に増える納税額と比べて判断します。必要としない相手が中心であれば、登録しないままでも取引への影響は小さくなります。

登録しないままでも影響を受けにくい事業者の条件

影響を受けにくいのは、買い手が仕入税額控除を使わない取引が中心の事業者です。具体的には次の3つのいずれかにあてはまる場合が該当します。

▼ 登録しないままでも影響を受けにくい事業者の条件

条件影響が小さい理由
取引先が一般消費者中心である消費者は仕入税額控除を行わないため、適格請求書の交付を求められない
取引先が簡易課税制度を選択している簡易課税では売上税額から仕入控除税額を計算するため、受け取る請求書が適格請求書である必要がない
取引先が免税事業者である取引先自身が消費税を納めていないため、仕入税額控除の対象にならない

判断の起点は自分の売上規模ではなく、取引先が誰かです。飲食店や美容室のように来店客が中心の事業であれば、登録しない選択が成り立ちます。反対に、法人を相手にした受託や納品が中心であれば、登録しない場合の影響を具体的に見積もる必要があります。

ただし、取引先の構成は変わります。いまは消費者向けが中心でも、事業者向けの取引が増えれば判断は変わります。一度決めたら終わりではなく、事業の内容が変わったときに見直す前提で考えてください。

取引先の属性から、インボイス制度に登録すべきかどうかを判断するフローチャート

登録した場合に納税額がいくら増えるかの試算

登録した場合の納税額は、2割特例を使えるかどうかで大きく変わります。2割特例とは、免税事業者から課税事業者になった人が、納付する消費税額を売上にかかる消費税額の2割に抑えられる仕組みです。仕入れの金額を集計しなくても計算できるため、事務負担も軽くなります。

年間の課税売上が税抜500万円、税率10%の取引が中心という前提で計算してみます。売上にかかる消費税額は約50万円です。2割特例を適用すると、納付する金額はその2割にあたる約10万円になります。特例を使わず本則課税で計算する場合は、仕入れにかかった消費税額を差し引いた残りが納付額になるため、仕入れの割合が小さい事業ほど納付額は大きくなります。

▼ 2割特例を適用した場合の納付額の目安

年間の課税売上(税抜)売上にかかる消費税額の目安2割特例を適用した場合の納付額の目安
300万円約30万円約6万円
500万円約50万円約10万円
800万円約80万円約16万円

この表は税率10%の取引だけで構成されている場合の目安です。軽減税率の取引が混ざる場合や、課税対象外の売上がある場合は金額が変わります。実際の判断では、いま取引先から求められている値引き幅とこの納付額を並べて比べてみてください。

比べ方はこうです。取引先が本則課税で申告している場合、買い手として実際に負担するのは、消費税相当額の全額ではなく、経過措置で控除できない部分です。税抜500万円の売上なら、控除率80%の期間では約10万円、70%の期間では約15万円がこれにあたります。一方、登録して2割特例を使った場合の納付額は約10万円です。80%の期間中は両者がほぼ並び、控除率が下がるほど、登録したほうが手元に残る計算に傾いていきます。

ただし2割特例には期限があります。特例が使えなくなったあとは本則課税か簡易課税で計算することになり、納付額は上がります。判断するときは、特例が終わったあとの納付額まで含めて見てください。仕入れの割合が小さい事業ほど、特例の終了による影響は大きく出ます。

インボイス制度の経過措置と特例でデメリットを緩和する

インボイス制度のデメリットは、経過措置と特例によって一定期間は和らげられます。免税事業者からの仕入れでも一部は控除でき、登録した事業者は納税額と事務負担を抑える特例を使えます。

仕入税額控除の経過措置は4段階に延長された

免税事業者からの仕入れであっても、一定割合までは仕入税額として控除できます。この経過措置は当初6年間の2段階で設計されていましたが、令和8年度税制改正で組み替えられました。改正後は控除率が80%、70%、50%、30%の4段階となり、終了は2031年9月30日までです。

