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オフィスや店舗を借りている企業にとって、新リース会計基準への対応で最も影響が大きいのが不動産の賃貸借契約です。契約書の名称が「賃貸借」や「レンタル」であっても、借手が特定の資産の使用を支配していれば、原則としてリースとして扱われ、貸借対照表に計上(オンバランス)されます。
強制適用は2027年4月から、早期適用は2025年4月から始まります。この記事では、不動産賃貸借契約が新リース会計基準の対象になる理由から、家賃・敷金・共益費・フリーレントといった不動産特有の論点、多拠点にわたる契約の洗い出し方まで、借手の実務に沿って整理します。適用時期の正確な区切りや決算月別の準備期間は、記事の中ほどで表にまとめています。
なぜ不動産賃貸借契約が新リース会計基準の対象になるのか
不動産賃貸借契約が対象になる理由は、新リース会計基準がリースを「契約の名称」ではなく「資産の使用を支配しているかどうか」という実態で判定するためです。オフィス・店舗・倉庫・社宅などを借りる契約は、この判定で多くがリースに該当します。
新リース会計基準は企業会計基準第34号として2024年9月に公表されました。借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別なく、原則としてすべてのリースを資産・負債に計上します。従来は毎月の家賃を費用として処理していた不動産賃貸借契約も、この原則の対象に入ります。新リース会計基準の対象範囲や基本的な考え方といった全体像は別記事で詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
●新リース会計基準の変更点に関する記事はこちら
どの契約がリースに該当するか
リースに該当するかは、契約が「特定された資産」を対象にし、借手がその資産の使用を「支配」しているかで判断します。支配しているといえるのは、使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを得る権利があり、かつ資産の使用方法を借手が指図できる場合です。
オフィスや店舗の1区画を専有して借りる契約は、特定された資産を借手が使うため、多くがリースに該当します。一方、貸主の判断で借手をいつでも別の区画へ移せる、対象の区画が特定されていない、といった契約はリースに該当しないことがあります。貸主が別の資産に入れ替える権利を実質的に持ち、その入れ替えに経済的な合理性がある場合も、特定された資産とはいえずリースの対象から外れます。自社の契約がどちらにあたるかは、契約書で対象物件がどこまで特定されているかから確認します。
対象になる企業と準備の期限はいつか
新リース会計基準の適用対象は、上場企業と会社法上の大会社などです。強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度から、早期適用は2025年4月1日以後に開始する事業年度から認められています。決算月によって準備に使える期間が変わるため、自社の決算月から逆算して対応を進めます。
決算月別に、強制適用が始まる事業年度と適用開始日を整理すると次のとおりです。早期適用を選ぶ場合は、いずれの決算月でも2025年4月1日以後に開始する事業年度から前倒しできます。
▼ 決算月別 新リース会計基準の強制適用タイミング(企業会計基準第34号より)
| 決算月 | 強制適用が始まる事業年度 | 適用開始日(その事業年度の初日) |
|---|---|---|
| 3月決算 | 2027年4月1日〜2028年3月期 | 2027年4月1日 |
| 6月決算 | 2027年7月1日〜2028年6月期 | 2027年7月1日 |
| 9月決算 | 2027年10月1日〜2028年9月期 | 2027年10月1日 |
| 12月決算 | 2028年1月1日〜2028年12月期 | 2028年1月1日 |
たとえば6月決算の企業は、2027年7月に始まる事業年度から強制適用になります。3月決算の企業より数か月分だけ準備期間に余裕がある計算です。ただし対象契約の洗い出しや会計方針の決定には時間がかかるため、決算月にかかわらず早めの着手が安全です。
適用初年度には、過去の年度にさかのぼって処理し直す方法と、適用開始日を基準に負担を抑えて計上する方法のどちらを採るかも決めておきます。オペレーティング・リースに分類していた不動産賃貸借契約では、適用開始日に、リース負債を残りの家賃の現在価値で計上する簡便的な取扱いが認められています。使用権資産はこれに合わせて算定します。どの方法を選ぶかで初年度の作業量が変わるため、早い段階で会計方針として固めておくと安全です。