▼ 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合

期間控除できる割合
2023年10月1日から2026年9月30日まで仕入税額相当額の80%
2026年10月1日から2028年9月30日まで仕入税額相当額の70%
2028年10月1日から2030年9月30日まで仕入税額相当額の50%
2030年10月1日から2031年9月30日まで仕入税額相当額の30%
2031年10月1日以降控除できない

2026年10月から控除率が80%から70%へ下がる点は、買い手の負担が一段増えるタイミングです。免税事業者との取引が多い会社ほど、この切り替わりの前に処理の方法を決めておく必要があります。

インボイス制度の経過措置の新スケジュール

2割特例と3割特例の適用対象と期間

前の章の試算で使った2割特例は、免税事業者から課税事業者になった人が使える負担軽減策です。事前の届出は不要で、消費税の確定申告書に適用する旨を記載するだけで選べます。

令和8年度税制改正では、これに続く措置として3割特例が設けられました。対象は免税事業者から登録した個人事業者です。令和9年分と令和10年分のうち、登録していなければ免税事業者でいられたはずの年分に限って適用でき、納付する消費税額は売上にかかる消費税額の3割になります。確定申告書にその旨を付記して選びます。2割特例の適用期間が終わったあと、負担を段階的に戻していく位置づけの措置です。

▼ 2割特例と3割特例の比較

特例対象適用できる期間納付する消費税額
2割特例免税事業者から課税事業者になった事業者2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間売上にかかる消費税額の2割
3割特例個人事業者に限られる令和9年分と令和10年分売上にかかる消費税額の3割

ここで間違えやすいのが計算の向きです。2割特例は「納める金額が売上税額の2割になる」仕組みであって、「2割を控除できる」ではありません。控除されるのは8割のほうです。

なお、3割特例は個人事業者向けの措置のため、法人には適用がありません。法人が2割特例の期間を終えたあとは、本則課税か簡易課税で計算することになります。簡易課税を選ぶには、原則として事前の届出が必要です。

少額特例で帳簿の保存のみで控除できる範囲

少額特例は、少額の仕入れについて適格請求書の保存を不要とする仕組みです。税込1万円未満の課税仕入れであれば、一定の事項を記載した帳簿を保存するだけで仕入税額控除を受けられます。

使えるのは規模の要件を満たす事業者に限られます。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下であることが条件です。適用期間は2029年9月30日までとされています。

金額の判定は1回の取引ごとに行います。1つの請求書に複数の商品が並んでいる場合でも、商品1点ごとではなく、その取引の合計額で1万円未満かどうかを見ます。月にまとめて請求される取引では、まとめた金額で判定することになるため、1件あたりが少額でも特例の対象から外れることがあります。

交通費や少額の備品購入のように、1件あたりの金額が小さく件数が多い支出では効果が出ます。ただし期間が区切られているため、恒久的な仕組みとして運用設計に組み込むのは避けたほうが安全です。特例の期間が終われば、この対象だった仕入れにも適格請求書の保存が必要になります。なお、公共交通機関の運賃や自動販売機での購入のように、帳簿の保存だけで控除が認められる取引は別に定められており、そちらには期間の定めがありません。少額特例の終了で影響が出るのは、これらにあてはまらない仕入れです。特例の期間中に、請求書や領収書を確実に集めて保存する流れを作っておくのが現実的です。

なお、少額特例とは別に、1万円未満の返品や値引きについては適格返還請求書の交付が免除されています。こちらには期間の定めがなく、すべての適格請求書発行事業者が使えます。振込手数料を売り手が負担する取引などで、この免除が生きてきます。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

インボイス登録を一方的に迫られたときに関係する法律

登録するかどうかは事業者が自分で決めることです。取引先が一方的に登録を求めたり、登録しないことを理由に取引条件を変更したりする行為は、法律上の問題になることがあります。

2026年1月に下請法から改称された取適法で問題となる行為

下請代金支払遅延等防止法、いわゆる下請法は2026年1月1日に改称されました。新しい法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法と呼ばれます。

改称にあわせて、適用の対象や禁止される行為の内容も見直されています。どの取引が対象になり、どの行為が禁止されるのか。ここには改正で変わった部分があります。自社の取引があてはまるかどうかは、中小企業庁の説明資料で確認してください。

インボイス制度との関係で問題になりやすいのは、代金の減額です。取適法の適用対象となる委託取引では、登録していないことを理由に、あらかじめ決めた代金から消費税相当額を差し引く行為が、減額にあたるおそれがあります。発注後の減額は厳しく制限されており、発注前の交渉であっても、著しく低い代金を一方的に定めれば買いたたきとして問題になることがあります。

減額のほかにも、受領の拒否や支払いの遅延などが取適法上の問題となる場合があります。どの行為がどの条件で該当するかは取引の形態によって変わるため、個別のケースについては中小企業庁の相談窓口で確認するのが確実です。

解説記事のなかには、いまも下請法という旧称のまま説明しているものがあります。取引先とのやり取りで根拠として示すのであれば、現在の名称を確認してから使ってください。

独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたるケース

取適法の対象にならない取引関係でも、独占禁止法が適用される場合があります。取引上の立場が強い側が、その地位を利用して相手に不利益を与える行為は優越的地位の濫用にあたるおそれがあります。

公正取引委員会は、インボイス制度の実施にあたって問題となりうる行為の考え方を示しています。取引価格の引き下げ、商品の受領拒否、協賛金の要請、登録の要請に応じない場合の取引停止の示唆などが挙げられています。

重要なのは、価格の見直しそのものが禁じられているわけではないという点です。問題とされるのは、協議が形式的なものにすぎないまま、買い手の都合だけで著しく低い価格を設定するような場合です。免税事業者側の消費税負担にも配慮して話し合い、双方が納得して条件を変えたのであれば、通常の取引条件の変更として扱われます。話し合いの経緯を記録に残しておくことが、双方にとっての備えになります。

実際に一方的な通告を受けた場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に問い合わせる方法があります。取引を続けながら相談したい場合に配慮した仕組みも用意されています。

インボイス制度と独占禁止法に関する記事はこちら

インボイスの受け取り方を見直して経理業務の負担を減らす

ここまで見てきたデメリットのうち、買い手側で生じる確認と管理の負担には、請求書の受け取り方を変えることで軽くできる部分があります。

登録番号の確認、税率ごとの区分の照合、適格請求書とそれ以外の仕分け。この3つは請求書が手元に届いてから始まる作業です。紙とPDFとメール添付が混在している状態のままだと、届いた形式ごとに人の手が入ります。

請求書を受け取ってからデータ化、確認、保存に至る4つの工程を示した業務フロー図

受け取り方を変えるというのは、届く形式をこちらで揃えるということです。取引先ごとに送付方法が違っても、受け取る窓口を1つにまとめてしまえば、そこから先の確認と保存は同じ流れで処理できます。形式がばらばらのまま処理を始めると、確認の手順も取引先の数だけ増えていきます。

TOKIUMインボイスは、紙で届いた請求書もメールに添付されたPDFも、形式を問わずまとめて受け取ってデータにします。受け取りの窓口を1本にすることで、届いた形式ごとに処理を分ける必要がなくなります。明細のデータ化に加えて、課税事業者番号の確認もTOKIUMが代行するため、適格請求書かどうかの確認を自社の目視だけに頼らずに進められます。