不動産賃貸借契約のオンバランス化で会計処理はどう変わるか
オンバランス化で変わるのは、家賃を「支払家賃」として費用計上する処理が、資産と負債の計上に置き換わる点です。リース開始時に、将来支払う家賃の総額を利息分だけ割り引いて今の価値に直します。この金額(現在価値)が、使用権資産(借りて使う権利という資産)とリース負債(将来の家賃支払い義務)になります。その後は使用権資産を減価償却しながら、リース負債の返済に利息を加えて処理していきます。
現在価値を計算するときの割引率は、契約に利率が明示されていればそれを使います。不動産賃貸借契約のように利率が示されていない場合は、借手が同じ条件で資金を借りるときの利率(追加借入利子率)を用います。割引率をいくつに置くかで使用権資産とリース負債の金額が変わり、監査でも説明を求められるため、社内で決め方の根拠をそろえておきます。
この結果、これまで1本の「支払家賃」だった費用が、使用権資産の「減価償却費」とリース負債の「支払利息」の2つに分かれます。使用権資産の計算方法や減価償却の詳細は、リース資産の減価償却をテーマにした記事で解説しています。
●リース資産の減価償却に関する記事はこちら
家賃の会計処理は仕訳でどう変わるか
家賃の処理は、従来の「支払家賃をそのまま費用にする」形から、資産・負債を経由する形に変わります。イメージをつかむため、最小限の例で従来と新基準を並べると次のようになります。
▼ 家賃の会計処理イメージ(従来と新リース会計基準の比較)
| タイミング | 従来(賃貸借処理) | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 契約開始時 | 仕訳なし | 使用権資産 / リース負債(将来家賃の現在価値) |
| 毎月の支払時 | 支払家賃 / 現金預金 | リース負債・支払利息 / 現金預金 |
| 決算時 | ― | 減価償却費 / 使用権資産 |
同じ家賃の支払いでも、費用の科目が「支払家賃」から「減価償却費」と「支払利息」に分かれるのが最大の違いです。金額の算定方法や勘定科目ごとの具体的な仕訳は、リースの仕訳を扱った記事で詳しく確認できます。
●リースの仕訳に関する記事はこちら
損益計算書や財務指標にどう影響するか
オンバランス化は損益計算書や財務指標にも影響します。まず、1本だった費用が減価償却費と支払利息に分かれるため、本業のもうけを示す営業利益や、そこから減価償却費を除いたEBITDAの見え方が変わります。さらに使用権資産とリース負債が計上されることで、自己資本の厚みを示す自己資本比率や、資産効率を示すROA(総資産利益率)が低下する可能性もあります。
融資契約で守るべき財務指標の約束事(コベナンツ)に自己資本比率などを用いている場合は、オンバランス化による影響を事前に見積もっておきます。必要に応じて金融機関と認識を合わせておくと安全です。連結財務諸表を作成している企業では、子会社の賃貸借契約も影響範囲に含まれます。
不動産賃貸のリース期間はどう見積もるか
不動産賃貸借契約で最も判断が難しいのがリース期間の見積もりです。リース期間は契約書に書かれた期間そのものではありません。解約不能期間(契約上、借手が途中で解約できない期間)をベースに、延長・解約オプションを使う可能性が「合理的に確実」かを加味して見積もります。この期間が使用権資産・リース負債の金額を左右します。
不動産では、契約形態によって期間の考え方が変わります。普通借家契約と定期借家契約の違いを整理すると次のとおりです。
▼ 普通借家契約と定期借家契約でのリース期間の考え方
| 契約形態 | 契約の特徴 | リース期間の考え方 |
|---|---|---|
| 普通借家契約 | 賃借人を保護する借地借家法により、貸主から簡単には打ち切られず更新されやすい | 自動更新や再契約の可能性を踏まえ、解約不能期間より長く見積もることがある |
| 定期借家契約 | 契約期間の満了で更新されず終了する | 再契約が合理的に確実かで判断。原則は契約期間がベースになる |
延長オプションを行使する可能性が合理的に確実かどうかは、移転にかかるコストや事業上の重要性など、企業ごとの事情を踏まえた判断になります。判断の根拠は文書として残しておくと、後の監査対応でも説明しやすくなります。

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家賃以外で判断に迷う不動産特有の論点
不動産賃貸借契約には、家賃以外にも会計処理の判断が必要な項目が含まれます。リースに含めるものと含めないものを先に整理すると、次の早見表のようになります。
▼ 不動産賃貸借契約の項目別 リースに含める・含めないの早見表
| 項目 | リースに含めるか | 処理の考え方 |
|---|---|---|