TOKIUMシリーズの累計導入社数は、2025年11月末時点で3,000社。プライム上場の非鉄金属商社である白銅でも、年間12,000件の請求書処理にTOKIUMを活用いただいています。明細や仕訳の入力作業までAIに任せたい場合は、TOKIUM AI明細入力という選択肢があります。同じ取引先から拠点や取引内容ごとに書式の違う請求書が届いても、AIが自動で識別して明細と仕訳を入力。シン・コーポレーションでは、TOKIUM AI明細入力の導入により年間約480時間の削減を見込んでいます。 出典:TOKIUM プレスリリース「経理AIエージェントTOKIUM、累計導入社数が3,000社を突破」/TOKIUM プレスリリース「プライム上場の非鉄金属商社・白銅、TOKIUMで年間12,000件の請求書処理を効率化」/TOKIUM プレスリリース「シン・コーポレーション、TOKIUM AI明細入力を導入し年間約480時間の削減見込み」(最終確認日:2026年8月7日)

インボイス制度への対応で経理の手が止まりやすいのは、制度そのものよりも受け取ったあとの処理です。請求書の受領と電子化を見直したい方は、TOKIUMインボイスの詳しい機能と導入効果をまとめた無料の製品資料でご確認いただけます。ぜひダウンロードしてご覧ください。

請求書支払いにおける受領~承認を電子化する3つのメリットとは?

まとめ:インボイス制度のメリット・デメリットを立場別に整理する

インボイス制度のメリットとデメリットは、売り手として免税事業者のままでいるか、課税事業者になって登録するか、そして請求書を受け取る買い手かという立場の違いで正反対になります。

免税事業者にとっての判断の起点は、取引先が仕入税額控除を必要としているかどうかです。取引先が一般消費者中心であれば、登録しないままでも影響は小さくなります。登録する場合は、2割特例を含めて納税額を試算したうえで、いま求められている値引き幅と比べてください。

買い手側で増えるのは確認と管理の作業です。免税事業者からの仕入れは経過措置の控除率で処理が変わり、その割合は2026年10月を境に一段下がります。取引先の構成を見て、切り替わりの前に処理の方法を決めておくと後の負担が軽くなります。

登録を一方的に迫られた場合は、取適法や独占禁止法の問題になることがあります。協議のないまま代金を減額されたときは、公正取引委員会や中小企業庁が示す考え方を確認してください。

インボイス制度のメリット・デメリットに関するよくある質問

インボイス制度で困る人は?

最も影響を受けるのは、事業者を相手に取引していて、これまで消費税を納めてこなかった免税事業者です。登録すれば納税義務が生まれ、登録しなければ取引先が仕入税額控除を受けられなくなるためです。買い手である課税事業者も、取引先の登録状況を管理する作業が増えます。

インボイス制度に登録しない方がいい人は?

取引先が仕入税額控除を必要としない事業者は、登録しない選択が成り立ちます。取引先が一般消費者中心である場合、簡易課税制度を選択している場合、免税事業者である場合が該当します。ただし取引先の構成が変われば判断も変わるため、事業内容が変化したときに見直してください。

インボイス制度のデメリットはいつまで続きますか?

免税事業者からの仕入れに関する経過措置は、2031年9月30日までとされています。控除できる割合は80%から70%、50%、30%と段階的に下がっていきます。2割特例と3割特例、少額特例にもそれぞれ適用期間があります。いずれも改正で変わることがあるため、最新の内容は国税庁の資料で確認してください。

インボイス制度に登録すると消費税はいくら増えますか?

2割特例を使える場合、納付する消費税額は売上にかかる消費税額の2割です。年間の課税売上が税抜500万円で税率10%の取引が中心であれば、納付額の目安は約10万円になります。特例を使えない場合や特例の期間が終わったあとは、本則課税か簡易課税で計算するため納付額は上がります。

免税事業者のままだと消費税を請求できなくなりますか?

免税事業者であっても、取引の対価として消費税相当額を請求することは禁じられていません。登録していないために発行できないのは適格請求書であって、請求書そのものを出せなくなるわけではありません。ただし買い手は仕入税額控除を受けられないため、その分の値引きを求められることがあります。

2割特例は誰でも使えますか?

使えるのは、免税事業者からインボイス制度を機に課税事業者になった事業者に限られます。もともと課税事業者だった場合や、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合は対象外です。事前の届出は不要で、消費税の確定申告書に適用する旨を記載して選びます。

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