| 固定の賃料(家賃) | 含める | 使用権資産・リース負債の計算に入れる |
| 共益費・管理費 | 原則は含めない | 非リース要素として区分し費用処理。区分が困難なら一括処理の簡便法もある |
| 保守・清掃などのサービス費 | 含めない | サービスの対価として従来どおり費用処理 |
| 返還されない敷金・保証金 | 含める | 使用権資産の取得原価に含める |
| 返還される敷金・保証金 | 含めない | 差入保証金(金融商品)として処理する |
| フリーレント・段階賃料 | 含める | 固定リース料としてリース負債の現在価値に含める |
| 変動賃料(売上歩合など) | 原則は含めない | あらかじめ金額が決まらないものは発生した月に費用処理 |
以下では、とくに問い合わせが多い共益費・敷金・フリーレントの3つを個別に整理します。
共益費・管理費はどう分けるか
共益費・管理費や保守・清掃費は、資産の使用そのものの対価ではありません。そのため非リース要素として家賃部分と区分し、費用として処理するのが原則です。区分することで、使用権資産・リース負債に計上する金額は固定賃料部分に絞られます。契約で家賃と共益費が一体になっていて区分が難しい場合は、両者を区分せず全体を1つのリースとして処理する簡便法も認められています。
敷金・保証金・原状回復費はどう扱うか
敷金・保証金は、返還されるかどうかで処理が分かれます。返還されないことが明らかな部分は使用権資産の取得原価に含め、退去時に返還される部分は差入保証金(金融商品)として処理します。返還される敷金を当初に現在価値で測定し、割り引いた差額を前払リース料などとして使用権資産に反映することもあるため、金額が大きい場合は割引の要否も確認します。契約で原状回復義務が定められている場合は、退去時にかかる撤去・復旧費用をあらかじめ見積もった負債(資産除去債務)として計上し、使用権資産に加えて処理することがあります。
フリーレント・段階賃料・建設協力金はどう扱うか
入居当初の家賃が無料または減額されるフリーレントや、期間の経過で家賃が上がる段階賃料は、契約期間中に支払う家賃を固定リース料としてリース負債の現在価値に含めます。使用権資産を通じて費用が配分されるため、無料期間があっても、その期間に使用権を得ている点は変わりません。建設協力金のように、借手が貸主へ資金を差し入れて後に返還を受ける取引は、資金の貸付という金融の要素と使用権の部分を分けて考える必要があり、契約内容ごとに丁寧な検討が求められます。
不動産賃貸のリース会計を契約類型別に整理する
「自社のこの契約はどうなるのか」を判断しやすいよう、代表的な契約類型ごとに考え方を整理します。いずれも、最終的にはリースの識別とリース期間の見積もりという共通の判断に沿って処理します。
▼ 契約類型別に見た不動産賃貸のリース会計の考え方
| 契約類型 | リース会計上の考え方 |
|---|---|
| オフィス・店舗の賃借 | 区画が特定され専有していれば、多くがリースに該当し原則オンバランス |
| 社宅・借上げ住宅 | 会社が借りて従業員へ転貸する形。契約単位での判定が必要。少額・短期に該当すれば簡便処理の余地 |
| 土地の賃借・借地権 | 土地と建物で判定が分かれることがある。契約の対象と支配の有無を個別に確認 |
| 駐車場・付帯設備 | 区画が特定されない、短期・少額といった条件次第で扱いが変わる |
リース期間が12か月以内の短期リースや、少額のリースには、オンバランスせず費用処理を続けられる簡便的な取扱いがあります。なお、上場企業や会社法上の大会社に当てはまらない中小企業は、原則として新リース会計基準の適用対象外で、従来どおりの会計処理を継続できます。中小企業での扱いや簡便処理の要件は、中小企業のリース会計をテーマにした記事で確認できます。
●中小企業のリース会計に関する記事はこちら
貸手側の会計処理は変わるのか
自社が不動産を貸す側(貸手)の場合、会計処理に借手ほど大きな変更はありません。貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を引き続き用います。多くの不動産賃貸では、貸している不動産を自社の資産として計上し続け、受け取る賃料を収益に計上する従来どおりの処理が続きます。
注意が必要なのは、借りた不動産をさらに転貸するサブリースです。この場合は中間の貸手として、借手と貸手の両面で判断します。自社が転貸をしている場合は、元の契約と転貸契約をそれぞれ確認します。オペレーティング・リースの基本的な考え方は、別記事で解説しています。
●オペレーティングリースに関する記事はこちら
不動産賃貸のリース会計は契約の洗い出しと一元管理から始める
新リース会計基準への対応は、対象となる契約を漏れなく洗い出すことから始まります。オフィス・店舗・社宅・駐車場などの賃貸借契約は、締結した部署も保管場所もばらばらです。本社の経理が全体を把握しきれていないことも少なくありません。多拠点・連結の企業ほど、この契約の網羅的な把握が最初の関門になります。
対応は、大きく次の3ステップで進めます。契約書に埋め込まれた実質的なリース(隠れリース)を見落とさないことが、網羅性を確保するうえで重要です。
▼ 不動産賃貸借契約の新リース会計対応 3ステップ
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 洗い出し | 全部署・全拠点の賃貸借契約書を集約し、対象になりうる契約を一覧化する |
| 2. リースの識別 | 契約ごとに、特定資産の使用を支配しているかを判定し、リース該当性を確認する |
| 3. 台帳化と管理 | リース期間・賃料・更新や解約の条件を台帳にまとめ、更新期日や再測定を継続的に管理する |
●隠れリースに関する記事はこちら
契約書が紙やPDFで各所に散在したままだと、この洗い出しと台帳化に多くの工数がかかります。更新のたびに再測定の抜け漏れも起きやすくなります。ここを効率化する手段が、契約書を集約して一元管理する仕組みです。

TOKIUM契約管理は、新リース会計基準への対応を支援するクラウド契約書管理システムです。契約書をアップロードすると、AIが契約内容からリースが含まれる可能性を自動判定します。違約金や解約不能期間といった項目もデータ化します。判定の根拠となった条文は契約書PDF上にハイライトされ、各社の会計方針や解釈に合わせて判定をカスタマイズすることもできます。
あわせて、AIが契約書から取引先名・契約期間・自動更新の有無を読み取って管理台帳を自動作成し、更新が必要な契約は毎月メールで通知します。契約書の集約から新リース会計基準に向けたリース判定、その後の期日管理までを一つの仕組みで進められます。そのため、多拠点に散在する契約の網羅的な把握という最初の関門を効率化できます。新リース会計基準への対応をご検討中の方は、機能や活用イメージをまとめた資料をご覧ください。
●AIによるリース識別に関する記事はこちら
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不動産賃貸のリース会計対応を支える契約管理ならTOKIUM
不動産賃貸借契約は、契約名が賃貸借であっても新リース会計基準では原則オンバランスの対象になり、家賃は減価償却費と支払利息に分かれます。敷金・共益費・フリーレントなど不動産特有の論点も多く、対応は対象契約の洗い出しから始まります。決算月にかかわらず、早めに契約を棚卸しして会計方針を固めることが、強制適用に向けた確実な準備になります。
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不動産賃貸のリース会計に関するよくある質問
自社の事務所や店舗の賃貸借契約もリースになりますか
区画が特定され、その使用を自社が支配している事務所・店舗の賃貸借契約は、多くがリースに該当し原則オンバランスの対象になります。契約名が「賃貸借」でも、実態で判定される点に注意が必要です。
中小企業や非上場企業も対象ですか
強制適用の対象は上場企業や会社法上の大会社などです。これらに当てはまらない中小企業は、原則として新リース会計基準の適用対象外で、従来どおりの会計処理を継続できます。中小企業での扱いは、中小企業のリース会計をテーマにした記事で解説しています。
家賃はもう経費として処理できなくなりますか
対象となる契約では、家賃をそのまま「支払家賃」として費用計上する処理は変わり、減価償却費と支払利息に分かれます。ただし短期リースや少額リースに該当する契約は、従来どおり費用処理を続けられます。
敷金は資産に含めますか
返還されないことが明らかな敷金・保証金は使用権資産の取得原価に含めます。退去時に返還される部分は差入保証金として処理し、使用権資産には含めません。
リースとレンタルの違いで扱いは変わりますか
契約の名称がレンタルでも、資産の使用を支配していればリースとして判定されます。名称ではなく実態で判断される点は共通です。リースとレンタルの違いは別記事で整理しています。
●リースとレンタルの違いに関する記事はこちら
いつまでに準備すればよいですか
強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度からで、決算月によって開始時期が変わります。対象契約の洗い出しと会計方針の決定には時間がかかるため、決算月にかかわらず早めの着手が安全です。
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